ニュース
[TGS2022]「桃鉄」新作は“貧乏神”がリストラ!? “桃太郎電鉄 教育版 〜日本っておもしろい!〜制作発表会”レポート
番組の司会進行は,お笑いコンビのパックンマックンが担当。ゲストには,教員の正頭英和先生,エッセイストの犬山紙子さん,本作のシニアプロデューサーである岡村憲明氏が登場し,トークをくり広げた。
最初のテーマは,「桃鉄」と「教育」について。「幼い頃はゲームと教育は相反するものだった」「親に遊ぶ時間を決められていた」など,各々から当時のゲーム環境あるあるが語られた。犬山さんは遊ぶ時間を指定されていたが,「布団の中に隠れて,ゲームボーイでこっそり桃鉄を遊んでいた」という,多くの人が身に覚えがあるだろうエピソードを語る。
そのように,怒られながらもゲームを遊んできた人が親世代となったことから,「ゲームで教育するのもアリなのでは,と思う人も増えてきたのでは」と犬山さん。
正頭先生は「たとえばじゃんけんや運動会など,ゲームは昔から教育の現場にあった。それがデジタルになると急に壁ができてしまう。今の子どもたちは産まれたときからスマホがある世代なので,自然に入っていけるはず」とコメントした。
そして本題の「桃鉄」だが,「実は“桃鉄で日本の地理を覚えました”という声は30年ぐらい前からよく聞こえてきた」と岡村P。「僕自身もそうで,弘前(ひろさき,青森県の市)の呼びかたも桃鉄で知りました」と自身の体験談を交えて語る。
さらに,桃鉄は現実とリンクしていることが重要であるとも述べた。「桃鉄に出てくる地理・地名,特産品は,総監督のさくまあきらさんが実際にそこで食べ,美味しいと思った記憶や体験が,物件リストや値段,収益率としてゲームに反映されている。実際にそこに行けばある,というのが何より素晴らしい」と語った。
本作はすでに小学校で試験導入されており,そのときの様子が映像で紹介された。
試験導入を受けて,岡村Pは「皆,本当に楽しそうにプレイしてくれていた。印象に残っているのは,不登校だった子が,この桃鉄の授業には出席してくれたこと。これってゲームの力なのでは」とコメント。
正頭先生はアドバイザー,エデュテインメントプロデューサーとして本作に関わっている。「エデュテインメントは,エンターテイメントとエデュケーションを組み合わせた造語。僕たちは桃鉄で学んだと思っているけれど,なんとなくの経験則で本当に学んだのか確証はなかった。だが今回の試験導入で,子どもたちが“いつの間にか学んでいた”と語ってくれて,狙いは正しかったと思えた。“遊んでいたらいつの間に勉強になっていた”というのがエデュテインメントの理想」と述べていた。
そのような「教育版」だが,どのようなゲームに仕上がっているのか。詳細が岡村Pより解説された。正頭先生よりアドバイスを受け,製品版から細かい部分を変えていったという。
ひとつ目の特徴は,「地理情報表示機能」。ゲーム内で駅に停車すると,その駅の情報が右側に表示されるというもの。これにより,ゲーム内に登場する駅は,実在する街で,どのような都市なのかを実感できる。同様に,ランドマークも虫眼鏡で調べると,その情報が表示されるとのこと。「リアルとつながっていることを実感できるのが一番の特徴」と岡村P。
ふたつ目の特徴は,先生が授業を管理できる機能を搭載していること。地理は学習単元で地方ごとに勉強するため,選択した地域だけで遊べるモードを作成したという。また管理ツールも用意されており,ゲームの時間設定や利用人数を先生側で決められる。途中中断も可能で,授業中に好き勝手に桃鉄を遊ばれないための機能だ。
そして,本作最大の特徴は「貧乏神」が出ないこと。これについては,「考えすぎかもしれないが,(貧乏神をなすりつけるなどで)いじめにつながる原因になってはならない。貧乏神以外にも,攻撃系のカードで誰かを指定する機能はなくなり,相手がランダムで選ばれるようになっている」とのこと。個人攻撃がいじめに発展することを懸念して,この仕様にしたそうだ。「授業ならばプレイ時間も短いし,桃鉄としての楽しみは担保されているので,これはこれでいいかな」と岡村Pは述べた。
続いて,対応プラットフォームや価格について。本作はなんと,教育機関に無料で提供されるという。さらに,学校ではPCやiPad,Chromebookなどが使われていることから,どこでも使えるようにブラウザで動作するゲームになっているとのことだ。岡村Pは「演出は若干製品版と違うが,ゲームとしての楽しさはそのまま。個人的には,ブラウザゲームでこんなに動くんだ,と驚いた」と語る。
正頭先生は「無料で使えるのが大きい。日本が抱える教育課題のひとつが教育格差。都会と地方の差はけっこう大きい。無償であれば,地方の子も楽しんでもらえるし,地方の子は都会のことを,都会の子は地方のことを知るチャンスになる。お互いの地域の交流などにつながればいいなと,期待しています」と,教育現場の実情と展望を語ってくれた。
無償提供に至った経緯は,実はゲームの製作初期から,総監督のさくまあきら氏の強い意向があったという。先のように“桃鉄で地理を勉強した”という声がたくさんあったことから,「学校や子どもたちのために何かできることはないか」とずっと考えられていたそうだ。さくまあきら氏の念願だったとも言えるだろう。
本作の学習帳もお披露目された。これは左ページに桃鉄のマップが描かれたノートで,「桃鉄を遊んで地域や場所を勉強し,いろいろ思いついたアイデアを反映できるものがあれば面白いのでは」と思ったことから,企画をショウワノートへ持ち込んで作成されたもの。
本作は今冬リリース予定で,9月15日より学校関係者へ向けたティザーサイトが公開されている。
「桃太郎電鉄 教育版 〜日本っておもしろい!」ティザーサイト
東京ゲームショウ2022公式サイト
4Gamerの東京ゲームショウ2022記事一覧
- 関連タイトル:
桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜
- この記事のURL:
キーワード
(C)さくまあきら(C)Konami Digital Entertainment
- 桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜【早期購入特典】ファミコン版「スーパー桃太郎電鉄」ダウンロードコード同梱
- ビデオゲーム
- 発売日:2020/11/19
- 価格:¥5,980円(Amazon) / 5691円(Yahoo)