2019年8月29日,セガゲームスは,秋葉原UDX THEATERにて
「『龍が如く最新作』記者発表会」を開催した。
発表会には開発陣や出演者が登壇し,同作の正式タイトルが「
龍が如く7 光と闇の行方」に決定したことや発売日が2020年1月16日となったこと,コマンド式RPGのバトルシステムの採用がされることなどが明らかになった。本稿ではその詳しい模様をレポートする。
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最初に登壇した「龍が如く」シリーズの総合監督
名越稔洋氏は,この最新作について「シリーズの中でも分岐点になるような作品」と述べた。主人公が桐生一馬から変わり,ゲームの内容にも大きな変更がありながらも,その中で人間ドラマを楽しむ「龍が如く」のDNAを受け継ぐナンバリング作品であるとし,正式タイトルを
「龍が如く7 光と闇の行方」と決めたのだという。
登場する主人公の
春日一番は,名越氏いわく「ニュータイプのヒーロー」で,ゲームが大好きという一面がある。会場で発表されたトレイラーのラストには
「最後にはてっぺん取ってハッピーエンドよ,ドラクエみてぇにさ」というセリフも登場。「ドラクエ」というタイトル名を劇中で使うにあたり,名越氏は堀井雄二氏に許可をもらったそうで,該当のシーン以外にも,所々でドラクエに関するキーワードが登場するとのこと。半端なごまかしをせず,許可を得て正しいタイトルを使うことがストレートなドラマを描くことにつながるのだと名越氏は述べていた。
「龍が如く」シリーズ総合監督 名越稔洋氏
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「龍が如く7 光と闇の行方」のタイトルロゴ
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ここで壇上には,春日一番を演じる
中谷一博さんも登場。その収録について「とにかく大変でした」と語る。主人公なのでセリフが多いのはもちろんだが,セリフの重みがこれまでとはまた違っていて,さらに名越氏らスタッフから言い回しの1つ1つに細かな注文があり,収録に数日を要したという。
名越氏は「思い起こせば,桐生一馬も(最初は)そうだった」と述べ,最初から桐生一馬という人格がしっかりあったわけではなく,収録後に印象が違うところが出てきて録り直しをするといったこともあったそうで,今回もそのときと同じようなプロセスで大変だったと思うと名越氏も話していた。
春日一番役の中谷一博さん(左)
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気になるゲーム内容に関しては,シリーズのチーフプロデューサー
横山昌義氏が解説を行った。物語は
「龍が如く6 命の詩。」から3年後の2019年が舞台となるが,その序盤は春日一番の半生を描いているという。彼にとって運命の1日となった2000年12月31日に起きた出来事を追い,その後18年の刑務所暮らしを経て戻ってきた,春日一番を待ち受けていた「死んでくれ」という衝撃的な一言と銃声から,物語は始まっていく。
春日に銃を向けた人物は,
中井貴一さん演じる荒川組組長
荒川真澄。親がいない春日にとっての父親代わりで,2019年の神室町で起きている出来事の中心人物でもあるようだ。
中井貴一さんが演じる荒川真澄
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そのほか,春日に対して極道としてのあり方を厳しくしつける荒川組若頭
沢城 丈役に
堤 真一さん,撃たれた春日を助けた元看護師のホームレス
ナンバ役に
安田 顕さんというキャストも発表となった。
堤 真一さんが演じる沢城 丈。ちなみに横山氏は堤さんの大ファンだそうで,収録で演技の一つ一つを絶賛していたら,名越氏から「少し落ち着け」と怒られたというエピソードも明かされていた
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安田 顕さんが演じるナンバ
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春日一番は人としても未熟で,劇中では成り上がるために仲間に助けられながら成長していくという。
「仲間」という存在は本作の重要なファクターの1つであり,これまでのシリーズに登場した人物とはまた違った,仲間との出会いや絆を強く描いていくようだ。
力や権力を持たない春日は,これまでの桐生一馬のように大勢の敵に向かって力で壁を乗り越えていく人物ではないと考えたのだという。そして,龍が如くというゲームを改めてフラットな目線で見つめ直した結果として,本作はメインのバトルシステムをバトルアクションからコマンド式のRPGに大きく変更したことが横山氏から明かされた。
また,会場では本作のバトルシステムを紹介する映像と共に,詳しい解説がなされた。映像では,本作の主な舞台となる横浜・伊勢佐木異人町の街中を仲間とともに歩く春日の様子が映し出され,敵と遭遇するとこれまでのシリーズ同様にバトルが発生。それと共に画面上にコマンド入力の画面が表示され,コマンドと標的を選ぶとキャラクターが戦闘を行う様子が見られた。
「ライブコマンドRPGバトル」と銘打たれたこのシステムは,コマンド入力式のバトルでありながら,周囲の状況はリアルタイムに物理演算が行われていて,敵との位置関係や配置してあるものなどによって戦況は刻々と変わっていく。例えば,距離の遠い敵を攻撃した場合,その間に別の敵が入ってきて妨害されてしまうようなことが発生するのである。「街を遊ぶ」というのがシリーズを通したコンセプトである「龍が如く」で,街中でのケンカをRPGとして表現したのがこのバトルシステムなのだと横山氏は語っていた。
横浜の街を歩く春日。後方からは仲間が追いかけてきている。場所は横浜の野毛のようだ
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従来のシリーズ同様,敵と遭遇するとそのグループ名が表示され,シームレスにバトルが発生
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コマンドはボタンに割り当てられているようだ。攻撃対象も選択できる
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攻撃する春日。移動などはオートで行われるという
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大柄な仲間キャラクターの攻撃。ボタンの連打で攻撃が増える!?
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バトルにおいては,前述のナンバなども含め仲間も戦いに参加する。仲間には,街中の「ハローワーク」で決められるという「職業」があって,それによって戦い方も変化するようだ。映像の中でナンバは,酒を使って火を噴いたり,豆で無数の鳩を呼び寄せて攻撃したりと,RPGでいう「魔法使い」的な戦い方を行っていて,そうしたRPGにおける職業が,本作では龍が如く的な解釈で現代の職業に置き換わっているのである。
会場でウケていたナンバの火吹きや鳩の召喚
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ジャイアントスイングや札束でのビンタなど,技もかなり面白い
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映像ではシステムを見せるためにバトルをじっくり行っていたが,実際のゲームではもっとテンポの速いバトルになると横山氏は付け加えている。
2019年9月12日より開催される東京ゲームショウ2019では,このバトルシーンを含めた体験版を試遊できるとのことだ。
また,ステージには本作の助演女優オーディションのグランプリ受賞者の
鎌滝えりさんも登場した。鎌滝さんが演じるキャラクターの「エリ」は,映像で披露されたバトルで,ドスを持って戦う姿を初めて見せている。
女優として活躍する鎌滝さんは,ゲームの音声収録は初めての経験だったが,「とにかく楽しかった」と述べ,「日本を代表するゲームを一緒に作っていることを思うと,凄く嬉しかった」と続けた。
エリ役として出演する鎌滝えりさん(中央)
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ドスのような刃物を持って攻撃するバトルシーンのエリ
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中谷さんの「緊張してる?」という質問に「緊張はしてないです(笑)」と答えた鎌滝さんは,「ブースに入った瞬間にスイッチが入って役に入り込んでしまうので,本番でも緊張している様子が見られなかった」と横山氏。オーディションでかけ合い演技をした中谷さんも「凄く素直で,こちらが言うことを自然に受け止めてくれる」と,その演技力を賞賛していた。
その後,ステージには名越氏が再び登壇し,その発売日が
2020年1月16日になることを発表。また北米・欧州でも2020年内に発売することも併せて明かされた。ゲームには初回特典としてDLC装備アイテム
「真島建設備品セット」のプロダクトコード(パッケージ版,DL版共通)と,
龍が如くコラボブランドグッズ抽選券(パッケージ版。DL版は抽選方法が異なる)が用意されるとのことだ。
最後に横山氏は「ファンの方であればあるほど,この変化に驚きを持っていただけると思います。私たちは新作を作るつもりで開発チーム一同,いろいろ考えて取り組んで参りましたので,ぜひ東京ゲームショウで試遊をしていただいて,判断いただきたいと思っております」とコメント。そして名越氏は「作品自体ボリュームがありますし,ここでお見せしたのがすべてではありません。TGSも試遊のほかに新しいトレイラーなどを用意させていただきますし,この作品への魅力が広がるような情報を出していきますので,ぜひご期待ください」と述べた。
発表会の終了後,名越氏と横山氏への合同インタビューも行われたので,そちらもお届けしよう。
――バトルに大胆な変更がありましたが,その意図や思いについて改めてお聞かせください。
名越氏:
龍が如くシリーズも15年近くやってきていて,
「JUDGE EYES:死神の遺言」なども含めアクション要素の強いものをいろいろ出してきました。現代劇というくくりでいろいろと考えたときに,ここからさらに工夫をしていくことよりも,アクションゲームを作れるスタッフがまったく違うところに目線を置き換えて,大胆な変化を提案できるものを作りました。
ゲームジャンルが違っていたとしても,アクションゲームを多彩に作れるスタッフだからこその完成形にはなっていると思っています。そこは一般的にRPGと呼ばれる作品とはまた違っていて,馬鹿馬鹿しくも面白いという楽しませ方ををさせるという点は,従来作から継承しているつもりです。
横山氏:
ストーリー的にも,春日一番に仲間たちが多くいる背景を一番正しく表現できるのが,今回のRPGスタイルということですね。これまでシリーズの「ドラゴンエンジン」を使って制御してきたアクションの強みという部分を生かして,RPGを作らせていただきました。
――主な舞台が横浜とのことですが,神室町は出てくるのでしょうか。
名越氏:
メインは横浜ですが,(神室町を)捨てるのもなんですから(笑)。ほかにどんなところが出るのかはお楽しみですね。
――今回,タイトルロゴの書体が変更になりましたが,これはどのような狙いがあるのでしょうか。
名越氏:
キャラクターの人間性も違っていて,元気でやんちゃな主人公の雰囲気を出したかったというのが理由です。その一方で,ベースに流れているのは裏社会なので,そのスレスレのところに針を振って,このような書体に変えさせていただきました。
――発表会で本作を「シリーズの分岐点」と例えられていましたが,名越さんとしては今後このフランチャイズをどのように成長させていきたいですか。
名越氏:
まずは,このシステムが受け入れられるかどうかを見届けたいですね。皆さんの「やっぱりアクションがあっての作品だよね」という声に,今回僕らが提案したものが叶わないことがもしあるようならば,そのときはきっと戻したくなると僕は思ってしまう人間ですから。
もし「こういうのもありだよね」という声が聞こえるなら,IPとゲームジャンルの当て込み方にいろんなバリエーションが作れたほうが,クリエイターとしての選択肢が増えていきますからね。初代「龍が如く」を作ったときと同様に新鮮な気持ちでトライしていますので,本作を成功させたいという願いは強く持って開発しています。
――主人公が新しくなったストーリーが展開される一方で,本作は「龍が如く7」というナンバリングが付けられています。これまでのシリーズキャラクターの登場はありますか
名越氏:
桐生が二度と出ないと言った覚えはないですからね(笑)。ビジネスとしては成功事例をいつまでもしゃぶりつくそうとするんですが,それをやると次に行けないというジレンマがあります。
僕らは今回,これまで積み上げたものと縁を切ろうということを最初に決めて,だからこそゲームジャンルも変えたわけですからね。それを前提としたうえで,罰が当たらない程度のくすぶり方も許されるところには応えていきたいと思っています。
――ドラクエに関するセリフについて,名越さんは堀井雄二さんとお話になったそうですが,タイトルを使うこと以外にどのようなことを話されたのでしょうか。
名越氏:
堀井さんご自身も龍が如くシリーズについて「ユニークで面白い存在」と褒めてくださったのが凄く嬉しかったですね。実は堀井さんとはそういう話をしたことがなかったんですよ。もちろん,売上的にも社会への貢献度的にも,我々じゃ足元にも及ばない方ですが,そういう方に気にしてもらえたのは嬉しかったですし,「面白いものを作ってくれる人が大事に扱ってくれるなら,キーワードとして使うことはかまわないよ」と言ってくださったので,これまで一生懸命仕事をしてきてよかったなと思います。
――TGSで試遊台が出展されるそうですが,どのような内容になりますか
横山氏:
主な内容としては,今日映像でご覧いただいた,横浜の街を歩き回って,敵と戦うという,全体の章の一部分を切り取ったようなところを遊んでいただけます。試遊時間は15分程度を予定していますが,何回か遊んでいただかないと,全部は遊びきれないぐらいのボリュームにはしていますので,ぜひいろいろと楽しんでみてください。
実はこのインタビューの後,名越氏は「僕,実は体を壊していまして」と切り出し,つい3週間ほど前に胸部を肋骨ごと切開しての心臓の大手術をしたことを告白した。
まだ病院を出てはいけないほどの絶対安静状態ながら今回の発表会に登壇したという経緯があり,「もしかしたらここにいなかったかもしれない」と述べ,「この発表ができたことは感無量でした」と話した。現在は開発も佳境のタイミングで,トレイラー制作の打合せなども病床で行っているそうで,「いろんな意味で思い出深いプロジェクトになった」と語った。
名越氏はTGSにも登壇する予定だが,「普段は立って話しますが,もしかしたら座って話すかもしれないのでご了承ください(笑)」と述べ,報道陣からは「お大事にしてください」といたわりの言葉がかけられた。