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Intel,「Tiger Lake-H」こと6〜8コア対応のノートPC向け第11世代Coreプロセッサを発表
ゲーマー向けのノートPCに搭載されることが多い,モデルナンバー末尾Hのプロセッサ向けの新製品なので,ゲーマーにとっても重要な新CPUと言っていいだろう。本稿では,新CPUの概要と特徴を簡単に紹介したい。
ハイエンドのゲーマー向けノートPCに使えるTiger Lake-H
薄型ノートPC向けのTiger Lakeは,Configurable TDP(cTDP)が28W以下の製品だが,今回のTiger Lake-Hは,すべてcTDPが35W以上の製品となる。
また,CPUコアの最大動作クロックが5GHzに達したモデルがラインナップされているのも見どころである。ただ,Tiger Lake-Hで最大クロック5GHzに達するのはcTDPが65Wに設定されている最上位モデル「Core i9-11980HK」のみで,自動クロックアップ機能である「Turbo Boost Max 3.0」が動作したとき,最大で5GHzに達するという条件がある。
発表された製品ラインアップを表1にまとめておこう。一般消費者向けTiger Lake-Hは全5製品。上位モデルのCore i9/i7が8コア16スレッド対応で,下位モデルのCore i5が6コア12スレッド対応となっている。
全体の特徴としてまず挙げられるのは,統合型グラフィックス機能(以下,統合GPU)がEU数32基の「Intel UHD Graphics」ブランドである点だ。Intelによると,アーキテクチャは,既存のTiger Lakeと同じIris Xe Graphicsベースとのことだが,薄型ノート向けのTiger Lakeよりも規模が小さいGPUを統合しているとのこと。これはもちろん,Tiger Lake-Hが単体GPUを搭載する高性能なゲーマーノートPC向けだからだろう。
最上位の「Core i9-11980HK」と「Core i9-11900H」の2製品は,CPUコアの温度や消費電力に余力がある場合に限って,「Turbo Boost Technology」の上限を超えたクロックで動作させる「Turbo Boost Max 3.0」に対応する。そのため,この2製品におけるシングルコア最大クロックは,Turbo Boost Max 3.0機能時のものという点に注意してほしい。それ以外の3製品は,Turbo Boost Technologyのシングルコア最大クロックである。
それに加えて,最上位のCore i9-11980HKはモデルナンバーの末尾が「K」のクロック倍率アンロック版だ。Intelは,動作クロックが5GHzに達するCore i9-11980HKを「モバイル向けとして史上最高のシングルスレッド性能を実現した」とアピールしている。
なお,全製品がcTDP,つまり採用するメーカーが製品の冷却性能に合わせて任意のTDPを設定できる仕様だ。そのため,Intelが挙げているベースクロックや最大クロックはあくまで参考値であり,製品によって異なることもあると理解してほしい。
ビジネスPC用のノートPC向けXeon&第11世代Coreも登場
一般消費者向けの5製品に加えて,Intelは,企業ユーザー向けの第11世代Coreプロセッサ計5製品も発表している。Intel vPro Technologyを始めとする企業向けのセキュリティ&管理ソリューションに対応するモデルだ。ゲーマー向けPCが搭載することはまず考えられないが,参考までにラインアップ(表2)を掲載しておこう。
競合の上位モデルを上回るゲーム性能を持つ
Tiger Lake-Hは基本的に,第11世代Coreプロセッサの高性能モデルなので,アーキテクチャ面で目新しい機能があるわけではない。主な特徴は先述のとおり,上位モデルが8コア16スレッド対応で,Turbo Boost Max 3.0に対応して最大5GHzの動作クロックに達する点と,Iris Xe Graphicsベースではあるが,性能を抑えた統合GPUを備えること考えていいだろう。
それ以外の特徴は,Tiger Lakeシリーズと同じである。ざっくりとまとめておくと,10nm SuperFinプロセスで製造されるCPUで,CPUコアに新開発の「Willow Cove」を採用して,第10世代Coreプロセッサ比でクロックあたりの性能を19%高めたことにある。
それに加えて,外部バスとしてPCI Express(以下,PCIe) 4.0に対応しているのも特筆できる点だ。Tiger Lake-Hの場合,CPU直下に20レーンのPCIe 4.0を持ち,単体GPU用の16レーンに加えて,残る4レーンに高速なPCIe接続型SSDを接続できるという。
また,無線LANモジュール「Intel Killer Wi-Fi 6E AX1675」への対応が謳われているのも特徴のひとつだ。これは,2020年にIntelが買収したRivet Networksの技術を盛り込んだWi-Fi 6E対応のモジュールで,6GHz帯と従来の5GHz帯を,通信状態や帯域の使用状況に応じて使い分ける「Killer Intelligent Engine」機能を搭載する。これによりゲームで重要な低遅延の通信が可能であると,Intelは主張している。
なお,日本ではまだ6GHz帯の利用が認可されていないので,日本では6GHz帯をソフトウェア的に無効化した状態で出荷するものと思われる。
そんなTiger Lake-Hについて,Intelが強調しているのは,もちろんその卓越したゲーム性能だ。
次のスライドにあるグラフは,AMD製のノートPC向け最上位CPU「Ryzen 9 5900HX」と,Tiger Lake-Hの最上位であるCore i9-11980HKの性能をノートPCで比較したものだ。なお,搭載GPUはどちらもNVIDIA製の「GeForce RTX 3080 Laptop GPU」である。
Core i9-11980HKは,競合製品に対して多くのゲームで11%から20%以上高いフレームレートを記録するという。
さらにIntelは,Tiger Lake-Hの下位モデルのCore i5であっても競合の上位モデルと肩を並べるゲーム性能を持つとアピールしている。したがって,Tiger Lake-Hは,従来より低価格で高いゲーム性能を持つノートPCを実現できるというのが,Intelの主張なわけだ。
Intelによると,Tiger Lake-Hを採用する80機種以上のノートPCがすでに開発されており,5月中旬には販売が始まるとのこと。薄型かつ高性能な単体GPUを搭載するゲーマー向けノートPCや,リフレッシュレート最大360Hzに対応するディスプレイを備えるノートPCなど,多彩なTiger Lake-H搭載機が登場するとIntelは予告している。
ゲーマー向けノートPCの導入を検討している読者は,各社からのニュースをチェックしておくといいのではなかろうか。
Intelの第11世代Coreプロセッサ製品情報ページ
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第11世代Core(Rocket Lake,Tiger Lake)
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