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サバイバー編とハンター編を振り返る。舞台「Identity V STAGE Episode1『What to draw』」公演レポート
舞台「Identity V STAGE Episode1『What to draw』」
レポート記事へのご招待
親愛なる4Gamer読者様,本記事は2019年11月29日〜12月8日に,池袋のサンシャイン劇場で上演された舞台「Identity V STAGE Episode1『What to draw』」の取材レポートです。
以下のレポートでは,サバイバー編のゲネプロ公演と,ハンター編の初日公演の内容を紹介しています。これは,第五舞台ロスの方が読み返すことで観劇の楽しさを思い出してもらうこと,第2幕公演前に第1幕を簡単に振り返ってもらうことを目的に執筆しているため,まだ観劇していないけれど,これからBlu-rayの購入を検討されている方はご注意ください。ご了承いただいた方のみ,先に進むことをおすすめします。
なお,まったく観劇する予定がないけど舞台の内容は気になっている人はこのまま進んでください。でももし,本稿を読んで舞台「Identity V STAGE」に興味を持ってくれたなら幸いです。
それでは,あなたの答えを教えてください。
舞台「Identity V STAGE Episode1『What to draw』」公式サイト
※本舞台劇は、ゲーム原作「Identity V」の許諾を取得しておりますが、原作の内容とは関わらず、舞台化のための独自の創作も行っております。原作ゲームの設定、世界観、ストーリーとは異なる部分もございますので、予めご了承ください。
永遠に終わらないゲームの始まり
物語は,月が綺麗な夜――大きな鞄を持った青年,イソップ・カールが荘園へ続く道へ足を踏み入れたところから始まる。イソップはそこで,どこからともなく現れた青年のあとを追い,サバイバーたちが集う館に足を踏み入れることに。
納棺師(イソップ・カール) |
幸運児 |
一方,サバイバーたちは・・・・・・というより弁護士のフレディ・ライリーは,今日のゲームは誰が勝つのか賭けをしようとしていた。医師のエミリー・ダイアーはそんなフレディを非難するが,彼はなんだかんだと論理的に聞こえなくもない屁理屈を言い返す。あまり仲は良くない印象だ。
弁護士(フレディ・ライリー) |
医師(エミリー・ダイアー) |
そこへ,元気よく挨拶する声が響き渡る。先ほどイソップと出会った青年だった。サバイバーたちは突然の来客に戸惑い,(主に弁護士が)何者なのか問い詰める。
青年の名は「幸運児」。幸運児では呼びづらいということで,ボーイと呼んでと気さくに彼は言う。そこへ,ボーイを追ってやってきたイソップも登場する。またもや見知らぬ者の登場に,フレディと泥棒のクリーチャー・ピアソンも加わり詰め寄った。
イソップの話によると,彼は“招待状”に従って荘園へやってきたという。幸運児も同じだった。しかし,イソップはほかのみんなと違い,彼自身が招待されたわけではなかった。招待状の宛名の名前が異なっていたのだ。
イソップの職業は「納棺師」。亡くなった人にお化粧をして,送り出す仕事をしている。その招待状は彼宛ではなく,彼が担当した死人の持ち物だった。
ここでさらなる来訪者が登場する。占い師のイライ・クラークだ。彼は非常にのんびりとした性格のようで,動揺するサバイバーたちに向かってゆっくりと語り出した。彼は「ここで行われているゲームに参加し,勝つことができれば望みが叶う」と聞いてやってきたという。
状況が飲み込めない |
占い師(イライ・クラーク) |
3人とも招待状を持っていたため,ひとまずゲームに参加する新人だと理解するサバイバーたち。そんななか,イソップだけが状況を飲み込めていなかった。また,荘園にやってきたイライたちも「どんなゲームなのか」までは知らなかったため,説明を受けることに。
●基本ルール
荘園では毎日ゲームが行われている。
1日に1ゲーム開催される「鬼ごっこゲーム」。
追う側のハンターが1人,
逃げる側のサバイバーが4人,
サバイバーはあちこちに点在する暗号機のうち,5つを解読する。
サバイバーのうち,4人中3人以上が逃げ切れたら勝利。
2人なら相打ちで引き分け。
1人,もしくは全員が捕まったら負け。
●ゲームへの参加方法
荘園の主からの指名制。前日の夜,夕食のときにゲームへの招待状が届く。
●ゲームの注意点
ゲーム中,ときと場合によっては死ぬこともある。
しかし死んでもいつの間にか館で目が覚める。強制退場になっても脱出しても館に戻る。
問題なのは,これまでサバイバーたちが勝っても負けてもゲームがくり返されるということ。そして,荘園からは帰れないということだった。あまりの現実感のない話に,イソップは困惑する。彼はゲームをしに来たわけではないからだ。
そこへ,ゲームを終えた空軍のマーサ・ベハムフィール,心眼のヘレナ・アダムス,機械技師のウトレイシー・レズニックの3人が帰ってきた。どうやら試合中,カウボーイが死んでしまったらしい。心眼をかばったためのようだ。そしてほどなくして,“死んだ”と言われたカウボーイのカヴィン・アユソが姿を現した。
そんな光景を目の当たりにし,イライとボーイは受け入れるしかないと悟ったものの,イソップはますます混乱し,館を飛び出してしまう。心配したボーイと庭師のエマ・ウッズがあとを追いかけていく。
1人になったイソップは,過去を思い出していた。若くして納棺師という職業を選んだ彼に,周囲は好奇の目を向けている。悪意はないのかもしれないが,それがイソップを苦しめていた。もともと誰かと会話したり,かかわったりすることが苦手だったイソップは,ますます自分の殻に閉じこもってしまっていたのだ。
たくさんの死を見てきたイソップは,「“死ねない”というのは素晴らしいことなのだろうか?」と考えていた。
初めての“死”
イソップが感じたものは
イソップたちが荘園に来てから数日が経った。その間にも,サバイバーたちは毎日開催されるゲームに参加している。イソップと共に荘園へやってきたボーイとイライは,他のサバイバーたちとすっかり打ち解けているが,イソップだけは未だに馴染めずに・・・・・・いや,むしろ自ら関わろうとしていないようだった。
そんなある日,ついにイソップのもとにもゲームへの招待状が届く。ゲームに参加する気のないイソップは,招待状を破り捨てるが,ゲームからは絶対に逃れられない。
イソップと共に参加するサバイバーは,イライと傭兵のナワーブ・サベダー,心眼のヘレナ・アダムス。そしてハンターは,写真家のジョゼフだ。対戦相手としては最低最悪だとナワーブは話す。
ジョゼフが持つ不思議なカメラで写真を撮ると,現実世界とそっくりのモノクロ世界「写真世界」が作り出される。その世界では,色も時間もなく,人や動物も含め撮影した瞬間の状態ですべてが静止しているため,動かないサバイバー相手に危害を加えることができる。さらにそのダメージは,時間差で現実のサバイバーにも与えられるのだ。
ゲームの舞台は「赤の教会」。始まるまでの間,初参加となるイソップとイライのために,ナワーブとヘレナが攻略方法について説明する。
ゲームでは,サバイバー同士の連携が大事となるため,お互いの状況を把握するために,ボタン1つで定型メッセージを送信できる無線を使用するのだという。例えば,「早く逃げて!」「解読に集中して!」といった内容だ。
ゲーム開始後,まずはハンターの居場所が分かるまで隠密行動。そして誰かがハンターに見つかり,ハンターとの追いかけっこ“チェイス”をしている間に,他のメンバーが暗号機の解読を進める。「追われている人を助ける方法は?」というイライの質問に,ナワーブは「止めておけ」とばっさり。サバイバーは,ハンターを足止めはできても倒すことはできないと,悔しそうに語る。
そして,ステージの幕が上がった。イソップは,なんで僕はこんなところで走っているのか,疑問ばかりが募る。そのとき,心臓が高鳴る・・・・・・イソップの近くをジョゼフが通りかかったのだ。どうやら,ナワーブが追われているらしく,そのまま捕まってしまった。
でも,ナワーブは「助けても意味が無い」と言っていた。
僕は,逃げるべきなんだ。
そんな考えがめぐり,イソップが選んだ行動は「逃げる」ことだった。
ジョゼフが次に狙った標的は,イライ。彼が引きつけている間に,ヘレナがナワーブを救出する。このとき,ナワーブはジョゼフの行動に違和感を感じていた。いつもなら,確実に勝つためにチェアの近くで張っているが,今回は違ったからだ。ヘレナも今日のジョゼフは様子がおかしいと言う。
その頃,イソップはジョゼフに見つかってしまう(イライはうまくまいたようだ)。ジョゼフに追い詰められ,サーベルが間近に迫ったとき,イソップは問う。
そんなことは知らないというジョゼフ。このゲームでは本当の意味で死ぬことはないからだ。イソップが「本当にそうなのでしょうか?」と訪ねると,ジョゼフは「じゃあ試してみようか」と返す。少し考えたあと,イソップは言う。
イソップは,このゲームに呼ばれた意味を知りたいのだという。その言葉で,先ほどまで余裕な表情を浮かべていたジョゼフの様子が変わる。
そう言いながら,ジョゼフはサーベルをイソップに突き立てた。荘園はおもちゃ箱,我々はその中にいるおもちゃだと,満足感も達成感もなく,与えられた役割のままサバイバーを狩るのだと。ジョゼフはイソップに絶望を与えたつもりだった。
しかし,自分の命が消える瞬間,イソップは最後に笑った。「これが“死”というもの」と言い残して。
何もできずに死んだのに,なぜ笑えるのか? 意味が理解できず,ジョゼフはその場で取り乱してしまうのだった。
死にたがりのイソップ
イソップの初めてのゲームは,“失血死”という最悪の終わりだった。残りのメンバーも暗号機2台を残して全員吊られたらしい。ジョゼフの完全勝利だ。
失血死させられたイソップに同情するサバイバーたちだったが,戻ってきた彼は「このゲームにもう一度参加するにはどうすればいいですか?」と尋ねる。あろうことか,イソップはジョゼフとの一戦を機にゲームへの参加に積極的になっていた。
イソップには,納棺師という仕事をしていてどうしても分からないことがあったが,ゲームで“死”を経験したことで,“答え”が見つかるのかもしれないと考えたようだ。ゲームをして,また“死”の感覚を味わいたい。彼はもっと“死”について知りたいと願う。
イソップとジョゼフの初戦からまた数日が経った。しかし,イソップと他のサバイバーたちとの関係は,ますます悪化していくばかり。なぜなら,イソップがゲームに参加すると,勝率が下がってしまうからだ。彼は仲間が捕まっても救助をせず,解読も最小限,ハンターに見つかると,必死に逃げるわけでもなく,大人しく捕まってしまうのだという。さらに,チェアに座らされるよりも,失血死を選んでいるという噂まで。そのため,フレディたちから「死にたがりのイソップ」と呼ばれるようになった。
イソップの行動が理解できない他のサバイバーたち。そのなかでイライは,イソップに歩みよろうとしていた。イソップはイライに,「僕はサバイバーであっても,生きるのが難しい」と話す。
一方,ハンターの館でも「死にたがりのイソップ」は噂されていた。泣き虫のロビーは追い詰めたらすぐに大人しくなったと話し,魔トカゲのルキノは狩りがいがなくてつまらないと言う。リッパーのジャックは楽でいいと気にしていない様子だが,芸者の美智子は隠れもしないイソップに対して「気味が悪い」と話した。
魔トカゲ(ルキノ)と泣き虫(ロビー) |
リッパー(ジャック)と芸者(美智子) |
そこへジョゼフと,黒無常の范無咎が現れる。美智子がお酒のにおいがすると指摘すると,ジャックはジョゼフの荒れ様が気になっていたようで詮索し始めた。さらにルキノは「死にたがりのイソップ」の話題を出し,ジョゼフを挑発する。
黒無常の范無咎によると,イソップとの対戦後,ハスターから渡された1枚の写真で,記憶を取り戻したらしい。実はジョゼフは,荘園に来る前の記憶を失っていた。彼がゲームに対して意味がないと語ったのは,そういう背景があったからだ。
ジョゼフは他のハンターたちに問いかける。なぜここにいるのか,なぜサバイバーを追いかけ回さないといけないのか,疑問に思わないのかと。ジョゼフはゲームに意味を求めるイソップの考えを否定したいようだった。
ここでジョゼフは何かを思いつき,荘園の主に手紙を書くと宣言する。
ジョゼフは手紙になんと書いたのか,そして荘園の主はその申し入れを聞き入れるのか。それはイソップになんらかの変化をもたらすのか・・・・・・この先のサバイバー編,ハンター編の展開はBlu-rayで確認してほしい(関連記事)。
シリアスだけじゃない
サバイバー編とハンター編
以上の内容は,主軸となるストーリー展開のみを切り取り,かつ最低限のところを紹介したに過ぎない。実際はもっとシリアスな部分もあったし,反対にコミカルな部分もたくさんあった。ということで,ここからは筆者が個人的に好きなポイントをお届けする。ちなみに,あえてハンター編とサバイバー編どちらのシーンだったのかは記載しないでおく。
●サバイバーは黄衣の王ハスターが苦手
この日の参加者は,弁護士のフレディ,傭兵のナワーブ,カウボーイのカヴィン,探鉱者のノートン。そしてハンターは,誰もが恐れる黄衣の王“ハスター”だ。ゲーム中,サバイバー4人が合流してハスターが苦手だという話になり,誰がハスターの相手をするのかで盛り上がった。
●“強ポジ”でもサバイバーの腕次第!
暗号機を解読中,フレディはロビーに見つかってしまう。しかし,ここはサバイバーにとっては“強ポジ”と呼ばれている場所だ。自信満々なフレディはハンターを挑発するが,次の場面転換であっさりとチェアに捕らえられていた。
●カウボーイは男(主に弁護士)に厳しい
仲間を助けるため,カヴィンはすごい勢いで颯爽と現れた。女子が捕まっていると思ったからだ。しかし,そこで捕らわれていたのはフレディ。一気にやる気をなくしたカヴィンは,だらだらと助けることを躊躇する。そうしているうちにハンターが戻ってきた! 結果,フレディは星になったのだった。
●ハスター様はお歌がお好き
圧倒的なラスボス感を醸し出していながら,なぜか本編中に歌うハスター様。どこでとは言わないが,サバイバー編とハンター編両方で歌を披露してくれた。
●圧巻のダンスパート
ハンター編とサバイバー編,両方にダンスパートが用意されている。これがもう圧巻のひと言だった。「まるであの・・・・・・」と,詳しく言えないのが非常に残念なのだが,公開中のサバイバー編&ハンター編の主題歌試聴ムービーを聴いて感じてほしい。
最後に個人的な感想をいうと,舞台「Identity V STAGE Episode1『What to draw』」でのサバイバーとハンターは,筆者の知っているサバイバーとハンターだった。それは見た目だけではない。解読する姿勢や仕草,走り方(とくに心眼が分かりやすい),窓枠の越え方などにデジャブを感じ,何度も「見たことある光景だな」と思わされた。
それは原作ゲーム「Identity V」(iOS / Android / PC)でのキャラクターたちの姿を,役者陣が細かな動作にまで表現していたからだろう。少なくとも,筆者が想像する「きっとこのキャラはこういう感じなんだろうな」は,期待を軽く飛び越えて舞台の上に存在していた。
さて,ここまで読む人はなかなかいないと思うので,ひっそりと書いておきたいのだが,ゲネプロ公演終了後,筆者は会社に戻り,誰にも感想を語ることなく大人しく仕事をしていた。本当は感想をぶちまけたいけども,それでは仕事に支障が出ると察したからだ。ああ,でも喋りたい。
しかし帰り際,ついに筆者に向けて言ってはいけない言葉「舞台どうでしたか?」と声をかけてしまった人物がいた。編集部のでんこだ。ここから筆者はマシンガンの如く,息継ぎも最小限にひたすら舞台について語ってしまう。言うなればハンターは筆者で,捕らわれたサバイバーはでんこである。
話したいことを話し終え,すっきりとしたその日の帰り道。
空を見上げると,月がとても綺麗だった。
舞台『IdentityV STAGE』公式サイト
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