インタビュー
20周年を迎えた「スペースチャンネル5」開発陣が集結。“パート1誕生秘話”,VRで復活を遂げる“最新作に懸ける思い”を聞いた
うららの“herself”ボイスは意外な形で決まった!?
4Gamer:
SC5と言えば,プロモーション展開も非常に画期的でした。渋谷駅の広告ジャックをはじめ,QFRONTの大型ビジョンを使った体験会,朝日新聞の号外,TV番組のオーディション企画など,多方面で展開されていましたね。
開発のかなり早い段階から,プロモーション計画を練っていましたね。コンテンツ自体がすごくキャッチーだったので,SC5ならこれまでのゲームではやらなさそうなパブリシティ展開もできるだろうと考えていたんです。
東京ゲームショウでは,ドリームキャストのロゴに並んで,SC5のロゴを据えたモロ星人のバルーンを,セガブースの上に出してもらったんですが,私にとって本当に衝撃的な出来事でした。「SC5がついに世の中に出る」と実感して,感極まって涙ぐんだことを今でも覚えてます。
4Gamer:
SC5が発売された1999年の東京ゲームショウですね。
岡村氏:
はい。うららが初めてゲーム画面の中で動いたのが1999年5月30日,その日を誕生日と設定しているんですが,大きなプロモーションは主人公の姿が決まらないことにはできませんから,そこで一気に仕込みを始めました。開発が切迫している中でスタッフに頼み込んで素材をもらったりして,その苦労が東京ゲームショウですべて実った気がしたんです。
4Gamer:
TV番組のオーディション企画は,どのような経緯で決まったのでしょうか。
岡村氏:
「TV番組を使ったプロモーションをやる」ことが決まったものの,ただゲームを紹介するだけでなく視聴者を巻き込んで,ゲームの内容につながるように……と考えたのが“声優オーディション”だったと思います。
うらら役のオーディションに合格した飯田佳愛さんは,最終的にプリン役へと変更になりましたが,どんな理由があったのでしょうか。
岡村氏:
実はオーディションと同時期に,メディアの皆さんにSC5のテスト版を見ていただく機会を設けていたんです。当然テスト版ですから,うららには仮のボイスを入れていたわけですが,メディアの方々が口々に「この声がいい」と言っていたそうです。
それを聞いた水口さんがスタッフを交えて検討した結果,仮のボイスの主(クレジットは「herself」)をそのまま起用することになったんです。
4Gamer:
少し素人っぽい感じが,新人リポーターというキャラクター設定にマッチしていて,絶妙な味が出ていましたね。
岡村氏:
開発の過程でセリフが変わることが結構ありましたが,内部の人間が担当だったので,開発の都合にボイスの収録を合わせられるというメリットもあったんですよ。ただ,もしかすると内部の人間に決まったから,そういうスタイルになったのかもしれません(笑)。
4Gamer:
なるほど。それで飯田さんはうららのライバル,プリン役へと変更になったんですね。
岡村氏:
はい。飯田さんにはライバルとして重要なキャラクターであるプリンを演じてもらうことになりました。
飯田さんの声もすごくプリンに合っていたので,結果的には良かったと思います。SC5は出演声優陣が皆さん,豪華でしたよね。
吉永氏:
当時は予算のことをあまり考えていなくて,お願いしたい人を片っ端から挙げていく仕組みでした。ジャガー役の速水 奨さんは,「私がお願いしたい」という理由でしたから。
岡村氏:
水口さんは,主人公にプロではない人間を起用したことから,その脇をしっかりと演技ができる声優陣で固めるという布陣を考えたんだと思います。
4Gamer:
ヒューズの声を湯田さんが演じていますが,うららと同じようなケースなんですか。
幡谷氏:
あれは合宿で決まったんじゃなかった? 水口が言い出したんですよ。「スチュワーデス物語」の風間杜夫さんみたいだからって(笑)。
岡村氏:
それそれ!(笑) 熱血教官的なイメージがピッタリ合うということで。
例えに時代が現れていますね(笑)。そのとき,湯田さんはどんな反応でしたか。
吉永氏:
「いやぁ……」なんて言いながらも,収録を始めるとノリノリで,あとはご存じのとおりです(笑)。私も湯田さんがそういう人だと認識していたので,心配はありませんでした。踊りもできるし,しゃべりもできる。本当に芸達者なんです。
幡谷氏:
ノリノリになるまではガチガチなんだけどね(笑)。
吉永氏:
そうそう(笑)。だから,収録時には必ず同期の水口さんや幡谷さんに立ち会ってもらいました。うららと同じように,開発中に発生するセリフの録り直しに対応してもらえたのも助かりました。
幡谷氏:
音声収録は本当に楽しかったなあ。撮り直しと言えば,「前,前」とかもなかった?
吉永氏:
そうだ! シューティングモードのときに,レフトとライトに加えて「フロント」というフレーズがあったんですが,長かったので全部「アップ」「ダウン」にしたんですよ。
岡村氏:
当たり前のようになっている「チュー!」も,最初は「シュート!」だったんですよ。いつから変わったんでしたっけ?
あれは「シュート!」の発音で録ると,「シュー」の部分の入力に対するレスポンスが悪くなってしまったんです。仕方ないから半ばで切っていたんですが,部内のアンケートを実施したら,茂呂がその部分を「チュー! チュー!」と書いていて「これは使える!」と。
4Gamer:
モロ星人の特殊な声は,どのように録っていたのでしょうか。
吉永氏:
ムービー内のセリフは逆再生ですよね。
そう。だから,モロ星人の音声を取り込んで逆再生をすると,話の内容がバレます(笑)。ゲーム中に「言い訳はいい!」と聞こえるセリフがあるんですが,これは回文なので逆再生でも正しく聞こえるというわけです。
4Gamer:
そんな秘密があったとは……。あとは“スペースマイケル”も忘れてはいけないキャラクターですね。
岡村氏:
当時,セガ・オブ・アメリカのほうで,マイケル・ジャクソンさんにSC5の映像を見ていただく機会があり,そこで本当に気に入ってくれたそうです。数日後,ご本人から電話があって「出たい!」と言ってくれたので,急きょ,スペースマイケルの登場が決まりました。
スケジュールとしてはギリギリでしたが,音声を収録したDATテープがすぐに届いたので対応できたんですよね。
吉永氏:
最初に話を聞いたときは,そっくりさんの誰かが声を入れて送ってきたのかと思いましたよ。それくらい急な話だったんです。だから,ゲーム中にも「(本人)」という注釈を入れました(笑)。
4Gamer:
ちなみに,その音声データはまだ残っているのでしょうか。
幡谷氏:
僕の手元にありますよ。流れで音声を収録しているので,合間の声も入っています。「Space Channel Michael!」とか。
一同:
おおーっ!
4Gamer:
それはすごく貴重な音声ですね。その後,ようやくSC5の発売となりましたが,当時の反響はいかがでしたか。
岡村氏:
ドリームキャストのタイトルとしては,圧倒的に女性の購買層が多かったという数字があって,「新規ユーザーを獲得する」という水口さんのミッションは遂行できたという手応えがありましたね。
吉永氏:
評判をすごく気にしていたはずなんですが,あまり覚えていなんですよ。ただ,個人的に気になった反応は「ゲームが短い」というものでした。
堀田氏:
漫画家の松本大洋さんがうららのイラストを描いてくれて,FAXが送られてきましたよね。すごい衝撃を受けた記憶があります。
吉永氏:
ありましたね! 漫画と言えば,「こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)」に“スペース刑事クララ”というキャラクターが登場するんですよ(笑)。「ちゃんとSC5が届いている」ことを実感しましたね。
4Gamer:
画期的なプロモーションの効果もあって,当時のゲーマーだけでなく,幅広いシーンに強烈な印象を残した存在だったと思います。
スペースチャンネル5“復活”のきっかけはオレンジ!?
さて,ここからは最新作「スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー」(以下,SC5 VR)について,お話を伺いたいと思います。
岡村氏:
企画の発端は2015年に開催されたオーケストラコンサート「Game Symphony Japan 14th Concert SEGA Special」でした(関連記事)。SC5の楽曲が演奏されて,すごく盛り上がっていたときに,幡谷さんが「これだけ盛り上がるんだから,もったいない。オカミネのところで作りなよ」と言われたんです。
幡谷氏:
覚えてないなぁ(笑)。
岡村氏:
それで,あらためて吉永さんに相談をさせていただく機会を設けました。SC5を応援してくれた人達への恩返しとして,「今,SC5らしいコンテンツを届けるなら」という観点で企画を考えることにしたんです。
でも,単に「パート3」として地続きの企画では新鮮味がないだろうと。そこで,新しい体験を提供できる“VR”による復活を模索することになりました。
4Gamer:
2016年の東京ゲームショウでは「スペースチャンネル5 VR ウキウキビューイングショー」が出展されていました。
岡村氏:
はい。弊社は決して大きな会社ではなく,最初から潤沢な予算を使えるわけではありません。何かきっかけがないかと考えていたところ,ふと思いついたのが,auさんのイメージカラーと,うららのコスチュームの色が同じオレンジだと。
4Gamer:
え,それがきっかけなんですか(笑)。
岡村氏:
最初は些細な思いつきだったんです(笑)。KDDIさんを紹介してくれたジャムズワークスの安藤さん(安藤 摂氏。SC5 VRのマーケティングやプロモーション,ビジネスプロデュースを担当)と一緒に企画書を作って,KDDIさんにプレゼンの機会を設けてもらいました。
幸運にもご担当者がSC5を知っていて,しかもファンだったということで「ぜひ一緒に何かやりましょう」と。それで突破口が見えた気がして,あらためて企画書を用意してセガさんにプレゼンをしたら,驚くべき速さで企画が通りました。もちろん,吉永さんが内部からサポートしてくれていたおかげですが,本格的なスタートはこのときですね。
4Gamer:
当時,KDDIはVR事業を推進されていましたね。
岡村氏:
KDDIさんは当時,VRコンテンツを携帯電話と同様にコミュニケーションの可能性の一つとして取り組みを始めていて,それが「Linked-door」という一連のVR体験コンテンツでした。その一環として,「ウキウキビューイングショー」を採用していただく形になったんです。
4Gamer:
なるほど。タイミングもちょうど良かったんですね。
岡村氏:
まさにそうです。いきなりブースを構えるのは予算的に大変でしたが,このご縁があったことで,ゲームファンに向けたキャッチーなコンテンツとしてSC5を披露することができました。お互いにすごく良い結果につながったと思います。
4Gamer:
「ウキウキビューイングショー」はその名のとおり,うららのTVショーを観覧者の1人となって体感できるコンテンツでした。
岡村氏:
当時,VRはまだ発展途上の段階で初めて触れる人が多く,ゴリゴリのゲームを届けることに懸念があったため,まずは「VRの世界に入って,見るだけでも楽しめる体験」にしたんです。
4Gamer:
SC5の世界に入って,うららやモロ星人の姿を間近で見られることにワクワクしました。
岡村氏:
ありがとうございます。幸いなことに「SC5をVRで体験できる」という話を聞きつけて,たくさんの人がブースに来てくれました。そこで「この世界でゲームもしたい!」という声をいただいて,我々としてもあらためて「ゲームの企画」を立ち上げるべきだと認識したんです。
4Gamer:
“SC5復活”の話があったとき,堀田さんはどのように思われましたか。
堀田氏:
僕は「えっ!?」って思ったんですよ。現代に合ったSC5を,自分の力でちゃんと作れるのか……と。
もちろん,SC5の開発は念願だったんですよ。ただ,当時は上のフロアから眺めていた“怖い人達”が今回もしっかり関わっているので(笑),「ヘタなことはできないぞ」というのが最初の正直な気持ちでした。実際には吉永さんが関わってくれたことで,本当に安心できましたね。
4Gamer:
栗原さんはどのような経緯で,SC5 VRに携わることになったのでしょうか。
栗原氏:
「ウキウキビューイングショー」のときは,1人のファンとしてブースに足を運びました。そのときに「これはVRに合っている」と感じたんです。
VR自体は2013年頃からハードとソフトが普及しつつありましたが,「VR酔い」などが発生するため,これまでのゲームをそのままVRゲームとして作るのは難しいという側面がありました。でも,「SC5だったらいけるんじゃないか」と漠然と思った記憶がありますね。
岡村氏:
実は「ウキウキビューイングショー」以前から,ちょっとした顔見知りではあったんです。それが,しばらくして東京ゲームショウのブースにふらっと現れ,「僕,SC5を作りたいんです」と直訴されました(笑)。
吉永氏:
どこかで聞いた話だな(笑)。
岡村氏:
20年前とは逆のパターンですけれど,私は“水口イズム”を継承してしまったのかもしれません(笑)。
栗原はプロペさんに在籍していたことがあり,社長の中 裕司さんにプログラマーとして鍛えられたという経歴があります。しっかりと“セガイズム”を持っていて,元々の縁もあったということで,プロジェクトに参加してもらうことになりました。
4Gamer:
ちなみに,栗原さんはSC5に思い入れがあったのでしょうか。
栗原氏:
当時はまだ学生でしたが,その頃からあまり型にはまってないゲームが好きで,ゲームのいろいろな可能性を感じられる作品として,SC5は強く印象に残っています。
街角で有名人を見かけたときのような感動を意識して
栗原さんが参加されてから,SC5 VRの開発がすぐに始まったのでしょうか。
岡村氏:
その頃はまだ細々と動いていた時期ですね。「ウキウキビューイングショー」から引き継いだものを,どのようにゲームとして組み立て直すのかという段階で,ほとんど栗原が1人で進めていましたから。
ただ,どこかで締め切りを設けなければいけません。SC5の20周年を迎える2019年の東京ゲームショウ出展,そしてアニバーサリーイヤーの発売を目標に掲げて,本格的に始動したんです。
堀田氏:
ゲームとしてプレイできるものを最初に披露したのが,2018年の闘会議でしたね。
岡村氏:
ゲームの今昔を楽しむブースの企画として,ドリームキャスト版とVR版を並べて体験することができました(参考記事)。
4Gamer:
闘会議の時点で,「うららの後ろで一緒にダンスをする」という設定になっていましたが,それ以前には別のアイデアがあったのでしょうか。
栗原氏:
最初は「プレイヤーが誰なのか」を決めることが課題でしたね。
堀田氏:
一時期,プレイヤーがうららになって踊っていたこともありました。設定としてはオリジナルと同じですが,VRなのでうららの姿が見えません。やっぱり「うららを見たい」という気持ちのほうが強くなってくるんですよ。
岡村氏:
うららが見えなくなっちゃうと,寂しいですよね。そこでアイデアを出し合って,「うららはプレイヤーの先輩」「プレイヤーは新米リポーター」とすることになったんです。
吉永氏:
テーマパークのアトラクションみたいな方向性ですよね。自分がチームの一員になって,「これから始まるぞ」というときに突然事件が起きる……と。
岡村氏:
東京ゲームショウで皆さんにプレイしてもらったときに,「自分の前にうららが歩いてくるドキドキ感が良かった」という反応をいただいたので,そこを大事に作ろうと思っていました。イメージとしては「タモリさんが来た!」みたいな(笑)。
4Gamer:
タモリさんですか!?
岡村氏:
そうです。街角でタモリさんを見かけたら,誰だって思わず振り返るじゃないですか(笑)。有名人のような感覚でうららと出会える……そんな入口を設けることが使命だと考えていました。プレイされた人のなかには「感激して泣いた」という方もいて,私も本当に嬉しかったんですよ。
堀田氏:
その気持ちは分かりますよ。僕も最初にスペースポートに入れたところで感激して,そこでうららが出てきたら,2倍以上の驚きがありましたから。
4Gamer:
今回の企画の発端である幡谷さんは,どのタイミングでSC5 VRをご覧になりましたか。
幡谷氏:
最初にゲームを見たのは,闘会議の前だったかな?
岡村氏:
幡谷さんは「あいつら,本当に大丈夫なの!?」と言いつつ,今回のプロジェクトをすごく気にかけていると風の噂に聞いていたんです。それが,いよいよ見に来られるということで,開発者全員がビビっていました(笑)。
幡谷氏:
でも,絶賛したんですよ。ラストでボスがパンチしてくるところも,すごい迫力でした。あとは「うらら,顔小さっ!」みたいな(笑)。ミーハーな感想ばかりでしたけれど,VRコンテンツは本当にやってみないと分からないということを,深く実感しました。
岡村氏:
映像だけでは,なかなか伝わらないですよね。
うららとプレイヤーの間に生じる“バディ感”がキーワードに
4Gamer:
闘会議や東京ゲームショウの後,開発状況はいかがでしたか。
栗原氏:
出展バージョンはステージ1だけだったので,そのほかのコンテンツをずっと作り続けて現在に至るという感じですね。そもそも,最初は「ステージ1だけ」の予定だったんです。
岡村氏:
ただ,イベント会場で皆さんに披露したことで,すごく評判が良かったり,SIEさんから「もっとボリュームがあったほうがいいですよ」とアドバイスを受けたりして,手応えを感じられたので,ボリュームアップを決めました。
吉永氏:
でも,最初のゲームデザインだとステージ1をプレイさせることしか想定していないから,「ステージを追加できるの?」という心配がありました。みんなの思い入れも強いから,「あの決めゼリフを言わせたい!」といった要望がどんどん挙がってくるんだけど,そんな時間も余裕もないんです(笑)。
それでもシナリオを作っていくうちに,うららと主人公の間に発生する“バディ感”というキーワードが見えてきて,徐々にその関係を変化させることで,全4ステージのストーリーをつなげられると思ったんです。
栗原さんに「ポーズ」の判定がどのくらい可能なのかを検証してもらい,それを受けてポーズのバリエーションを入れることで,単調にならない構成を考えていきました。
栗原氏:
VRアクションゲームとしても,ステージ2以降は結構激しく動くことになりますし,いろいろなポーズをとる場面が出てきますね。
岡村氏:
東京ゲームショウに出展したときに,「上」と「下」以外のポーズも入れていたんですが,初見でも意外に対応ができる方が多かったので,ほかのポーズを入れても大丈夫だろうと判断しました。
その結果,まるごと1本のゲームを作るくらいの開発規模になったので,堀田にディレクションを担当してもらうことになったんです。
堀田氏:
「ステージ1を作って終わり」だと思っていたら,吉永さんがシナリオ制作に本気を出してきたという話が聞こえてきて,いつの間にかそういうことになっていました(笑)。
吉永さんとはセガ時代から,一緒に仕事をしたいという話をしていたんですが,まさかそれがSC5になるとは夢にも思いませんでしたよ。
4Gamer:
当時,Rezチームだった堀田さんにとって,SC5の最新作を手がけることにはどのような思いがありましたか。
堀田氏:
多少の遠慮があったかもしれません。だから,SC5 VRに関わることが決まって最初にしたことは,湯田さんや宮部さんらがゲームショウに来てくれたときに,お伺いを立てることでした(笑)。
実は「ウキウキビューイングショー」を開発していたときから,かつてのソフト9研のメンバーにすごく助けてもらっていました。そこで,SC5 VRではオリジナルの開発メンバーにオファーをして,できる限り当時のスタッフが関わる環境を整えてもらいました。
岡村氏:
SC5は,ソフト9研のみんなの気持ちが込められた作品です。当時のメンバーにもう一度集まってもらえれば,お客さんに対して説得力があるものになりますし,私たちも幸せになれます。
結果的に吉永さんや幡谷さんも巻き込めました(笑)。SC5のサウンドを作った人が,SC5 VRのサウンドを新たに作ってくれる,という事実に本当に感謝しています。
幡谷氏:
その件では僕がご迷惑をおかけしてしまって,申しわけないと思っています。セガ側としてはあくまでライセンスをお貸しする一環として,サウンドも一緒に作ってお貸しするという形になるので,まずは本業を優先せざるを得ないという面があって,長くお待たせしてしまいました。
堀田氏:
いやいや,こちらも待たせていましたから(笑)。最初に「幡谷さんが入る」と聞いたときは「まさか?」みたいな気持ちでした。妥協をされませんし,細かいところまで分かってらっしゃるので,気が引き締まる思いでした(笑)。
4Gamer:
堀田さんがそこまで恐縮されていると,栗原さんはもっとプレッシャーを感じたのでは?
栗原氏:
確かにそうですね(笑)。
吉永氏:
いや,栗原さんはプレッシャーに押されてしまうような雰囲気がなくて,どんなときでもフラットに対応してくれた印象がありますよ(笑)。
岡村氏:
中さんにしっかりと鍛えられたからじゃないですか(笑)。大変な時期でも,にこやかにコミュニケーションを取っていて,「これはすごい才能だ」と思いました。
堀田氏:
僕も「ヘタなことはできない」という気持ちが強くて,彼にはかなり無理なお願いをしていましたから……。
いやあ,皆さんには,すごく助けてもらっていますよ(笑)。
4Gamer:
それではSC5 VRの開発において,注力したポイントは教えていただけますか。
栗原氏:
VR空間にキャラクターが登場するゲームということで,うららしかり,モロ星人しかり,プロポーションや表情にはすごく気を遣っています。
それから「プレイヤーの目線」です。ゲーム中に「こっちを見て」ということを言えないときに,目線の方向によっては大事な演出を見逃してしまう可能性があります。いかにして自然に目線を誘導するのか。ここも最後まで気を遣うところですね。
幡谷氏:
VRなので特定のカメラを設置できないんですが,その対処法がすごくいいと思いました。とあるシーンでは,見てほしい方向からのカメラ映像が背景にあるモニターに映っていたんですよ。「これはうまいな」と思いました。
4Gamer:
なるほど。見せ方を工夫して,設定を崩さないようにしているんですね。
堀田氏:
SC5 VRの世界は「パート2の3年後」という設定になっているので,宇宙船のデザインも3年の歳月を経て進化しています。ただ,元のデザインが意外にシンプルだったため,凝りすぎると違和感が出てしまうし,逆にシンプルすぎると画が持たない。VRだとそれが如実に現れてしまうので,そのバランスには苦労しましたね。
4Gamer:
舞台や背景のデザインは堀田さんが担当されているのでしょうか。
堀田氏:
はい。SC5の映像を何度も何度も見直して,ひたすら要素を拾って“目コピ”するような感じです。「パート2の3年後」という設定に合わせながら,ちょっと現代風の要素を取り入れたり,逆にわざと崩して間抜けな感じにしたりと試行錯誤を繰り返しました。
4Gamer:
そういえば,水口さんもSC5 VRを体験されていると聞いています。どのような反応だったのでしょうか。
岡村氏:
水口さんには製品版に近いものを体験していただきました。ステージ3でゲームオーバーになったときに,「オレはこのヘッドセットを外したくない。SC5の世界にずっといたい!」と笑いながら言われました。ゲーム中はうららの顔をすごく気にしていて,ずっとのぞき込んでいましたね(笑)。
最後に「オレの想像を超えたものができていてビックリした」「“ミュージカルの一員になる”という体験が,ついに実現できた」という感想をいただいたことにも感激しました。
4Gamer:
20年の時を超えて,ついに夢が叶ったとも言えますね。
先ほどのお話にありましたが,幡谷さんが手がけるSC5 VRの新曲を含む“20周年記念ベストアルバム”「スペースチャンネル5★20th anniversary『ぎゅんぎゅんセレクション』」も発表されています(U/M/A/Aから2019年12月18日発売)。こちらもファンにはたまらないアイテムです。
シリーズ全作品のベスト盤という位置づけの内容ですね。SC5の20周年を記念した選曲になっています。SC5 VRの楽曲も収録されていますが……ゲームの予習として聴いていただければと思います。
岡村氏:
ベスト盤ではありますが,2枚のディスクを通して聴いていただくと新しい発見があると思います。すごくいい出来なので,ぜひ手に取ってください。
4Gamer:
20年分の思いが詰まったアイテムだと思います。
最後になりますが,皆さんから一言ずつ,ファンに向けてメッセージをいただけますか。
岡村氏:
とにかく「まずは体験してほしい」というところに尽きます。PVやプレイ動画だけでは伝わらない感動が,VRにはたくさんあります。VRの機材を揃えるのは大変だと思いますが,それに見合う価値の体験があると自負しています。
堀田氏:
ファンの方にはもちろんですが,今回初めてSC5を遊ぶという人も幸せになれるような体験を用意しました。ただ踊るだけでも絶対に楽しめますので,ぜひチェックしてほしいですね。
栗原氏:
いろいろなVRゲームがありますが,SC5らしい特別な体験ができるように頑張って作ってきました。20年ぶりのSC5最新作としても,新しいVRゲームとしても楽しめる作品になっていますので,ぜひ遊んでください。
幡谷氏:
今回,モロ星人がしゃべったり歌ったりするというシーンがあるんですが,その演出を聞いたときに,僕のギアがかなり上がりました(笑)。ステージ1には“SC5の世界に入る驚き”がありますが,ステージ2以降でも全てにおいて,新しいSC5の世界が待っています。その驚きを,新しい音と共に感じてほしいですね。
吉永氏:
そうですね。“SC5の世界の一員になれる喜び”というのが,想像以上に大きなものになると思うので,ぜひ楽しみにしていただきたいです。
それから,プレイ後に消費カロリーを算出する機能がありますが,その道のプロによる監修を受けていますので,エクササイズの一環としてもいかがでしょうか(笑)。
4Gamer:
SC5 VRの発売がますます楽しみになってきました。長時間にわたり,貴重なエピソードをたくさんお話いただき,ありがとうございました。
「スペースチャンネル5 20th anniversary
ウキウキ ミュージック フェスティバル」イベント概要
【公演日時】
2020年3月27日(金)19:30 開演(一部,15:00会場入場対応)
【公演場所】
渋谷ストリーム ホール
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-21-3
【出演者】
LIVE:YMCK
DJ:RAM RIDER
VJ:DEVICEGIRLS
ダンサー:NAHO 他
ホーンセクション:[Trumpet] 野口勇介,[Trombone] 湯浅佳代子,[Sax] 谷村庸平
トークゲスト:「スペースチャンネル5」シリーズ開発チーム,中島由貴(以上,敬称略)
【チケット内容】
ローソンチケット/1人4枚まで <Lコード:35334>
※チケット購入は「こちら」
ローソン・ミニストップ店内Loppi直接購入
・スタンディング 通常チケット:5555円(税込)
・スタンディング プレミアムチケット(限定グッズ付き):1万1111円(税込)
※チケットの数量には限りがあります。あらかじめご了承ください。
※オールスタンディング
※整理番号順入場(プレミアムチケット優先)
※1ドリンク別(500円)
※未就学児入場不可
【主催・企画・制作】
「スペースチャンネル5」20th anniversary ウキウキ ミュージック フェスティバル実行委員会
【協力】
株式会社セガゲームス,ユーマ株式会社,Gatebox株式会社
【特別協賛】
日本ユニシス株式会社
【特設サイト】
https://sc5-vr.com/musicfes
【問い合わせ先】
concert-info@aetas.co.jp
スペースチャンネル5 公式ポータルサイト
「スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー」公式サイト
(C)SEGA
(C)SEGA (C)Grounding.Inc
- 関連タイトル:
スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー
- 関連タイトル:
スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー
- 関連タイトル:
スペースチャンネル5 VR ウキウキビューイングショー
- 関連タイトル:
スペースチャンネル5 パート2
- 関連タイトル:
スペースチャンネル5 パート2
- この記事のURL: