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クラウドゲームサービス「Xbox Cloud Gaming」の実用性はいかに。スマホもタブレット端末も低スペックPCも“ゲーム機”になる
今回はクラウドゲームサービスである「Xbox Cloud Gaming(Beta)」に焦点を当てて,いかに実用的なサービスであるのかをお伝えしてみたい。
「Xbox Game Pass」はXboxユーザーだけのサービスじゃない! “圧倒的コスパ”のゲームサブスクを全ゲーマーに薦めたい
日本国内では2020年4月にサービス提供が始まった「Xbox Game Pass」は,多種多様なデバイスを横断する定額制のサブスクリプションサービスだ。ゲーマーとゲーム機の関係,そしてゲームの遊び方そのものを変えようとしているXbox Game Passの魅力をまとめてみたい。
Xbox Game Pass 特設ページ
この記事を読んでいるスマホやノートPCでも遊べる!(かも)
あらためて説明すると,Xbox Cloud GamingはMicrosoftのクラウド技術によってスマートフォンやタブレット端末,ゲーム用途ではないPCでもハイエンドゲームが楽しめるサービスだ。現在,Xbox Game Passのプラン「Xbox Game Pass Ultimate」に含まれる形で提供されている。
利用方法は簡単だ。ChromeやEdge,Safariといった対応ブラウザで専用サイト(リンク)を開き,Microsoft アカウントを使ってサインインをするだけ。あとは遊びたいゲームを選べば,十数秒後には起動する。
クラウドサービスの長所として,デバイスを選ばず利用できることがよく挙げられる。Xbox Cloud Gamingは普段メインに使用しているPCやデバイスはもちろん,数年前に発売されたAndroidスマートフォン(SoC:Snapdragon 630,RAM容量4GB)や,物置部屋から発掘したWindows 8.1のノートPC(CPU:Intel Core i5-3337U,RAM容量4GB,SSD容量128GB)でも問題なく動作した。ブラウザから利用できることは,かなりの強みと言えるだろう。
どの程度の通信環境なら快適に遊べるのか
クラウドサービスの快適度は,デバイスの性能より通信の品質に左右される。では,Xbox Cloud Gamingはどのような条件ならば,快適に利用できるのだろうか。
あくまで「個人の環境での使用例」ではあるが,都内の一般的な集合住宅向けの光回線とMVNOを利用している筆者が,さまざまな時間帯にXbox Cloud Gamingを試してみた。
なお,通信品質の測定に利用したのはGoogleの「インターネット速度テスト」。これはGoogle検索だけで手軽に利用できるため,読者が使用している回線やデバイスでもテストが可能だ。Xbox Cloud Gamingが快適に利用できるかの目安になると思う。
さて,2022年2月現在,平日の19時台に前述のAndroidスマートフォンを自宅のワイヤレスルーターと接続して計測すると,おおむね以下のような結果が出た。Androidデバイスの場合,Xbox Cloud Gamingの利用に必要なビットレートは7Mbps以上とされているので,これなら十分な数値だ。
必要なビットレート(ダウンロード) | |
Androidデバイス | 7Mbps以上 |
iPhone | 10Mbps以上 |
iPad | 20Mbps以上 |
Windowsデバイス | 20Mbps以上 |
ここで,最も重要になるのは「レイテンシ」の数値だ。この数値が小さく,安定しているほどサーバーとの応答にかかる時間が短く,クラウドサービスを快適に利用できる可能性が高い。
以上の条件でXbox Cloud Gamingを利用すると,FPSや激しい操作を必要とするアクションゲームであっても,まったく問題なく遊べる。5G回線や外出先のWi-Fiなどを利用する場合でも,レイテンシが15ミリ秒以下であればほとんど感覚は変わらない。
ただし,まれに瞬間的なラグが生じることがあり,プレイヤー同士の対戦やレート制のランクマッチといったシリアスな状況では利用を避けたいと感じた。
逆に言えば,それ以外の状況であれば,ほぼ違和感がない。ブラインドテストを行えば,これがクラウドサービスだと気がつかない人もいるだろう。
とはいえ,前段において「快適に利用できる可能性が高い」と断言を避けているのは,Xbox Cloud Gamingのサーバーが混雑している場合,回線速度やレイテンシに問題がなくても快適に利用できないことがあるためだ。
今回,曜日や時間帯を変えて何度かテストをしてみたところ,平日の夜19時以降や土日が「最も快適に利用できる」という意外な結果が出た。一方,平日の午前中から18時頃にかけてのビジネスタイムは,快適にプレイすることが難しかった。
一般的にインターネットのトラフィックは,夜19時以降増大するため(参考リンク:NTTコミュニケーションズ),にわかには信じがたい結果である。
Xbox Cloud Gamingは,Microsoftが提供するクラウドコンピューティングサービス「Microsoft Azure」のデータセンターに専用のブレードサーバーを設置し,サービスを提供している。Azureは医療,金融,製造,流通など,さまざまな企業や団体に利用されており,それらの膨大な処理と通信によって,リソースの不足やトラフィックの増大が起こればレイテンシが変動することもあるだろう。平日のビジネスタイムに,Xbox Cloud Gamingを快適に利用できない要因はここにあるのかもしれない。
続いて,4G回線を使って接続した場合だ。こちらも同じく平日の19時台にAndroidスマートフォンで測定すると,ダウンロード31.1Mbps,アップロード1.86Mbps,レイテンシ25ミリ秒という数値だった。
この条件の場合,遊び慣れたゲームだとわずかに遅延を感じるが,アクション要素のないRPGやアドベンチャーゲームであれば問題なくプレイできる。平日の夜には電車やバスの中でも,スムーズにゲームを遊べるので,筆者はRPGのキャラクター育成やサイドクエストの進行などに利用している。
セーブデータや各種設定はクラウドを介して同期されるため,自宅のPCやXboxでセーブした続きをスマートデバイスで遊び,帰宅後には自宅のデバイスに戻るといったことも可能だ。
ただ,平日の正午あたりには回線のレイテンシが大きな値になりやすく,「映像が途切れる」「操作のラグが大きくなる」といったプレイが難しい状態だった。このとき「インターネット速度テスト」で測定してみると,レイテンシが50ミリ秒前後になっていることも多い。
タッチ操作対応タイトルは100本以上
Xbox Cloud Gamingは光回線だけでなく,5G回線や4G回線で接続する場合も十分に実用的なレベルにあると言えるだろう。
しかも,タッチ操作に対応するゲームであれば,利用できるシチュエーションはさらに広がる。
記事執筆時点のラインナップによると,タッチ操作のみで遊べるゲームは127本だった。タイトルよっては,タッチ操作用のUIが用意されていることもある。以下,タッチ操作の対応タイトルのうち,とくに遊びやすいと感じたものを紹介しよう。
「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S」
さすが「ドラクエ」らしいクセのなさ。ゲームの内容や操作方法がトラディショナルであり,どんな場面でもボタン配置が変わらないため,タッチ操作でも戸惑うことがない。
「Cris Tales」
「クロノ・トリガー」「ファイナルファンタジーVI」などに大きな影響を受けたというコロンビア産のRPG。操作方法は難しくないので,タッチ操作でもスムーズに遊べる。
「Minecraft Dungeons」
Microsoft傘下のMojang Studiosが手掛けていることもあってか,タッチ操作用のUIには専用グラフィックスまで用意されている。シンプルなハック&スラッシュスタイルであり,タッチ操作もノーストレスで遊べる。
「龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル」
戦闘画面,移動画面,マップ画面など,それぞれの状態に応じてボタン配置が変化し,ボタンの役割もアイコンで示される。そのため,とても操作しやすい。ゲームパッドでは「Aボタンを押しながら移動」でダッシュになるが,バーチャルパッドのスティックを大きく倒すことでもダッシュが可能。こうした細かい部分の調整が嬉しい。
「ギアーズ5 ゲーム オブ ザ イヤー エディション」
タッチ操作の場合,カメラ操作となる右スティックの周囲に射撃,精密照準,格闘,回避などのボタンが配置されており,見た目の印象以上に遊びやすい。
そのほか,「シティーズ:スカイライン」「Frostpunk」といったシミュレーションゲーム,「Unpacking」「Donut County」といったパズル要素のあるアクションゲームもタッチ操作に向いている。ただし,前者は画面の大きいタブレットのほうが遊びやすいのも確か。スマートフォンだと少し窮屈に感じるかもしれない。
逆にタッチ操作が向いていないジャンルとしては,アーケードスタイルのアクションゲームや2Dシューティングゲームといった素早く正確な操作が求められるものになるだろう。とはいえ,ハイスコアや高ランクを狙うのではなく,気軽にプレイするぶんにはそこまで気にならないかもしれない。
ゲームは主にPCで遊ぶという人にも,Xbox Game Pass Ultimateに加入するメリットがあることがお分かりいただけただろう。少しでも安い月額料金で遊びたいならば,PC Game Passを選ぶのもアリだと思う。ただ,Xbox Game Pass Ultimateには,PC Game Passに加えて,EA Play,Xbox Live Gold,そしてクラウドゲームサービスも含まれる。非常にコストパフォーマンスの高いプランなのだ。
もちろん,Xbox Game Passにもそれなりの課題はある。たとえば,「Sable」や「The Procession to Calvary」など,日本語非対応のタイトルが少なくない。英語でプレイできるだけでも嬉しいのだが,ローカライズ面にはさらなる注力や開発会社への支援を期待したいところだ。
また,生活スタイルが多様化している昨今,より多くの時間帯でXbox Cloud Gamingが快適に利用できるようになれば,さらに利用しやすいサービスになるはずだ。
Xbox Game Pass Ultimateにこれだけのゲームが集まり,しかも発売日からラインナップに追加される新作もある。このサービスが広がっていけば,ゲーマーとゲーム機,そして作品との付き合い方が変化していくことだろう。
事実,日本でも変化の兆しが見え始めている。2022年に入り,「太鼓の達人 The Drum Master!」「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 Anniversary Edition」といった作品がラインナップに加わった。今後,国内パブリッシャ/デベロッパの新たな動きにも期待が高まるところだ。
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