サイバーパンクな世界に生きるニンジャの暗躍を描いたアクションゲーム
「Ghostrunner」 (
PC /
PS4 /
Nintendo Switch /
Xbox One )。2020年10月28日にPC向けにリリースされた本作は,自分も敵も一撃必殺というハードコアなゲームデザインが注目を集め,難度の高いゲームを好むゲーマー達から支持を得た作品だ。
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そして2021年1月28日には,PlayStation 4版とNintendo Switch版がH2 INTERACTIVEから発売されることが決定している。今回は,本作の開発を手掛けたポーランドのゲームデベロッパ,One More Levelで,ナラティブデザイナー及びシナリオライターを務めている
Jan Gąsior氏 に,Ghostrunnerの開発経緯などを聞いてみたので,その内容を紹介しよう。
4Gamer:
まずはOne More Levelについて教えてください。同社が設立されたのはいつ頃なのでしょうか。
Jan Gąsior氏
Jan Gąsior(以下,Gąsior)氏:
One More Levelが設立されたのは2014年です。スタッフは新人から,ゲーム開発のリーダーとして長年携わってきたベテランまでおり,私も最近合流したメンバーの1人ですね。
4Gamer:
GąsiorさんはOne More Levelに合流する前は何をされていたのでしょうか。
Gąsior氏:
シティービルダーというボードゲームなどを作っていました。ビデオゲームの開発経験はほとんどなかったので,今回のプロジェクトはある意味面白い挑戦でした。ゲーム開発を学びながら,同時にストーリーをどう落とし込むかなど,非常に考えさせられました。
4Gamer:
ゴーストランナーの企画はどのように立ち上がったのでしょうか。
Gąsior氏:
前作の「God’s Trigger」をより技術的に進化させたものを作ろう,というところから始めました。最初は核心的なメカニズムだけを実装したプロトタイプを制作し,その次にナチュラルなキャラクターの動きやゲームの流れなどの細かい修正を何度も行いました。ちなみにビジュアルなどの作業はその後からでした。
開発後半は「God’s Trigger」を制作していたメンバーも合流し,より多くの機能とアイデアが追加されました。ゲームのコンセプトは最初から明確だったのですが,表現するために試行錯誤を繰り返しました。機能的な部分やビジュアルの部分で加わった要素はたくさんあるものの,一番重要なゲームの面白さを追求することは妥協しませんでしたね。早いテンポ感で,柔軟な発想を多く取り入れた結果,素晴らしい作品が誕生したわけです。
4Gamer:
ビジュアルという部分で見ると,Ghostrunnerはサイバーパンクを意識した世界観になってますよね。
Gąsior氏:
サイバーパンクを採用した理由は,単純にその世界観が好きだったからです。また,プロトタイプが完成した時点でこの世界観でなければゲーム自体が成立しないと思いました。人間の生き死には軽視され,現実は残酷で,超人的な能力も意味を持たない世界。Ghostrunnerでは,そんなサイバーパンクの魅力を最大限に表現できたと考えています。
4Gamer:
サイバーパンクの世界を構築するうえで参考にした作品はありますか。
Gąsior氏:
もっとも大きな影響を受けたのは映画の「ブレードランナー」です。また「ジャッジ・ドレッド」や,孤立された環境でのディストピアを描いた「スノーピアサー」なども参考にしました。
私が個人的に影響を受けたのは,木城ゆきとの漫画「銃夢」ですね。銃夢は私が一番好きなサイバーパンクの作品で,暗鬱で錆びた雰囲気のポスト・アポカリプスの世界観が非常にシビれます。サイボーグから鑑みる人間の未来像,暴力が蔓延した世界,かけ離れた日常生活,雰囲気は荒涼で暗いのですが,訴えかけるような社会像を描いています。
ゴーストランナーの舞台も廃墟になった世界という意味では一緒ですが,終末寸前ではなくその後の物語という点で違いがあります。
4Gamer:
サイバーパンクの世界を構築するうえで「ここは外せない」といった要素はありますか。
Gąsior氏:
サイバーパンクは「争い」を描くジャンルなのだと思います。この社会で起こる争いは,大体の場合は不義や貧富の差,強者と弱者の対立から始まります。社会のしくみはその争いによって整えられ,争いの中で自分を認識します。こうした説得力のある「争い」を共感できるよう描写するのが,サイバーパンクの世界観を作るにあたって一番重要なことだと思います。
4Gamer:
ゲーム全体を設計するうえでこだわった部分を教えてください。
Gąsior氏:
私たちが最も重要視したのはゲームとしての面白さです。一撃必殺やパルクールなどのアクションを最大限に表現して,プレイヤーに楽しんでもらえるよう追求しました。
4Gamer:
自分も敵も一撃必殺という,コア寄りに踏み切ったゲームバランスになっていますが,そうした狙いはなんでしょうか。
Gąsior氏:
難度はあえて高めに設定し,死ぬことも重要な要素として組み込みました。プレイヤーのゲームスキルで乗り越え,繰り返しチャレンジする中でのミスや失敗から学ぶということも,ゲームデザインの核心となっています。
私の友達は最初のボスを251回死んでからやっとクリアしましたが,変わらず楽しくプレイしていました。何度ゲームオーバーを繰り返してもプレイヤーが楽しめているのは,我々が考え抜いて出したゲームデザインの証明だと思います。
4Gamer:
リリース後のプレイヤーの反応はいかがでしょうか。
Gąsior氏:
現在9割を超える良い評価やユーザーレビューをいただいています。2019年にデモバージョンを公開してから,コミュニティで多くのプレイヤーが繰り返しプレイして上達していく様子を見て,ゴーストランナーのポテンシャルを感じました。そしてPCでの製品版発売で,私たちはプレイヤーの期待に応えられたんだと改めて実感しました。
4Gamer:
好評だった部分はどこでしょう。
Gąsior氏:
没入感のあるプレイ感覚とビジュアル,ゲームデザインなどが好評でした。またDaniel Deluxeさんのシンセサイザーな音楽も反響をいただきました。
4Gamer:
逆に不評だった部分がありましたら教えてください。
Gąsior氏:
「パズル部分でのゲームテンポの悪さ」や「ストーリの単純さ」などがありました。「難度が高すぎる」という意見もありましたが,“ハードな難度”というのが本作のポイントでもありますので,ある程度予測はしていました。プレイヤー全員を満足させるゲームは中々作れないと思うので,それよりも己のビジョンを貫くということが良い作品を生み出すと考えて,評価を受けて止めています。
4Gamer:
One More LevelにとってGhostrunnerは大きなプロジェクトだったかと思いますが,リリース後のスタジオの雰囲気はどうでしょうか。
Gąsior氏:
開発スタジオとしては良い波に乗り始めたのかなと思います。Ghostrunnerでプロジェクトメンバーはもちろん,1つのチームとして成長できました。それぞれのスタッフが能力を身に付け,技術を向上させているので今後それがゲームの中で光ると思います。
個人的にはナラティブデザイナーとしてより重厚なストーリーや多様な表現を追求していきます。今後のタイトルでもストーリーとアクションのバランスを考え,さらに魅力的なゲームをお届けできるよう頑張りたいと思います。
4Gamer:
最後に,日本のプレイヤーにメッセージをお願いします。
Gąsior氏:
日本文化と日本のクリエイターがサイバーパンクというジャンルに及ぼした革命は偉大です。その影響を受けて制作したGhostrunnerのファンが日本にもいることは本当に嬉しく思います。本作を楽しくプレイいただき,これから発売する私たちのゲームにもぜひ期待してもらえればと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。