プレイレポート
「マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック」プレイレポート。2020年と1964年――2つの世界の東京を舞台に繰り広げられるスポーツの祭典を楽しもう
本作は,マリオやソニックとその仲間たちが,2020年夏に開催となる「東京2020オリンピック」(以下,東京2020)に参加するオリンピック公式ビデオゲームで,同大会のみならず,今から55年前,1964年の東京オリンピックもフィーチャーしている。注目の新競技や,1964年大会を意識したレトロテイストの競技も楽しめる本作のプレイレポートをお届けしよう。
「マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック」公式サイト
マリオとソニックが登場するオリンピック公式ビデオゲームとしては,2007年発売の「マリオ&ソニック AT 北京オリンピック」から数えて6作目となる本作。タイトル画面をはじめとした一部のBGMには三味線などの和楽器を採用しているなど,日本での開催であることがアピールされている。記念すべき自国開催ということで,特別に力が入っている印象だ。
東京2020の競技は21種目が収録されている。そのうち,「スポーツクライミング」「サーフィン」「スケートボード」「空手」の4種目は新たにオリンピックの正式種目として採用される競技である。
競技に挑むのは,マリオとソニックそれぞれの仲間たち20人に加えて,ストーリーモードの進行によって参加する競技ごとのゲストキャラクターだ。競技に合わせてキャラクター別のアスリートルックが楽しめるのが,本作のポイントで,新たにデザインされた空手の胴着やサーフィンのウエットスーツなども収録されている。
収録種目は全体的に新しい競技が中心となっていて,ワールドカップで注目を集めたラグビーや,レースゲームのようなタイムアタックが楽しめる障害馬術,フェンシングやボクシングをはじめとした対戦競技など,実にバラエティに富んでいる。記録を伸ばして競うものと,対戦をして勝敗を競うものがバランスよく揃っていて,オンラインプレイにも対応しているので,1人でも多人数でも遊べるのが嬉しい。
以前エクストリームスポーツのゲームにはまったことのある筆者は,サーフィンやスケートボードを重点的に遊んでいた。個人競技でも自由度の高いこれらの種目は,得点を伸ばすためのトリックの出し方など,極め甲斐があると感じられた。
本作は,2度目の東京開催を記念し,アジアで初めての大会となった1964年東京オリンピックの種目を10種収録している。画像を見ていただければわかる通り,レトロな世界観に合わせてグラフィックスはすべてドット絵になっており,「スーパーマリオブラザーズ」と「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズで使われたものをそのまま使用している。
面白いのは,ドット絵で描かれたキャラクターのアニメーションパターンも基本的に当時のままだということだ。使用できるキャラクターは8人いるが,中でもピーチは,オリジナルの「スーパーマリオブラザーズ」ではワールド8-4クリア時の救出シーンに登場するのみであり,アニメーションパターンはほぼないに等しかった。そのため,サブキャラクターとして登場するキノピオとともに,上下に小刻みに動いているだけというのがなんともシュールで味がある。
一方のソニックたちは,16ビットハード「メガドライブ」で発売された「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズのキャラクターであり,敵キャラであったエッグマンにもドット絵のアニメーションが用意されている。
8ビット時代と16ビット時代のキャラクターの違いを楽しむとともに,ファミコンとメガドライブのドットキャラクターが任天堂ハード上で競演するという,オールドファンにとっては実に感慨深いものがあった。
ちなみに競技のBGMはレトロテイストあふれるチップチューンとなっており,ラジオから流れてきたかのようなノイズが乗った実況音声も流れ,時代背景を演出している。
このほかに3つの「ドリーム競技」が収録されている。スポーツとはまた違う,アクションゲームのようなゲームデザインで,これがまたよくできている。
「ドリームレーシング」は,エアボードに乗ったキャラクターがトリックを決めながら走るレースで,「ソニックフリーライダーズ」を思わせるし,アイテムなどのラインナップは「マリオカート」的でもある。コースは「メトロポリス」のみだが,たくさんあればこれだけで1本のゲームができそうなぐらい完成度が高い内容だ。
マトを撃って競う「ドリームシューティング」,そして格闘ゲームと陣取りを融合させた「ドリーム空手」もよく考えられたルールで,ワイワイ楽しめる対戦ツールとしての価値をさらに高めている。
ソロプレイ専用の「ストーリーモード」は,「TOKYOオリンピック64」というゲーム機の中に吸い込まれ,1964年の東京に飛ばされてしまったマリオ&ソニックたちと,それを助けようとする2020年のルイージ&テイルスたちによる,2つの視点で展開していく。内容もかなり凝っていてとても楽しめるコンテンツだ。
ストーリーモードには3DCGの2020年,ドット絵の1964年という2つの世界の東京のマップが登場する。さまざまなスポットや競技場を行き来して,会話の合間に挿入される競技に挑んでいくというのが基本的な流れだ。
ストーリーモードに登場する競技はほかのモードで最初からすべて遊べるものだが,物語の進行と共に2つの時代の競技が順番に登場するので,最初に遊ぶのならこちらのほうがドラマチックに映るだろう。
また,ストーリーの展開によって,さらなるミニゲームも10種類登場する。すべて東京の名所を舞台とした内容で,中にはどこかで遊んだことがあるような気がする,ちょっと懐かしいルールのものも用意されている。こちらもストーリーモードでミニゲームを一度プレイすると,「マイデータ」の「ゆうぎじょう」からいつでも遊べるようになる。
競技やミニゲームは全部で44種類もあり,本作を1本持っていれば1人でも複数でも,自宅でも出先でも楽しめる。パーティーゲームとしても優秀であることは間違いない。
操作は「Joy-Con」や「Switch Proコントローラー」を使った「ボタンプレイ」のほか,Joy-Conのモーションセンサー使った「体感プレイ」も用意されている。Joy-Conを握って振る体感プレイは,競技とのシンクロ率も高まって没入感も増す。
もはや定番といった感じもあるお祭り的なシリーズだが,日本での開催ということで本作はやはり特別だということが,ゲームをプレイしてしみじみと感じられた。単に競技数が多いだけでなく,1964年東京オリンピックも扱うことで,幅広い年齢層を意識した,メモリアル感を演出している。
現地取材により実名で登場する競技場や,ストーリーモードに用意されたトリビアなど,自国開催のオリンピックイヤーの記念碑的な作品としても価値があるので,ぜひ手に取ってプレイしてほしい。
「マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック」公式サイト
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