インタビュー
[TGS 2019]「ラクガキ キングダム」は絵を描くのが苦手な人でも楽しく遊べるタイトルに。プロデューサーの下里陽一氏にインタビュー
今回4Gamerでは,東京ゲームショウ2019の会場にて,プロデューサーの下里陽一氏にインタビューする機会を得られたので,プロジェクト発足の経緯や本作で新たに追加されたシステムについてアレコレと話を聞いてきた。本稿ではその模様をお伝えしよう。
なお,インタビューに先駆けて本作のプレイレポートも掲載している。詳しいシステムやプレイサイクルを把握しておきたい人は,こちらもチェックしておくといいだろう。
[TGS 2019]他プレイヤーが描いたラクガキとの“合作”も可能に! タイトーブースで「ラクガキ キングダム」を試遊してきた
東京ゲームショウ2019のタイトーブースにて,スマホ向けRPG「ラクガキ キングダム」がプレイアブル出展されている。プレイヤーが描いたラクガキが立体になって動き出し,ゲーム内のキャラクターとして育成できる“ラクガキシステム”が特徴の本作をプレイしてきたので,そのレポートをお届けしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介も兼ねまして,下里さんのプロジェクトでの立ち位置や,経歴についてお聞かせください。
タイトーの下里です。前職ではセガゲームスに所属していたんですが,昨年タイトーに転職して,今に至ります。セガではずっとRPGを作ってきたんですが,自分のやりたいことや,関わったことのないスマホゲームの制作などを実現するため,タイトーに転職しました。
4Gamer:
「ラクガキ王国」は,下里さんの前職時代にリリースされたタイトル(※)だと思いますが,やはり当時から注目されていたんですか。
※「ラクガキ王国」は2002年3月に,PlayStation 2用ソフトとして発売された
下里氏:
はい。描いた絵が立体化されて動き出すというシステムが,他社から出たことに一企画者として衝撃を受けました。でも「ラクガキ王国」のあと,「天才ビットくん グラモンバトル」「ラクガキ王国2 魔王城の戦い」などはリリースされたんですが,その後シリーズ作品が出なかったんですよね。
僕としては,こんな画期的なゲームを出さないのはもったいないと思っていたので,タイトーに入ったからには,「ラクキン」の企画を立ち上げないわけにはいきませんでした。
4Gamer:
「ラクガキ王国」が出た頃はネット環境が今ほど充実していなかったですし,SNSも一般的ではありませんでした。多くの人がスマホを所持している今こそ,「ラクガキ」シリーズの時代なのではないかと個人的には思ってしまいます。
下里氏:
おっしゃるとおりですね。今の時代ならば,作ったラクガキを手軽にキャプチャできますし,それをSNSなどで瞬時に共有できます。タイトーの代表作ともいえる「スペースインベーダー」は,同時に日本のゲーム史の夜明けを象徴するタイトルでもあります。そんなタイトーに入社したからには,過去の資産を活用して今のトレンドに乗せる仕事にも大きな価値がありますよね。そういう意味でも,ラクガキシステムを進化させて世に出してみたいという想いがあったんです。
4Gamer:
そこまでの思い入れがあったとは……。となると,企画の立ち上げもスピーディだったのではないでしょうか。
入社1か月後,社長にプレゼンさせてもらって,すぐに企画を動かすことができました。企画の軸は「基本システムの魅力はそのままに進化させる」ことで,絵を描ける人はもちろん,描けない人でも楽しく遊べるゲーム作りを心がけています。
4Gamer:
「ラクガキ王国」ではゲームパッドで絵を描いていたんですよね。絵心のない人がゲームパッドで絵を描くのはかなりハードルが高く,やきもきしたファンもいたのではないかと思います。
下里氏:
そうですね。私もそのプレイヤーのひとりでした。ですので,今作は絵心のない方でもラクガキが簡単に描けるようなユーザーインタフェイスやシステムを導入してます。また今作はプラットフォームがスマホということもありゲームシステムも変更しています。
4Gamer:
先ほどテストプレイをさせていただきましたが,ラクガキの自由度という部分では,特定の図形を描きやすくするシステムや,拡大機能,線の補正機能などが便利でした。
スマホゲームということで,絵を描く作業は格段にラクになっていますよね。スマホでのタッチ操作を前提に開発していますが,クリエイティブを極めたい人なら,タブレットやスタイラスを用いることで,とんでもなく緻密なラクガキを作れますよ。
今回のゲームショウで公開したバージョンは「職人モード」で,お絵かきの自由度が高いものだったんですが,これから「簡易モード」も作っていきます。コマンドを簡略化し,線を描く,色をつける,スタンプを押す,みたいな工程で誰でも気軽に絵を描けるモードを目指しています。人型や動物型の「素体」をプリセットで用意しますので,それをベースに制作すればより簡単にできると思います。
4Gamer:
絵心がある人もない人も,たっぷりと楽しめそうですね。ちなみに,描けるパーツの最大数はどれくらいになるんでしょうか。
下里氏:
256パーツです。テスターの力作を見るとMaxまで使い切っているケースも少なくなくないですね。本作の限界をテストしてくれていて本当にありがたいです。
4Gamer:
256パーツも使えるなら,大抵の絵は描けそうですね……。一方のゲーム性に関してはいかがでしょう。
下里氏:
「ラクガキ王国」は長編ストーリーの中での冒険がメインでしたが,「ラクキン」では1時間ぐらいのショートストーリーをクリアすることで,1体のラクガキを完成させられます。
本作には,自分が作ったり,ほかのプレイヤーが作ったりしたラクガキをアップロード/ダウンロードできる「ラクガキガレージ」というシステムがあります。とにかくラクガキシステムが面白いので,プレイヤーなら誰もが,たくさんのラクガキを所持したいと思うはずです。プラットフォームもスマホになりますし,昨今のゲーマーのプレイスタイルを考慮すると,この形がベターかなと考えています。ありがたいことに,テスターからも好評をいただいています。
4Gamer:
「ラクガキ王国」とはさまざまな部分が変わっていますが,個人的にも好印象でした。とくにラクガキガレージには大きな可能性を感じますよね。
下里氏:
ええ。ラクガキガレージからダウンロードしたラクガキは再編集が可能ですし,たとえば「僕は頭をアップロードしたから,ほかのパーツはみんなよろしく」といった感じで「合作」もできるんです。
4Gamer:
武器専門の職人が生まれたり,リレー形式でのラクガキ制作が流行したり……といった絵がなんとなく見えてきます(笑)。
下里氏:
コラボもしやすそうですよね(笑)。ラクガキガレージは本作でも重要なシステムなので,正式版でも絶対に無料で提供します。ラクガキを自由にアップしたり,ダウンロードしてカスタマイズしたりしてほしいです。
4Gamer:
ゲーム部分ではバトルシステムも興味深かったです。ラクガキが行動順に攻撃するターン制/コマンド選択式が採用されていますね。
下里氏:
ラクガキシステムは覚えることが多いので,バトルに関しては,RPGをやったことがある人なら誰でも直感的に理解できるものにしました。プラットフォームがスマホということで,システム説明やチュートリアルが細かすぎると離脱されてしまうでしょうし,1時間で1ラクガキを作れるプレイサイクルとも相性がいいと考え,プレイヤーに負担をかけないバランシングにこだわっています。
4Gamer:
バトルのバリエーションとして,PvPなども用意されるのでしょうか。
下里氏:
あります。基本的には,ほかのプレイヤーが育てたラクガキと非同期で戦えるような形です。
本作には,ショートストーリーで楽しめる育成モードのほかに「クエスト」もあって,そこでは育成モードで使えるアイテムが手に入るんです。育成モードで作ったラクガキはそれ以上育てられないんですが,クエストで入手したアイテムを使って育成モードをプレイすることで,より強いラクガキを作れるようになっています。
4Gamer:
技を覚えるためには,トレーニング「トレスター」というキャラで特訓する必要があるんですよね。
下里氏:
はい。イメージとしては,コアの部分をトレーニングしてパラメータを強化し,そこにガワとなる絵を描いたりダウンロードしたりしてセットする感じです。
4Gamer:
なるほど……1時間で1ラクガキを作れるプレイサイクルともマッチしますね。
下里氏:
100回遊んだら100とおりのラクガキが誕生する。それが「ラクキン」というゲームです。遊び方としてもコンシューマのようですし,育成に特化した遊びが満載なので,「ラクガキ王国」のファンにも満足してもらえるのではないでしょうか。
4Gamer:
機能が限定されたTGSバージョンでも十分楽しめましたし,正式版のリリースが本当に待ち遠しいです。
下里氏:
そう言ってもらえると我々も嬉しいです。今後は育成システムやバトルシステムの完成度を高めつつ,ゲームとしての面白さをさらに追求していきます。より良いクオリティの「ラクキン」を皆さんに提供できるよう頑張りますので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「ラクガキ キングダム」公式サイト
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