テストレポート
「ASTRO A40 TR Gaming Headset+MixAmp Pro TR」ファーストインプレッション。北米市場で2015年発売の“新製品”は,2018年でも通用するのか
とくに気になるのは,9月20日に国内で“新発売”となる製品が,まったくの新作というわけではないことだ。たとえば,サウンドデバイス「ASTRO Gaming MixAmp Pro TR」(以下,MixAmp Pro TR)とヘッドセット「ASTRO Gaming A40 TR Headset」(以下,A40 TR)がTR(Tournament Ready)シリーズとして北米市場でリリースされたのは2015年9月のことだったりするわけだが,3年前の製品は,2018年の日本市場でも十分な価値を保てているのだろうか? 4Gamerでは現在,MixAmp ProとA40のセット品である「ASTRO A40 TR Gaming Headset+MixAmp Pro TR」のテストを進めている最中だが,まずはファーストインプレッションをお届けしたい。
シンプルにPS4やPCと接続できるMixAmp Pro TR
本稿ではPS4とPCをメインで語ることにしたいが,まず,そのサイズは実測約80(W)
PCの場合はUSB接続でサウンドの入出力が可能なため,よりシンプルな接続で済む。
接続インタフェースは設置時の本体正面向かって背面と前面に集中する仕様で,背面には先ほど触れた光デジタル角形の入力端子と,「STREAM」という名の3極と思われる3.5mmミニピン端子,USB Micro-B端子が並ぶ。前面は,デイジーチェーン用のIEEE 1394(FireWire)端子が2つと,ヘッド接続用の4極3.5mmミニピン端子,AUX(補助)用の3極と思われる3.5mmミニピン端子という並びになっている。
ヘッドセット接続端子は汎用なので,4極3.5mmミニピン端子に対応していれば他社の製品を接続することも可能だ。
本体背面側のインタフェース。左からデジタル入力,STREAM,USBだ。あまり着脱しない系の端子が並んでいる |
本体前面側のインタフェース。左右両端がデイジーチェーン用で,中央の2つは左がヘッドセット接続用,右がAUXとなる |
一見しただけだと用途が見えないのはSTREAMとデイジーチェーン,AUXだと思うが,まずSTREAMというのは,MixAmp Pro TRに入力されたすべての信号をアナログ出力するためのライン出力端子である。筆者が確認した限り,出力レベルをMixAmp Pro TR側から調整することはできなかった。
最後にAUXはラインレベルのアナログ入力端子で,STREAMと異なり,こちらは本体上面にある大きなボリュームコントローラの影響を受ける。
ボリュームコントロールノブとGame/Voice Balanceノブに挟まれたところにある2個は,向かって正面左が[EQ modes],右が[Dolby]ボタンとなっており,左は押すごとに「ASTRO」「NATURAL BASS」「BALANCED」「TOURNAMENT」(※クイックスタートガイドだと順に「ASTROモード」「ナチュラル低音モード」「バランスモード」「トーナメントモード」)という4つのプリセットを切り換えられる。4プリセットは「円周上のどこが赤く点灯するか」で判断可能だ。
右のほうはシンプルにDolby Laboratories製のバーチャルサラウンド関連機能群を一括で有効/無効切り替えするもので,点灯時が有効を示す。
なお,MixAmp Pro TRにはユーザーの間でよく知られた使い方がある。それは,ネットワーク品質のよろしくないPlayStation Networkを避けるというもので,PS4とは光デジタルケーブルでのみ接続し,USBは別途用意したPCのほうと接続して,PC上で「Discord」などを介してフレンドとボイスチャットしたりするというものだ。やりようによってはゲームの実況配信でも使えると思うが,いずれにせよ,接続に難しいことはなにもないので,一度は試してみてほしいと思う。
初期値ではこれが「ホーム」になっているのだが,こちらはノイズゲートと呼ばれる機能の効きが強く,小声だとノイズ扱いされて集音されないといったことが頻発する。なので,ノイズゲートの強くないモードにプリセットを変更しておくのがよいだろう。「ストリーミング」か「夜」あたりを設定のうえ,常にこれらの設定が有効となるよう[デバイスに同期]ボタンを押せば,新しいプリセットをMixAmp Pro TRへ保存できる。
非常にカスタマイズ性の高いA40 TR
続いてはA40 TRのほうだが,本体カラーは「Black」とされ,つや消しの黒色をベースとしつつ,エンクロージャの外周部,そしてASTROが「Speaker Tag」(スピーカータグ)と呼ぶ着脱式エンクロージャカバー部には光沢処理を採用している。エンクロージャカバー部は黒と灰のストライプが入り,片側には金色のワンポイントも入っていた。
エンクロージャは標準だと開放型。現時点では入手できていないので,「どれくらい変わるか」といった話は行えないのだが,別売りの「ASTRO A40 TR Mod Kit」を購入して,エンクロージャカバーとイヤーパッドを交換すると密閉型へ変更することもできるようである。
そのエンクロージャカバーとイヤーパッドは磁石による固定式なので,着脱は非常に容易だ。付け加えると,エンクロージャ側は左右両方にマイク接続用のピン端子を搭載しているため,左右のエンクロージャカバーを入れ替えるとマイクブームの左右も入れ替えることができるようになっている。
ヘッドバンド接合部分はスライドさせて長さを調整する仕組みで,クリックのない無段階。打ってある目盛りを目安に調整して,持ち運ぶときはその目盛りを憶えておいて,移動先で再調整するというタイプだ。
ただ,バンド長は短めに感じた。頭の大きな人だとギリギリかもしれない。
ヘッドバンド部分はフレームを除き,これまた交換可能。頭頂部と接触する部分にはイヤーパッドと同じ素材によるものと思われるクッションが貼ってあった。
総じて,全体的に高級感のある作りで,装着時の満足感は高い。ただ,流行のメッシュ素材ではないため,夏場は汗ばむかもしれない。
先端部のマイクは実測約14(W)
MixAmp Pro TRに対応するので当たり前だが,A40 TRの付属ケーブルの接続インタフェースは4極3.5mmミニピン端子。ただこのケーブル,A40 TRの左耳用エンクロージャと接続するほうの端子は5極という特殊な仕様の3.5mmミニピン端子になっているため,汎用品で代替することはできない。なぜ片側が4極で片側が5極なのかは謎だ。
なお,差してみると分かるのだが,MixAmp Pro TR側の4極3.5mmミニピン端子はかなりかっちりはめ込めるイメージで,ちょっとテンションがかかったくらいでケーブルが抜けてしまったりしない安心感があった。
MixAmp Pro TRとの接続は4極3.5mmミニピン端子経由。MixAmp Pro TRは電源がオンなのにもかかわらずヘッドセットがつながっていないと各種LEDが赤く点灯して警告を出す |
こちらがA40 TRの左耳用エンクロージャ側インタフェース。ケーブル着脱式なので持ち運びには便利だが,5極という特殊端子なので,万が一断線したとき汎用品に交換といったことはできない |
付属ケーブルの長さは実測約2m。A40 TR側の根元から実測約255mmのところにインラインリモコンがある。
このリモコンはちょっと特殊な形状をしているが,最も長いところで計測すると実測サイズは約18(W)
古さをまったく感じない,クリアで艶やかなドンシャリサウンド
冒頭でお伝えしたとおり,筆者は現在,MixAmp Pro TRとA40 TRのテストを実施中だ。なので今回はその中から,ひとまず終えたテスト結果のみをお届けすることにしたい。具体的には,
- PCとMixAmp Pro TRを接続し,ヘッドフォンとしてA40 TRを用いた状態での周波数特性計測
- PCによる音楽再生試聴
- PS4で「Marvel’s Spider-Man」をプレイした試聴
の3つだ。周波数特性のテストは「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」準拠となる。
これは,Waves製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したグラフを基に4Gamer独自ツールを使ってリファレンスと測定結果の差分を取った結果だ。リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。
差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。
というわけで,結果は以下のとおり。60〜125Hzが低域の頂点,6kHz付近が高域の頂点となり,高域のほうが強いドンシャリ型だ。10kHzくらいより高い周波数で落ち込み,16kHz以上でさらに落ち込んでいく。意図的なドンシャリ設定部を除くと,中域を中心に波形はスムーズだ。
これを踏まえて音楽再生だが,MixAmp Pro TR側のイコライザをBALANCEDにした状態で,低域は高域に対して強すぎずも弱すぎもなく,高域にはツヤがある。それでいて耳に痛くはないので,キツくなりすぎないギリギリのバランスを狙ったドンシャリといったところか。音源の定位はとても分かりやすい。
最後にバーチャルサラウンドヘッドフォンを有効にしてのゲームプレイだ。今回,MixAmp Pro TR側のイコライザはASTROとBALANCEDで試している。
Dolby Laboratoriesのバーチャルサラウンド機能は,実装次第で初期反射音が大きすぎ,情報としての音を聞き取りづらくなることがあるのだが,MixAmp Pro TRとA40 TRのそれに「やり過ぎ」感はなく,とくに耳より後方全般の定位は非常によい。
一方,最新世代のバーチャルサラウンド機能に一歩譲る前方定位は,後方ほどのかっちり感はなく,若干ふわっとした印象がある。もっとも全体としては,ハードウェアの基本性能が高いこともあり,臨場感に溢れたサラウンドサウンドが得られた。また,たとえば後ろで敵が叫ぶのを「右後方から敵らしき声が聞こえた」と認識して対応ができたりする。
「2015年の製品」感を与えない,高いポテンシャルの2製品
あえて言えば,マルチチャネル出力時の前方定位がふわっとしているのが玉に瑕であるものの,より重要な後方定位はピンポイントで把握できるレベルの精度があるので,情報としてのサラウンドサウンドをPS4環境で必要としている人にも十分応えてくれるだろう。
最終的な結論はすべてのテストを終えてからお届けしたいが,MixAmp Pro TR,そしてA40 TRには,現時点でも,さすがは北米市場における定番製品とされるだけのものがあると言える。
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ASTROのA40 TR Gaming Headset+MixAmp Pro TR製品情報ページ(英語)
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