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「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」開催2周年記念(?)インタビュー。うらら&モロ星人誕生のヒミツを,2人のデザイナーが振り返る
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印刷2022/11/11 12:00

インタビュー

「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」開催2周年記念(?)インタビュー。うらら&モロ星人誕生のヒミツを,2人のデザイナーが振り返る

 

とにかく難航した主人公うららのデザイン。開発終了直前まで顔が存在しなかった衝撃


4Gamer:
 キャラクターのデザインはどのように進められたんですか? うららは難航したというお話を当時の記事などで拝見していましたが……。

宮部氏:
 そうなんですよね。実はモロ星人は,大鳥居にいた頃にもう出来上がっていたぐらい安産だったんですが,一方で主人公はずーっとできなくて……。

茂呂氏:
 主人公はデザインのコンペがあったんです。私と宮部ちゃんで描いた候補を壁に貼って,スタッフで投票する形で。私のデザインはけっこうベタな感じだったんですけど,宮部ちゃんのデザインがこのときから優れていて,見ただけで「負けた」と思いました。

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宮部氏:
 覚えてないな……。湯田さんから主人公について最初に言われたのは,「『鉄腕アトム』のように,シルエットだけでわかるキャラクターにしてくれ」ということでした。そのときに決めたのが,(イラストを見せて)1960年代のSF映画とかに出てくる,女性が頭頂を高くして先端をカールさせている髪型をアレンジして,先端を二つに分けたこの感じなんです。当時は「ツーテール」とか「ツインテール」という言葉がなくて,「頭の高い位置で二つ結いにしている」みたいに説明していました。

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4Gamer:
 この時点で,うららの雰囲気はかなり固まっているような気がするんですが……。

宮部氏:
 髪型に関してはこの段階から手応えはありました。ゲームのキャラクターではあまり見たことのない髪型でしたし,湯田さんの条件もクリアしていましたから。
 でもここから,今皆さんがご存じのうららに至るまでがとにかく長い道のりだったんです。最後の最後まで顔が決まらなかったんですよね……。

4Gamer:
 顔ですか? イラストでは極端に違う印象はないですが……。

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宮部氏:
 既に体のモデルも完成していて,顔だけがない状態でした。もうイラストで間に合う段階ではなかったので,自分でCGのテクスチャーを描いてモデルに貼って確認していたんです。大鳥居から渋谷に移転してからも顔ができていなくて,ついには岡崎にも「宮部さん,いい加減にしてください」と怒られるぐらいで……。

4Gamer:
 そこから完成にいたるポイントはどこだったんでしょう?

宮部氏:
 何がきっかけだったのか,今も考えることはあるんですが,これという決め手があったのではなく,半年以上もかけて顔のパーツの絵や形や位置を本当にちょっとずつ調整をした最適解が,今のうららの顔としか言いようがないんです。

茂呂氏:
 うららの顔を完成させるにあたって,メイクなんかも研究していましたからね。マユ毛の太さとか,アイシャドウの色とか,唇の厚みとか,とにかく細かく調整しながら苦労していたのを横で見ていました。

宮部氏:
 必死すぎてあまり記憶がないんです(笑)。とにかく良くなるまで作り続けていて,「これは可愛いんじゃないか」と直感で感じたときに,すかさず骨を入れてモーションを付けたらバチッとはまった瞬間があって。そこに至るまでのポイントが何だったのかは,正直分からないんです。作っていたときは,本当に奇跡でも起こらないかと思っていたぐらいで。

4Gamer:
 その奇跡が起こったんですね。

宮部氏:
 確かに奇跡だったかもしれませんね。とにかく周りの皆さんに怒られながら,待っていただきながら……。こちらも終わらないんじゃないかと思いながら作っていましたので……。

4Gamer:
 完成したうららについて,スタッフの皆さんの反応はいかがでしたか?

宮部氏:
 良かったと思うんですが,これもまたあんまり記憶がなくて(笑)。

4Gamer:
 (笑)。吉永さんはどうです?

吉永氏:
 デザインに関してはキャラクターも含め,湯田さんとデザイナーのみんなに任せていたので,私自身はあまり心配していなくて,完成したときも「なるほど」ぐらいの簡単な返しでした(笑)。悩んでいることは知っていたんですが,自分自身もそれどころではない状態でしたから。ゲームデザイン作業自体は顔がなくても進められますからね。

茂呂氏:
 最後は宮部ちゃんのこだわりだけだったと思いますね。ゴールは誰にも見えていなくて,「宮部ちゃんが納得いく」というのがゴールでしたから。

4Gamer:
 そこまでこだわり抜いた仕事ができる環境というのも素晴らしいですね。

宮部氏:
 それは本当に,周りの皆さんのおかげでもありました。プログラマーの中西さん(中西 仁氏)が,SC5をプログラム上で簡単にテストプレイできる,通称「スーパー仁くん」(笑)というツールを初期の段階で作ってくれていたのも助かったんですよね。

吉永氏:
 SC5の映像がない状態でゲームプレイができて,曲のテンポをコントロールできて,Excelファイルで入力を管理できるというツールですね。それがあったので,ゲーム本体はデザインと切り離して進めることができて,宮部が悩んでいる間も開発は進められられたんです。

茂呂氏:
 我々のデザインの作業も進んでいましたしね。

4Gamer:
 茂呂さんは,モロ星人以外にどんなものをデザインされていたんですか?

茂呂氏:
 私はモデリングチームのリーダーもやっていたんです。宮部ちゃんが並行してデザインしていた一般人のキャラクターを,チームでどんどんモデリングしていって。

宮部氏:
 でも「スペースおばあちゃん」とかは茂呂が作ったんだよね。

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茂呂氏:
 そうそう(笑)。あと私としては,スペースマイケル局長が一番大きな仕事だったかもしれません!

4Gamer:
 マイケル局長は茂呂さんのデザインなんですか!?

茂呂氏:
 モデリングチームリーダーの特権を使って,デザインさせていただきました(笑)。

4Gamer:
 マイケル局長の衣装とか,迷いませんでした? 当時のPVのコスチュームとか,印象がけっこう違いましたよね。

茂呂氏:
 どういう雰囲気にするかは,開発のみんなとじっくり相談しましたね。最終的にPVをリスペクトした,あの全身シルバーの衣装に決まったんです。

4Gamer:
 ちなみに,うらら以外の主なキャラクターはどなたが担当されたんです?

宮部氏:
 うららとプリンは私です。あとジャガーの顔。

4Gamer:
 顔と体が別担当なんですか!?

宮部氏:
 ジャガーに関しては,体のデザインは岡崎で,顔は私ですね。岡崎が「顔は作れないよ」という話だったので。

4Gamer:
 画面には出てこないヒューズも設定画がありましたよね。

宮部氏:
 あれは私かな? あんまり覚えてませんけど,少し前にあれを公式Twitterで披露したら,さっそくファンアートが作られていて驚いたんですよね。
 (ファイルの中からうららの顔CGを発見して)これが完成形のうららです。

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4Gamer:
 おお,うららだ!

宮部氏:
 実はこの顔に貼ってるテクスチャーにも秘密があって,私が描いた1枚画をペタッと貼っただけなんです。それにより左右が非対称で,目の形とか微妙に違うんですが,そのほうが人間らしく見えるんです。
 これは裏話なんですが「スペースチャンネル5VR」を作っているときに,オカミネさん(岡村峰子氏,SC5アシスタントプロデューサー,SC5 VRディレクター)から,「うららの見た目がどうしても可愛くならない」と言われて,実は顔が左右対称ではないというアドバイスをしたんですよね。

4Gamer:
 意外なテクニックですね。素人考えでは,左右対称なほうが整った顔になるような気もするんですが……。

宮部氏:
 私自身も意図したわけではなく,あくまで結果論なんですが,アナログっぽさというか,人間味というか,それが3Dキャラクターの魅力的な顔の作りというものにつながったのではないかと思います。

茂呂氏:
 一枚画といってもそれはテクスチャーのことなので,まつ毛とか口とかは別のポリゴンで作って動かしてるんですが,このまつ毛の角度とかも左右で違っていたりして,そのあたりにも宮部ちゃんのこだわりが入ってますよね。

宮部氏:
 すべて偶然の産物なので,もしその偶然が起こらなかったら一体どうなっていたのか,想像すると怖いですね。

4Gamer:
 どこかで妥協したか,あきらめてしまったか。

宮部氏:
 そうかもしれませんね。完成して本当によかったです。

4Gamer:
 それが完成したのが,うららの誕生日である,5月30日なんですね。

宮部氏:
 1999年の5月30日ですね。確か夜中だったんですが,仮眠していた水口さんもたたき起こして(笑),そのとき残っていたメンバーに見せて「おおーっ,いいじゃん!」て言われたんです。できたのが嬉しくて,印刷してオフィスのそこら中に貼りましたからね(笑)。朝やってきた湯田さんがそれを見て,「おめでとう!」と握手をしてくれて,本当に安堵したことを覚えています。

4Gamer:
 とてもいい話なんですが,1999年って確かその年末にゲームが発売ですよね!?

吉永氏:
 とんでもないですよね。先日古いメールの整理をしていたら,水口さんに送ったマスターアップ報告のメールが出てきて,その日付が1999年の11月20日だったんですよ。ゲームの発売が12月16日なので,本当にとんでもないスケジュールでした。

4Gamer:
 物理メディアしかない当時でも,そのタイミングのマスターアップで予定通り発売できたんですか。

吉永氏:
 あの頃のソフトは自社生産だったからだと思うんです(笑)。その恩恵を受けたのかもしれません。

4Gamer:
 ところで,モロ星人のデザインに関するエピソードはありませんか?

茂呂氏:
 ほぼ最初の頃にデザインができた時点で,みんなが仮称として(茂呂が作ったから)「モロ星人」と呼んでいたんです。後にあらためて会議で名称を決めようとなったときに,「モロ星人じゃないの?」「モロ星人でいいんじゃね?」みたいな感じでそのまま決まって,「ヨシッ!」って(笑)。
 その流れでボスキャラもデザインしていて,「ココ・タピオカ」とか「モロリーナ」とかも,モロ星人のバリエーション的なイメージで,動きなんかもイメージして描いていました。

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画像集 No.024のサムネイル画像 / 「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」開催2周年記念(?)インタビュー。うらら&モロ星人誕生のヒミツを,2人のデザイナーが振り返る
4Gamer:
 茂呂さんのデザイン画とゲーム画面はほとんど変わらないですね。

茂呂氏:
 手を動かしていくとイメージが広がってできていく感じで,とにかくずっとそれが楽しくて,あまり苦労をした記憶がないんです。

宮部氏:
 天才肌ですよね。モロ星人が完成してから,茂呂さんには安心してデザインを任せることができて。すごくセンスを感じたんです。一緒にデザインに入ってもらって良かったと,あらためて思いました。

4Gamer:
 発売後の手応えはいかがでした?

宮部氏:
 完成してとにかくホッとしたというのが正直なところでしたね。

茂呂氏:
 やりきった,という雰囲気ではありました。

4Gamer:
 我々メディアとしては,発売後のプロモーションがとにかく印象に残っているんですが……。

茂呂氏:
 そうですね。渋谷ジャックとか,Qフロントの大画面でSC5をプレイするとか,すごく楽しいプロモーションをやってくれて。こんな楽しいゲームを一人でも多くのプレイヤーに遊んでもらいたいという気持ちがあふれていて,本当に嬉しかったんです。

宮部氏:
 オカミネさんのプロモーションの企画力は本当にすごかったと,あらためて思いますね。渋谷の文化をうまく取り入れていましたし。朝日新聞の号外が出るとか,ちょっと考えられないですよね。

吉永氏:
 漫画家とかミュージシャンとか,今で言うインフルエンサーのような方々から,SC5を本当に楽しいと言っていただくことがあって,ゲーム業界周辺とはまた違った方向からの反応が来ていたのがとても新鮮でした。
 
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