インタビュー
99人で戦うバトロワ系テトリス「TETRIS 99」はどのようにして生まれたのか。任天堂のキーマンにリリースまでの道のりなどを聞いた
TETRIS 99は,テトリミノ(ブロック)をうまく並べ,横一列にラインを揃えて消していく,というテトリスの基本ルールはそのままだが,99人中最後の生き残り「テト1」を目指すという目的が,従来のテトリスとは異なっている。
さらに,多くのラインを揃えると,お邪魔ブロックを送りつけ,対戦相手を攻撃することができる。相手を倒していくと,「K.O.バッジ」が手に入り,自身の攻撃力を上げられる。
また,ただテトリミノを消していくだけでなく,テトリミノが積み上がった相手を選ぶ「とどめうち」,K.O.バッジを持つ者を攻撃にする「バッジねらい」,自分を狙う者全てに反撃し,その人数に応じて攻撃力に補正が掛かる「カウンター」,そして攻撃1回ごとに狙う相手を変える「ランダム」という4つの「作戦」が選択でき,これが奥深い戦略を生んでいる。
最初は「ランダム」でなるべく目立たないように動き,強敵同士がつぶし合いを始めたらその隙に「とどめうち」でバッジを集め,攻撃力を上げていく……といった生き馬の目を抜くバトロワらしい駆け引きも可能なのだ。
アイデアの斬新さもさることながら,ゲームとしての取っつきやすさと奥深さ,30秒ほどでマッチングし,対戦中もラグを感じないゲームの快適さから,ついつい「もう1戦!」と遊んでしまう中毒性の高いゲームに仕上がっている。
2019年2月14日のNintendo Directで発表され,終了直後,Nintendo Switch Online加入者に向けて無料で配信されるという,衝撃的なリリースとなった本作だが,気になるのは,「99人でテトリスをするというアイデアがどこから生まれたのか」「開発はどのように進められたのか」というところだろう。
そこで今回4Gamerでは,任天堂を訪問し,本作のディレクターである中田隆一氏と,プロデューサーの木梨 玲氏に話を聞いてみた。
「TETRIS 99」ディレクター 中田隆一氏 |
「TETRIS 99」プロデューサー 木梨 玲氏 |
企画会議の中でふとつながったテトリス×バトロワのビジョン
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずはじめにお二人が,「TETRIS 99」にどのように関わっておられるのか,過去にどのようなタイトルを手がけてこられたかをお聞かせください。
中田隆一氏(以下,中田氏):
中田といいます。「TETRIS 99」ではディレクターとして,企画の立案をはじめとしたさまざまな業務に関わっています。過去には「メトロイド」シリーズや,「さわるメイドインワリオ」「ルイージマンション2」などの開発に携わっていました。
木梨 玲氏(以下,木梨氏):
木梨です。「TETRIS 99」ではプロデューサーとして参加し,商品としてまとめていくところをやりました。ほかのタイトルですと入社以来ずっと「ポケットモンスター」シリーズに携わっています。
4Gamer:
テトリス×バトロワというアイデアの斬新さが目を引きますが,「TETRIS 99」の企画が立ち上がった時期や経緯をお聞かせください。
企画がスタートしたのは2018年の4月ごろです。弊社では週に1度,開発者たちが集まって新企画の話をする場が設けられていて,そこでインスピレーションを得たのがきっかけでした。
その会議の中でたまたま「今は,バトロワもののゲームが流行しているね」という話題になったのですが,別のところで「そろそろテトリスの新作を作りたいね」という話があったことをふと思い出したんです。そのときに2つの話が自分の中で瞬間的に結びついて「テトリスでバトロワをやったら面白いのでは」と思えたんです。
4Gamer:
なるほど。「うちでもバトロワものを作ろう」といったスタートではなく,中田さんの中で突然化学反応が起きたわけですか。アイデアをひらめいた瞬間はどのような気持ちでしたか。
中田氏:
純粋に「遊んでみたい! 作りたい!」と思えましたね。そのときすでに今のゲーム画面のような,自分が中心にいて,周囲にほかのプレイヤーのゲーム画面が並んでいる,という図は頭の中で組み上がっていました。
4Gamer:
今のゲーム画面がほぼ頭の中にあったというのは驚きです。新企画会議のメンバーの反応もよかったのではないですか?
中田氏:
いえ,最初はそうでもありませんでした。その場に参加していたメンバーに「テトリスとバトロワを組み合わせるんだ!」と説明したんですが,言葉だけではイメージが伝わらなくて。
そこで,僕の頭にあるゲームのイメージを仮画面として会議のメンバーに作ってもらって,もう一度みんなに見てもらいました。そうしたら一転して「すぐにやろう!」と。
4Gamer:
確かにあのゲーム画面のインパクトは一度見たら忘れられないぐらいすごいです。
中田氏:
実は仮画面を見せたとき,ゲームの仕様はほとんど決まっていませんでしたし,バトロワ系ゲームについて研究し始めたのは企画にGOサインが出たあとですから,あのとき見せた仮画面のインパクトはよっぽどすごかったんだと思います。ただ最初の仮画面は99人ではなく100人での対戦でしたね。
4Gamer:
気になっていたのですが,なぜ1人削って99人になったのでしょう。
中田氏:
画面レイアウトの関係と,インパクトの大きさを考慮した結果です。ほかのプレイヤーのテトリミノのブロックひとつを4×4ドットで表現することで,画面左右に7×7人分のフィールドをきれいに配置することができました。これに中央の自分のフィールドを加えると99人になります。100人にすると1人だけがはみ出て収まりが悪かったんです。
4Gamer:
テトリスの権利をお持ちのブループラネットソフトウェア(Blue Planet Software)さんは,このアイデアを話したときどんな反応でしたか。
中田氏:
開発中であることは早い段階でお話していたんです。ただ,テトリスでバトロワをやるという具体的なアイデアをキチンとお話ししたのは,実はゲーム配信のかなり直前で,とても驚いておられました(笑)。
4Gamer:
それはビックリしますよ(笑)。
中田氏:
実際に弊社でテストプレイしていただいたのですが,「面白いね」と言ってもらえて安心しました。そういえばいきなり「テト1」を取られてましたね(笑)
4Gamer:
さすがというか,中の人はやっぱりテトリスお強いんですね……。
構想からわずか10か月でサービスイン。毎週99人でプレイする大規模なネットワークテストを実施
4Gamer:
さて,「TETRIS 99」は2019年2月14日に配信が始まっています。先ほどのお話から考えると,開発期間は1年に満たず,かなりのスピードで行われたことになりますが。
中田氏:
そうですね。企画を思いついたのが2018年4月で,仮画面を見せて動き出したのが4月の終わり,10月に試作版の開発を終え,本制作をスタートさせ,2019年2月に配信しています。
僕のところに話が来たときは「テトリスでバトロワをやる」ということしか決まってない状態で,実現に向けて課題も多く,なかなか難しいお題だなと思いました。1つずつ不安や懸念点を解決していき,製品としてのクオリティを上げていきました。
4Gamer:
不安や懸念点というのは具体的にどういったものだったのでしょうか。
木梨氏:
弊社でも大規模な多人数オンライン対戦自体の研究は進めていましたが,実際にゲームで運用した例がありませんでした。そもそも99人でのテトリスの対戦が面白くなるのか……といったことも不安でした。
中田氏:
ともあれ,ゲームを作ってみないと感触が分からないので,テトリスといえば……ということでアリカさんにお話を持っていき,プロトタイプを開発してもらうことになりました。
4Gamer:
アリカ製の「テトリス」は操作性の良さに定評がありますよね。
木梨氏:
その後,1か月もしないうちにプロトタイプが完成し,すぐにテストプレイを始められました。
4Gamer:
99人のテストということですか。
木梨氏:
はい。7月ごろから,大人数でのテストプレイを定期的に行っており,途中からは毎週3時間99人でテストする場を設けました。これはリリースまでずっと続けていましたね。
4Gamer:
99人でのテストプレイを毎週というのはただただ驚くしかないですね……。メンバーはどうやって集めていたのでしょう。
木梨氏:
アリカさんやマリオクラブ(※),このゲームが生まれるきっかけになった新企画の会議のメンバーなど,社内に広く声をかけました。初期段階では作戦などのルールは入っておらず,99人で対戦ができるというだけのものでしたが,それでも面白さの一端は感じられました。
※任天堂が開発しているソフトのデバッグやテストプレイを行う会社
4Gamer:
「TETRIS 99」独自の面白さがすでに感じられたということですか。
木梨氏:
参加者が減るなかで生き残り,順位が上がっていくだけでテンションが上がるんです。多人数参加のバトロワ形式だと,ほかのプレイヤーを見ながらどう立ち回るかで順位が変わるので,単純に参加人数が増えただけではない,独特の手ごたえを感じました。
4Gamer:
99人分ものフィードバックはどのように集めていたのでしょう。
木梨氏:
レポートを提出してもらったり,直接お話を聞いたりといろいろなやり方でフィードバックを集めていました。同じ会議室に集まってテストすることもあったので,ダイレクトにプレイヤーの反応が分かるのも良かったですね。この毎週のテストを経て仕様をどんどんブラッシュアップしていきました。
中田氏:
テストプレイを通じての調整がひと通り終わり,核となる試作版が出来上がったのが2018年の10月のことでした。
木梨氏:
そこから商品として形にするためにさらに開発を進めていきました。次のNintendo Directに合わせてリリースするとなると,2019年の1月末には完成している必要がありました。今思い返しても,結構厳しいスケジュールでした。
4Gamer:
試作から完成に向けて一番苦労されたのはどこだったのでしょうか。
木梨氏:
イベントの為の仕組みづくりに苦労しました。世界規模でイベントを行うことを想定していたことで,テキストも各国語に対応させなければいけませんでしたし,プロモーションの意見を聞き,法的な面も整理しつつ,細かい部分をギリギリまで詰めていきました。
中田氏:
苦労の甲斐あって,2019年3月8日には初のイベント「テトリス99配信記念 テト1カップ」を行えました。こういったイベントを通して定期的にお客様に刺激を与えていきたいと思っていましたし,5月17日からは,テトリス35周年記念のイベントも行う予定です。
4Gamer:
なるほど。大規模なネットワーク対戦ゲームなので,てっきり通信周りで苦労されたのだとばかり思っていたので,ちょっと意外でした。
木梨氏:
通信については最初は不安でしたが,設計段階からキッチリと方針を決め,社内のサーバー担当者と話し合いつつ進め,試作が完成する段階ではかなり整っていました。
4Gamer:
オンラインゲームでは,サービスイン直後にトラブルが起こることもよく見られますが,「TETRIS 99」ではそうした事件もありませんでしたね。
狙われないより狙われる方が嬉しい? 常にリスクとリターンを考慮したゲーム設計
4Gamer:
本作では,「ランダム」「とどめうち」「バッジねらい」「カウンター」という4つの作戦が用意され,作戦に応じてCPUが自動でターゲットを選ぶという仕組みになっていますが,これを実装された理由をお聞かせください。
中田氏:
最初は,攻撃相手をスティックやタッチで選ぶ仕様でしたが,テトリミノを組んでいくだけで精一杯な人だとそうした余裕がなく,「自動でターゲットを選んでほしい」という意見がテストプレイの中で出ていました。そこでこの作戦というシステムが生まれたんです。
4Gamer:
開発初期からずっとこの4つの作戦だったのでしょうか。
中田氏:
いえ,最初は「シールド」や「タイマンうち」など8つぐらいの作戦候補がありました。そこから内容を削っていき,今の形に落ち着いています。
4Gamer:
作戦が多いと取れる行動も多くなり,戦略の幅が広がりそうな気もするのですが,不採用の作戦はどういった理由でボツになったのでしょう。
例えば,「タイマンうち」は,ほかに「タイマンうち」を選んでいる人とマッチングし1対1でやりあうという作戦でしたが,そもそもバトロワというコンセプトに反するという意見が多かったです。
「シールド」はテトリミノをまとめて消すことにより,相手に攻撃するのではなくバリアを張るというものでしたが,いざテストプレイしてみるとこの作戦だけを選ぶ人がいて,攻撃のやり取りが起こらずに,ゲームが膠着してしまうのでボツになりました。
木梨氏:
テストプレイで意外だったのが,相手を積極的に攻撃して勝ちに行くのではなく,とにかく目立たず,やられないようにして順位を上げている人が,私たちの予想よりもかなり多かったことです。結果,試合が長引いてしまい,1試合が20分以上になるようなこともありました。
4Gamer:
確かに初心者ほどやられないように「ランダム」を選ぶ傾向が強いと思います。ただ,みんなが目立たないようにしていると,試合が膠着して盛り上がらない。
中田氏:
はい。そこで導入したのが,K.O.バッジです。相手を倒してK.Oバッジを取得すれば攻撃力が上がり,後々の戦いが有利になるようにしました。
おかげで,ゲーム序盤からK.O.バッジを集めるという戦略ができて,ゲームが活性化しました。バッジの量に対してどれくらい攻撃力を上げるかについてはかなり調整を繰り返しましたが。
木梨氏:
あとは,「カウンター」と「とどめうち」のバランス調整も行いました。現在「カウンター」は狙われた人数に応じて攻撃力が上がり,相手全員に反撃できるという作戦ですが,最初は“狙われた人数によって攻撃力がアップする”という仕様が存在しませんでした。ひとたびピンチになって「とどめうち」で狙われた人は,多くの人から一気に攻撃されて理不尽な思いをすることになります。
そこで「多くの相手に狙われたときにむしろ嬉しくなるようにしよう」ということで,「カウンター」時の攻撃力をかなり高く設定しました。
こうすれば,「とどめうち」で狙われると攻撃力が上がり,楽しい気持ちになれますし,狙う側にも攻撃力が上がった相手からカウンターで反撃されるリスクが生まれます。
4Gamer:
確かに「カウンター」と「とどめうち」には本作の駆け引きが集約されている気がします。10人くらいに狙われた際,カウンターが決まるとかなり爽快です。調子がいいときなどは「もっと自分を狙ってくれ!」という気持ちになることさえありますし。
木梨氏:
また,うまい人なら“いかに自分を狙ってもらうか”を考えてプレイすることもできるでしょうから,これでもっと戦略の幅が広がるかと。
4Gamer:
巷で話題になった有名な戦法だと,あえてテトリミノを積み上げて「とどめうち」で狙わせ,そこから「カウンター」する戦法もありますよね。
木梨氏:
この戦法も,開発中のテストプレイで既に行われていました。
ただ,実はこれにも弱点があり,テトリミノを積み上げた(「とどめうち」の対象になる)プレイヤーが複数出た場合,「とどめうち」で狙われるのはその中の1人だけなんです。つまり,残りの人は狙われる対象にならないので,「カウンター」を仕掛ける思惑が空振りに終わります。リターンがあればリスクもある。常にこれを念頭に置いて調整を続けていきました。
4Gamer:
なるほど。
木梨氏:
複数人に狙われているときというのはそれだけで攻撃力が上がっているので,「カウンター」で反撃するのではなく,あえて「バッジねらい」でバッジを持った強いプレイヤーを倒しに行くという戦略も採れます。
事前プロモーション無しの配信,そして大きな盛り上がりへ
4Gamer:
さて,大規模なテストプレイや調整を終え,2019年2月14日に配信がスタートしたわけですが,反響はいかがですか。
木梨氏:
おかげさまで,多くの方に遊んでいただけており嬉しい限りです。たくさんのプレイヤーが集まり,その中で盛り上がっていくタイトルだと思いますから。
中田氏:
個人的には大成功か大失敗のどちらかだろうとは思っていました(笑)。
4Gamer:
アナウンスがあった直後からいきなり配信されたことにも驚きました。
木梨氏:
たくさんの人にとにかく触っていただきたかったので,興味を持ってもらったところですぐ手に入れられるようにしました。
4Gamer:
オンラインゲームにはつきもののβテストも行われませんでしたね。
βテストも検討はしました。しかし,プレイヤーの立場で考えれば,βテストの後,サーバーが止まって「続きは本サービスで」となったらガッカリするだろうと思ったので,テストなしで配信することにしました。
4Gamer:
とはいえ,いきなり配信というのは思い切った施策だなと思いました。もし私が開発の立場ならトラブルが起きるかもしれないとやはり不安になってしまいそうです……。
木梨氏:
不安がなかったといったら嘘になりますが,事前にしっかりチェックを行っていましたので,大丈夫だろうと思ってました。
中田氏:
僕としては「これがリリースされるまでに同じようなアイデアを思いつく人が出ないでほしい!」と不安ではありましたが(笑)。
(一同笑)
4Gamer:
ネットワーク周りよりそちらが不安だったと(笑)。
サービス開始後は,自分たちの想定を超えたプレイヤーの動きなどはありましたか。
中田氏:
プレイヤーの皆さんが作戦の仕様をしっかり把握して解説動画を作ってくださるなど,プレイヤー間で盛り上がってくれて,今のところは“嬉しい想定外”しか起こっていません。
4Gamer:
そういえば,作戦の仕様や細かなルールなど,ゲーム内では解説されていません。意図的にそうしているわけですか。
木梨氏:
「触っていくうちに理解してほしい」という思いがあったので,あえて細かくは説明しませんでした。戦法などのトレンドについて,プレイヤー同士が議論することでどんどん環境が変化していき,こちらが予想している以上の遊び方をしてほしかったんです。
中田氏:
もし仮にチュートリアルが入っていたとしたら,ここまでのコミュニケーションは生まれなかったんじゃないかと思っています。
木梨氏:
まだまだプレイヤーによって新しい遊び方が発見され,トレンドが移り変わっていくことに期待しています。
4Gamer:
あえて多くを説明せずに,実際に触りながらゲームを楽しんでいく。言い方が難しいですが,実に任天堂らしいゲームだなと思います。
木梨氏:
僕ら自身は「TETRIS 99」を間違いなく面白いと感じていましたが,みなさんがどこまで受け入れてくださるかについては正直不安もありました。
4Gamer:
ゲームで使われる単語1つとっても,普通のバトロワなら相手を倒して「キル」となるところが「K.O.」と表現されていたりと,幅広いプレイヤー向けにかなり気を使っている印象を受けます。対戦ゲームにはつきものとなる,レートが上下するようなシステムも存在しないようですし。
木梨氏:
おっしゃる通り,カジュアルなプレイヤーからヘビーなプレイヤーまで,若い方からご年配の方まで,多くの人に楽しんでもらうことを意識しました。
レートを取り入れていないのは,1戦1戦に気軽かつ新鮮な気持ちで挑んでほしかったのが理由です。
4Gamer:
私自身も,たとえ負けても前向きに次のプレイを始められています。
木梨氏:
“楽しいから遊ぶ”というところは大事にしています。うまい人もそうでない人もいろいろな人が混ざって同じ場所に集まったことにワクワクしてほしいですね。
4Gamer:
負けたときに悔しさをかき立てる演出を見せ,それをモチベーションにさせるとか,レートが上下するようなシステムで,プレイヤーの向上心を刺激するといった導線の作り方については視野の外だったわけですね。
木梨氏:
まあ,負ければ単純に悔しいですからね。勝敗データも,オプションから確認したい人が確認できるようにしているだけで,リザルト画面で強制的に見せるようなことはしていません。それでも,僕自身は1日1回「テト1」を取るまで寝ないという位にハマってはいます(笑)。
4Gamer:
現在のプレイ人口は想定通りですか。
中田氏:
「TETRIS 99」自体がまだまだ知られていない気がします。ダウンロード数自体は申し上げられないんですが,Nintendo Switch Onlineに加入されている方のすべてに行き渡っているわけではありませんので,もっと多くの方に知っていただけるようにはしたいと思います。
木梨氏:
「テトリス」は親しみやすく楽しいゲームなので,もっと多くの方に遊んで欲しいですね。
4Gamer:
目指すは「とりあえずNintendo Switch Onlineに加入したらこれ!」という定番ソフトですね。
マッチングは勝率やランクなど,なんらかのデータを見て振り分けられているのでしょうか。
木梨氏:
いえ,完全にランダムです。振り分けを行うと人数が分散しますし,マッチングの快適さにも影響を及ぼしますから。
中田氏:
ちなみに,地域によるフィルタも掛かっていません。全世界でその時にゲームをしている人の中から,場所に関係なくマッチングをしているんです。
まずは速度に慣れ,次に作戦を使いこなし,順位を上げていく
4Gamer:
ところで,順位を上げるためにはどうすればいいのでしょうか? なかなか「テト1」が取れないという人もたくさんいらっしゃると思いますが。
木梨氏:
基本的に「テトリス」がうまければ勝率も上がるゲームですし,そうでない方も戦況を見ながらうまくK.O.バッジを集めていけば順位が上がっていくと思います。
まず大切なのは,スピードに慣れることですね。ゲームの後半はテトリミノの落下も速くなりますので,それをどれだけさばけるかはとても重要です。それだけで10位以内に入れますし,運が良ければ「テト1」になれることもあります。
中田氏:
まずは,オーソドックスにテトリミノを平積みすることを心がけるといいと思います。慣れてきたら,次はどのテトリミノが来るかを示す「NEXT」や,周囲の戦況を意識していくといいですね。
4Gamer:
作戦はどんなタイミングで切り替えればいいものなんですか。
木梨氏:
初心者の方は,まず作戦を切り替えるより自分の画面でしっかりと「テトリス」をプレイするほうがいいと思います。作戦については「ランダム」にしておき,誰かに狙われたら「カウンター」へ切り替えるところから始めるのがいいと思います。
中田氏:
ただ「カウンター」し過ぎると注目も集めますから,凌ぎきれなくなったら「ランダム」に戻してターゲットを外すという手もあります。
攻撃の瞬間だけ「とどめうち」にし,ブロックを送ってから「ランダム」に戻すなど,作戦を細かく切り替えるのもいいでしょうね。
木梨氏:
こうすれば,相手から「カウンター」を食らうことなく,こちらの攻撃だけが通るわけです。こうした戦法はテストプレイの時点で既に編み出されていましたね。ただ,あまり作戦を細かく切り替えすぎると肝心の「テトリス」がおろそかになります。
僕の場合,立ち回りをいろいろ考え過ぎたときは結果が伴わないことが多いですね(笑)。逆に,うまくいかなくてひたすら目の前の状況に対応し続けていたときに,なぜか周囲がみんな倒れていって「テト1」を取れたりもします。
4Gamer:
「テトリス」と作戦切り替えのどちらに注力するかは重要ですね。
木梨氏:
作戦ではなくテトリミノが積み上がっている相手を手動で狙うのも有効です。「とどめうち」の作戦でもオートで選んでくれるんですが,「とどめうち」で狙われた人は,ほかに「とどめうち」を使った人からも攻撃が集中することになります。K.O.バッジをもらえるのは,1人だけなので,必然的に競争率が高くなるわけです。しかし,手動狙いですと対象を自分で探す必要はありますが,「とどめうち」の競争とは無縁でいられます。なので,手動で狙ったほうがバッジを効率よく集められることもあるんです。
4Gamer:
なるほど。先ほど周囲の戦況を意識していくといいとおっしゃっていたのにはそういうこともあるんですね。
木梨氏:
慣れてくると,相手の大体の実力が推測できるようになります。「この人はT-スピン(※)を狙っているから,きっと上級者だ」といった判断もできます。
ただ,そうしたところに注意力を割きすぎると,ほかのプレイヤーが素早く操作してどんどんラインを消していきます。作戦の選択が重要なこともありますし,純粋に操作の手際が重要になることもあるわけで,このバランスが「TETRIS 99」の面白さだと思います。
※T字形のテトリミノを着地の直前に回転させ,ブロックの隙間にねじ込むテクニックのこと
4Gamer:
お二人はT-スピンやREN(※)をはじめとしたテクニックを使いこなせるんでしょうか。
※連続でラインを消していくこと
木梨氏:
僕はT-スピンやRENは使いこなせないですね。隙間に棒を入れて一気に消すくらいで。それでも10%くらいの確率で「テト1」にはなれます。
中田氏:
僕も同じですね。ただ,T-スピンのチャンスが来ると欲が出てつい狙ってしまいます。その隙に狙われてK.O.されることが多いのですが(笑)。
4Gamer:
順位を上げるためには「T-スピンやRENといった高等テクニックが必須なのではないか」と思ったりもするんですが,そういうわけでもないんですね。
木梨氏:
そうですね。どちらかというと,後半で素早く落ちてくるテトリミノに対応できるかどうかが肝になると思います。
CPU相手に練習できるモードなど,待望の追加コンテンツが登場
4Gamer:
さて,最後に今後どのようなアップデートをしていくのか。聞かせてください。
木梨氏:
無料アップデートにより,テトリミノの見た目を変えたり,エンブレムを自分で選択できるようになります。
また,5月10日から販売している有料の追加コンテンツではいろいろなモードを増やしていきます。第1弾では,不慣れな方がオンライン対戦に入っていけるよう,99人対戦を練習できる「CPUバトルモード」と,1人で「テトリス」をプレイできる「マラソンモード」を追加します。第2弾はまだ具体的には話せないのですが,ご家族や友達とオフラインで楽しめるコンテンツを用意する予定です。
4Gamer:
最初のリリース段階で1人用モードを実装しなかったのは?
木梨氏:
とにかくオンラインでの99人対戦を楽しんでもらいたかったからです。プレイヤーが大勢いた方が、マッチングも早いですし。
4Gamer:
なるほど。では,今回追加されるそれぞれのモードについて教えてください。
木梨氏:
「マラソンモード」はいわゆる1人用のテトリスです。いきなり高速でテトリミノが落ちてくるなど,いろいろな条件を設定して練習することができます。「TETRIS 99」では後半のテトリミノの落下速度が速くなり,それに慣れることが大事です。目がついていくようになったら,T-スピンやRENといったテクニックを練習していただければと思います。
もう1つの「CPUバトル」モードはプレイヤーと98人のCPUで戦うモードです。CPUのレベルを5段階から選べますし,バッジをたくさん持った状態から始めることもできます。ここで99人対戦に慣れたり,バッジの効力を確かめたりしてみてください。
4Gamer:
どちらのモードも待っていたプレイヤーが多そうです。
中田氏:
あと,最初に少し触れましたが,5月17日16:00から5月20日15:59まで「テトリス」35周年を記念した「テト1カップ」を開催します。
実は今年はゲームボーイ版「テトリス」生誕30周年の年でもあるので,本イベントのプレゼントには,テトリミノやフィールドがゲームボーイ版「テトリス」のデザインになるテーマをお贈りします。イベント期間中にプレイした順位によって,イベントポイントをゲットでき,100ポイントためれば必ずもらえますので,ぜひ参加してください。
4Gamer:
それは楽しみですね! ゲームボーイ版にハマったという人にとっては特に嬉しいニュースだと思います。
さて,お時間も迫ってまいりましたので,最後に読者へのメッセージをお願いします。
中田氏:
第3回目のイベントはゲームボーイ版「テトリス」がテーマになっているわけですが,いろいろなモノとのコラボがしやすい設計にしています。今後の展開も楽しみにしていただければと思います。
木梨氏:
まずは「TETRIS 99」を遊んでいただいている皆さんに感謝したいです。「テトリス」というシンプルなゲームですので,友達やご家族を誘って,ゲームのイベントなどに参加していただければありがたいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「テトリス」で99人が戦うという目から鱗のアイデアはもちろん,企画立案から完成まで10か月しかかかっていないことや,毎週99人規模のテストプレイを欠かさずやっていたなど,驚かされたことの多いインタビューだった。
発想の力と,たゆまぬ作り込みによって,広い年齢層が楽しめるゲームを生み出すというのはまさに任天堂イズムの体現と言え,Nintendo Switch Onlineのみならず,パズルゲームの定番を目指してこれからの動向が楽しみなタイトルであることを改めて感じさせられた。
「TETRIS 99」公式サイト
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