インタビュー
設立からわずか3年で,TGSには4年連続出場――中国企業の皮をかぶった日本企業「コンゾンジャパン」は,日本発のグローバル企業を目指す
そんなさなかの東京ゲームショウ(TGS)直前に,出展リストをつらつら眺めていたら「コンゾンジャパン」の文字が目に入った。「そういえば去年も出てたな」と思って調べてみたら,一昨年も,その前も,さらにそのまた前も出展していた。なんと4年連続だ。日本のスマホゲームパブリッシャがあまり出展しないTGSにおいては珍しいアクションなので,気になってコンタクトを取って話を聞いてみた。
最初は,単なるお金持ちの中国パブリッシャが日本に乗り込んでブイブイ言わせてるだけなのかと思っていたが,どうもそうではなさそうだ。真摯に,将来を見据えて,日本のカルチャーに寄り添う形で運営されているコンゾンジャパンについて,いろいろ聞いてみよう。
「コンゾン・ジャパン」公式サイト
4Gamer:
本日は,お忙しい中ありがとうございます。
コンゾンさんって,4年連続でTGSへの出展を果たしてますよね。中国系の企業で,一定規模の大きさのブースを4年連続で出展しているというのは実はほかに例がないんですが,この4年間を振り返ってみて,日本のゲームの市場やTGSに対してどういった感想をお持ちですか。
楊 彬氏(以下,楊氏):
そうなんです。実は4年連続出場なんです(笑)。
この4年間で感じたのは……そうですね,日本のゲームの規模感や流行りのジャンルなどがかなり変わったということでしょうか。
4Gamer:
御社はスマホメインですし,まずはスマホマーケットでの話ですよね。
楊氏:
ええ。昔は,ディー・エヌ・エーやグリーといった大きなモバイルゲームメーカーが中心でしたが,最近は新しいゲームメーカーやCP(コンテンツ・プロバイダ)さんがたくさん出てきて,どんどん新しいゲームがランキング上位に食い込むようになってきました。
TGSに関しては,私たちのゲームを積極的に触ってくれる人たちが増えてきているな,と感じています。
4Gamer:
いまの話とちょっと関わるんですが,この4,5年で日本のゲームマーケットはとても変わってきていると思っています。スマホゲームの勃興と,時を同じくしてコンソールマーケットがやや厳しい状況になり……。そんな中で,コンゾンジャパンのビジネスそのものに変化はありましたか。
楊氏:
2014年に法人を設立したんですが,その時は,日本マーケットのIPが中国でもすごく人気だった時代でした。
4Gamer:
そうですね。日本のIP最強の時代ですね。
楊氏:
ですので設立当初は,日本国内のIP及びゲームをライセンスして中国に展開することが中心のビジネスモデルでした。
4Gamer:
はい。その当時は,それが正解だろうと思います。
楊氏:
しかし,ご存じのように昨年から中国国内のマーケットも躍進しており、品質の高い中国産のゲームコンテンツが続々と配信されるようになりました。言うならば「日本のゲームに近いもの」がどんどん出てくるようになったわけです。
ですので,日本のゲームを中国に輸出するという事業に関しては継続しつつ,付け加えて中国のゲームを日本へ輸入するという事業も開始しました。
4Gamer:
対応の早さがさすが中国企業,という感じです(笑)。
楊氏:
はい(笑)。
去年は「三国志タクティクスデルタ」を始めとしていくつかのタイトルをリリースし,今後は,今回のTGS 2017に出展した「クレイドルクロニクル」「R.E.D」「ラストエピック」「サンゴクラッシュ」の4タイトルと,来年発表する2タイトルをリリースしようと思っています。これが今年いっぱいから来年6月までのビジョンですね。
4Gamer:
結構数ありますね……。
楊氏:
いえいえまだまだです。それ以降の第3フェーズに入ってからは,他社との共同開発にも力を入れていきます。ブースに出展している「サンゴクラッシュ」は共同開発の試作タイトルで,我々が持っているIPと日本のエンジンを使って作り上げたものです。
4Gamer:
おや,中国のIP+日本のエンジン,なんですか?
楊氏:
そうです。来年からは日本のIPをライセンスさせていただき,中国または日本のエンジンで開発した,日本向けのコンテンツを開発・配信できればと思っております。今まで当社日本法人としては日本国内だけにゲームをリリースしてきましたが,来年後半からはグローバル展開に着手していきたいとも考えています。
4Gamer:
なるほど。僕は,日本のIPを使って中国のエンジンでゲームを作った方がまだはるかに効率がいいんじゃないかと思っていたので,日本のエンジンを使う可能性があるというのはちょっと予想外でした。
楊氏:
おっしゃる通りで,そういった場合も多々あります。我々もどちらかに偏らせるつもりはなくて,2つのパターンを考えています。ただ,中国のエンジンと日本のエンジンって色々違う部分があるんですよね。
4Gamer:
運営するうえで,みたいな部分ですか?
楊氏:
まさにそうです。できることが同じだとしても,実際に運営する側からすると結構違うものだったりするので……。なので今回の「サンゴクラッシュ」に関しては,日本のエンジンを使っています。この辺りはケースバイケースだと思うので,タイトルごとにふさわしいエンジンを使って,日本向けにリリースしたいと思っています。
4Gamer:
グローバルでのリリースは?
楊氏:
もちろんグローバル展開できそうなIPがあれば,日本だけにこだわらずに中国と日本の両方でリリースしようと思っていますよ。
4Gamer:
なるほど,まぁまずは中国からである,と。
楊氏:
ええ。我々の一番の強みは,日本と中国の両方にパイプを持っていて,どちらのマーケット事情も分かっている人間がたくさんいるということですから。
4Gamer:
とはいえ中国も相当な激戦区ですよねえ。
確かにそうですね。数が多すぎることと国土が広すぎることがあって,中国で良いゲームやエンジンを探そうとなると,普通は3か月から半年くらいはかかります。今回リリースを予定しているタイトルは,100を超える中から選別を行いましたし。
4Gamer:
それ,見るだけでも結構大変なのでは……。
楊氏:
普通こんなことをすると,もちろんものすごく時間がかかってしまうんですが,我々は候補タイトルを集めて選別するのに1か月,契約に1か月で,合計で2か月しか使わないんです。そういえばこのスピード感も,我々の強みですね。
4Gamer:
昔,知り合いのデベロッパが「このゲームは中国でウケると思いますか」という内容で,中国の会社にゲームのクオリティチェックを依頼したことがあったんですよね。そうしたら3週間後くらいに,100ページぐらいの調査報告書が上がってきまして,それを見せてもらったんですけど,そりゃもう細かいところまで念入りにチェックしてあって「これはすごいな……」と素直に思いました。
楊氏:
中国は全般的にそういうところは昔からちゃんとしてますね。弊社も,このタイトルは日本に合っているかどうかというノウハウに関しては,うちのプロジェクトチームがきっちり蓄積しています。
あと先ほども申し上げましたが,中国で良質なタイトルを集めるというのは相当に時間がかかる業務なんですよ。日本の企業であれば,ホームページを見てコンタクトを取ったりするのは簡単なんですが,中国だとこれがなかなか難しいんですよね。
4Gamer:
確かに連絡先もなかったりしますし,本当に大変です……。
楊氏:
ええ(笑)。しかも国土も広いので,CPさんも北から南まで広範囲にわたっていろいろなところにあります。飛行機で片道6時間とかザラですし,そんな状況の中,1社1社に飛んでいくのはそもそも事実上不可能なんですよ。
4Gamer:
日本なら大体の場合は大きな街に集中してますしね。
楊氏:
なので,我々は現地に行かずにすべての会社とコンタクトを取っています。「我々はこういうジャンルのものが欲しいのですが,サンプルをいただけますか」と言えば,apkファイルやテストファイルを送っていただけますから。それを比較・選別しているわけです。
2か月のうち最初の1か月は,候補ゲームを集める時間より,内容のチェックに時間をかけてますね。我々がわざわざ中国へ出張に行かなくても,ゲームタイトルを集められるからこそ,今年は130以上のタイトルを候補として選別できました。
4Gamer:
最終的にピックアップしたタイトルに関しては,その後どういう動きを?
楊氏:
最終的に選んだタイトルに関しては,僕がほかのメンバーを連れて現地に出張して,「この時期に出したい。でもこのグラフィックスは修正したい」などの要望リストを使って交渉します。合意できた部分については修正して,またチェックして……。
4Gamer:
その方法を採るときって,ローンチまで結構時間がかかりませんか。
楊氏:
普通なら結構長いスパンになるであろうプロジェクトも,かなり短縮してますよ。大体のものは,数週間から1か月前後で終わらせるという感じです。
4Gamer:
いやちょっと待ってください。数週間から1か月前後って……。いくら中国の人が極めて合理的だといっても。
そこはちょっと私から補足させてください。おっしゃりたいことはよく分かります。日本人からするとまったく違う次元の話ですよね(笑)。
4Gamer:
いやホントに。「1か月前後」でさえ「え?」という感じなのに。
河村氏:
これって,ノウハウを使って短縮しているというより,本当にプロセスがギュッと凝縮されている感じなんですよね。
4Gamer:
といいますと。
河村氏:
楊はもちろん中国の人なので,中国のカルチャーを理解していますし,何より中国のビジネスをしっかり理解しています。加えて信頼も厚くて人脈もあって,そもそもビジネスの土台が強固にある状態なんですよね。
4Gamer:
なんだかベタ褒めですよ(笑)。
楊氏:
たまにはいいこと言いますね(笑)。
河村氏:
(笑) 例えばまだビジネスが始まっていない相手に対して,apkファイルやipaファイルを簡単に送っちゃうって,日本だと基本的にはあり得ないじゃないですか。日本の企業同士であれば,まずNDAを双方の法務でチェックして,それを締結して,お互いの仕様書や概要書を見て,メリット/デメリットを勘案して,会議を経てアクションが決まって,そこでようやくお互いが話し合って「どうします?」という話になるわけです。
4Gamer:
大体そこまでいくのに,早くて3か月くらいですかね(笑)。
河村氏:
ホントに(笑)。まぁでも僕もそのやり方に慣れてしまっていたわけです。
なので入社してホントにびっくりしたのがそこです。楊が電話やメール,WeChatで「興味あるんですけど」って連絡をすると,即答で「じゃあapkファイル送りますね」と返ってくるんです。NDAなんか関係なくて,すべて信頼関係で成り立っているんですよね。
4Gamer:
なんでもかんでもゆるくしろとはさすがに思いませんが,日本の企業はもうちょっとそのへん融通効いてもいいと思うんですけどね……。自分のメリットになり得る話なのに。
河村氏:
そうですねえ。商慣習なのでなかなか……。
で,我々はapkをもらってからチェック作業を始めるんですが,なにせ楊がそんな人なので,夜中にapkファイルを送りつけてきて「明日の朝までに資料を作っておいて」とか言ってきて,かなりの無茶振りです(笑)。
4Gamer:
それはまたなかなかですね(笑)。
河村氏:
でもそういったプロセスの凝縮があるからこそ,速攻でコンテンツが取れたり,商談の土台に乗れたりするのかな,というのは感じます。
4Gamer:
ChinaJoyのインタビューのときなども「インタビューの事前調査で見ておきたいので,もしあれば御社の資料をいただけますか」と連絡すると,パワポじゃなくてapkファイルが送られてくること,よくあります(笑)。
河村氏:
メディアさんに対してもそうなんですね(笑)
タイトル選定から契約までは,わずか2週間――プロデューサーはゲームを見て,経営陣は会社を見る
4Gamer:
ちなみに,日本に持って来るタイトルを決めるときって,どこを重視して決めるんですか?
河村氏:
そんなに複雑な部分は見ていないんですよ。重視してるポイントは2つです。
まず1つは「触って面白いと思えるところがある」という部分です。中国のゲームって,UIだったりキャラクターデザインであったり,そういうアートな部分においては,まだまだ日本受けするタイトルってそこまで多くはないんですよね。
4Gamer:
全体の数も異様に多いですし,確かに実際はそうかもしれませんね。
河村氏:
ただそういう部分って,修正はそこまで難しくないんです。それよりは,ゲームとしての仕様の部分だったり,遊びの部分だったり,そういうところで楽しいと思えるかどうかが重要です。TGSで出展したタイトルに関しても,それぞれに違う「ここが面白い」という部分を準備させてもらいました。
4Gamer:
もう1つは?
河村氏:
もう1つは,カルチャライズ/ローカライズがしやすい環境にあるかという点です。こちらは,いま申し上げたデザイン面の修正に関わってくる話なんですが,こういった修正は,日本に中国のゲームを持って来るときに,ほぼ必須と言ってもいい作業です。そこをどれくらい容易に修正できるのか,どれくらい対応ができるのかは,開発会社に確認します。
4Gamer:
逆に,ほとんどそのまま日本でサービスできるようなタイトルはないんでしょうか。
河村氏:
ありますよ。グラフィックスもUIもとても日本的で,翻訳して出せば終わりというタイトルもたまにはあります。でも,そういうタイトルはあまりないですしね。
ちょっと前に4Gamerさんに載ってたChinaJoyのときのインタビューに載っていたような,ああいう会社さんはちょっと特殊な例であって,日本のゲームとか日本市場のことを理解している開発会社って,意外に多くないんですよね。
4Gamer:
グラフィックスの違い以外にもいろいろあるんですが,なかなか理解されないこともありますよね。まぁそのあたりは,お互い様なんですけど。
河村氏:
そうですね。日本でウケたゲームの仕様は理解してるんですが,なぜその仕様だとウケたのかまでは理解できていないんです。
一方で,流行ったゲームがどういうUIを使っているのかとか,どういうビジュアルだったのかとか,そういう部分は話せば分かっていただける会社が多いです。そういった,もともと日本文化に興味を持っていたり,日本のゲームを常にウォッチしている会社は商談がまとまりやすい傾向にありますね。
4Gamer:
なるほど。でも,UIを変えたりグラフィックスを変えたりするということは,開発会社からしたら管理しなきゃいけないバイナリファイルが2個できるわけですよね。その点は面倒くさいと思われたりしないんですか。
河村氏:
正直なところ面倒がられます(笑)。ただ,中には「日本版の方がUIが良くなったから,これ中国版でも使いますね」みたいなことがあったり,こちらでイラストに修正を入れると「そのイラストいいですね。中国語版でも使わせてもらっていいですか」と言われたり,柔軟な考えを持っておられる開発会社も多くいます。
4Gamer:
あぁ,いいですねそれ。韓国にもその傾向が強い会社があって,日本独自のアップデートを「これこっちにもそのまま入れるわ」みたいなのはよく聞く話です。
楊氏:
ちょっと補足してもいいですか?
決めるにあたってのプラスアルファとして,私個人が私の立場から重視しているものは,我々が重視していることに対してどう協力してくれるのか,という部分です。先ほどから話に出ている修正などに対応してくれるかどうかというのは,会社の経営陣の姿勢に因るところが大きいのです。
4Gamer:
それはそうですよね。現場が決めるようなことじゃないですし。
楊氏:
会社として日本マーケットを重視するのであれば,一から協力してくれるし,そうでないならばそもそも協力体制になりません。そこに関しては,見えないけれど重要なポイントの1つですね。
つまり,プロデューサーチームはゲームそのものを見て,我々経営側は協力体制の部分を重視して見ています。これを併せ持っている会社が我々の良きパートナーになると思っています。
4Gamer:
ゲームのクオリティは当然として,協力体制についても重視するという方向性は理解できるんですが,そこまで固執するからには何かが……?
楊氏:
先ほども少し話に出しましたが,今後は日本法人が独自にグローバル展開をしていきたいと考えているからです。単なる“作品の買い付け”という関係を超えて,パートナー会社として協力して開発/配信を行っていきたいので,そこは極めて重要な部分なんですよね。
4Gamer:
なるほど。確かにそれを考えると,相手方の会社の温度感という空気感というか,そういうものはすごく大事ですね。まぁでも先ほどから聞いている限り,楊さんはそのあたりの見極めも長けているのでは?
楊氏:
中国の会社の社長とコンタクトを取るのは,ほとんど私なんですが,そこでしっかり話をして合意していれば,契約書なりすべてのプロセスにおいてうまくいくことが多いですよ。万が一トラブルがあったとしても,1度ミーティングをすればそのまま通ってしまう場合がほとんどで,あまり大きな問題になることもないですし。
4Gamer:
確かに中国は,なにごとも即断即決ですよねえ。
楊氏:
日本企業の良いところは高い信用があるというところで,一緒に仕事をしたいと思っている人が中国にはたくさんいます。逆に悪いところは,決定のプロセスがたくさんあって,なにごともスピードに欠けるという部分です。我々は,日本の信用性と中国のスピード感という,両者の良いところを併せ持った会社になりたいと考えています。
4Gamer:
連絡が忘れたころにやってくるんですよね。「あれ? これってまだ締結してないのか……」みたいな。
楊氏:
次のプロジェクトがほぼ終わるぐらいのタイミングで「前のプロジェクトの契約書に合意しました」って来るんですよね(笑)。
4Gamer:
どこでもそうなんですね……(笑)。
楊氏:
でもうちに関してはその点は早いですよ。TGSで発表した「天命伝説」では,話を始めて最後の契約に至るまでにかかった時間は2週間です。
4Gamer:
2週間……?
楊氏:
話自体は6月開始なんですが,それからほとんど何も進んでなくていったんステイの状態でした。その後8月中旬ごろから話を再開して,2週間で合意まで至ったという経緯です。
4Gamer:
うーん,2週間はさすがにちょっと早すぎでは……。
でも確かに日本と中国のハイブリッドという概念はいいですね。おっしゃる通り,中国のやり方を日本にそのまま持って来ると,いろいろなハレーションを起こす可能性もありますし。
楊氏:
それもそうですし,まず社内体制が問題ですよね。自分で言うのもなんですが,うちは「会社のローカライズ化」に関しては徹底的に取り組んでいて,いわゆる管理職はほとんど日本人です。中国人はあくまでもサポーターとしての位置づけなんです。
日本企業の方とやり取りする時も,だいたいの場合は河村を筆頭とした日本のメンバーで行っていて,たまに私がミーティングに一緒に出ても「そうですね」ってただ相槌を打ってるだけです(笑)。
河村氏:
いやいや,そんなことないでしょう! 言う時はけっこう言うじゃないですか!(笑)
楊氏:
そうだっけ?(笑) 日本の人がボスだと思われるケースも結構ありますし,そもそも実際に決めているのは,日本のメンバーなんです。由緒正しい日本の企業に比べると結構フリーダムな感じで,上下関係もすごく厳しいわけではないです。中国企業半分,日本企業半分といった,そんな感じですね。
4Gamer:
楊さん割と若く見えるので,バイトか何かに思われてたりして(笑)。
河村氏:
そこまではないでしょう(笑)。
4Gamer:
ゲームをバリバリ遊んでそうには見えないんですが,ご本人はゲーム好きなんですか?
楊氏:
実は僕の前職はグリーなんです。ちょうどグリーがピークだった2011年のタイミングで入社して,2012年には中国法人を作って展開していました。そこで,中国や台湾,香港などの地域を任せてもらって,私を含めて3人ぐらいでエリアを分けて担当してました。
4Gamer:
2011年だと,まだそこまでマーケットがブレイクしてないときですね。
楊氏:
そうですね。確かにそのときはまだ,日本のゲームが中国でサービスされることはほとんどなかったです。今の会社も,その当時からのつながりで連絡をもらっていて,それが入社したきっかけです。
4Gamer:
グリーからコンゾン?
楊氏:
いえ,その前にテンセントジャパンに1年間在籍してました。そこからコンゾンに移って,日本法人を立ち上げた感じです。
4Gamer:
若いのに結構な場数を踏んでるんですね。
楊氏:
いろんな経験をしましたねえ……。
なぜコンゾンジャパンが,中国と日本のハーフみたいなものを目指しているかというと,私が,日本,中国といろいろな国の企業に就職して――当たり前なんですが――お互いに,良いところもあれば悪いところもあると感じたからなんですよね。
4Gamer:
そうですね。どちらかだけが正義ということはないですし。
楊氏:
あと,中国の企業が日本で事業を立ち上げるときに,中国人を中心に据えてもなかなか難しいんです。やはり,日本の優秀なメンバーを集めて,信頼して権限を委譲して,任せることが大切です。プロジェクトのメンバーに対しても,基本的には“結果はこんな感じにしてほしいです”とだけ伝えて,その後の詳細に関してはほとんど彼らが自分で決めています。あまり細かく首をつっこまず,結果だけを共有していく感じですね。
4Gamer:
転職しようかな……。
河村氏:
ぜひぜひ(笑)。
4Gamer:
確かに,大きな中国の会社がかつていくつも日本に来ましたが,大体失敗してますよね。やっぱり,トップなり現場のマネジメントの方に中国の人を置いて,その人が日本の人たちと交渉すると,ブレイクしちゃうことが多いんですよね……。ちょくちょく見かけますし,そういう会社。
楊氏:
私はそれをかなりの問題だと思っています。
例えば,私が河村と話すときには,言葉だけじゃなくて表情を見て「嬉しそう」とか「悩んでいる」とか分かりますし,そういうものってとても重要だと思うんですけど,そういう情報は通訳を通すとちょっと分からなくなるじゃないですか。ヒューマンマネージメントという点から見ると,これは問題ですよね(編注:ちなみに楊社長は日本語がペラペラで,インタビューも通訳なしで行われている)。
4Gamer:
なるほど確かに。
楊氏:
なので,うちは設立してから本体の人間は誰も来ていないんです。今の管理職もすべて日本で採用したメンバーですし。
4Gamer:
本家はそれでもOKだと言ってくれてるんですか?
楊氏:
ええ。日本法人を立ち上げるときに「やり方はこちらに全部任せて下さい。そうじゃないと経営もうまくいきませんよ」と私から言いましたし,私も,そうでないならば経営する気はありませんでしたし。
4Gamer:
それを普通に承諾する本家の社長もなかなかすごいですね。
楊氏:
偉い人なんですけどかしこまった感じもないし,上下関係とかも厳しくなくて。いつも「ハロー」ってWechatで連絡していろんなことを報告してます。
4Gamer:
中国の人,ホントになんでもWechatですね……。
楊氏:
日本法人を立ち上げてほしいという話も,日本に社長が来たタイミングでご飯を食べながら決めたんですよね。社長は日本語は喋れないんですが英語が流暢ですし,外資系企業のことや海外とのコミュニケーションの問題とか,そういう部分も理解が深いです。
4Gamer:
なるほど,そのあたりはちゃんと分かっていらっしゃる方なんですね。
楊氏:
日本や中国みたいに「俺が一番上に立つんだ」という発想ではなくて,「君たちがそこまで自信があるなら任せるよ。成果さえ出してくれればそれでオッケー」というスタンスなんです。
4Gamer:
言うのは簡単ですけど,それを実行する(=実際に任せる)のは結構難しいんですけどね。
楊氏:
そうですね。でもその考えは私も引き継いでいて,例えば河村に対しても,ゲームの中身に対する口出しはほとんどしないで,目標とゴールだけを設定して……何に関しても大体そんな感じで進めています。
4Gamer:
それで回るのが一番いいですよね。
それでどうなんですか。日本人から見て,やりやすいですか?(と河村氏に)
すごくやりやすいですね。ただ,現場でしか見えていないところがあるように,経営にしか見えていないところもあると思うんですよね。経営上で大事なポイントって,どうしても現場に入ると,どんどん見えなくなってきちゃうので。
その点は,週に1回のミーティングで「ここだけはちゃんと守ってね」とか「このポイントは,経営陣から見て心配しているところだよ」とか,定期的にアラートを鳴らしてくれるので,大事なポイントをちゃんと確認する運用システムというのが出来ていると思います。
4Gamer:
こういっては失礼な表現ですけど,日本人から見ると,言うならば外資の,しかもビジネスカルチャーがだいぶ違う中国の企業なわけですよね。だけど,めちゃめちゃ居心地良さそうです……。
河村氏:
居心地はいいですよ。とっても大変ですけど,ハイ。
4Gamer:
ああ……外資ならではの。
河村氏:
ええ。アウトプットがめちゃめちゃ要求されるんです(笑)。
4Gamer:
外資系そのものが一般的にそういうところは厳しいですしね。
楊氏:
その部分に関しては,日本企業より遥かに厳しいかもしれませんね(笑)。
4Gamer:
しかし楊さんのように,いろいろな経験を積んでこられて,中国のゲームカルチャーと日本のゲームカルチャーを分かったうえで運営されているというのは珍しいパターンですよね。
楊氏:
そうですかね?
4Gamer:
お金とIPだけ持って乗り込んできて,「何でうまくいかないんだ−!」って言って帰っていくパターンもけっこう多いですから……。
楊氏:
IPだけ下さいと言う中国企業も,実際にはまだちょっと残ってますよ。ただ,昨年の末から今年にかけて中国企業も徐々に変わってきたと思います。
4Gamer:
僕は中国にはChinaJoyで行くくらいですが,毎年行くたびにムーブメントが変わっていて,「この国は本当にすごいな」と感心します。去年色々な中国の社長にインタビューして,「PS4売れると思います?」って聞いたら,みんな「売れるわけないじゃん」みたいな感じだったのが,今年は「いけるでしょ。俺らもやってるんだよPS4」と。
河村氏:
Nintendo Switchもすごいですよね。4月〜6月にかけて中国へ商談に行ったんですけど,向こうの会社内って結構Switchが置いてあるんですよね。
4Gamer:
おかしいですよね。あのタイミングでなんで皆持ってるの……? って。
河村氏:
我が家にはないのに,何でここにはあるんだ,って思ってました(笑)。本当に日本のゲームが好きな人はオフィスの中にSwitchを置いていたりとか,エンジニアの方のデスクに置いてあったりするんですよね。
4Gamer:
中国の偉い人達に「最近何やってます?」って聞くと,だいたい「ゼルダ」か「スプラトゥーン2」ですからね。しかも上海の電脳街に行ったら山積みだし……。
河村氏:
うらやましい限りですよあれ……。
人材登用にあたって重要なのは,能力よりも,ゲームへの熱意よりも,人柄――仕事に対しての責任感が最も重要
河村氏:
ところで上海に出張に行くときって,だいたいは楊と商談に回るんですが,「4日間で4社しか会わないからね」って言うんです。いつも。
楊氏:
最終的には倍くらいになるんだけどね(笑)。
河村氏:
そうなんです! いつも急に「うちのも見ませんか」みたいな連絡が来て。その連絡と共にapkファイルが来るので,僕はそのレビューをしなければいけないわけです。なので,商談が終わったらホテルに戻ってapkファイルをダウンロードしてレビュー資料をずっと書いてるんです。
4Gamer:
なかなかハードですね。
河村氏:
でもそのとき楊は寝てるわけじゃなくて,夜中までほかの会社と商談していたり,我々も知らない商談をいつの間にかセットして行ってたりして,まったく文句が言えないんです(笑)。
4Gamer:
社長自らが最前線で。
楊氏:
我々はまだベンチャーだと思ってますから。
4Gamer:
従業員って今何人くらいなんですか。
楊氏:
トータルで30人弱ぐらいですね。
4Gamer:
あぁ1番動きやすい人数ですね。ぎりぎりまだ全員のことが見えるくらいの。
そうですね。でも今後,来年や再来年に新プロジェクトもあるので,もうちょっと人数を増やさないといけないと思っています。人が増えてきたら,いま話に出たように全員のことが見えづらくなってくるので,各メンバーに権限を委譲して管理してもらうことで,もっと効率良く仕事を回さないといけませんね。
4Gamer:
責任が増えますねえ,河村さん。
河村氏:
いやあぜひ人を増やしてほしいです(笑)。
4Gamer:
責任はいいので人をください,と(笑)。
楊氏:
うちって採用基準が結構厳しいほうだと思うんですけど,能力はもちろんとしてプラスアルファでゲームに対しての熱意を見ています。あと,何より我々が大事にしているのが「人柄」ですね。
4Gamer:
大事ですよね……。
楊氏:
仕事に対して熱意があるかどうかと能力って,関係ないといえばないんですが,やっぱり多少なりとも関連性があったりするんですよね。
4Gamer:
分かります。すごく分かります。
楊氏:
1人を採用するにあたって,60〜80人くらいの履歴書を見て,その中の3〜5人くらいと面接する感じです。
4Gamer:
受かる気がしないです……。
河村氏:
あ,じゃあまずは業務委託からどうですか?(笑)
(一同笑)
4Gamer:
しかしそのあたりのプロセスもちゃんとしてるんですね。会社が小さいうちは変な人入れるとホント大変ですもんね。
楊氏:
一人一人にかかる重要度が全然違いますからね。
でもうちのメンバーは,ホントにみんなしっかり頑張ってやってくれています。別に私が指示しなくても自分で動いてくれますし,遅くまで残って仕事をしてくれていたりもします。遅くまで残ることがいいことだとは思いませんが,結局それって仕事に対しての責任感の問題ですよね。
外回りの後に直帰したっていいんですが,状況によっては会社に戻って仕事をしてたりして,メンバーの仕事に対する熱意に関しては,すごく私の自慢です。
4Gamer:
結局最後に重要なのはそこ(=責任感)ですよねえ。
楊氏:
人数の少ないうちだからできているという面もあるとは思いますが。
4Gamer:
これが40〜50人になってくると,ちょっと微妙な感じになってくるんですよ。
楊氏:
そうかもしれません。でも人が増えて会社が大きくなっても,みんなそういう感じで頑張ってもらえばいいなと思っています。
4Gamer:
ところで河村さんは前職は何を?
前職は業務委託で,とある日本企業でプランナーをやっていました。
4Gamer:
業界は長いんですか?
河村氏:
実は業界歴はそんなに長くなくて,MobageやGREEが流行り出したころまでは,他業種で仕事をしてたんです。
4Gamer:
ちなみに何をやっておられたんですか。
河村氏:
ずっと通信会社の営業でしたね。その前は不動産投資をやってて,そのまた前は自衛官でした。27,8ぐらいからプランナーをやり始めた感じでして。
4Gamer:
自衛官! 陸海空のどれですか。
河村氏:
陸ですね。
4Gamer:
あー,じゃあ塹壕掘ったり。
河村氏:
ええ。120kgぐらいの発電機を抱えたり(笑)。
4Gamer:
自衛官の人は割とゲーム好きが多い,って聞いたことありますけど,職歴としてはけっこう珍しいですよね。なんでまたプランナーになろうと思ったんですか?
河村氏:
営業の仕事をした後に,たまたま企画の事業部に転属になったんです。その時にやった企画の仕事が楽しかったので,「じゃあ企画職をしよう」と思ったんですよね。なんとなく(笑)。
4Gamer:
なんとなく(笑)。
河村氏:
ちょうど「進撃のバハムート」などがリリースされてMobageが絶頂期だったころで,企画の募集枠が多く設けられていて,運良く滑り込めたという感じですね。
4Gamer:
そこから今に至る,と。
しかしそれにしてもお二人とも,あの頃の携帯ゲームの「熱」を経験してきた人なんですね。
河村氏:
言い方はちょっとアレなんですが,あのころの「やったら売れる」みたいな熱を持った状態で,そのまま働き続けられているのは大きいです。
4Gamer:
おや,コンゾンジャパンとはそういう会社なんですか?
河村氏:
ネイティブアプリになって,どんどん技術が発展してくると,レベルデザインが得意な人はレベルデザイナーに,シナリオを書くのが得意な人はシナリオライターに……という感じで分業制になって,どんどんコンソールゲーム寄りになってきてると思うんです。どこの会社さんも。
うちはそうではなくて,Mobage&GREE時代同様に,1人にいろいろなことが求められる会社&業態ですので,やりがいは大きいですよ。
4Gamer:
やったことはないですが,356日ずっと木を描いてるのも疲れそうですしね……。
河村氏:
ずっと「お知らせ」ばかり書いてるのも,なかなか厳しいものがあると思うんです。
4Gamer:
しかし今コンソールの話が出ましたけど,コンソール系の人材を採ろうとは思わないんですか。いわゆる昔ながらの「ゲーム開発者」みたいな人。
楊氏:
今はまだ優先順位としては低いです。今後作る予定はありますが,現在の日本法人には自社の開発チームがありませんし。先ほど申し上げた通り,来年の後半あたりからそういった人材も募集する予定です。
4Gamer:
今までのインタビューでも再三触れてきたんですが,新しいゲームシステムを生み出したり,バランス調整をしたりということに関しては,日本のクリエイターはすごく長けてると思うんですよね。
そこと中国の開発力のすさまじさが合体すると一番良いんじゃないかなとずっと思っているんですけど,なかなかうまくいく例ってないですよね。まぁ中国は中国で「ちょっといろんなものが早すぎるんじゃなかろうか」という気もしますけど。
楊氏:
ここ2,3年で中国のゲームマーケットが急成長を遂げたのは,国の人口もさることながら,そういったスピード感を求めている人が経営陣に多かったという理由が大きいんじゃないでしょうか。
4Gamer:
PCゲームの時代も長くて,経験はすでに積んでましたしね。
楊氏:
そうですね。あとはこれもよく言われますが,中国のハードウェア事情も大きな理由としてあると思います。なにしろ昔中国で使われていた携帯端末はとても低スペックなもので,それに合わせてゲームを作る必要があったので,技術力が磨かれてるわけです。
4Gamer:
中国のスマホMMORPGを4G回線でずっと走らせてパケットを計ってたことがあるんですが,びっくりするくらいパケットを使わないですよね。MMOだから結構な量のデータを取ってきてるはずなのに,6時間で100MB強とか確かそれくらいで驚いたことがあります。すごく地味で,おそらくほとんどのプレイヤーには気づかれないところですけど,ああいう部分の技術は素直にすごいと思います。
河村氏:
いい意味で“模倣すること”をまったく悪く思わない文化なので,いいところはそのまま使って,そこに独自の要素をプラスすればいいじゃないという考えが当たり前に根付いているんですよね。
僕自身もそういう傾向があるんですが,とくにコンソールゲームだと独自のゲームエンジンを作ったり,仕様を新しく作りたがったりするじゃないですか。でも逆にそれは日本のいいところであって,そういった点は日本の方が得意だと思うんですよね。
4Gamer:
エポックメイクなものを作ろうとするのは,とても素敵ですよね。まぁなかなかうまくいかなくて,歯がゆさも感じますが……。
河村氏:
そうですね。中国に関してはまだそういう部分はちょっと弱くて,「このゲームが市場でウケてるんだから,そのまま出せばいいじゃない」という考えでゲームを作っていて,その中で独自性を磨いたり,言い方は悪いですが「ガワ替え」したものをリリースしたりするペースがすごく早いですよね。
4Gamer:
あれにはいつも驚かされます(笑)。元が面白いんだから面白いに決まってるんですよねこれがまた困ったことに。
河村氏:
そうなんです(笑)。AAAタイトルが出たら,どれだけ独自性を持ってその類似品を作るかを競い出す海外のコンソールゲーム開発に近いものがあるかもしれません。
4Gamer:
中国スマホゲームは,売れたゲームのガワ替えが一体いくつあるんだか……。
河村氏:
有名作品になると何個あるか分からないですよね。
4Gamer:
以前「これって○○のコピーですよね?」って聞いたら「うん,そう」ってあっさり認められて困ったことがあります(笑)。
河村氏:
「え,何が駄目なの?」って反応をされることもありますよね。
4Gamer:
絵が違うし,いいじゃん別に,って。
河村氏:
極端な話,「VIPの金額が違うから」くらい言いますからね(笑)。
中国企業ではあるが,日本法人として単独で勝負したい――中心になっているのはほとんどが日本人
4Gamer:
中国独自仕様ともいえる「VIP」。僕の大好きなシステムですね。
河村氏:
え,あれが好きなんですか? ちょっと金銭観として日本市場には合わないと思うんですけど……。
4Gamer:
ああ,もちろんイマイチ合わないと思いますよ僕も。日本人は恥ずかしくてVIPいくつって言えないですし。
河村氏:
50万元でVIP20とか言われるとちょっとね……。
4Gamer:
でもあれって。お金を払った人が払っただけのメリットを享受できて,それを他人に自慢できるという極めて合理的なシステムだと思うんですよね。とても中国的で,日本市場には向かないですが。いつも思うんですが,日本でやるなら「VIPの数字を見せないチケット」を売るべきだと思います(笑)。
河村氏:
あー……強制的に公開しているVIP情報を隠すチケットですか(笑)。
4Gamer:
ええ。「VIP10ってちょっと見せるの恥ずかしいし,チケット買ってVIP2ってことにしておこう」みたいな。
河村氏:
確かになかなか面白いかも。
4Gamer:
僕も含めてユーザーさんって,日本は意外とそういうところ気にすると思うんですよね。無課金こそ正義じゃないですが,そういう風潮もありますし,「ゲームが好きで課金してるんだけど,こんなにお金使ったのを見られるのは恥ずかしい」って。
河村氏:
「恥の文化」みたいなものですかねえ。
4Gamer:
そういうのって,無理矢理できもしないカルチャライズをするんじゃなくて,もっとイージーな手法で埋められると思うんですよね。
河村氏:
確かに中国の方と話すと,文化の違いというのはどうしても出てくるんですが,逆にそういう違いが新しい発見につながることもあります。なにより今は,向こうの人とフェアにフラットな関係でやり取りできるので本当に勉強になります。
4Gamer:
おお,それはいい関係ですね。
河村氏:
先ほども話に出ましたが,弊社にはもちろん中国人のスタッフもいて,中国の開発会社とのやり取りをやってもらったりするんですね。そのときに,向こうのマネージャー,シニアマネージャーの方とフラットな関係で意見を出し合えるんです。中国側が圧倒的に強権を持っているわけでもないし,逆に日本人の意見だけが正義とされるわけでもないという環境です。
CP側にこちらの要望を伝える時も,中国人のコーディネーターが間に入ってくれて,「その言い方だったら伝わらないから,もっとこういう資料を準備してから話さないと駄目だよ」と言ってくれたり,「向こうはこういう質問をしてくると思うけど,その時はどうするの?」と事前に質問を想定してくれたりします。
4Gamer:
いいですねえそれ。単なる通訳の枠を超えた人にたまに出会うとホントありがたい気持ちでいっぱいです。
河村氏:
ですよね。ほかの会社は分からないですが,今はすごく良い環境です。
楊氏:
ほかの企業と我々が多少違うのは,いま話題に出ましたが,間に立つコーディネーターが通訳しかできない人間ではないということです。うちは通訳プラスアルファで,ゲームディレクターレベルの知識を持っているので,一緒になって物事を進められるという体制なんですよね。
4Gamer:
それはなかなかに恵まれた環境なのでは……そうでもないのかな。私もこの手の話を他社さんとしたことないので分かりませんが。
楊氏:
日本人のディレクターは,もちろん日本の事情は詳しいですが中国の事情は分かりませんし,だいたいの場合は言葉も分からないです。やっぱり,人対人のコミュニケーションが大切なので,向こうのCPさんやエンジニア,ディレクターなどすべての人を動かすとなると,やっぱり感情をちゃんと伝える部分が重要で,それってただの通訳だとどうしてもできないんですよね。
4Gamer:
そうですね。通訳は一般的に「言葉を正確に伝えること」が仕事ですし。
楊氏:
なので「通訳」ではなくて,マネージャーが同じ立場に立って自分の言葉で伝えることで,ミスコミュニケーションを避けたり,言葉にきつい感情を乗せないようにすることができます。そうやって開発会社さんの協力を得ることはとても大事なんです。
4Gamer:
こういうインタビューなんかでもそうですね。微妙なニュアンスや感情がうまく伝わらなくて,なかなか意図どおりの返答が得られないことはよくあります。
楊氏:
前の会社で私が通訳をしていたときの話ですけど,日本側の話を中国サイドに通訳しても,中国側としては,「日本側が喋っていることを本当にそのまま伝えているのか」が分からないわけですよね。仕方のないことではありますが。でもこうなると向こうとしては,一緒にやろうという気持ちがあんまり湧いてこなくなるんですよ。どうしても。やはり通訳を介して話をするのは厳しいと,当時からすごく感じていたんですよね。
4Gamer:
確かにそういう部分はありますね。逆もまた真なり,なので,ビジネス通訳の限界なのかもしれません。「売った」「買った」の値段交渉ならまだいいですが。
楊氏:
そうですよね。
あと日本の企業が中国でビジネスをするときには,日本法人が主体となってやろうとするんですよね。そうなると現地のことがあまり分からないので,誤った判断をよくするはめになります。もちろん逆もまた然りで,中国の経営陣が日本のことを分かってないと,絶対に誤った選択をしてしまうんですよね。
4Gamer:
いままでに何度か目にしてきたことです……。
楊氏:
ですので,経営に関わるをすべて日本側でやろうということで,コンゾンジャパンを立ち上げました。自分が昔,悲惨な状況を見てきた経験を生かして(笑)。
4Gamer:
外資系の日本法人としては,隅々までローカライズされた会社の環境が作られていて,さらに日中両方のゲームカルチャーが分かっている人もいる,そんなコンゾンジャパンですが,この先,どういう立ち位置の会社にしていきたいと思っていますか。
楊氏:
なにはともあれ,日本法人単独で勝負できるような会社になりたいですね。
そのために目標が2つあります。まず1つは,しっかりと日本文化に沿いつつ,中国企業の強みを持った会社という部分を伸ばしていきたいということです。2つめは,日本を起点にしてグローバル展開できるような会社になるということです。現在我々は,経営体制もタイトルも日本マーケットに特化した会社ですが,2,3年後には世界に展開していきたいと思っています。これが日本法人としてのビジョンですね。
4Gamer:
そこに向けて今足りないものは……人材?
楊氏:
おっしゃる通りです。人材に関してはお金で買えるものではないですから。
4Gamer:
そうなんですよねえ。
楊氏:
先ほどの話ですが,仕事の能力って後からついてくるんですよね。でも人柄だけはどうにもならないことが多いので,そこに関してはとくに重視して見ています。
4Gamer:
そこ,すごく重要ですよね……。
楊氏:
正直な話,会社としてお金に関してはいくらでも調達できるんです。でも人に関しては,割と厳しく見ています。いろいろなメンバーを入れてうまくチームを分担し,それぞれの強みを生かしていきたいと思います。全部のことができる完璧な人はいませんので,自分たちの強みを生かしてやってくれればいいなと思っています。
4Gamer:
いろいろなメンバーを……ということは,けっこうな勢いで増やそうと思ってます?
楊氏:
年間で20〜30人ぐらいのペースでしょうか。将来イメージとしては,日本チームと海外チームという風に,会社の中で2つの小さなカンパニーを作ろうと思っています。CPさんとの協力体制が大事だと言い続けているのは,そういった目標があるからこそなんですよね。
4Gamer:
なるほど。
メディアである僕の口から言うのはとても失礼な話なんですが,コンゾンジャパンって,まだそこまで知名度が高い会社なわけではないと思うのです。にも関わらずTGS連続4年参加していることに気付いて,今回こうやってお話を聞かせていただいたわけですが,エイヤで乗り込んできた外資系企業とは違って,すごくちゃんと考えられてる会社だったんですね。すみません,知りませんでした……。
楊氏:
いえいえ。我々もまだ自分たちのことをベンチャーだと思っていますし,ちゃんと一歩ずつ会社の業績を積み重ねて,人材を育てていきたいですね。ここ2年間の努力で,日本での人脈もできてきましたし,ほとんどの大手企業と取り組みができる体制もできつつあります。2年前は「この会社知らないな」というところがほとんどだったんですが,今は普通の日本企業として扱っていただいていますし,そのまま商談や提携がスムーズにできる状況です。
しかし,まだまだ会社の業績や基盤も小さいので,これからしっかり業績を伸ばして規模を拡大し,日本の外資系の中でもトップクラスに入れるように一生懸命頑張っているところです。それが我々のビジョンです。
4Gamer:
いいビジョンですね。年商何十億を目指します,って言われたらちょっと悲しい気持ちになるところでした(笑)。本日はありがとうございました。
―――2017年9月22日収録
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