インタビュー
「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」開催2周年記念(?)インタビュー。うらら&モロ星人誕生のヒミツを,2人のデザイナーが振り返る
立場が変わった「スペースチャンネル5 パート2」。上に立つ存在としての苦労が重なる
4Gamer:
「スペースチャンネル5 パート2」のお話も聞かせてください。パート2では宮部さんがディレクターを,茂呂さんがアートディレクターをそれぞれ担当されたそうですが,開発体制も大きく変わったんですか?
茂呂氏:
パート2はフルポリゴンになって,開発スタッフも大所帯になって,デザイナーも増えました。ただそのぶん,前作で湯田さんが構築した世界観やコンセプトを新しいメンバーに伝えるのが難しかったですね。
4Gamer:
明文化されているものだけではなく,皆さんが感覚でつかんでいたものも多かったでしょうし。
茂呂氏:
はい。SC5のシリーズはこの先も続くだろうと思っていたこともあって,私自身はあえてあまりデザイン作業をせず,デザインができる若い人を育てるために,彼らに任せることにしたんです。デザインコンセプトの説明をしましたが,なかなか納得できるデザインが上がってこなくて。それはそうなんですよね,育てることが目的だったので,ほとんどが経験の浅いデザイナーが多かったんですから。
でも,みんなでデザインの勉強会などを開いたりして,何か月か経って徐々に理解してくれて,いいものができあがっていくのが嬉しかったんですよ。パインもそのメンバーの中の宮内理恵のデザインですし,最終面なんかもデザインチームのメンバーからアイデアが出てきて,「みんな最高じゃない!」なんて言いながら完成度を高めていけたんです。
宮部氏:
パート2のパージは茂呂のデザインだよね。
茂呂氏:
そうです。パージの顔は,宮部ちゃんほどではないですけど,かなり緻密に時間をかけて格好良く作りましたね。あと踊り団のロボも私のデザインで,前作のモロ星人と同じ立ち位置の新キャラクターなので,モロ星人に負けないようにたくさんのバリエーションを作りました。その中からどれを採用するかでけっこう時間がかかってしまい,「茂呂さん,いい加減にしてください」と言われた気がします(笑)。
4Gamer:
宮部さんはディレクターに就任されたそうで,デザインからは離れた立場となったんですね?
宮部氏:
ディレクターといいつつ,吉永さんにかなり助けられながらなんとか務められた感じでした。水口さんからも「ディレクターは一つも作業しないぐらいがいい」と言われていたんですが,それが理解できなくて,進捗状況を伝えるときに「何もやっていない」というのが不安で,自分からデザインの仕事を入れたりしていましたね。パート2のうららの衣装は私がデザインしましたし。
4Gamer:
何か苦労したことはありましたか?
宮部氏:
続編ならではのプレッシャーはありました。水口さん,吉永さん,私の3人で毎日集まって,「映画の続編のキャッチコピーに何て書いてあるか」みたいな,パート2の概念やアイデアの出し方について話し合っていましたから。
吉永氏:
それもまた当時の環境のおかげで,みんな毎日夜中まで会社で一緒に仕事をしていて,日常的に話す機会も多かったですからね。あとパート2の前に,なんかアメリカにミュージカルを見に行った気がする。
茂呂氏:
ニューヨークに「STOMP」を見に行ったんですよ。水口さんの「見聞を広げろ」っていう発案で。吉永さんとブロードウェイのおもちゃのお店とかも回ったりして,そこで見たものも参考にしたことを覚えてます。前作のとき,E3に行かせてもらったのもすごく印象深くて,仕事で海外に行けたのはSC5だけだったんですよね。
4Gamer:
やはりパート2でも,水口さんが作った環境ならではの影響が作品に反映された,と。
吉永氏:
それはあったと思います。スタッフも増えましたし,ゲームも最初からすべて決まった状態から作っていくことができましたからね。前作はスケジュールの関係上,泣く泣くステージを一つカットしていたので,パート2ではその反省を踏まえて,仕様も納期もしっかり決めていましたから。当然のことなんですが(笑)。
4Gamer:
(笑)。前作はボツにしたシーンがあったんですね。
吉永氏:
3面と4面の間だったかな。大きなビルをロボットが登っていって戦うというシーンでした。
4Gamer:
そのシーンをパート2で復活させなかったんですか?
茂呂氏:
パート2では使ってないですね。再利用することは意識していなかったですし,無理やり詰め込む意味もないですし……。
4Gamer:
パート2の当時は,すでにドリームキャストの撤退が決定していて,PlayStation 2でも発売されました。
茂呂氏:
PS2で作るのは大変でした。ドリームキャストと比べると使えるテクスチャーの容量が少なくて,いかに少ないテクスチャーでドリームキャスト版と同じ見た目にするかで苦労しました。
4Gamer:
茂呂さんもまた,前作のデザイナーとしての立場と,パート2でのアートディレクターとしての立場で,開発への関わり方が大きく変化しましたよね。
茂呂氏:
そうですね。前作ではアートディレクターの宮部ちゃんの下で描いていたのが,今度は私が宮部ちゃんの立場になって,中間管理職として20人以上のデザイナーをまとめる必要がありました。
最初のうちは宮部ちゃんに,アートディレクターとしての判断をどうすればいいかのか尋ねてましたけど,そのうち「ちゃんと自分で決めなきゃダメだよ」みたいなことを言われて,確かにそのとおりだと反省して。
宮部氏:
茂呂さんは最初からの開発メンバーでしたからね。意思の疎通もできているので,「がんばって」って言うしかないんですよ。
4Gamer:
その苦労の甲斐もあって,発売後のユーザーの反応は良かったのでは?
宮部氏:
実はパート2が発売されたタイミングで,いろいろな事情があって私は職場を離れることになったんです。故郷の長野に向かう特急あずさの中で,吉永さんから携帯に電話があって,「ファミ通」誌面のレビューで「プラチナ殿堂入りしたぞ! (前作の)ゴールドじゃなくてプラチナだぞ!」って言われて,涙が出ましたね。普段は冷静な吉永さんが興奮して電話してきたのが印象的でした。
4Gamer:
いい話! パート2は旧ハードではありますが,PlayStation 3やXbox 360などに移植され,現在も配信されています。
吉永氏:
パート2の評判が高かったことで,いろんな展開があったんですよ。携帯電話アプリとか,タイピングソフトなんかの企画もありましたね。
4Gamer:
セガのキャラクターとしても,白いコスチュームのうららは定着しましたよね。
ファンの応援が次へとつながる。その結果が「スペースチャンネル5 VR あらかた☆ダンシングショー」
4Gamer:
SC5パート2の発売から時は流れて,宮部さんはフリーのアーティストに,茂呂さんは現在セガサミーホールディングスに異動されて,デザインとは別の仕事をされているわけですが,20年目の2020年に新作SC5 VRが発売されることになったとき,どんな感想を持ちましたか?
SC5の世界観は古くならないものだと思っていましたし,ゲームシステムも完成していたので,その延長線上の新作はいつ出てもおかしくないと,ずっと思っていたんです。
茂呂氏:
吉永さんがついにVRの新作を作ったのか! と思いましたね。確かアニメの「セガ ハード・ガールズ」が放映されたときに,監督にSC5のVRを見せてもらったことがあって,それが実現したんだって思いました。
吉永氏:
話が飛びすぎなんだよ(笑)。セハガのアニメを作ったときに,監督が本編で使うSC5のフィールドを模したCGのモデリングを作っていて,打ち上げのときにそれをVR映像にしたデモンストレーションを見せてくれたんです。
4Gamer:
もしかして,それが後のKDDIのVRデモやSC5 VRになったりしたんですか?
吉永氏:
いえ,それはまったく別の話ですね。KDDI以降の案件は,グランディングさんが主導ですので(笑)。
4Gamer:
宮部さんはSC5 VRの新キャラクターのデザインを担当されましたが,いかがでした?
宮部氏:
デザインに関しては,ディレクターの堀田さん(堀田 昇氏,SC5 VRディレクター)から個人的に依頼を受けました。最初は本編ではなく,イベント用にSC5のVRコンテンツを作るから,プレイヤーのアバターとなるキャラクターのイラストを1枚描いてほしいって比較的軽い感じで依頼されて。それを送ったら比較的すぐにモデリングされた3DCGが出来上がってきたんです。SC5の開発当初のように,イラストを出してからより完成度を上げていくような作業工程を予想していたので,ちょっと面食らってしまいました。
その後,よりブラッシュアップした形で,SC5 VRの本編にも出していただいたので,当初の予想より活躍の幅が広がりましたね。
吉永氏:
完成までのスピード感については,イベント用というのもあったと思うんですよね。かつての大らかな作り方とはまったく違いますから。
とはいえ,依頼したキャラクターの完成度に関しては現場でも「さすが」という声は上がっていました。
4Gamer:
イベントで作られたキャラクターが,そのままSC5 VRに登場することになったんですね。
宮部氏:
そうですね。プレイヤーキャラはSC5 VRのプレイヤーアバターの双子として登場しています。あとは新キャラとして宇宙海賊の「ジャガーズ」がいまして,こちらは堀田さんに見ていてただいて,比較的時間をかけて作りました。堀田さんはゲーム開発に対してとても理路整然とした方で,しかも元はデザイナー出身なので,このキャラは「もう少し肌を出してほしい」とか具体的な指示をくださって,デザイナーとしてはとてもやりやすかったです。
4Gamer:
ベツモロはどなたがデザインされたんでしょう?
宮部氏:
ベツモロは堀田さんのデザインだったと思います。モロ星人はすでに完成されているデザインなので,あそこまで素敵なデザインになったことに驚きました。たとえ続編でも,同じ開発スタッフにこだわらずとも,新しいスタッフに任せてみることで,ちゃんと世界が広がることを実感できました。
吉永氏:
SC5 VRでは,モロ星人が初めて人の言葉でしゃべって歌うので,その見た目は明らかに違うようにしたくて,カラフルではないモノトーンな方向性で,それなら白がいいじゃないかとか,うっすら光るとか,VRならではの色使いになったんです。
4Gamer:
違和感なく新しいものになっていることに驚きました。
さて,お時間のあるうちに,今回販売がスタートするグッズについて,ひと言いただきたいのですが……。
「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル」オリジナルTシャツ 価格:4583円(税込) |
「スペースチャンネル5」ロゴ入りビニールバッグ 価格:2000円(税込) |
宮部氏:
(アクリルスタンドを見て)やっぱりこのレモンイエローのうららのコスチュームは素晴らしいですね。この色は吉永さんの指定なんですよね。
茂呂氏:
SC5の頃とはグッズの作り方も変わりましたよね。当時もいろいろと作りましたけど,今はより身近で実際に使えるものなんかもあって,内容も多様化していて。
宮部氏:
ゲームのグッズって,ファンの方が作品の思い出と結びつけて大切にしてくださるのがとても素敵なことだと思っているんです。私がフィギュアを作っているのも,そういう気持ちが強くあるからなんですよね。
吉永氏:
自分でデザインしたキャラクターを,ライセンスアウトを受けて作るというのは,どんな気分なの?
宮部氏:
こういう契約の仕方でフィギュアを自主製作している人ってあまりいないですよね。イベントで手売りしているんですが,うららを知っている人が買いに来てくれて,私がデザイナーだと聞いて驚く方もいらっしゃって,我ながら複雑なことをやっていると思います(笑)。
幸い,吉永さんには窓口になってもらっただけでなく,造形の製作や売り方に関してのアドバイスもしていただけたので,これからも困ったときは吉永さんを頼りつつ(笑),皆さんに喜んでいただけるものを作っていきたいですね。
「スペース★ソフビ団」ネットストア
4Gamer:
長くなりましたが,最後にお二人にとって「スペースチャンネル5」がどんな存在か,そして作品を好きでいてくれるファンに向けて一言いただければと思います。
宮部氏:
私の場合,今の立場だと「親戚」のような存在でしょうか。遠くからその活躍を見られればすごく嬉しいし,何かあったらすぐ駆けつけます。これからももし,何かお手伝いできるようなことがあれば,声をかけていただければ嬉しいです。
ファンの方には「ありがとうございます」という言葉しかありませんね。セガを離れた私はファンの一人でもあって,同じファン同士これからも一緒にSC5を盛り上げていきたいです。ファンの方からの声を,吉永さんや茂呂さんに届けることもある……かもしれないので,機会があればお話しましょう。
茂呂氏:
初めてコンセプトアートからキャラクターデザインまでをやらせていただいて,とても思い入れのあるタイトルです。こういうグッズを見ると,私も当時グッズを作っていた側として,また作ってみたいなと思いますし,お手伝いできることがあれば,宮部ちゃん同様,呼んでほしいと思います。
SC5はパート1からファンだという方が今もたくさんいて,今や二世代で好きでいてくれる方がいるのも感無量です。こんなにも長く愛され続けることはすごく嬉しいですね。ファンの皆さんの応援が,SC5 VRみたいに次につながっていくと思うので,SC5の楽しさとか可愛らしさとかをSNSなどで広めてもらえればと思います。私もときどき拝見して,“いいね”することもあります(笑)。
4Gamer:
突然新しい展開があっても不思議じゃなさそうなSC5ですもんね。これからも皆さんのご活躍に期待しています。ありがとうございました。
「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル」グッズ販売ページ
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