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日本発の大型フィギュアゲームプロジェクト「ドラゴンギアス」,初披露となったワンフェス上海の公式レポートが公開
お伝えしているとおり,ドラゴンギアスは世界のフィギュアゲームの潮流にメイドインジャパンの総力を結集して挑む“超大型”プロジェクトと謳われている。フィギュアの造形をマックスファクトリー,ゲーム制作をアークライトゲームズ,そして原作・ストーリー・世界設定をイシイジロウ氏が担当するということで,アナログゲームファンならずとも注目が集まっている。
WonderFestival 2019上海で行われたワールドプレミアの公式レポートが到着したので,ぜひチェックしておこう。
「ドラゴンギアス」公式サイト
6月8〜9日にかけて、中国は上海の上海新国際博覧センターで開催された「WonderFestival 2019上海(以下WF上海)」。その会場内において、マックスファクトリーとアークライトによる大型プロジェクト『Dragon Gyas(以下、ドラゴンギアス)』が発表された。
ドラゴンギアスはいわゆるミニチュアゲームに分類されるテーブルトップゲームの新タイトル。1枚の戦場ボード内に巨大ロボットと巨大ドラゴン、騎士団とドラゴニュートという大きさが異なるコマが混在し、先に行動をプロッティング(カードによって動作をプログラミング)して動かす大型のコマと、チェスや将棋のように随時行動させることができる小型のコマを組み合わせて戦うのが大きな特徴。ゲームデザインには日本を代表するゲームデザイナーである川崎晋を起用し、原作・ストーリー・世界観設定にはビデオゲームデザイナー・脚本家のイシイジロウが携わる。また、メインビジュアル・キャラクターデザインはカプコンのゲームや多数のアニメで活躍する西村キヌが担当する。
最大のポイントとなるのが、ゲームで使うコマの設計・製造をフィギュア・プラモの大手国内メーカーであるマックスファクトリーが担当している点。登場するドラゴンたちの造形は数々の商業原型を手がける高木アキノリが製作。また人間側のロボットや装備品などはフリーデザイナーの”絵を描くPETER”が担当し、素材の設定にまでこだわった緻密なデザインを提供している。
今回は大規模造形イベントであるWF上海での初お披露目ということで、展示ブースではこのコマたちを大幅にフィーチャー。ゲーム内に登場するロボット「ギアス」は全長1mを超えるプレゼンテーション用大型モデルが用意され、さらにドラゴンたちも設計用3Dデータを使った50を超える迫力のモデルが展示された。もともとWF上海では大型の彫像やフィギュアが大量に展示・販売されており、それをにらんだブース設計と言える。
大型モデルの展示から続くブース内では、開発中のゲーム用戦場ボードやカード類、それに実際にゲームに使うコマも展示された。特に注目すべきは、コマを組み立てる前のパーツがランナー(プラモの枠)に付いた状態で展示されていた点。ドラゴンのパーツ類は複雑な分割線に沿って細かく割られ、それらを組み合わせることで生物的なディテールを持ったドラゴンたちの姿を再現することができることが見て取れた。
これらゲーム用のコマの設計にはマックスファクトリーの持つノウハウが存分に注ぎ込まれ、複雑なパーツ分割ながらパーツの嵌め合わせには細心の注意が払われている。そのため、模型製作の経験がなくても、ニッパーと接着剤さえあれば組み立ててゲームをプレイすることが可能だ。さらにイギリスのゲームズワークショップが発売しているシタデルカラーを始めとしたミニチュア用塗料を使えば、自分だけのカラーリングでコマを完成させることができる。ゲーム自体のプレイに加え、「組み立てること」「塗装すること」の楽しさも味わえる内容となっている。
さらにブース内には、西村キヌによるイメージビジュアルを印刷した巨大ボードやキャラクター設定画、”絵を描くPETER”による「ドラゴンギアス」の世界を表現したイメージボードも多数展示。特に巨大なイメージビジュアルの前では会場を訪れた人たちが記念撮影している姿も印象的だった。また、ブース内に展示された大型モデルは多くの来場者の注目を集めており、中にはブースに詰めているマックスファクトリーのスタッフに対して熱心に質問する人も。中国では女性キャラクター以外やロボット以外をモデルとした幅広い題材のフィギュアが好まれる傾向があり、リアルなクリーチャーを表現したドラゴンギアスは大きな注目を集めたと言えるだろう。
ドラゴンギアスは日本国内での販売を見据えつつ、海外に対してはキックスターターでのクラウドファンディングを開始する予定。その意味でも、日本国内ではなくここ2年大きな盛り上がりを見せる上海WFでの発表となったのは、まさに最適なタイミングと場所のチョイスだったと言えるだろう。日本国内向けの製品仕様としては、組み立て式のランナーをセットしたものと、純粋なアナログゲームのプレイヤー向けに組み立て済みのコマをセットしたものの二本立てで販売される予定だ。海外が主流となるミニチュアゲームという文化に日本国内のドリームチームがどう打って出るか、今後の動向に注目である。
最後に、WF上海におけるドラゴンギアスの発表に関して、マックスファクトリー代表のMAX渡辺氏のコメントをいただいたので、ここに全文を掲載したい。
ランナーについたプラスチックの成形品が好きな弊社スタッフが、ミニチュアゲームの『ウォーハンマー』を見つけてきたことがこの企画の発端でした。こんなプラスチックモデルが世の中にあるのか、これはいかなる文化なのかを探るうちにドップリとハマってしまって、『ウォーハンマー』を展開するゲームズワークショップとも一緒に仕事をするようになりました。
そこで我々が考えたのは、「僕たちもこれをやりたい」ということ。我々が親しんできたプラスチックモデルやホビーには、あの精巧なミニチュアモデルの文化はありませんでした。僕らもミニチュアゲームの世界に入ってみたい、そしてミニチュアゲームの文化を僕らの親しんだホビーの世界に持ち帰り、紹介したい。偽らざるこの気持ちがドラゴンギアスの出発点です。プラスチックモデルのユーザーは、ミニチュアゲームの世界で発展した塗料のシステムや成形品のノウハウを知りません。幸運なことに僕らはその両方の良さを知っているし、架け橋のような仕事ができるなって思ったんです。
商品としてはもちろん、ボードゲームのコマとして優れたものであることがまず大前提ですが、僕たちはコレらのコマをプラスチックモデルとして愛し、楽しみたいのです。僕らが今までやってきた筆塗りやプラモデル作りのノウハウが生かせるのに、それを楽しまないのはもったいないじゃないですか。まずは組んで塗ることを楽しんでほしいなと思っています。
とはいえ、ゲームのユーザーにはプラモデルに触れたことのない人もたくさんいると思います。なので、今回は組み立て済みのコマをセットしたバージョンも販売する予定です。「組み立てはとっつきにくいし、すぐにゲームをやりたい!」という人は、組み立て済みコマが同梱されているを選んでいただけるとありがたいですね。
デザイン的な部分に関しては、ミニチュアボードゲーム市場としての北米やヨーロッパ、そしてアジア圏を意識しているという点が大きいです。西洋の人たちにもアジアの人たちにも受け入れてもらえる要素はなんだろうと考えた結果、「和」のテイストをうまく入れ込むことがいいのではないかと考えました。だから西洋的なモチーフをベースにしつつ和風の要素を入れることによって、今まで見たことのないビジュアルを作るのは意識したし、ある程度それは成功したかなと思っています。「剣と魔法」のような要素に関しては、あえて今回はチャレンジしていません。兵士たちの装備にしても、形や材質は西洋の甲冑のようだけど、そこに入っている文様はアジアっぽい感じ……というように、無国籍っぽいテイストを感じられるデザインになっていると思います。
キックスターターのスケジュールや、日本国内の発売タイミングに関してはこれからの調整です。ですが、おかげさまで今回の発表に関しては非常に反応がいい。中国の人たちがちゃんと認めてくれた、支持してくれそうだという点を持ち帰り、そこからのフィードバックを盛り込みながら、造形面だけではなくゲームシステムや販売・営業的側面も強化していこうと思っています。
とにかくこのドラゴンギアスに関して言えば、造形に興味のある若いお客さんにまずお見せしたかったし、そういう人たちがどう受け取ってくれるかをずっと試してみたかったんです。そういう意味ではWF上海という場所でお披露目できたのは素晴らしいことでしたし、そこで『このテイストいいぞ!』って言ってくれるお客さんがたくさんいたのは本当によかった。今回の展示は大成功と言っていいし、正直今はホッとしています。
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