プレイレポート
「アウター・ワールド」拡張DLC第2弾“エリダノス殺人事件”プレビュー。ブラックユーモアに溢れる探偵ごっこを存分に味わえる
「わぁ、わぁ、わぁ!これぞリッツォ!パープルベリー・ナッツハットへようこそ。素敵な素敵なお客様!ちっぽけな私に存在価値を与えてくれて、感謝いたします!」
2019年10月,Private DivisionとObsidian Entertainmentがリリースした「アウター・ワールド」(PC / PlayStation 4 / Xbox One / Nintendo Switch / 原題 The Outer Worlds)は,一見するとありふれたシューター要素をまぶしたオープンワールドRPGだ。実際のゲームプレイもすごく目新しいというわけではないけれども,このゲームは大いに光る魅力があった。
「The Outer Worlds」公式サイト
それは愉快痛快な物語,奇想天外な人物,四分五裂な分岐。おおむねビデオゲームのレビューにおいて「ストーリー」とざっくばらんに評される類の素質が,ずば抜けて優れていたのだ。だから筆者は以前,このゲームの本質はややビターなスラップスティックSFアドベンチャーであると,ダグラス・アダムスの名作小説「銀河ヒッチハイク・ガイド」を比較対象にして論じている。
「アウター・ワールド」拡張DLC第1弾“ゴルゴンに迫る危機”レビュー。すべての謎と陰謀が明らかになる最後の選択,あなたは何を選ぶのか
2019年にPrivate DivisionとObsidian Entertainmentからリリースされた「アウター・ワールド」は,ハルシオンなる銀河を舞台に,人情豊かな仲間たちと共に愉快で痛快な冒険を楽しめるRPGだ。同作の拡張DLC第1弾「ゴルゴンに迫る危機」がリリースされたので,レビューをお届けしたい。
そのため,2021年3月17日(日本時間22:00予定)のリリースが予定されている拡張DLC第2弾の「エリダノス殺人事件」※というタイトルを聞いたとき,思わずニヤリとしてしまった。ビデオゲームにおいて殺人ミステリーは珍しいものの,全く例がないわけでない。古くは堀井雄二氏の「ポートピア連続殺人事件」があり,ケレン味の強いカプコンの「逆転裁判」シリーズも有名だ。
ただ,そこにSF要素が加わるとなると,そのトーンはよりマニアックになる。ある意味,DLCでなければ挑戦できない分野と言えるだろう。
※価格は1650円。Nintendo Switch版のみ配信日は未定です。
※DLCをプレイするには,同じプラットフォームに「アウター・ワールド」本編が必要です。
さて,そもそもこのたび,主人公ならびに主人公が奪い取った密輸船「アンリライアブル」(英語表記はUnreliable。ひどい名前だ)の面々が殺人ミステリーに巻き込まれた発端は,この船の航海士でありツッコミ役も兼ねるAI「ADA」が,危険なアステロイドベルトを航行中に見ていたメロドラマにある。
それはヘレンという美女(実はとても退屈な本名があり,これは作中で明かされる)が巨悪に立ち向かうという,このハルシオン星系の生命体のほとんど誰もが過酷な労働の合間に観る類のものだ。今回もまた,ヘレンは何かしらの恐るべき悪と対峙するが,作中で撃たれてしまう……。そして,それを待っていたかのようにヘレンが本当に死亡したというニュースが流れる。
一体,ヘレンは誰に殺されたのか。どのように,あるいはなぜ。その場にいたアンリライアブルの誰もが,愛すべきヒロインの訃報と同時に湧き出した巨大な謎に脳を支配されるなか,(極めて都合のいいことに)ヘレンのスポンサーである社長からADAに連絡があり,この事件を解決するように依頼される。果たして,事件の真相やいかに?
このように,本来であればミステリーらしくシリアスなイントロを挿入すべきところでも,やはり「アウター・ワールド」はそのゆらゆらしたユーモアを崩さない。
まず,宇宙航海用AIが昼間からメロドラマを見て主人公と嬉しそうに感想を共有している時点でおかしいし,殺人事件について依頼してきた社長はなぜか同じ回線を共有する他の男とずっと口論している。そして事件現場である惑星エリダノスに着いてからも,変な帽子を被った男が慇懃無礼に話しかけてくるのだ。
もはやハルシオンにおいて,誰かの死を真面目に悲しむヤツなんて10人に1人もいるのだろうか(いや,そんなにはいないか)。そんなモラルを含めて,この世界の住人は愛すべきバカばかりだ。本編の醍醐味でもあった,変人たちの乱痴気なSFユーモアは依然として健在であり,主人公が50メートルを歩くたびにツッコミ不在のボケが飛んでくる。何なら,それに対して主人公が特大級のボケを投げつけたり,銃弾というツッコミを返すことだってできる。
もちろん,真面目に事件の捜査をしたっていい。ありがたいことに,現場の捜査官からは「最新の探知機」とやらを渡され,これによって「ウィッチャー3」の探偵パートのように,事件現場に遺された痕跡を捜索したり分析したりできる。
ただ,そうは言っても「アウター・ワールド」である。設計者が間違って,探知機の図々しさのレベルを「甚だしい」に設定してしまったために,自らが検知した証拠に対してうだうだと失礼なことを述べてくれるオマケつきだ。
とにかくこの探知機のおかげで,主人公はヘレンや関係者の痕跡をたどり,少しずつ事件の真相に近づいていくことになる。メインクエストを進めてもいいが,脇道であるサブクエストや探索のなかで証拠が見つかることもあり,そうした証拠は本拠地のペントハウスで照合することができる。こうして被疑者を1人ずつ絞っていく過程は,そのフランクな世界とは対比的にミステリー作品として十分楽しめるものになっている。
ミステリーという題材もそうだが,今回のDLCはいよいよ「アウター・ワールド」の作風を完全に活かす方向へ進んだと思える。冒頭で触れたように,「アウター・ワールド」のゲームプレイは決して斬新とは言えない。コアとなるシューターのメカニクス,またRPGのシステム,いずれもゲーマーにとってはありふれたものであり,遊んでいてコントローラを投げたくなるほどの不満はないが,夢中でかじりつけるほどの魅力に溢れているとも言い難い。
けれども,このゲームには秀逸なテキストと演技があった。数々のストレンジャーとの出会い,そして別れ。これこそ,平均的なゲームプレイを補ってあまりある価値だ。「アウター・ワールド」はスラップスティックSFを,読み,聞き,見て,何よりも,遊ぶゲームだったのだ。
「エリダノス殺人事件」はミステリーという元々テキスト媒体と相性のいい題材を選びつつ,数々の人物が被疑者あるいは被疑者の関係者としてメインとなる事件に関連しているため,プレイヤーの興味をしっかりとかき立てる。戦闘は発生すること自体が稀であり,ほとんどは演出的なものだ。それよりブラックユーモアに溢れる探偵ごっこを存分に味わってくれ,というバランス感覚になっていて,自分たちの作品の持ち味をよく理解した,秀逸なDLCに仕上がっていると筆者は感じた。
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メールインタビュー
今回,4Gamerでは「アウター・ワールド」のゲームディレクター/シニアナレティブデザイナーを務めるメーガン・スタークス(Megan Starks)氏,共同ディレクターのティム・ケイン(Tim Cain)氏にメールインタビューを実施した。その回答をお届けしよう。
質問1:拡張DLC第2弾「エリダノス殺人事件」のテーマを教えてください。
メーガン・スタークス氏:
「エリダノス殺人事件」は,プレイヤーが有名女優であるハルシオン・ヘレン(Rizzoのスペクトラムウォッカ製品ラインのスポークスパーソン)の早すぎる死(非常に疑わしい)を調査するSFアドベンチャーです。誰がヘレンを殺したのか,その理由を明らかにすることで,プレイヤーはハルシオンのコロニー全体を脅かす荒涼とした危険な陰謀に巻き込まれていくことになります。
質問2:拡張DLC第1弾「ゴルゴンに迫る危機」の反響やフィードバックはどのようなものでしたか。
メーガン・スタークス氏:
プレイヤーの反応やフィードバックは,そのほとんどがポジティブなものでした。私たちは「アウター・ワールド」からプレイヤーが愛するものを追加しただけでなく,Discrepancy Amplifierのようなフィーチャーや,より多くのシネマティックスとカットシーン,ユーモアとロールプレイの機会,ユニークで記憶に残る戦闘,そして仲間との出会いなどを新たに提供することができました。
質問3:第1弾と第2弾では差別化を意識しましたか。それとも継続性を意識したのでしょうか。
メーガン・スタークス氏:
どちらのDLCも「アウター・ワールドのケースファイル」という壮大なテーマを共有しており,チープなSFアドベンチャーやフィルム・ノワールの影響を受けています。ですが,それぞれのDLCは別個のものとして,自己完結型の体験とストーリーになっています。
ティム・ケイン氏:
どちらのDLCも,プレイヤーはハルシオン・コロニーの新しいエリアを探索し,そのディストピア的な性質をさらに明らかにしていきます。2つのDLCはお互いに,そして本編のメインストーリーと密接に関係していると考えています。それらは暗示的ではありますが,直接的につながっているわけではありません。
質問4:「エリダノス殺人事件」は“最後の拡張DLC”とのことですが,これで「アウター・ワールド」のプロジェクトは終了になるのでしょうか。その場合,スタジオとして次の目標はどのようなものになるでしょうか。
メーガン・スタークス氏:
「エリダノス殺人事件」は,「アウター・ワールド」の第2弾かつ最後の拡張DLCです。現時点ではIPの今後の計画についてお話できませんが,スタジオとしてはゲームを作り続けていきますし,すでに大小さまざまなプロジェクトに取り組んでいるところです。
ティム・ケイン氏:
もし,これで「アウター・ワールド」の仕事が終わってしまったら……悲しくないですか。そうでなければ良い,と思っています。
(左から)メーガン・スタークス氏,ティム・ケイン氏
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