プレイレポート
「アトリエ」シリーズ19作品を一気にプレイ。本日発売「ネルケと伝説の錬金術士たち」に至るまでの歴史を振り返ってみた
ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜
2009年リリース(PS3),思い入れランキング3位「マナケミア」シリーズで消えていた「○○のアトリエ」という,懐かしいタイトル名が戻ってきた一方で,3Dグラフィックスが本格的に取り入れられ,見た目の雰囲気が大きく変わった。キャラクターは3頭身くらいのデフォルメ表現だったが,後に発売された「新・ロロナのアトリエ」では等身も見直され,ビジュアル面がされに強化されている。
本作の舞台は,アーランド王国にあるアーランドの街。遺跡から「機械」という技術が発見されたことで急速に発展したこの街では,人々が豊かに暮らす一方で,錬金術は時代遅れのものとなりつつあった。
そんな中,街にあるちっぽけな錬金術のアトリエに,王国から「依頼を達成できねば,アトリエを強制的に閉鎖する」との宣告が下る。
「ぐうたら錬金術士」である師匠のアストリッドから,半ば強制的にアトリエを任された主人公の少女ロロライナ(通称ロロナ)は,3年の間,王国の依頼をこなしつつ錬金術の腕を磨き,アトリエを守るために奮闘する。
本作の特徴を一言で表すなら“「エリー(マリー)のアトリエ」と「ヴィオラートのアトリエ」を足して2で割ったもの”という感じだ。
3年という限られた時間でアトリエを運営するため,最大2人の冒険者を雇って採取地に赴いたり,カレンダーを気にしつつ小さい依頼をいくつも請け負ってお金を稼いだり,というのはまさに初期シリーズ作品の流れそのものといえる。しばらく主人公が剣士や学生の作品が続いていたからか,逆に新鮮に感じてしまった。
調合システムは,カゴに入れておいたアイテムが時間経過で劣化したり,材料に設定されている特性(従属効果)をうまく引き継ぐと完成品の品質を上げられたりと,「ヴィオラート」のものをほぼそのまま採用している。ただ,「MP」や「LP」といったステータス値がなくなって「HP」のみとなった関係上,調合作業をするとHPが減少し,これが調合成功率に影響するようになっている。
ちなみに本作でも妖精さんの雇用システムは復活しなかったが,代わりにほぼ同じ役割を果たすホムンクルスの「ホム」が登場し,採取や調合などを手伝ってくれる。経験を積ませると,主人公と同程度の能力を発揮するのも同じだ。
戦闘も初期作のテイストに近く,素早さを基準にして行動順が決まり,順番が回ってきたらコマンドを選んで戦うだけといったシンプルなものになった。前述のようにMPがなくなり,スキルはHPを消費して使うようになったため,回復アイテムの手持ちが少ないときは,ちょっと使いどころが難しい。
いろいろな面で“先祖返り”を感じる本作だが,前作までの要素をすべて捨ててしまったわけではない。戦闘ではロロナを援護する「ヘルプシステム」というアシスト機能が用意されており,具体的には戦闘中に溜まるアシストゲージを消費して,ロロナが攻撃したときに追撃したり,敵の攻撃を防いだりできる。平たくいえば前作や前々作における,サポート攻撃やサポート防御と同じものだ。
本作は新しいプラットフォームで,「アトリエ」シリーズの原点に戻ろうとした一作だろう。戦闘の一部に「マナケミア」の要素を残しつつも,アトリエの運営,アイテムの調合,採取地での冒険といった初期シリーズの要素を,3Dグラフィックスで蘇らせようとしたことが見て取れる。実際筆者も久しぶりに「中和剤」を調合して,「ああ,アトリエってこうだったね」と,かなり懐かしい気持ちになってしまった。
その反面,新プラットフォームの作品ゆえか,システム面で全体的にこなれていない部分がいくつか見られるのが少し残念だ。例えば移動時のロード時間が長めだったり,アイテムの調達依頼に品質が何も考慮されなかったり,カゴとコンテナ間のアイテム移動機能が中途半端だったりと,テンポの悪さや調整不足が散見される。こういったシステム面での成熟は,次作まで待つ必要があったようだ。
トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士2〜
2010年リリース(PS3),思い入れランキング2位時代設定は前作のエンディングから5年ほど後。アランヤ村の少女トトゥーリア(通称トトリ)は,(前作の経験により)一人前の錬金術士となったロロナと出会い,その弟子となる。自宅兼アトリエで日々失敗を繰り返しながら,錬金術の腕を磨くトトリには「行方不明になった冒険者である母を探すため,自らも冒険者になって旅をしたい」という大きな夢があった。
錬金術士としての未熟さや戦闘能力の低さ,また家族の強い反対など,いくつもの問題を抱えつつも,トトリはアーランドの街で冒険者免許を取得し,冒険者としての道を歩んでいく……というのが序盤の流れだ。
主人公のトトリ(左)と姉のツェツィ(右) |
ロロナの友人クーデリア(左)と,新キャラのミミ(右) |
本作は「ロロナのアトリエ」のシステムを色濃く残しているものの,さまざまな点で改良が見られる。一目で分かる点を挙げるなら,グラフィックスの大幅な進化だろう。前作の3Dモデルは各キャラの特徴を捉えてはいたものの,全体的に強めのデフォルメが効いており,会話やイベントシーンで表示されるバストアップのイラストとはかなり違う雰囲気となっていた。
だが本作では,イラストを忠実に再現する方向でモデリングされており,その違いは一目瞭然。(これを執筆している)現在から見れば8年以上前のタイトルだが,モーションを含め今でも十分に通用する出来だと感じた。もちろん,キャラ以外の背景などもクオリティアップしている。
ロード時間や,カゴとコンテナ間のアイテム移動など,前作で気になった部分にも手が入り,プレイしやすくなっている。バトルも大きな変更こそないものの,属性ゲージがなくなった代わりにターン表が表示され,攻撃順が一目瞭然となった。また,ステータスでは過去作であったMPやLPが復活し,スキルもHPを気にせず気軽に出せるようになっている。仲間の雇用費が廃止され,所持金に関係なく好きなキャラを連れ回せるのも嬉しいところだ。
シリーズ恒例の時間制限は「冒険者システム」として採用され,3年間のうちに冒険者として一定のレベルに達することをノルマとして課される。アイテムの調合,敵の撃破,依頼の達成などでポイントを溜めて,冒険者としてのランクが上がると行動範囲も広がる,という流れだ。この辺りはきっちりと決まった依頼が定期的に課される前作と比べ,だいぶ自由度が上がった印象がある。
調合システムも「ロロナ」のものをほぼ踏襲しているが,調合アイテムに引き継げる特性が,コスト内で自由に決められるようになった。これは「アイテムコスト」と呼ばれ,例えばコストレベルが3なら,特性のコストが「1+2」や「1+1+1」といった組み合わせで選べる,という感じだ。これによりアイテムの目的に合った特性を選んで継承できるのはもちろん,「品質ダウン」といった邪魔な特性を簡単に消せるようになったのが嬉しい。
本作では先に触れたとおり,前作における不満点の解消を目標としたことが,かなり明確に見て取れる。
今回は前作から間を置かずにプレイしたせいもあって,当初はグラフィックスを除くと大きな違いが見当たらず,プレイフィールもほぼ同じような印象だった。だがしばらくプレイを続けてみると,採取地で行動するたびに時間が経過し,かなり早めに暦が流れていったり,酒場を中心とした依頼の報酬がかなり渋かったりと,全体的な難度が高くなったことに気づいた。まとめると「前作より大幅にプレイしやすくなったが,同時に歯ごたえも増した続編」という感じだろうか。
メルルのアトリエ 〜アーランドの錬金術士3〜
2011年リリース(PS3),思い入れランキング6位今回の舞台は,アーランド共和国から遙か北西にあるアールズ王国。周囲の発展から取り残された辺境の地であるこの国は,その遅れを取り戻すべく,5年後にアーランド共和国へ編入する代わりに開発の協力を取り付けた。
アールズ王国のお姫様である主人公のメルルリンス(通称メルル)は,その開発事業に取り組む派遣団にいたトトリと出会い,成り行きから弟子入りすることに。トトリの錬金術に魅せられたメルルは,錬金術士になるという夢を叶え,さらに姫としての義務も果たすべく,5年の間「錬金術を使った開拓の手伝い」に全力で取り組むことになったのだ。
前述のとおり,今回のメインテーマは「アールズ王国の開拓」だ。アールズ王国の領土ではさまざまな形で開拓事業が進んでいるが,モンスターがうろついていたり,邪魔な植物がうっそうと茂っていたりと,まだまだ多くの困難がある。それを錬金術によるアイテム調合やモンスター討伐で解決し,国を発展させ,人口を増やし,人々の生活を豊かにするのがメルルの役割だ。
依頼(嘆願)は主に手紙で届き,それを執事に見せることで実際のクエストに変化する。それをクリアすると「開拓ポイント」が加算され,「王国ランク」の上昇につながるという仕組みだ。
開拓ポイントを使って施設を建設すれば,人口が増えたり,メルルの人気が上昇したり,商品の購入価格が下がったりと,いいことずくめ。また依頼を達成するごとに開拓が進んで,うっそうとした森が農地や牧場になるなど,見た目が変わっていくのが楽しい。
採取地としても,入手できるアイテムの品質が上がったり,あるいはまったく別のアイテムが入手できるようになったりするので,ついつい気合いが入ってしまう。
バトルでは行動に再びコスト制が導入されて,高性能なスキルなどの「重い」コマンドは次に回ってくるターンが遅くなったり,アシストアタックはメルルが攻撃アイテムを使ったときだけ発動できるようになったりと,変更点がいくつか存在する。
全体的には初期パーティの味方が範囲攻撃を使えたり,シリーズ恒例の投擲アイテム「うに」をはじめとして攻撃アイテムが安価かつ手軽に入手できるなど,前作より難度が下がり,取っつきやすくなっている印象だ。
「開拓」という目に見えて変化がある分かりやすい目標があり,さらに次々と依頼(クエスト)が飛び込んでくるため,プレイしていて何かを迷うことはほとんどない。酒場の依頼は材料の調達と討伐だけで達成できるものが多く,調合が必要な依頼は開拓に関連するものか個人依頼だけと,区分けがはっきりしていて,「アトリエ」シリーズでも屈指の「親切でプレイしやすい作品」ではないだろうか。
ストーリー的には前作や前々作を下敷きにして作られており,そこからの登場キャラも多い。「アーランド」シリーズを通してプレイした方が楽しめるのは事実なのだが,個人的には初心者にも文句なくおすすめできる一作だと感じた。
なお,ここまで読んだ人なら分かるとおり,「アーランド」シリーズ3作品の思い入れランキングは3位,2位,6位といずれも高くなっている。長い空白期間を挟んで異例の4作目「ルルアのアトリエ」が開発されるのも納得というところだ。
アーシャのアトリエ 〜黄昏の大地の錬金術士〜
2012年リリース(PS3),思い入れランキング10位タイ荒廃した世界が舞台となっており,従来作のような(比較的普通の)ファンタジー世界とは一線を画する雰囲気が特徴となっている。当然ながら登場キャラクターは一新され,完全新規のアイテムやモンスターも多い。さらには最弱のモンスター「ぷに」や,“森の凶悪兵器”こと「うに」といったお馴染みネタが消滅するなど,大きな転換が図られた。
本作の主人公は,人里離れたアトリエで働くアーシャ。かつて錬金術で繁栄を極めたこの世界だったが,時代の流れとともにその技術は失われ,文明も衰退した。今や人類はかつての文明の残滓を遺跡から掘り出し,細々と暮らすしかない存在になってしまったのだ。アーシャ自身も自らを「薬士」と認識しており,「錬金術」という言葉すら知らないありさま。
そんなある日,アーシャがいつものように近くの遺跡に出かけると,そこで行方不明になった妹,ニオの幻影を見る。そこに居合わせた「錬金術士」と名乗る怪しい男は,妹はまだ生きているが,もって3年の命だとつぶやく。そして妹を助けるには錬金術の腕を磨き,自らこの現象の謎を解くしかないというのだ。雲を掴むような話に混乱するアーシャだったが,何よりも大切な妹を探すべく,旅に出ることを決意する。
本作では「ユーディーのアトリエ」以来久しぶりに,序盤からプレイヤーが自由に拠点を選べるシステムが復活した(厳密に言えば,「トトリ」で2つのアトリエを使うことができたが)。「ユーディー」では「アトリエの引っ越し」という形だったが,今回は初期のアトリエに加えて,複数の場所に錬金釜や日記帳を持ち込んで拠点にできる。シナリオが進むと自然と拠点が増え,「遠方にある採取地への移動がとにかく面倒」という問題の解決が試みられているわけだ。
ゲームの期限は前述の通り3年間だが,ノルマとしては「妹を探す」という大目標だけ設定されて,基本的にはプレイヤーが自由に動ける「トトリのアトリエ」方式に戻った。ただし,同時に任意タスクとして「目標」や「課題」といったものが用意されているので,初心者でも「何をしたらいいのか分からない」という状態にならないはずだ。
そのほかのシステムでは,「日記」と「想い出ポイント」という仕組みが新たに採用された。「依頼をこなす」「アイテムを調合する」「イベントをこなす」といった行動のたびに想い出ポイントが溜まり,それを消費して日記を書くと,能力が上昇したりスキルを覚えたりと,さまざまなボーナスが得られる。
形としては前作の開拓ポイントに近いが,会話したり何かを拾ったりといった簡単な行動で上昇するうえ,日記ではその当時のアーシャの心情なども分かるので,これはこれで別の面白さがある。
バトルは引き続き速度とコストによって行動順が決まる恒例のシステムだが,今回は位置の概念が導入され,敵の背後から攻撃すれば与ダメージが増加するなど,久しぶりに変更点は大きめだ。アシストアタックも仲間を起点にして主人公のアーシャも起動できるなど,いろいろと工夫の余地が広がっている。背後から範囲攻撃を決めて敵を一網打尽にするといった爽快感も味わえる。
キモの調合システムにも大きく手が入っており,「調合時にスキルを使ったり,何かのアクションを行ったりすると品質が変わる」という,「マナケミア」のような仕組みが復活した。
調合レベルのアップなどで覚える調合スキルやCP(コストポイント)を使ってアイテムの潜在能力を引き出したり,土や風といった属性の調節で別の特性を持たせたりと,全体的に見れば結構な複雑化を果たしている。
一方で,時間経過でアイテムが劣化するシステムはまたしてもなくなり,自分よりレベルが高いアイテムはそもそも作成に取りかかれないので調合の失敗がなくなるなど,簡略化した部分もある。
さらに本作では,レシピ自体に「作成数」が設定され,ものによっては1回の調合で複数のアイテムが完成する。頻繁に消費する回復アイテムの「リーゼン軟膏」などはもちろん,「クラフト」のような爆発物のアイテムも1日調合するだけでまとめて手に入るので,なかなかお得な感じだ。さらに「個数補正」という,一気に作るとボーナスでさらに完成数が増加するという仕組みまであるので,アイテムの一括生産がかなり楽になっている。
今までは「まとめて作って失敗すると,時間と材料のすべてが無駄になる」というルールだったのを考えると,思い切った変化ではないだろうか。
調合の材料集めも基本は変わらないものの,ボタンの長押し(あるいは連打)で自動的にカゴに入って,しかも同種のものはスタックされるようになったので,現地で取捨選択する手間が減った。また仲間が採取を手伝ってくれて,キャラによって入手アイテムが変わるなど,本作までなかった要素も追加されている。
本作は世界観の大きな変更が目に付くが,同時に調合システム周りにも大幅に手が入り,再びの「心機一転」を感じさせる作品となった。とはいえすべてが新しいわけではなく,例えば赤や青の色違いの中和剤は初期シリーズの定番だったわけで,逆に懐かしさもある。
また,調合時のアクションも「マナケミア」シリーズからの再登場だが,以前のそれが(ルーレットなど)ランダム性が高いものだったのに比べ,本作は腰を落ち着けて調整できるので,実質的にはだいぶ違ったものになっている。
全体的にビジュアル面は一新しつつ,システム面は今までの積み重ねを生かして新しいものを作るという手堅さで,新シリーズ第1弾タイトルながら完成度の高い作品にまとまっている印象だ。
エスカ&ロジーのアトリエ 〜黄昏の空の錬金術士〜
2013年リリース(PS3),思い入れランキング4位本作の舞台は辺境の街「コルセイト」。遺跡探索の最前線であるこの街の役場に,2人の錬金術士が赴任した。1人は地元で暮らしていた錬金術の才能を持つ少女エスカ,もう1人は「中央」から派遣された青年ロジックス(通称ロジー)。同じ「開発班」で相棒となったエスカとロジーは,日々命令されるさまざまな雑務をこなしながら,謎多き遺跡の調査に挑む。
「マナケミア2」のロゼとウルリカはライバル関係にあったのだが,エスカとロジーは同僚として仲良く一緒にいることがほとんど。主人公としての体験もほぼ一緒で,微妙に展開が異なったり,セリフが変わったりする。「マナケミア2」のように,パーティメンバーが完全に違うということはないので,似たシチュエーションで両者の対応の違いを楽しむ,といった感じになるだろう。
基本的なシステムは「定期的に必須課題が出され,それを順次クリアしていく」という,「ロロナ」方式に戻った。また,期限が4か月で区切られ,クリアが必須の大目標と,必須ではないがクリアすると報酬がもらえる小目的が用意されている。
課題の項目はビンゴ状になっており,ラインを揃えるとボーナスが豪華になっていく。このおかげで課題を達成するのが楽しくなり,(ゲーム内では)仕事だが,やらされている感はあまりない。
戦闘では主人公2人が常に参加するせいか,これも「マナケミア」以来となる最大6人パーティとなった。前衛と後衛(メインとサブ)に分かれ,戦闘中にタイミングを計って交代できるのも同じで,アシストによる追撃と防御だけ引き継いできた従来作から,一気に先祖返りした印象がある。
ただそれより大きな変更点だと感じたのは,「探索装備」という枠により,戦闘用の攻撃や回復アイテムが事実上いくらでも使えるようになったことだ。
今までの「アトリエ」シリーズ作品では使いたいアイテムはカゴに入れ,適時消費して使っていくという形だった。本作でもアイテムを持っていくのは変わらないが,採取用のカゴとは別の「装備用の枠」が用意され,そこに空きがある限り好きなだけ持っていける。そして「装備したアイテムは街に戻ったとき無料で補充される」のだ。
さらに,本作ではお金を「予算」という形で入手するのだが,アイテムを使えば使うほど評価が上がって予算も増える,という仕様になっている。今までケチって序盤は「うに」ばっかり投げていた著者は,「クラフト」や「フラム」を投げまくる生活に馴染めなかったほどだ。
とはいえ,戦闘のバランスはこの仕様を前提としたものに調節されているようで,序盤でもアイテムなしで勝つのは大変だ。味方の攻撃力が低く,敵が多く出現するため,普通に戦うと1回の戦闘での被害が無視できないものになってしまう。「アイテムはケチらず使え」が戦闘の鉄則という感じだ。
調合システムは,前作のCPやスキル重視の路線を受け継ぎながら,より属性の重要性が増した仕組みとなった。使用できるスキルが調合中の属性の値によって決まるため,使いたいスキルの属性を高めるためあえて別属性の材料を選ぶ,といったといったことも必要になる。
また潜在能力は「潜力」という名前に改められ,完成後にPPというポイントを消費して,任意のものを付与できるようになった。
なお,ストーリーを進めると,調合ではなく「分解」という要素も開放される。これは採取したアイテムをバラバラにし,レシピや材料となるアイテムを回収するものだ。
本作は「アーシャのアトリエ」の直接的な続編でありながら,実際のプレイフィールがだいぶ異なっている点が興味深い。調合システムこそかなり近いものの,戦闘や採取は思った以上に違い,特にアイテムの「無料補充システム」は衝撃で,これまで以上に「少しでもいいアイテムを作ろう」という気にさせてくれた。
ビンゴ形式の課題システムもシンプルなわりに中毒性が高めで,一休みするつもりなのに「あと1個クリアしよう」と,ついつい課題を続けてしまうこともしばしばだった。
また見た目からは想像しにくいが,「マナケミア」シリーズと似ている部分が思った以上に多い印象だ。本作の初回特典に「マナケミア2」のダウンロードコードがついていたのは,主人公が2人というだけでなく,ほかの部分にも共通点が多いからではないだろうか。
シャリーのアトリエ 〜黄昏の海の錬金術士〜
2014年リリース(PS3),思い入れランキング10位タイ本作の舞台は,不毛の砂地にありながら水をたたえる街「ステラード」。「黄昏」の影響により水涸れが進むこの地域で,ステラードは文字通り人々のオアシスとなっていた。
そんなステラードを目指す一隻の船に,船の一族の錬金術士であり,族長の娘でもあるシャリステラと呼ばれる少女が乗っていた。この街なら,故郷の村を襲う水涸れの危機を救う方法があると確信していたからだ。
シャルロッテは,ステラードで母親と一緒にアトリエを営む,駆け出し錬金術士の少女。成功するという夢はあるものの仕事には恵まれず,日雇いの仕事で糊口をしのぐ毎日だった。彼女らはそれぞれの目標に向かって活動するが,ステラードも黄昏の影響を免れることはできず,水涸れの危機が刻一刻と迫っていた。
本作一番のトピックは,「エターナルマナ」以来久しぶりとなる「暦の概念の廃止」だろう。ワールドマップの移動,採取,調合,戦闘など,基本的なシステムは前作と変わりないが,何をしても時間は一切過ぎず,好きなだけこれらの行動を繰り返せる。当然ながら依頼にも時間制限はなく,調合からも作成日数という要素がなくなり,材料さえ用意すればいくらでもアイテムが作れるようになった。
「時間制限あってこそのアトリエ」というファンも少なくないと思うが,時間制限にも,初心者がゲームに慣れないうちに大量の日数を浪費してしまったり,戦闘や調合を思う存分やり込んだりするには周回が必要だったりといったマイナス面はある。このあたりは好みの問題になると思うが,シリーズ作品を立て続けにプレイしている身になると,たまにやってくる時間制限なしの作品は新鮮だった。
ストーリーは章立てで進み,課題や目標と呼ばれていたものは「自分が思いついた行動を,自らの意思で実行する」という形に改められ,名称も「ライフタスク」となった。ライフタスクには進行度が設定されており,一定の値まで進めると,次の章に進める。
もちろん進めるかどうかは任意なので,タスク自体を放置したり,クリアした後でも次の章に進むことを選択しなければ,いくらでもほかの作業を続けられる。
戦闘では久しぶりに「バーストゲージ」が復活。敵を攻撃したり弱点を突いたりすると,バーストモードが発動して攻撃力が増加するほか,アシスト攻撃もより強力な「拡張アシスト」というタイプに変化し,敵を一気に殲滅できる。
前作から引き続いての前衛後衛入れ替えと,このバーストモードで,「マナケミア」の戦闘システムが復活したと言えるかもしれない。
なお話は前後するが,今回アシスト攻撃やアシスト防御は後衛がいないと使えず,かつ交代が必須となったため,この点でも「マナケミア」の仕組みに戻っている。
調合周りのシステムは前作や前々作を踏襲しながら,またもスキル関係が改良されている。前作では使えるスキルが属性で決まる仕組みだったが,本作はそれに加えて「スキルを材料のスキル枠にはめ込む」ようになっており,それが完成品の品質を左右するようになった。
例え属性が狙ったとおりでもスキル枠がない材料は使いにくく,期待通りの品質や効果を出すことができない。また,錬金術レベルが上がると,材料ごとの属性をつないでより効力を高める「Chain」という仕組みがアンロックされ,さらにパズル性が高くなっていく。
システム全体としては前述のように時間制限がなくなったほか,本作ではユーザーインタフェースにミニマップが追加されたり,フィールドでカメラをある程度自由に動かせるようになったりといった変更が加えられている。また戦闘に注目すると,「黄昏」シリーズは作品を経るごとに“マナケミア化”が進んでいったのも興味深いところだ。
ただ,本作は戦闘にしても調合にしても若干複雑化し過ぎたきらいがあり,個人的には「もっとシンプルな方が気楽でいいかな」と思うこともあった。
時間制限がないので,じっくりルールを覚えて慣れればいいのだが,そこまでのハードルが若干高く,(「黄昏」シリーズ最終作なので仕方のない部分はあるが)前提知識がないと手こずる場面もあるかもしれない。
ソフィーのアトリエ 〜不思議な本の錬金術士〜
2015年リリース(PS4 / PS3/ PS Vita),思い入れランキング1位本作の主人公であるソフィーは,キルヘン・ベルという街で錬金術のアトリエを開いている。失敗が多く半人前だが,彼女には「祖母のような立派な錬金術士になる」という夢があった。ある日ソフィーは自分のアトリエで,祖母が残したと思われる本を発見する。祖母が作っていたアイテムの作り方を思い出し,その本にレシピを書き込むと,なんと「それ」は急に動き出し言葉を話し始めた。
本人(?)によると,不思議な本の名前は「プラフタ」。本来は錬金術の膨大な知識を持っていたものの,記憶の大部分を失っており,それを蘇らせるには新たにレシピを書き込んでいくしかないのだという。ソフィーはプラフタの記憶と知識を蘇らせ,祖母のような錬金術士になるため,キルヘン・ベルを拠点に調合や探索の日々を送っていくことになる。
新シリーズとなっただけに変更点は多いが,調合や戦闘以外だと「時間の概念が復活した」のが大きい。例によって移動や戦闘,採取などで時間が経過し,朝から昼,夕方,夜という流れを繰り返す。基本的には「マナケミア」シリーズと同じで,夜になると敵が強力になったり,採取アイテムが変わったりという要素も存在している。
だが,時間の概念はあっても,「時間制限」はない。日付は進むが,それを気にせずいくらでも探索や調合を続けられるのだ。暦も日付はあるが月はなく,「ユーディーのアトリエ」方式に戻ったとも言えそうだ。また,依頼も一部を除き時間制限はない。
本作ではプラフタが重要な役割を果たす。具体的にはレシピをアンロックさせるヒントがプラフタに表示されるので,その指示に合わせて動く(≒課題をこなす)と,ソフィーがレシピを閃くのだ。
「日常の行動によってレシピを思いつく」という仕組みは,以前「グランファンタズム」でも採用されていたので,10年ほど経って再登場したことになる。同ソフトの項でも書いたが,個人的にはこれは面白いアイデアと思ったので,復活は嬉しかった。
バトルシステムはターン制。味方全員のコマンドを選択後,敵と味方が攻撃し合い,それが終わるとまたコマンド選択に戻るという,ゲームとしては非常にクラシックなスタイルだ。ブレイク(気絶)やサポート攻撃などの要素は残っているものの,バーストモードは消滅した。
なお,前衛と控え(サブメンバー)の交代要素もなくなっているが,代わりに前衛,中衛,後衛にキャラを配置するという,初期シリーズに見られた隊列(陣形)が多少形を変えて復活している。
戦闘に参加できる人数は3人から4人に増加。メンバーには戦闘中に攻撃と防御のどちらを重視するかという「スタンス」を設定できるようになった。また一部のアイテムは主人公以外も使えるようになり,スキルがなくても攻撃や回復を任せられるようになった。
画面左下のゲージは「チェインリンク」と呼ばれるもので,フルになると,攻撃スタンスなら追撃のサポートアタック,防御スタンスなら身代わりとなるサポートガードが自動で発動する仕組みとなっている。
そして本作で一番大きく変更されたのは,調合システムだろう。「黄昏」シリーズではパズル要素が強いものになっていたが,本作の調合は,材料をマス目で区切られた錬金釜にはめ込むという,完全な「ボード状のパズル」となっている。
本作でも属性は重要で,マス目の属性(色)を合わせて材料を設置していく。材料をどういう順序で入れたかによっても完成後のクオリティが大きく変わるため,プレイヤーは頭をひねって調合することになるはずだ。
新たなシリーズの出発ということで,原点回帰的な舞台設定,時間経過の復活,戦闘の大幅なシンプル化など,目立つ変更点は多いが,やはり錬金術部分に大胆に手が入ったのが印象的だ。
「黄昏」シリーズでは,作品を重ねるごとに調合のパズル性が高くなっていったが,それを見た目も含め完全にパズルにしてしまったわけで,かなり思い切った変更だろう。「錬金釜に材料を放り込んだら,後は回転するカードを(失敗しないように祈りながら)眺めるだけ」といった初期作品から考えれば,隔世の感がある。
こういった「調合システムのミニゲーム化」は,好みが分かれるところでもあるだろうが,実際にコツをつかんで良いものが作れると,「あれ,もしかして自分も錬金術士として成長した?」とか思えてくるのが面白い。実は裏で「ソフィーだけではなく,貴方も(プレイヤー)も成長してください」とプラフタが言っている……のかもしれない。
そして本作は思い入れランキングの1位に輝いた。思い切った変更が,ファンに受け入れられた証と言っていいのではないだろうか。
フィリスのアトリエ 〜不思議な旅の錬金術士〜
2016年リリース(PS4 / PS Vita),思い入れランキング7位本作の物語は鉱山の中にある町「エルトナ」から始まる。この町は採掘用のトンネルの中に存在し,一部を除き日の光は当たらず,外部から隔絶した状態にあった。主人公の少女フィリスは,この町から外に出て自由に暮らしたいと願っていたが,外界への扉は堅く閉ざされて限られた者しか通れず,叶わぬ夢となっていた。
だがそんな町に,旅の途中のソフィーとプラフタが訪ねてくる。彼女たちの使う錬金術に魅入られたフィリスは「錬金術の力を使えば,外の世界に出て行けるだけの力が身につく」と確信する。ソフィーに弟子入りし,町の長老が出した簡単なテストにクリアすると外出は認められたものの,「ずっと町の外にいたいなら,1年間の期限のうちに試験にクリアし,正式な錬金術士にならねばならない」という条件を課される。
憧れである外の世界を自由に歩き回るため,フィリスは錬金術の腕を磨きながら旅を続け,試験に臨んでいくこととなる。
本作は「アトリエ」シリーズ作品の中でも,特に大きな変革が試みられた作品だ。フィールドがオープンワールド的な作りになり,広い1枚のマップで採取や戦闘,調合をすべて行うという,現代的なシステムとなった。
実際にフィールドは広く,障害物がなければ地平線が描かれ,平原や砂漠,森といった至る所で調合の材料が拾えるし,敵もうろついている。前作と同じく時間の流れや天気の変更もあり,時間を忘れて採取していると日が暮れてくるし,雨も降るのだ。ワールドマップによる移動は廃止され,遠距離を移動するときは,後述するたき火やロケーションにファストトラベル(瞬間移動)する形に改められた。とは言え,完全なオープンワールドではなく,フィールドは地域で区切られているので,移動は“出入り口”を使って地域をまたぐような形になる。
時間は前作のように戦闘や採取といった行動で流れ,活動するたびに「LP」が消費されるし,LPが低下すると採取時のアイテムが減るなど,悪影響が出る。
分かりやすく言えば,本作のフィールドは従来の採取地をそのままスケールアップしてエリアで区切ったもの,という感じだ。戦闘や採取を積極的に行うと想像以上に時間が流れてしまうし,前述の出入り口以外は障害物で囲まれているため,「あの遠くに見える山の向こうまで行く」といったことはできない。
調合はもちろんアトリエで行うが,実を言うと本作には「アトリエ」という“固定施設”は存在しない。自宅はただの民家で錬金釜などないし,仮にあったとしてもカゴが一杯になるたびに遠方のアトリエに戻っていたら,時間がいくらあっても足りない。
ではどこで……となるところだが,なんと本作には「携帯型のアトリエ」が用意されている。特殊な錬金術で作られたこのアトリエは,外から見るとちょっとファンシーな小型テントだが,中には複数の部屋に錬金釜,ベッドまで用意されており,立派に拠点として機能する。前作のソフィーが使っていたアトリエより広く,錬金術の偉大さに驚愕するしかない。フィールドの各地にあるたき火でしか使用できないが,それでもシリーズ中で群を抜く便利さだ。
調合自体は前作のパズル方式をベースにしつつ,ボーナスを得る方法が「同じ属性のマス目や光源の上に材料を置く」から「ボーナスラインと呼ばれる線の上に材料を置く」という形に変わった。ボーナスラインは「触媒」となるアイテムを別途投入するすることで変形し,ボーナスの内容が変わったり取得しやすくなったりするので,できれば触媒用のアイテムも入手しておきたい。
さらに属性は「錬金成分」という名称に変わり,種類も1つ増加している。また,調合アイテムごとに「熟練度」が設定され,それによって品質が上がったり,調合時にパネル上で向きを変えられたりと,考慮しなくてはいけない要素が増えた。やり込み甲斐は増えたが,少々複雑化した感は否めない。
戦闘は前作に引き続き,最大4人のパーティメンバーで隊列を組んで挑むが,それ以外の変更点が多い。スタンス要素はなくなり,サポート攻撃と防御は再度「主人公のみを対象に任意で発動する」タイプに変更された。またターン制も廃止されて「素早さ順で個別に行動」という従来型に戻り,バーストモードが「チェインバースト」という名前で復活したりと,全体的には「旧シリーズの形に戻す」という方向性で調節された格好だ。
個人的には前作の「クラシックなターン制」が嫌いではないので,そちらが進化した形も見たかった気がする。
本作はとにかく「オープンワールド風フィールド」と「携帯型アトリエ」のインパクトが非常に大きく,目を引くのは間違いない。
ただ(実際は違うのだが)オープンワールドの作品として見ると,「行けそうで行けない」場所が相当に多かったり,マップの任意の場所にマーカーが置けなかったり,クエストNPCの居場所が分かりにくかったりと,少々気になる部分がある。
また「自由に動き回れる」一方,本当に勝手気ままに進めてしまうと時間が容赦なく過ぎていくので,「クリアが必須となる期限制課題の復活」との相性があまり良くないのでは,と感じてしまった。
とはいえ,これまでの「アトリエ」シリーズ作品における採取地は(作品を経るごとに徐々に充実していったものの)「切り替え前提でマップが小さめ」「見た目は広いが行ける場所が少ない」という印象だったので,薄暗いエルトナの町から広大なフィールドに出たときは,画面内のフィリスに負けないぐらいの衝撃を受けた。
本作は,まさにタイトルにあるように「旅」にフィーチャーした作品だ。アトリエを持ち歩いて未踏の地を目指す旅はとても新鮮で楽しい。そういった意味では,この作風の変化は「アトリエ」シリーズでも上位に入るほどの革新と言っていいだろう。
リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜
2017年リリース(PS4 / Nintendo Switch / PS Vita),思い入れランキング8位本作の舞台は,アダレット王国の首都「メルヴェイユ」。この都に,アトリエを営む姉のリディーと妹のスールという双子の姉妹がいた。彼女たちは「自分たちのアトリエを国一番にする」という大きな夢を持っていたが,父親のロジェは錬金術そっちのけで絵を描くことにうつつを抜かしており,商売の方はさっぱり。独学で錬金術を勉強するリディーやスールも,師匠に恵まれず失敗を繰り返していた。
そんな中,国の方針で「アトリエランク制度」が始まった。錬金術士を互いに競わせたうえで,優秀な者は国が積極的に支援するというのだ。各地の錬金術士がメルヴェイユに集まってくる中,リディーとスールはイルメリア(前作にも登場していた,フィリスのライバル)という強力な師匠を得て,急速に錬金術の才能を開花させていく。亡き母を含めた家族の夢である「国一番のアトリエ」を目指し,ランクを上げる試験に臨むのだ。
ここまでの紹介で想像がついている人も多いと思うが,本作はダブル主人公,しかも「エターナルマナ2」以来,久方ぶりの「主人公切り替え制」となる作品だ。アトリエに戻ればいつでもリディーとスールを切り替えられる。両者はステータスや採取中のアクションが違うが,錬金レベルなどは共有でき,調合能力に差はないので,プレイヤーの気分や好みに応じて切り替えるような形だ。
ダブル主人公以上に大きなシステムの変化は,やはり「大型フィールドの廃止と,ワールドマップを使った移動の復活」だろう。端的には「ワールドマップで採取地を選択し,時間を消費して現地に移動する」という仕組みに戻った。
個人的にオープンワールドゲームが好きなこともあり,前作のスタイルを進化させた姿にも期待したが,前作でしっくり来ていない部分もあったので,安定のスタイルに戻るという方針には納得できる。
なお,1マップの面積は前作に比べ一気に狭くなったものの,歴代「アトリエ」シリーズから見れば(場所にもよるが)広い方で,採取場所の密度も高く,まめに戦闘や採取を繰り返していると,初期のカゴではあっという間に一杯になってしまう。
ちなみに本作も暦の概念はあるが,掲示板で受けられる依頼を除くと時間制限がない課題の方が多いので,時間はあまり気にしなくていい。また移動や採取による時間経過も前作に比べて相当マイルドになっており,思う存分採取や戦闘ができる感じだ。
タイトル名にある「不思議な絵画」とは,中に入って探索できる,不思議な世界につながった絵画のこと。通常の採取地とは違う幻想的な世界が広がっており,そこでしか入手出来ない材料や,より品質が高い材料であふれている。敵は強めだが,錬金術を極めるには,絵の中も探索しなければならないのだ。
絵画はストーリーが進むごとにアンロックされていくが,「都から直接別の世界に移動して探索できる」という点では,これまた「エターナルマナ2」に近いものを感じる。
調合のレシピは「不思議」シリーズらしく,ヒントから閃く形になっているが,一部はイベントで入手したり本を直接購入したりと,従来作らしさが復活している。シナリオを進めるには「やることメモ」,アトリエの評判を上げるには,スールが考える「野望ノート」の課題をこなし,さらにアトリエのランクをアップさせるには国からの課題をこなす必要があるが,前半は難しくないものが多く,サクサク楽しみながらゲームに慣れることができるのは嬉しい。タスクが分かりやすく表示されるので,初心者でも迷うことなくプレイできるだろう。
戦闘は再び最大6人パーティの前衛・後衛入れ替え式に戻り,(チェイン)バーストゲージは廃止された。またサポートガードも前提条件がなく,双子が攻撃されたときに任意に発動するだけと簡略化されたが,代わりに戦闘中の調合で攻撃や回復を行う「バトルミックス」というスキルが追加された。
また,前衛と後衛でチームを組んでいると,後衛が前衛をサポートする「フォロースキル」や,2人で同時に攻撃する「コンビネーションアーツ」が発動できたりと,バーストゲージを使わずにバトルのバリエーションを増やしている。
調合は「不思議」シリーズお馴染みの「材料をパネルに置いていく」タイプだが,再度システムが調整され,今度は色つきのパネルに同じ色の材料を置くとボーナスが得られる仕組み。パッと見は前々作の「ソフィーのアトリエ」に戻った感があるが,光源のボーナスはなく,代わりに触媒によって追加のボーナスパネルが発生したり,錬金釜のサイズ自体が変わったりする。さらに調合の途中で「活性化アイテム」を入れれば,設置済みの材料の色を一気に変えられるなど,ストーリーを進めるたびに調節の幅が広がっていく。
印象としては,「パズルの取っつきやすさは「不思議」シリーズ3作の中で一番良く,要素が増えるたびに複雑になっていく」という感じだろうか。
「不思議」シリーズの3作目だが,全体の作りとしては前作の「フィリスのアトリエ」より「ソフィーのアトリエ」に近く,「いつものアトリエ」らしいプレイ感だ。「アトリエを立派にする」という目標も非常に明確で分かりやすく,タスクの多くは期限がないので,気楽に自分のペースでゲームを進められる。
筆者は「メルルのアトリエ」を「親切でプレイしやすい作品」と書いたが,これは本作にも当てはまると思う。例によって前作と前々作からの登場キャラが多く,調合システムもすべてを把握するにはちょっと時間がかかるだろうが,この作品から「アトリエ」シリーズを始めてみるのも悪くない選択肢ではないだろうか。
「アトリエ」シリーズを駆け抜けてみて
さて,以上全19作品を駆け抜けてみたが,いかがだろうか。
筆者はリアルタイムで「アトリエ」シリーズを触る機会がなかったのだが,さすがに20年の歴史を一気に体験すると,いろいろと思い入れも出てくる。例えば「シリーズを通してみても,生にんじんを丸かじりするヴィオのインパクトは凄い」と思ってしまうし,もはや「『うに』と聞いたら,森で取れる投擲武器しか頭に浮かばない」となってしまったし,目の前に「たる」があったら,きっとあのセリフを言ってしまうだろう。それぐらい錬金術漬けになったのは間違いない。
さて真面目にシリーズを振り返ってみると,ある意味当然かもしれないが「変化と揺り戻しの歴史」だ。「採取による材料の入手と,調合によるアイテム作成」というベース部分は強固に維持しつつ,それ以外の部分,例えば戦闘システムや時間の扱い,採取と調合の方法などは,ほぼ確実に毎回何かしらの変更がある。
物語にしても,シリーズ1作目の「マリーのアトリエ」のキャッチコピー「そろそろ世界を救うののも飽きてきた。」をベースにしつつも,さまざまなスタンスがあったことは,シリーズ経験者や本稿を読んだ人なら分かるはずだ。
システム面での変化は大きかったり小さかったりするし,「次作で完全になかったもの」にされるアイデアもあるが,その後復活してくる要素が多いのは興味深い。例えば「時間によるアイテムの劣化」や「バーストゲージ」,あるいは「主人公をサポートする妖精さんやホムンクルス」などはまさにそういったタイプで,俯瞰してみるとシリーズでの初出はかなり早く,そして断続的に復活してくる。
逆に「採取地での敵シンボルへの先制攻撃」や「アシスト(サポート)攻撃 / 防御」などほぼ完全に定着したもので,これらは連綿と受け継がれている。ただ初期のアトリエ作品にはなかったので,その後のシリーズ作品に触れてない古参のプレイヤーには,いまいちピンと来ないものだろう。そう,かなり前からアトリエシリーズでは,「殺られる前に(杖で)殴れ」が鉄則になっていたのだ。
20年という月日を考えれば当たり前かもしれないが,あるプレイヤーが思い浮かべる「アトリエらしさ」と,また別のプレイヤーが感じる「アトリエらしさ」は,結構違うのではないかと思う。例えば作中で「錬金術の基本」とまで言われている中和剤ひとつとっても,「ああ,赤とか青とか緑のアレね」(「ザールブルグ」「不思議」「黄昏」シリーズ)と言う人もいれば,「何からでも作れる黄色っぽい液体」(「グラムナート」「アーランド」シリーズ)と思い出す人もいるだろうし,「何それ?」(「イリス」「マナケミア」シリーズ)となってしまう人もいるはずだ。
これは毎年のように新作がリリースされ,さまざまな試行錯誤を繰り返してきたからこその現象で,もちろん今後も続くと思われる。さて,次の中和剤は何色だろうか?
本稿の冒頭でも書いた通り,シリーズのキャラクターが一堂に会する20周年記念作品「ネルケと伝説の錬金術士たち」が本日発売となった。主人公のネルケはなんと錬金術が使えず,しかもメインテーマは町の発展ということで,外伝チックな作品となりそうだが,やはりシリーズの主人公が作品の枠を越えてやりとりするのにはわくわくしてしまう。今の筆者にとっては,もはや「全員顔なじみ」みたいなものなので,なおさらそう感じるわけだ。
そしてその後には,「アーランド」シリーズの続編「ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜」が控えている。「アーランド」シリーズの3作目であるメルルのアトリエは筆者のお気に入りでもあるので,こちらもかなり気になるところだ。
いったん完結した(と思われていた)作品の「その後」が初めて描かれるということで,今後の展開次第では,さらに別のシリーズの未来を体験できたりもするのかもしれない。
最後に話を少し戻して,「アトリエらしさ」は何かと聞かれたら,やはり「錬金術があること」と答える。ふざけていると思うかもしれないが,筆者は真剣にそう思っていて,言葉を変えれば「ゲーム内に錬金術があれば,基本的に何をやってもいい」のが「アトリエ」シリーズの魅力なのだ。
実際に,純RPGを目指してみたり。学園ものをやってみたり,ポストアポカリプス(終末)世界を舞台にしてみたりと,作風の幅は相当に広い。世間のイメージ以上に男性の主人公も多く,マリーやソフィーの世界だけがアトリエではないのだ。
それだけに,(直近の続編は決まっているものの)今後のシリーズには想像が膨らむ。例えば故障した宇宙船になぜか錬金釜が眠っていて,不時着した無人の惑星で錬金術を使い,帰還を目指す……なんてSF作品があってもいいんじゃなかろうか。個人的な趣味が強すぎるかもしれないが,実際にタイムトラベルもテーマになっているし,それぐらい懐が深いシリーズではないかと思っていたりする。
30周年,そして40周年に向けて,新たな「アトリエ」がこれからもどんどん登場していくことに期待したい。
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