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Microsoftのクラウドゲームサービス「Xbox Cloud Gaming」,日本での正式サービスは10月1日に開始へ。アジア地域責任者にその狙いを聞く
それに先がけて,プレス向けのグループセッションが行われたので,その模様をお伝えしたい。出席したのは,MS本社でXbox Cloud GamingのCorporate Vice Presidentを務めるKareem Choudhry氏,Xbox Cloud Gaming内のProduct & Strategyを統括するVice PresidentのCatherine Gluckstein氏である。
Xbox Cloud Gaming(旧称 Project xCloud)は,さまざまなゲームを楽しめるサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass Ultimate」メンバーに提供されるクラウドゲームサービスだ。現在,海外では22か国において,PCやiOS,Andorid端末向けの正式サービスがスタートしている。
日本では昨年11月よりAndorid版のプレビュープログラムが提供されていたが(関連記事),このテストの結果が良好なものだったことから,今回の発表に至ったとのこと。なお,同時期にオーストラリア,ブラジル,メキシコでも正式サービスの提供が予定されている。
これにより,Xbox Game Pass Ultimateメンバーは10月1日以降,100以上のクラウド対応ゲームをPCやiOS,Andorid端末で楽しめるようになる。また,ラインナップの多くが日本向けにローカライズされており,タッチ操作をサポートしているとのことだ。
今回の発表に合わせて公開された映像では,「SCARLET NEXUS」「龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル」「ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島」「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S」「バイオハザード7 レジデントイービル」「MINECRAFT DUNGEONS」などがラインナップとして紹介されている。
今回のセッションでは,Microsoftが見据えるXboxのビジョンが語られた。とくに強調されていたのは「プレイヤーが中心であること」だ。自分のプレイしたいゲームをいつでも,どこでも,誰とでも遊べる。そのためにXbox Series X|SやXbox Game Pass,そしてクラウドゲーミングといった製品やサービスを提供し,それぞれのプレイヤーが所有しているデバイスでゲームを楽しめるようにすると説明している。
また,同社がクラウドゲーミングに注力している目的として,既存のゲーム機やPC向けのゲームと置き換えることを意図しているわけではないと語る。Microsoftは地球上に30億人のゲーマーがいると考えているが,そのすべてがゲーム機やゲーム用PCを持っているわけではないことから,クラウドゲーミングによって,さらに多くの人にXboxのゲームを届けたいという。
つまり,クラウドゲーミングへの投資はゲーム機やPCゲームのビジネスに追加されるものであり,すでにXboxのゲームをプレイしている人に新たな選択肢を与え,そのうえで新規のファンを迎え入れたい意向のようだ。
Xbox Network(旧称 Xbox Live)は月間アクティブユーザーが約1億人,Xbox Game Passは1800万人以上のメンバーを持つ。充実のコミュニティと,Xbox Game Studiosが擁する開発スタジオやサードパーティが提供するコンテンツ群。これらをつなぐ存在が,Microsoftが誇るクラウドゲームの技術であるとしている。そのため,Azure上にリッチなクライアントを開発し,さらにクラウドゲーミングを想定して設計されたXbox Series X|Sを発表したという。
なお,クラウドゲームはデータセンターにあるXboxハードウェアから提供しているため,ゲーム機とクラウドサービスを利用するプレイヤーによるマルチプレイも可能だ。セッションではKareem Choudhry氏が自身はモバイルから,子息がゲーム機からアクセスして一緒にゲームを楽しんでいると話していた。
4Gamerではセッション終了後,Xbox事業のアジア地域責任者であるJeremy Hinton氏にインタビューをする機会を得た。Microsoftがクラウドゲーミングによって成し得ようとしている未来のビジョンについて,話を伺っている。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,現在は各社のさまざまなクラウドゲームサービスが展開中です。Xbox Cloud Gamingが優れているところ,競合サービスとの違いを教えてください。
私達は,より多くのゲーマーにXboxのゲームをプレイしてほしいと考えています。Xbox Cloud Gamingは「コンソールを持たなくてはいけない」という障壁を取り払い,いつでもどこでもXboxのゲームをプレイすることを可能にします。
また,すでにゲーム機をお持ちの方やXboxのファンである皆さんも,いろいろな場所でプレイしたいと思っているでしょう。複数のデバイスをサポートすることで,どこにいても,さまざまなデバイスで自分の好きなゲームをプレイすることができます。
もう一つ,強調したいポイントとしては,ファーストパーティのタイトルがローンチと同時にクラウドゲーミングに対応するということです。そして,タッチ操作や複数のコントローラをサポートします。
これらのサービスはXbox Game Pass Ultimateに含まれているため,初月は100円,以降は月額1100円で提供いたします。
4Gamer:
Xbox Cloud Gamingのサービスにより,ゲーム機がなくてもXboxのゲームが楽しめるようになる。それは言い換えると,Xbox Series X|Sといったゲーム機のプライオリティが下がるということではないでしょうか。Microsoftのゲーム機は,どのような位置づけと考えているのでしょうか。
Jeremy Hinton氏:
私は必ずしも,ゲーム機のプライオリティが下がるという見方をしていません。Microsoftとしては適切なサービスを,適切なユーザーに届けたいと考えています。
たとえば,私自身はリビングルームでコンソールゲームを4Kディスプレイによって楽しむことを好みます。これと同じように,PCゲームに親しんでいる方に対しては,同じゲームをキーボードとマウスで遊びたいというニーズも満たしたいと考えています。また,若い方は移動中もモバイル端末やタブレットでゲームをプレイしたいということもあるでしょう。
さまざまなニーズに応えるために,遊び方やデバイスの選択肢を増やしたい。それが我々の目標です。
また,日本のゲーマーの方は他の地域と比べても,いろいろなデバイスを使ってゲームを遊んでいるという傾向があります。ですので,私達も複数のデバイスでゲームをしていただけるサービスとコンテンツをお届けしたいと考えています。
4Gamer:
日本のゲーマーの話が出ましたが,Xbox Game Passのサービス提供から約1年半が経過しました。これまでの成果をどう見ていますか。
Jeremy Hinton氏:
日本での事業を考えるときには,日本のプレイヤーに対して最も適切なサービスを,最も適切なやり方で提供したいと考えています。Xbox Game Passもいい反響をいただいていますが,日本市場において成長余地はまだあると思っています。
コンソールについてもファンからポジティブな反応をいただいており,たいへん感謝しています。それだけに現状のXbox Series X|Sが入手困難な状態には,できるだけ早く市場に届けたいと思っているのですが,なかなかそれができず申し訳ない気持ちがあります。
4Gamer:
入手困難な状態は,まだ続くのでしょうか。
Jeremy Hinton氏:
世界的な半導体の供給不足によるものですから,ゲーム業界に限らず,あらゆるセクターに足りていない状態であり,自動車やPCの業界も同様です。我々だけでなく競合も同じように,なかなか解消できないでいます。少なくとも年内はこの状態が続く見通しです。
しかし,日本とアジア諸国では非常にいい反響をいただいており,この先の供給量を増やしていきたいと考えております。コンソールが入手しにくい状況には改善を図りたいと思っていますが,まさにクラウドゲーミングを始めていただくには絶好のタイミングと言えるのかもしれません。保存したセーブデータの続きを,コンソールで遊んでいただくことができますからね。
4Gamer:
Xbox Cloud Gamingが広く普及すれば,先ほどのゲーム機のプライオリティも含めて,ゲーム業界が大きく変わりそうです。Microsoftは数年後のゲーム業界について,どのような未来を想定していますか。
Jeremy Hinton氏:
おっしゃるとおり,大きな変革が訪れるでしょう。これまではプラットフォーマー(企業)やゲーム機がプレイヤーの環境をコントロールしていたわけですが,クラウドゲーミングの登場によって「プレイヤーが中心」になります。
つまり,好きなゲームをどのデバイスでプレイするのか。いつ,どこでプレイするのか。このコントロールをプレイヤーが握るわけです。そこが大きな変化だと思っており,私達はそれに対応することで,Xboxのユーザーにより質の高い体験をしていただけるようになると思っています。
Xbox Game Pass 特設ページ(Xbox 公式サイト)
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