プレイレポート
「ウィザーズ シンフォニー」プレイレポート。コメディ要素満載のローファンタジーで描かれる本格ダンジョンRPG
「ウィザーズ シンフォニー」公式サイト
過去シリーズと同じ舞台で描かれる剣と魔法のファンタジー
「ウィザーズ シンフォニー」は,1995年に発売された「ウィザーズハーモニー」を原点とする育成シミュレーション「ウィザーズ」シリーズの最新作だ。世界観や設定は踏襲しているものの,ゲームジャンルを3DダンジョンRPGに変更。シリーズとは独立した物語が展開されるので,本作から遊ぶ人でも違和感なく楽しめる。もちろん,シリーズのファンが楽しめる小ネタもふんだんに盛り込まれている。ストーリーに登場する冒険者養成学校「スキル&ウィズダム」の名前や,旧作品のキャラクターと同じ名字を持つ仲間など,いろいろなところでニヤリとできるだろう。
舞台となるのは,科学よりも魔法が発達した世界。かつて魔法王国「グランスカ」が栄華を極めたこの地は今,空前の遺跡探索ブームに沸いており,冒険をサポートする「コンダクター」と呼ばれる商売が登場している。本作の主人公・アルトも,そんなコンダクターの1人。駆け出しのディフェンダーであるスピカとスペルキャスターのメラクとともに,小さなコンダクター会社「エム・ツアーズ」を営んでいる。
小さな仕事をコツコツこなす3人だったが,ひょんなことから古代技術で作られた美少女ゴーレムのアステルと出会い,グランスカを巡る冒険に乗り出すことになって,売れないアイドルのニナや,巨額の借金を背負った錬金術士のフィーなど個性豊かな人々が集い,物語は賑々しく展開していく。コメディ要素を多く含んだローファンタジーものであり,軽いノリが好きな人にはとくに刺さる物語と言えるだろう。
「オートマッピング」「自動移動」など便利な機能で遊びやすく
本作のジャンル名は「ドラマチックダンジョンRPG」。3D迷路になったダンジョンを冒険しつつ,そこに巣くうモンスターを,ターン制のコマンド選択式バトルで倒していく。ジャンル自体は少し懐かしいものだが,「オートマッピング」「セーフエリア」「自動移動」といった便利機能によって現代風に遊びやすくなっている。
3Dダンジョンといえば方眼紙に地図を付けるマッピングが不可欠だが,歩いた所を自動で地図にしてくれるのが「オートマッピング」。「鍵の掛かったドア」「ワープゾーン」といった仕掛けも自動で書き込んでくれるため,くまなく歩き回ってマップを作っていくのが楽しい。
本作のモンスターは手強いため,新しいフロアへ行ったらまず「セーフエリア」を探したい。セーフエリアは各フロアに1か所あり,データをセーブできるほか,ダンジョンに入る際にその地点からリスタート可能となる。また,パーティが危険に陥った場合にもセーフエリアから街に脱出できるため,探索の拠点として幅広く活用できる。
既に踏破した場所へなら「自動移動」も可能だ。これは,目的地となる座標へオートで移動してくれる機能で,経路を設定する必要が無く,目的地だけを指定すればいい。一方通行の壁くらいの簡単なトラップなら自動で認識してくれるため,本来ならマップとにらめっこしつつコースを決めなければならないような状況でも,ボタン1つで望みの場所まで移動してくれる。ダンジョンを脱出する際や,探索していないエリアの直前まで移動したい時などの手間が省けるので,なかなかに便利な機能だ。
なお,あくまでも最短距離を移動するだけで,後述する強敵の「エリートモンスター」や,ダメージを受けるマスを避けるような行動はしてくれないので,その点には注意したい。
マッピングを進めつつセーフエリアを探し,探索していない場所の直前まで自動移動する……というように便利機能を組み合わせれば,スムーズにダンジョン探索を進められるだろう。
絆がバトルを加速させる。「エンハンスリンク」「チェインアシスト」で敵に打ち勝つ
本作のバトルは難度がやや高めだが,キャラクターたちの「固有能力」と,絆が発動させる「エンハンスリンク」「チェインアシスト」で乗り切っていこう。
エム・ツアーズのメンバーはいずれも個性豊かな人ばかり。アルト以外の全員がそれぞれに特殊な「固有能力」を持っており,立ち回りや戦略に変化を与えてくれる(キャラクターそれぞれに特殊システムが備わっているところなどは,同社の格闘ゲームに少し似通ったところを感じられる)。盗賊のグレイは,通常攻撃を避けた際に反撃する「ドッジアサルト」の固有能力を持つ。敵の攻撃を集中させる「アイロニックエール」のスキルと組み合わせれば,味方を守りつつ反撃することが可能だ。
アイドルのニナは強力な効果を発揮する歌の固有能力を持つが,「アイドルパワー」が溜まるまでは使用できない。アイドルパワーは通常攻撃やスキルで加算されていくため,戦闘の中盤から本領を発揮するキャラクターとなっている。このように固有能力はゲーム的に面白いものばかりで,バトルにいいアクセントを加えてくれる。作戦が上手く決まった時は快哉を叫びたくなるだろう。
「エンハンスリンク」は戦闘中にパーティメンバーが自動で連携するシステム。キャラクターアイコンが鎖のような記号で結び付けられている状態でキャラクターが行動した際,仲間が追加攻撃する「追撃」,敵の攻撃を無効化する「かばう」,状態異常を回復する「フォロー」のいずれかが一定確率で発動する。
複数のキャラクターがリンクしていると,アルトが攻撃した際にメラクが追撃を加え,さらにメラクを狙った敵からの攻撃をスピカがカットし……というような連携が発動することがある。戦いが有利になるのはもちろん,キャラクターが躍動する戦闘シーンを想像できて面白いシステムだ。
全員がリンクすると「リンクバースト」が発動可能に。敵全体に大ダメージを与えられるが,エンハンスリンクは解かれてしまう。リンクバーストを発動して,再度のエンハンスリンクを狙うか,連携を重視してあえてリンクバーストを温存するかは戦略次第だ。
本作では5人が戦闘に参加し,残りのキャラクターは「控えメンバー」として待機している。この控えメンバーが連携攻撃するシステムが「チェインアシスト」で,言うなれば控えとのエンハンスリンクだ。また,チェインアシストは一定確率で「スペシャルアシスト」が発動し,体力回復や敵全体への攻撃といった特殊な連携を仕掛けてくれることもある。戦闘要員5人の攻撃にエンハンスリンク,さらにチェインアシストが加わり,敵をフルボッコにするようなことも起こってなかなかに爽快だ。
エンハンスリンクとチェインアシストの発動率は「好感度」によって変化する。「ウィザーズ」シリーズでは,キャラクターごとに仲間との好感度が設定されているが,本作では好感度が高いキャラクターに対してエンハンスリンクとチェインアシストが発動しやすくなるという効果がある。
好感度を上げるには,バトルに一緒に参加させたり,パーティで隣同士に配置するといい。最初は好感度が低い新入りも,一緒に戦っていくうちに徐々に連携の発動率が上がっていくため,思い入れもひとしお。ただし,HPが尽きて戦闘不能になったまま復活させないと,好感度が下がってしまうので注意したい。
戦闘を有利に進められるシステムが多く搭載されている本作だが,それゆえか,敵もなかなかに強力だ。モンスターにはそれぞれ「弱点」と「耐性」があり,耐性を持つタイプや属性の攻撃を当てても,ろくにダメージを与えられない。これらのデータは戦闘中に参照可能なので,適切に弱点を突いていきたい……のだが,敵の中にはやたらといろいろな攻撃に耐性を持つモンスターもいて一筋縄ではいかない。とくに強力な「エリートモンスター」は,強い上にダンジョン内を徘徊しているため,油断していると思わぬ方向から襲われたりすることもあり,非常に厄介だ。
本作の戦闘は一度不利になると立て直すのが困難だ。戦闘中のメンバーは控えと交代できるが,これも制限付き。倒れた仲間は控えに引っ込めて,常にフレッシュなメンバーで攻撃……といきたいが,アルトと戦闘不能のメンバーは交代できない。つまりは誰かが倒れるたびに戦闘に参加できる人数が減っていくわけで,状況は加速度的に悪化していく。蘇生するアイテムやスキルはあるものの,回復した途端にまた戦闘不能にされるようなことも当たり前のように起きてしまう。
戦闘が厳しいと感じた場合は,キャラクター育成を楽しみたい。セーフエリアを拠点とし,ダンジョン内をうろついてレベル上げを行い,手に入れた素材で装備を強化しよう。ボコられたボスやエリートモンスターに逆襲できたときにはRPGの醍醐味とも言える達成感を得られるはずだ。
コンダクターの仕事が冒険にメリハリを付ける
アルトたちは遺跡を案内するコンダクターだ。グランスカを巡る冒険と並行して,コンダクターの仕事もこなしていかなければならないのだが,これが気分転換にちょうどいい。コンダクターの仕事は,ダンジョンの特定地点へ依頼人を連れて行くものと,ビジュアルノベル風のサイドストーリーの2つに大別でき,とくに後者は読むだけでお金が稼げるので見逃さないようにしたい。
話の内容も,コンダクターとしての職業倫理が絡むちょっとシリアスなものから,経営不振に悩むメンバーが珍サービスを考案するものなどさまざま。コンダクターという設定が上手く物語に生かされており,非常に面白く感じられた。
本作の物語は基本的にコメディ色の強いもので,濃いメンバーの絡みは見ていて楽しい。ドタバタものにラノベのテイストが入った感じで,こういうノリが好きな人にはたまらないだろう。キャラクターの名前やセリフにさりげなく小説やアニメのオマージュが散りばめられているので,元ネタ探しも面白い。
魔術師が“エルリック”で,盗賊は“グレイ”とくれば,元ネタは明らかにマイクル・ムアコックやフリッツ・ライバーだろう。敵役となる3人組は「タイムボカン」シリーズの3悪人や,アニメ「ポケットモンスター」に出てくるロケット団を思わせるものがあるし,ニナのセリフに「機動戦士ガンダム0083」の“ニナ”を思わせるものがあるなど,懐かしい小ネタが満載だ。
見た目に反して作りは硬派。骨太なダンジョンRPGを楽しめる
最後に本作をプレイして,少し気にかかった部分を紹介したい。登場するキャラクターは可愛らしく,物語もコメディ要素が強いが,ダンジョンRPGらしく戦闘とダンジョン探索の難度はやや高めとなっていた。また,モンスターを倒してもお金が手に入らないため(たまに換金用のアイテムを落とす),金欠に陥りやすいというのもその点に拍車をかけていたように感じられる。
好感度のシステムについては,仲間が増えるに従って次々と連携が発動することは気持ちがいいのだが,戦闘終了時に戦闘不能となったままのキャラクターの好感度が下がってしまう点が気になった。ギリギリの戦いで勝利した戦闘で,素直に喜べないというのは少しだけ残念に思える。
ただし,上述した部分もダンジョンRPGではよくある話で,いい意味で捉えれば歯ごたえがあるということ。本作で初めてダンジョンRPGをプレイするという人は少し面食らってしまうかもしれないが,コメディ要素の強いローファンタジーを楽しみたい人や骨太なダンジョンRPGを楽しみたいという人にはおすすめの作品だ。
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