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印刷2024/08/29 15:36

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STEPN,Sandbox,MapleStoryから見る,Game-Fi導入の課題及びイノベーションの展望[WebX]

 ザ・プリンス パークタワー東京で開催されている「WebX 2024」で,「Game-Fi導入の課題及びイノベーションの展望」をテーマに,Kantan Games Inc.のCEO,Serkan Toto氏の進行のもと,FSL(STEPN,STEPN GO,MOOAR,そしてGas Heroを作りあげた会社)の共同創業者Yawn Rong氏,The Sandboxの共同創業者兼COOのSebastien Borget氏,MapleStory Universeの事業開発責任者のAngela Son氏が登壇したパネルディスカッション8月28日に行われた。

画像集 No.001のサムネイル画像 / STEPN,Sandbox,MapleStoryから見る,Game-Fi導入の課題及びイノベーションの展望[WebX]

 「STEPN」や「The Sandbox」,「MapleStory Universe」と,業界外にも名前が知られるほどの実力派たちが,各プロジェクトの現状と展望,Game-Fi領域における課題とイノベーション,そして日本市場に関する洞察という三つの主要なトピックについて議論を展開した。
 MapleStory UniverseのWeb3展開戦略,The Sandboxのプラットフォーム成長とブランドパートナーシップ,STEPNの経験を活かした新プロジェクト「STEPN GO」の開発など,具体的な取り組みを紹介しつつ,それぞれの経験と洞察を共有したものだ。

 また,これらのプロジェクトにそこまで詳しくない人のために,まず各プロジェクトが軽く紹介され,直面した挑戦とチャンス,現状,そして未来の展望などについて,深掘りした議論が行われた。


MapleStory Universe(Angela Son氏)


 Son氏は,「MapleStory IPは,グローバルで愛されているオンラインゲームのフランチャイズです。すでに20年の歴史がありますが,今も成長を続けています。MapleStoryフランチャイズは累計約50億ドルの収益を上げており,これは映画「アナと雪の女王」の興行収入を上回る規模です」とまず語った。

 MapleStory UniverseがWeb3技術を採用した理由について,Son氏は「21年間のサービス提供を通じて,我々はゲームの核心はコミュニティにあると実感しました。ユーザーが作成するウォークスルーや動画,ファンアートなどのUGC(ユーザー生成コンテンツ)は,ゲームの文化を形成する重要な要素です。しかし,従来のWeb2の環境では,これらのコミュニティ貢献を適切に認識し,報酬を与える構造がありませんでした」と説明した。

 Web3技術の採用により,MapleStory Universeは以下の点を実現することを目指している:

・コミュニティ貢献の公式認識と報酬付与
・ゲーム内アイテムやキャラクターのNFT化による所有権の明確化
・ブロックチェーン技術を活用したアセットの相互運用性向上


 「我々の目標は,MapleStory Universeというものを,単一のクライアントゲームを超えたコミュニティとともに進化する全体的な体験にすることです」とSon氏は意気込みを語った。さらに,グローバル展開についても言及し,「Web3は本質的にグローバルな遊び場です。英語を主要言語としつつも,他の言語サポートも積極的に検討しています」と述べ,多言語対応の計画を示唆した。


The Sandbox(Sebastien Borget氏)


 Borget氏は,「The Sandboxは,現在600万以上のウォレットを持つユーザーを抱える分散型仮想世界プラットフォームです。1300以上のゲーム/エクスペリエンスを提供しており,その数は週ごとに増加しています」と述べた。

ミチミチで見づらいが,The Sandboxのバーチャルランドマップはこのようになっている
画像集 No.006のサムネイル画像 / STEPN,Sandbox,MapleStoryから見る,Game-Fi導入の課題及びイノベーションの展望[WebX]
 また,The Sandboxは仮想不動産の概念を導入し,ユーザーが自身の体験を公開できる「土地」の所有を可能にしたこと,独自の「SAND」トークンを開発し,日本を含む世界中の取引所に上場したこと,現在は400以上の主要ブランドとのパートナーシップを締結し,日本では進撃の巨人,キャプテン翼,北斗の拳,渋谷109,エイベックスと協力関係を築いていることなどを,誇らしげに紹介した。
 プラットフォームとしてのエコシステムもうまく回っており,クリエイターへの報酬分配システムを導入し,数千万SANDトークンを配布したりして,年間6桁ドルの収益を達成しているクリエイターもいるという。

 さらに,Borget氏は最近発表された「Voxel Skins Program」について,「このプログラムにより,The Sandbox内のアバターを他のゲームでも使用できるようになります。我々のビジョンは,数百万の仮想世界やゲーム,プラットフォームにアクセスできる真のメタバースを実現すること。ユーザーはデジタルアイデンティティを使用し,すべてのコンテンツやNFTアセットをシームレスに持ち運べるようになります」と展望を述べた。


STEPN / STEPN GO(Yawn Rong氏)


 Rong氏は,STEPNの経験を踏まえた新プロジェクト「STEPN GO」について説明を行った。「我々は約12か月間,STEPNで成功したことと間違ったことを振り返り,分析してきました。その結果を踏まえて,STEPN GOの計画を立案しました。開発に比較的長い時間をかけたのは,持続可能な成長へのコミットメントを示すためです」と語り始めた。

 STEPNの主な成果として,Rong氏は急速なユーザー獲得と成長を挙げた。しかし,依然としてユーザーオンボーディングの摩擦が多く存在していると述べ,具体的な課題として以下の点を挙げた:

・ウォレットのシードフレーズを覚える必要がある
・Solanaのガス代を支払う必要がある
・Web2ユーザーが暗号資産をどこで入手すればいいか分からない


 これらの課題に対し,STEPNは以下のように対応している:

・シードフレーズのクイックバックアップシステムの導入
・新しいゲームトークン(GTT)をガス代として使用可能に
・「Houses」システムの導入(Web3ユーザーがWeb2ユーザーにスニーカーをレンタルし,利益を分配)


 これらの施策により,仮想製品の利用における摩擦を大幅に減らすことができ,使用するのに支払いさえ必要がないとRong氏は強調した。

 さらに,Game-Fi特有の課題であるインフレーション問題に対する新たなアプローチについても言及した。「Game-Fiの問題は,人々が金銭的利益を第一に考えることです。我々はこのサイクルを断ち切る必要があります。解決策として,生産的NFTを非生産的NFTに変換することを考えています」

 具体的には,コスメティックアイテム(スキン)の導入を計画している。「CS:GOなどのWeb2ゲームでの成功例を参考にしています。人々はなぜスキンを購入するのでしょうか? それは,自己顕示欲や社会的価値,コレクション性のためです。我々はこれをデフレ対策として利用します。これが,長期的で持続可能なユーザー成長を達成し,現在直面しているゲームプレイの根本的な問題を解決するための,我々の解決策です」とし,Web2とWeb3のユーザーの橋渡しをして,持続可能なGame-Fiエコシステムを構築しようとする意欲的な取り組みが示された。

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プラットフォームや端末に制限されないWeb3


 次のトピックとして,モデレーターのSerkan Toto氏は日本のモバイルゲーム市場の重要性と各プロジェクトのモバイル戦略について質問を投げかけた。Toto氏は,多くの人が日本のゲーム市場を任天堂やソニーなどのコンソールブランドと結びつけがちだが,実際には日本のモバイルゲーム市場がコンソール市場の3倍の規模であることを指摘した。この事実を踏まえ,各パネリストはそれぞれのプロジェクトにおけるモバイル戦略について意見を述べた。

 パネリストたちはモバイル市場の重要性を認識しつつも,それぞれ異なるアプローチを取っていることが明らかになった。MapleStory Universeは,従来のPC向けゲームの制約を克服するため,Web3技術を活用してクロスプラットフォーム展開を目指している。具体的には,ゲームクライアント外でもアイテムやキャラクターを利用できるようにし,モバイルデバイスからでもマーケットプレイスにアクセスできるようにするなど,多様なユーザー層へのアプローチを模索している。

 The Sandboxは主にPCとMac向けに展開されている。Borget氏によれば,グローバル市場で4億人以上のプレイヤーがいるため,現在のPCとMac版だけでも十分に大きな市場だという。一方,モバイル版の開発については,品質,操作性能,ロード速度,大規模なマルチプレイヤー環境を可能にするメモリ構造などの課題により延期されている。モバイル版のローンチは今年ではなく,おそらく来年以降になる見込みだ。

 しかし,The Sandboxはより包括的なゲームエコシステムアプローチを採用している。最近導入されたVoxel Gamesプログラムでは,従来の開発スタジオやインディー開発者と協力し,Unity,Unreal,HTML5などを使用してゲームを共同制作する。
 そしてそれらのゲームは,Epic Games Store,App Store,Google Playなど,さまざまなプラットフォームで公開される予定だ。このアプローチにより,フリープレイやマイクロトランザクション広告を使用しつつ,The Sandboxのウォレットと統合し,ユーザーベース全体にアクセスを提供する。ユーザーは自身のデジタルアセット(アバターや報酬など)を使用でき,さらなる有用性を得られるという。

 実際Borget氏は,The Sandboxが,プラットフォームとしてコンテンツの多様性と創造性を持っていることを,具体的なゲーム例を挙げながら強調した。従来のゲームプラットフォームでは見られない新しいゲームプレイが生まれているという。
 さらに,スティーブ・アオキさんなどの有名DJとのコラボレーションによる音楽体験や,The Walking Deadなどの有名ブランドとのコラボレーションゲームも紹介され,The Sandboxのエコシステムの広がりを示した。


日本市場は製品に対してお金を払う傾向が強く,Game-Fiにとって理想的な国だ


 パネルディスカッションの終盤で,モデレーターのSerkan Toto氏はさらに日本市場に焦点を当てた質問を投げかけた。特に,STEPN/STEPN GOの共同創業者であるYawn Rong氏が,日本市場の特徴とGame-Fiプロジェクトの可能性について詳細な見解を示した。

 Rong氏はまず,新しいユーザー体験の重要性を強調した。「新しいユーザー体験は,人々の行動を変えるほど重要でなければなりません。モバイルは現在主流ですが,我々は次の段階を考えています。STEPN GOでは,ウェアラブルデバイスに注目しています。特に,今後3年でARシステムがより堅牢になると予想しており,ARゴーグルを通じたゲーム体験が新たな可能性を開くと考えています」
 ARの導入により,ゲーム内のスキン(装飾アイテム)がより重要になるとRong氏は予測する。「ウェアラブルデバイスを通じてほかのプレイヤーのスキンを実際に見ることができれば,スキンの重要性が増し,ゲーム内のステータスを示す重要な要素になります」

 日本市場の特徴として,Rong氏は高い課金率を挙げた。「日本市場では,ユーザーが製品に対してお金を払う傾向が強いです。これはGame-Fi製品にとって理想的です。なぜなら,人々が支出し,それに対して報酬を得るという循環が,調和のとれたエコシステムを生み出すからです」
 Rong氏は,この特徴がGame-Fiプロジェクトに与える影響について次のように説明した。「多くのGame-Fiプロジェクトでは,まず稼ぐことに焦点が当てられがちです。しかし,日本市場では支出する傾向があるため,完璧な互恵的経済が生まれます。ユーザーが支出し,その後稼ぐという流れが実際に機能するモデルになります」

 STEPNの具体的な戦略として,「我々は単純な参加に対して報酬を与えるシフトを行っています。参加とは支出や運動を意味し,それに対して大規模なエアドロップを行います。昨年は約1億トークン(約4000万ドル相当)をドロップし,前年も同様の規模でした。これにより,ユーザーは報酬として得たトークンを学び,再び支出するという循環が生まれ,調和のとれたエコシステムが形成されます」この調和のとれたエコシステムこそが,日本市場を他の経済と大きく異なるものにしており,Game-Fiプロジェクトにとって理想的な環境を提供していると述べた。

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 Game-Fi領域は,従来のゲーム産業とブロックチェーン技術の融合により,新たな可能性と課題を同時に抱えている。ユーザー獲得,経済モデルの持続可能性,プラットフォーム間の相互運用性などの課題に対し,各プロジェクトが革新的なアプローチを模索している。
 特に日本市場においては,ユーザーの高い支払い意欲が,Game-Fiプロジェクトの成長に大きな機会を提供している。いかにユーザーのニーズと技術の進歩のバランスを取りながら,持続可能なエコシステムを構築するかが,この分野の長期的な成功の鍵となるだろう。

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