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[SPIEL\'18]指揮者をテーマにした記憶力ゲーム「Concerto」プレイレポート。指揮棒を振ってオーケストラ気分が味わえる
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印刷2018/11/02 17:54

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[SPIEL'18]指揮者をテーマにした記憶力ゲーム「Concerto」プレイレポート。指揮棒を振ってオーケストラ気分が味わえる

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 オーケストラを操る指揮者にとって,譜面を見ずに指揮するのは一種のステータスだったりする。単純に頭の中で曲を再生すればいいわけでなく,各楽器への指示まで把握しておく必要があるからだ。このような理由から,「暗譜で振ってこそ,その曲を真に理解している指揮者といえる」と考える音楽ファンもいるくらいに。
 同時に指揮者には,クセのある演奏家達をうまくコントロールし,彼らに相応しい曲を演目に選ぶマネージメント能力も必要となる。音楽的素養と管理能力,この2つがあってこそ,マエストロとして尊敬される指揮者になれるのだ。

 Uwe Bursik氏がゲームデザインを担当したSkellig Gamesの「Concerto」も,このような指揮者像に基づいている。そんな同作がSPIEL'18の会場に展示されていたので紹介しよう。「誰が最も優れた指揮者か」を審査するコンクールに参加し,自らの能力を証明するという設定の本作。そのとき重要になってくるのは,まさに上で述べた楽器・演奏曲の選択や記憶力なのだ。

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「Concerto」公式サイト



楽器を集めて,間違わずに曲を演奏しよう


 まずはゲームルールを説明しよう。
 ゲーム開始時,プレイヤーは「楽器カード」5枚と「スペシャルカード」1枚をそれぞれの山からドローする。この楽器カードのうち2枚はプレイヤーの初期オーケストラとして場に出し,残りの楽器カード3枚とスペシャルカード1枚は手札として持っておく。ここで重要なのは,「拍パターンカウンター」をドローしてその内容を確認し,場の楽器カードと対になるようにしてセットすることだ。
 ゲーム中にプレイヤーが演奏する曲を成功させるためには,その曲が指定する楽器を演奏することになるが,その時にはこのカウンターに描かれた拍パターンどおりに指揮をすることで,対応する楽器が演奏できるという仕組みになっている。

拍パターンカウンター
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 ただし,ある楽器がどの拍パターンだったかは,ゲーム中に常に確認できない。なぜならば,このカウンターはほかのプレイヤーに向けた状態で楽器の前に置かれるからだ。これはプレイヤーが「自分のオーケストラの楽器の種類は把握しているが,どう指揮をすればいいかは記憶力頼みにならざるを得ない」ことを意味している。この点がConcertoの難しさであり,同時に曲の演奏に成功すれば大きな達成感を得られる部分でもあるのだ。

えーっと,どんな拍パターンだっけ……
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拍パターンカウンターは,ほかのプレイヤーからはこのように見える。間違った指揮をしたら,遠慮なくブーイングしてやろう
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 各ターンでプレイヤーが実行できるのは,以下の5種類から1つのアクションだ。

 まず,手札の楽器カードを新たにオーケストラに加えること。そのとき,上に述べた手順で拍パターンカウンターも合わせてセットするのは言うまでもない。またプレイヤーが拍パターンを覚えやすくするために,既に置かれている楽器カードの順番を変えることは認められず,新しくオーケストラに追加する楽器カードは常に一番左側に並べていくことになる。
 次に,同じく手札のスペシャルカードをプレイすることもできる。このスペシャルカードは,対戦相手の楽器の順番を変えて記憶をあやふやにしたり,逆に時間が経ってうろ覚えになりつつある楽器の拍パターンを確認したりと,うまく使うことでゲームを有利に進めることができる。
 3番目は,手札の楽器カードやスペシャルカードを交換することだ。このとき,任意のカードを1枚だけ交換してもいいし,手持ちのカードすべてを交換してもいい。

スペシャルカード
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 プレイヤーの勝利に直接つながるのが,次の4番目のアクションだ。場に出された3枚の異なる難度の曲カードから1枚を選んで演奏する。曲カードに指定された楽器が自分のオーケストラにすべて揃っている場合にのみ実行が可能で,カードに記された楽器を左側から順に演奏していくことになる。

下の3枚が曲カードだ
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 各楽器の拍パターンを記憶どおりに正しく振った場合は,曲の演奏は大成功。その場合は,難度に応じて曲カードからポイントを獲得できる。
 ただし,その後にはオーケストラの中で演奏に使用した楽器カード1枚を選び,ゲームから除外しなければならない。また,いずれかの楽器の拍パターンを間違えた場合も,その楽器や曲カードはゲームから除外される。つまり曲が成功しても失敗しても楽器カードは廃棄されるわけで,せっかく覚えた拍パターンの順番を,また再び覚え直さなくてはならなくなる。この点が,本作のやりごたえとなっている。

 さらに場合によっては,場に出ている曲カードに合った楽器がすぐには揃わない,ということもある。そんなときは,曲カード1枚を山札のカードと交換できる。これが5番目のアクションというわけだ。

 上記いずれかのアクションを終えたら,手札が再び楽器カード3枚とスペシャルカード1枚になるように補充を行う。1人のプレイヤーのターンが終わったら,時計回りで次のプレイヤーのターンへと続き,最初に一定量のポイントを集めたプレイヤーが勝利,というのが本作の大まかな概要である。

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記憶と運任せの勝負……と思いきや,戦略性も意外と重要


 ルールの紹介からも分かるように,Concertoは拍パターンを覚える記憶力がものをいうゲームだ。しかし楽器の順番が頻繁に変わるので,なかなかどうして難しい。試遊の相手をしてくれたブーススタッフは,「記憶のテクニックは人それぞれだけど」と断ったうえで,「左から順に,丸,上下,交差……と覚えていくよりは,楽器の特徴と拍パターンとの連想で記憶した方がいいかも」と教えてくれた。

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 一方で,本作が単なる記憶力一辺倒のゲームかというと,そうでもない。自分の手元の楽器カードやオーケストラの編成を踏まえ,編成が揃えやすく拍パターンも少ない――つまり簡単で獲得ポイント少ない曲を選ぶか,反対にハイリスク・ハイリターンの大作に挑むかといった判断は,プレイヤーに任されている。
 またゲーム中で使われる楽器カードは,弦楽器の14枚からギターの3枚まで,楽器の種類によって枚数が異なっており,この情報は全プレイヤーに開示されている。各カードのドローやプレイにあたって,カードの出現確率を考えるという戦略をとることもできる。

どの曲カードをプレイするか,そのために手札からどの楽器を場に出すか,といった部分にも駆け引きがある。本作が処女作だというデザイナーのUwe Bursik氏によれば,こうしたカード周りのバランス調整に一番苦労した部分とのこと
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 さらに,プレイ時間が30分と短めな点も本作の長所だろう。プレイ人数(2〜4人)が増えるとゲームの終了条件である獲得ポイントの最大値が下がるので,最大人数の4人でプレイしてもさくさく進む。またターン終了時に手札の枚数が完全回復するのも,テンポの良さにつながっていると感じられた。拍パターンの記憶に脳みそを使うので,それ以外の部分が軽めなのは実にありがたい。

指揮者カードを使った拡張ルールでは,記憶力がより問われることになり,ポイント競争もよりダイナミックになる。ところで彼ら,どこかで見た名前のような……
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 プレイ後,ゲームデザイナーのBursik氏に話を聞いてみたが,本作のアイデアは,音楽を聴きながら車を運転していたときに突然思いついたそうで,体を動かしながら楽しく遊べるゲームとして,指揮者をテーマに選んだとのことだった。
 曲カードやスペシャルカードなどにややテキストが残っているものの,楽器カードや拍パターンカウンターなどはアイコン化されていて,言語依存度はあまり高くない。全体的なコンポーネントのデザインもシンプルで可愛らしいので,ゲーム会のネタの一つとして,あると嬉しいタイトルと言えそうだ。

ゲームデザイナーのUwe Bursik氏
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