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「Oculus Quest」プラットフォームをさらに強化。Facebookが独自イベント「Oculus Connect 6」で6つの発表を行う
新作ハードウェアの発表はなかったものの,初日の基調講演には恒例どおりにFacebookのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が登壇していくつかの発表を行った。
Zuckerberg氏は,「Questは,生産するスピードで売れている」と話すほど好調で,最近では通算100億円のアプリセールスを記録。その20%はQuest対応アプリによるものであるらしい。
本稿では,基調講演でアナウンスされた新たなサービスやシステムを項目にわけて紹介していこう。
Rift SタイトルがQuestにも対応できる「Oculus Link」
いずれは,Riftの次世代投入で,PC接続型ハイエンドシリーズのテコ入れを行うかもしれないが,Facebookは3年以上も前からOculus Riftのためにソフトを開発してきた古参のデベロッパたちを見捨てない形で,そのセールスを手助けする最も現実的な手法を編み出した。それが2019年11月にサービス開始予定という「Oculus Link」だ。
Oculus Linkは,Questが備えるUSB Type-Cポートを利用して,USBケーブルでPCへと接続することによって,QuestでRiftのVRソフトを利用できるようにするというものだ。Rift SとQuestでは,内蔵するディスプレイパネルの種類など,スペック面での違いがある。だが,Zuckerberg氏に言わせると,そのギャップは「イノベーティブなソフトウェアの新技術で埋め合わせることに成功した。Questの購入時にはUSB 2.0ケーブルが付属していたが,(Oculus Linkで)必要になるのは,USB 3仕様のケーブルで,サードパーティ製品を使ってもよいし,Oculusが自社開発中である長さ5mのUSBケーブルを購入してもいい」とのことだ。USB Type-Cを使用することで,高画質なグラフィックスの出力に必要な電力もQuestに伝送できるという。
ソフトウェアデベロッパにとっては,比較的簡単なパッチで個々のVRアプリをOculus Linkに対応させられるようだ。今回のイベントでは,元々はRift S専用ゲームとしてアナウンスされていたアクションRPG「Asgard's Wrath」(Sanzaru Games,10月10日発売予定)と「Stormland」(Insomniac Games,11月14日発売予定)といったグラフィックヘビーな新作タイトルが,Oculus Linkを利用してプレイ可能な状態で展示されていた。
Questでのハンドトラッキングが2020年中にも実現へ
Questに関する2つめの大きな発表は,ハンドトラッキングへの対応だ。ここで驚くべきは,腕や指に装着するコントローラや外部センサーのようなハードウェアは一切必要とせず,Questの前面に存在するカメラを利用して実現できているということだろう。
実際にプレイした様子は,後日のレポートに譲りたいが,メニューの選択からサポートタイトルの利用まで一貫して付属の「Touch Controller」(以下,Touch)を操作する必要はなく,より自然な操作を行えることになる。
これはつまり,TouchのようなVR専用入力デバイスを使っての操作に慣れないユーザー層を一気に開拓できる可能性を秘めており,とくに企業のトレーニングや教育といった幅広い分野にも,「コントローラレスVRデバイス」が活用されていくことになるはずだ。実際にZuckerberg氏は,「Oculus for Business」という企業サポートの枠組みを,今回発表している。
なお,Questによるハンドトラッキングは,2020年の早期にもクローズドβwを開始する予定で,段階的にアップデートが行われていく見込みだ。
QuestがGo向けアプリとPassthrough+をサポート
ただ,無料のプラットフォーム変更サービスは,今のところ2019年内に限定しているとのことで,FacebookがGoからQuestへの早期乗り換えを奨励しているというのは,Goを買ったばかりのユーザーにとっては,ちょっと気になる部分かもしれない。
Facebookが目指す新たなソーシャル体験
Facebook Horizon
これは,ユーザーが仮想空間を他のユーザーと共有するというコミュニケーションサービスで,それぞれのユーザーが自分の3Dスペースと,ピクサー調の3Dアバターをかなり簡単に作り出せるのが特徴になっている。すでに,複数ユーザーで映画を観たり,ミーティングを開いたりといったことは,既存の「Oculus Home」アプリでも可能だが,そうしたイベントを,自分の作ったVRスペースの中で動き回りながら楽しめるというのがコンセプトになっている。
他のユーザーを招待する形で自分のVRスペースを共有するのか,見ず知らずの人も飛び込み参加できるのかは分からなかったが,Facebook Horizon内でユーザーは,「Telepod」(テレポッド)というポータルを使って,別の世界へと移動していくことそうだ。
それぞれのユーザーに割り当てられたVRスペースは同じサイズであるらしいが,すでにFacebookが「Wing Strikers」というフライトコンバットゲームを開発しており,プラグインのような形でどのVRスペースでも自由に楽しめるようになるようだった。
Zuckerberg氏がARデバイス"開発を正式にアナウンス
基調講演のあった25日は,Amazon.comも音声アシスタント機能「Alexa」に対応するスマートグラス「Echo Frames」を発表しているので,ライバルに釘をさす目的で「Facebookも次の布石を打っていますよ」という程度の発表だったのかもしれないが。
基調講演では,同社のR&D部門であるFacebook Reality Labsが開発中という,異なる情報をレイヤー化して示すARデバイス向け技術「LiveMaps」の発表もあった。トレイラーも公開済みなので,興味ある人は動画を参照してほしい。
次の時代に向けて脳波センサーも開発中
Zuckerberg氏は,次世代もしくは次々世代のVRまたはARデバイスに対応すべく,独自の脳波センサーを開発中であることも明らかにした。
Facebookは,北米時間9月24日に,CTRL-Labsという企業を最大10億ドルで買収したことが報じられた。そのCTRL-Labsが手がけるリストバンド型のセンサーデバイスが「すでに存在するもの」として,今回の基調講演で紹介されたのだ。
10億ドルと言えば,高額買収が話題となったOculus VRの20億ドルに比べると半分ほどの投資額である。CTRL-Labsを率いるのは「Internet Explorer」を生み出したことでも知られる脳波学者のThomas Reardon(トーマス・リアドン)氏。今後は,Facebook Reality Labsの一部門として研究開発を続けていくとのことだ。
Oculus Connect 6公式Webサイト(英語)
- 関連タイトル:
Meta Quest(旧称:Oculus Quest)
- この記事のURL:
(c)Facebook Technologies, LLC