テストレポート
ゲーマー向け小型PC「AYA NEO 2021」テストレポート。ゲームパッドが別物に進化
AYA NEOシリーズの初期量産モデル「AYA NEO Founder Edition」(以下,Founder Edition)は,4Gamerでもテストレポートを掲載済みだ。今回取り上げるAYA NEO 2021は,Founder Editionの購入者から得られたフィードバックをもとにして,改良を施したものとなる。
今回,国内発売に先駆けてAYA NEO 2021を入手できたので,Founder Editionとの比較を中心に,AYA NEO 2021は何が変わったのか紹介したい。
Switch風小型ゲームPCの新星「AYA NEO」を試す。ゲームパッドの使い勝手は良好だが性能ではGPD WIN 3に及ばず
現在クラウドファンディングを行っている超小型PC「AYA NEO」は,ゲーマー向け小型PC市場に突如として現れた新星だ。最大の特徴は,キーボードを省略して操作系をタッチパネルとゲームパッドのみにしたデザインにある。今回は,競合製品である「GPD WIN 3」との比較を交えつつ,AYA NEOの見どころを紹介しよう。
外観に大きな変化はないが
細かな改良の跡が伺えるAYA NEO 2021
まずはAYA NEO 2021の外観からチェックしよう。
ディスプレイの左右にゲームパッド機能を備えたNintendo Switch風のデザインは変わらない。Founder Editionの筐体は,スケルトン仕様で,内部構成が見えるようになっていた。対するAYA NEO 2021は,本体のカラーバリエーションとして,「DARK STAR」(ブラック)と「LIGHT MOON」(ホワイト)の2色を用意する。今回の試用機はDARK STARだ。
梨地加工が施された筐体は,質感が良くなっている。ポリカーボネート樹脂そのままのFounder Editionと比べると,良くも悪くも小型ゲームPCというよりは普通の携帯ゲーム機らしくなった。筐体のサイズ感は変わらないのだが,AYA NEO 2021はさらっとした手触りで持ちやすいように思う。
ディスプレイは,7インチサイズで解像度1280×800ドットのH-IPS液晶パネルを採用する。写真では見えにくいのだが,肉眼では同じ明るさ設定でも,AYA NEO 2021のほうがわずかに明るく見えた。ただし,その差は小さく,ほとんど変わらないといっていいだろう。
なお,クラウドファンディングの初期出荷モデルは,時間の経過とともにディスプレイパネルを固定する接着剤が見えたり,表示がにじんだりといった問題があったそうだ。試用機のAYA NEO 2021は,発送されたばかりということもあり,いまのところそういった症状は現れていない。
インタフェース類も,Founder Editionから変更はない。ディスプレイの奥側には,USB 3.1 Gen 2 Type-Cポート×2と,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子×1を備える。ちなみに,USB 3.1 Gen 2 Type-Cポートのうち,片方はDisplayPort Alternate Modeによる映像出力と,USB Power Deliveryに対応するのだが,Founder Editionでは見た目に違いがないので,どちらが映像出力対応ポートなのか分かりにくかった。AYA NEO 2021では,片方に映像出力対応を示すマークが付いているので判別しやすくなっている。
一方のディスプレイ手前側は,USB 3.1 Gen 2 Type-C×1がある。AYA NEOによると,AYA NEO 2021用のドッキングステーションを開発しており,それとの接続にもこのポートを利用するという。
また,ディスプレイ手前側に搭載するスピーカーにも手が加えられている。AYA NEOによると,スピーカーの出力が低すぎるというフィードバックがユーザーから寄せられていたそうだ。そこでスピーカーユニットを変更したのに加えて,筐体内にスピーカーチャンバーを設けたという。
そのおかげか,Founder Editionと比べると同じ音量設定でも,AYA NEO 2021のほうが少し音声が大きく聞こえる。とはいえ,薄型筐体を採用するPCなので,どうしてもスピーカーユニットは小さく,音は細くなりがちだ。基本的にはヘッドセットやイヤフォンを使うことをオススメしたい。
大きく変わったゲームパッド
ボタンを押す感触はまったくの別物に
AYA NEO 2021における,最も大きな変更点は,ディスプレイ左右に備えたゲームパッドだ。左奥に左アナログスティック,右手前に右アナログスティックを備えたXbox風レイアウトを引き続き採用する点は変わらない。
ディスプレイ左脇のパッド部分。左アナログスティックとD-Padをそなえる |
右脇のパッド部分。右アナログスティックと[X/Y/A/B]ボタンを配置する |
また,D-Padと右アナログスティックの下に搭載する独自ボタンもそのまま引き継ぐ。ディスプレイ左側には,Xbox純正ゲームパッド由来の[ビュー]ボタンや[メニュー]ボタン,Xboxボタンに相当する[H]ボタンを備える。ただ,一番左端にあるボタンは,Founder EditionではLEDイルミネーションのオン/オフボタンだったのが,AYA NEO 2021では変更となったようだ。製品情報ページなどでは,このボタンに割当てられた機能は記載されていないので,使用法は確認できていない。
一方のディスプレイ右側には,[Windows]キーと[Esc]キーの機能を割り当てた[WIN]ボタンと[ESC]ボタンに加えて,Windowsのタスクマネージャーを起動する[TM]ボタンと,OS標準のスクリーンキーボードを呼び出す[KB]ボタンを配置する。
左側の独自ボタン。主にXbox純正ゲームパッド由来の機能を割り当てる |
一方の右側の独自ボタン。こちらはキーボードやOSの機能を呼び出す役割を持つ |
AYA NEO 2021のゲームパッドは,何が変わったのかというと,ボタンの感触だ。D-Padと[X/Y/A/B]ボタンのスイッチをメンブレンスイッチに交換したことで,ボタンを押したときの感触が良くなったのだ。ストロークも深めで,カチカチとした押下音も小さくなっている。
Founder Editionのテストレポートでは,ボタンの連打が認識されにくい問題があったのだが,AYA NEO 2021では解消された。また,抜けやすかったD-Padの斜め入力もちゃんと認識されるようになっている。
ディスプレイの奥側にある[L2/R2]のトリガーボタンがアナログ入力に対応したのもポイントだ。とくにレースゲームをプレイする人にとってはうれしい変更だろう。また,Founder Editionのトリガーは,ストロークが浅かったのに対して,AYA NEO 2021ではかなりストロークが深くなっている。一般的なゲームパッドの感触にかなり近づいたといっていいだろう。
また,AYA NEOがAYA NEO 2021で大きくアピールしているのが,ボタンの印字だ。Founder Editionでは,ボタン表面に溝を彫って文字やマークが刻んでいた。また,クラウドファンディングで販売された初期モデルは,ボタン表面に文字を塗装していたため,塗装がはがれてしまうこともあったそうだ。AYA NEO 2021では,2色成型ボタンを採用しており,摩耗や汚れに強いという。
性能はFounder Editionからわずかに向上
ここからはAYA NEO 2021の性能を検証する。
AYA NEO 2021の主な仕様は,表のとおりでFounder Editionと同じく,プロセッサにAMDのノートPC向けAPU「Ryzen 5 4500U」を採用するのが特徴だ。メインメモリ容量も16GBから変更はない。スペック面での変更はないが,性能に違いは生じるのか念のため確かめてみた。
AYA NEO | |
---|---|
CPU | Ryzen 5 4500U(6C6T,定格2.3GHz,最大4GHz,共有L3キャッシュ容量8MB) |
メインメモリ | LPDDR4x 4266MHz 16GB |
GPU | AMD Radeon Graphics |
ストレージ | SSD 容量1TB(PCIe接続)×1 |
ディスプレイ | 7インチ液晶, |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
有線LAN | 非搭載 |
Bluetooth | 5.2 |
公称本体サイズ | 255(W)×106(D)×20(H)mm |
公称本体重量 | 約650g |
OS | 64bit版Windows 10 Home |
今回はグラフィックスベンチマークの定番である「3DMark」と,「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)でテストを行った。なお,Founder Editionのスコアは以前に行ったテストレポートにおける検証結果を流用している。
3DMarkのDirectX 11テスト「Fire Strike」と,統合GPU向けのDirectX 12テスト「Night Raid」,Vulkanベースのクロスプラットフォームテスト「Wild Life」の総合スコアをまとめたのがグラフ1だ。AYA NEO 2021のスコアは,Founder Editionよりも1〜2%程度高くなっている。
FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチのテストは,グラフィックス設定プリセットで,「最高品質」および「標準品質(ノートPC)」を選択し,フルスクリーンモードで実行した。それぞれのスコアをまとめたのがグラフ2だ。処理負荷が低いノートPC標準では1%未満の差しかなかったが,処理負荷の高い最高品質になると,AYA NEO 2021のほうが3%ほど高いスコアを発揮しているのが興味深いところだ。
実ゲームにおいて性能差を感じるほどではないものの,AYA NEO 2021は性能面も向上していると言えよう。
AYA NEO 2021の冷却機構は,ヒートシンクやヒートパイプなども変更しているという。これはCPUに「Ryzen 7 4800U」を搭載した上位モデルである「AYA NEO 2021 Pro」に向けた改良なのだろうが,AYA NEO 2021でもわずかに性能を改善する効果があったようである。
通常版のAYA NEO 2021は,Intel製CPUを搭載する競合製品と比べて,6〜7割ほどの性能と言えよう。そうなると,より高い性能を求める場合は,AYA NEO 2021 Proを選択するとよさそうだ。
なお,AYA NEOによると,Founder EditionやIndiegogoの初期モデルでは,空冷ファンの騒音が大きいことに加えて,ファンと筐体の外装が干渉してしまうことがあったそうだ。AYA NEO 2021ではそうした問題を解消しているという。テスト中に確認してみたが,ファンの音は相応に大きいのはあまり変わっていない。外装との干渉だが,Founder Editionの場合,外装を強く押さえると少したわむような感覚があるのだが,AYA NEO 2021はたわみにくくなっている。強く押さえても空冷ファンには当たらなそうだ。
外観は変わらないが
ゲームパッドの質感は大きく向上したAYA NEO 2021
ようやく国内でも販売となるAYA NEO 2021は,先行量産モデルからかなり変更が加えられた製品だ。特にゲームパッドは別物と言っても差し支えないほど改善されている。既存のFounder Editionでも,「小型ゲーム機の中では」という前提で,比較的使いやすいゲームパッドであったが,AYA NEO 2021はそれを超える品質になったことは,好意的に評価できるだろう。
一方で,性能面では競合製品に遅れを取っている部分はある。ただ,こちらも上位モデルが登場予定であり,性能面でAYA NEOを選びにくいというゲーマーに応えられる余地はありそうである。
秋葉原の小型PC専門店「ハイビーム秋葉原本店」では,AYA NEO 2021の実機展示が行われているとのこと。AYA NEOが気になるゲーマーは,同店で実機に触れてみるといいのかもしれない。
AYA NEO 2021ついにサンプルが来ました〜??
— HIGH-BEAM.jp (@HIGH_BEAM_jp) October 5, 2021
週末、ハイビーム秋葉原本店でお試しいだけます。ボタンは全部変わっており、非常に使いやすいです。(十字の斜めキーもしっかり入る!)? pic.twitter.com/FSmDoEeR3W
Switch風小型ゲームPCの新星「AYA NEO」を試す。ゲームパッドの使い勝手は良好だが性能ではGPD WIN 3に及ばず
現在クラウドファンディングを行っている超小型PC「AYA NEO」は,ゲーマー向け小型PC市場に突如として現れた新星だ。最大の特徴は,キーボードを省略して操作系をタッチパネルとゲームパッドのみにしたデザインにある。今回は,競合製品である「GPD WIN 3」との比較を交えつつ,AYA NEOの見どころを紹介しよう。
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AYA NEO 2021製品情報ページ
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