プレイレポート
アソビズム初のSteamタイトル「ビビッドナイト」プレイレポート。ローグライクの醍醐味とソーシャルゲーム的な要素が融合して冒険がスリリングに
先へ進むべきか,さらに探索すべきか――
「ビビッドナイト」は,主人公のおてんば王女「輝石姫アメリ」となって,モンスターが巣食う危険な迷宮に挑むターン制ストラテジーゲームだ。アメリは直接モンスターと戦うわけではなく,迷宮に散らばっている宝石にされた冒険者(ユニット)を仲間に入れてパーティを編成していく。戦闘に突入するとユニットたちはオートで行動し,アメリはさまざまな効果を持つ「ジェム」を使って攻撃やサポートを行う。
本作はローグライクを謳っており,冒険の半ばでパーティが全滅することもあるが,それまでの頑張りがムダになるわけではない。迷宮で入手した「輝石」を使って新たなユニットやジェムをアンロックすると,次回の挑戦から,それらが出現するようになる。つまり,プレイを繰り返すことで,少しずつ攻略しやすくなるというわけのだ。
迷宮の各フロアには錠が掛けられた「階段」と,それを開くための「鍵」を持つモンスターが存在する。モンスターを倒して鍵を手に入れ,階段に到達すれば,そのフロアはクリアというわけだ。
フロアのあちこちには仲間にできるユニットのほか,輝石やジェムを手に入れるのに必要な「マテリアル」が落ちている。また,さまざまな施設が配置されている場合もあり,こちらも攻略には欠かせない。
「宝石屋」にはランダムでユニットが売りに出されており,「休憩所」ではユニットのHPを回復可能。パーティの枠を増やしたり,ユニットを強化したり,入れ換えたりできたりするのは宝石屋と休憩所のみだ。
また,「錬金術屋」ではマテリアルと引き換えにジェムが手に入る。ただし,何が出るかはランダム。必要なものを引き当てられるかどうか,それはプレイヤーの運次第となる。
フロアにはパーティの強化につながる要素がたくさん存在する。ロボット掃除機のように隅々まで探索したいところだが,そうはいかない。フロアでは部屋から部屋へと移動すると,アメリの「マナ」が減っていくからだ。
マナが尽きると,今度はユニットのHPが減少していく。そして全ユニットのHPがゼロになるとゲームオーバーとなる。要するに,欲張って探索しすぎると,パーティにダメージが及んでしまうというわけだ。
マナの量は多すぎず,少なすぎずという絶妙な加減だ。モンスターと階段のおおまかな位置は地図に表示されているので,ただフロアをクリアするだけなら直行すればいい。しかし,パーティを強化するために寄り道をしようとすると途端にシビアになる。
ダブったユニットを集めると「アップグレード」(合成)が可能なので,ユニットはできるだけ欲しい。また,パーティ枠を開放したり,宝石屋でユニットを買ったりするには,モンスターが落とすキーン(お金)が必要だ。スタート直後のパーティは1枠しかない(ユニット1人で戦う)が,キーンがあれば最大6枠まで増やせる。つまり,さらなる強化にはキーンが欠かせないのだ。そしてジェムの入手やアンロックを考えると,マテリアルや輝石も集めておきたい……。次から次へと欲が湧いて出てくるのだ。
しかし,迷宮の構造は毎回ランダムに変化する。さらにユニットやマテリアル,輝石の存在は地図に表示されないため,実際に歩いてみないと確認できない。地図上では近くにあるモンスターや階段が,実際には遠回りしないと到達できなかった……なんてこともある。
マナが少なくなってくると死活問題だ。その際,プレイヤーにはいくつかの選択肢が用意されているのも面白い。マナを回復するジェムをありったけ突っ込む。ユニットが倒れようとも強行軍をする。ユニットが持つヒール系のスキルや,HP回復のジェムといった回復手段に期待して,モンスターに襲いかかる。こうした選択肢のなかからプレイヤーは状況に応じて,最良と思われるものを探すのだ。
筆者の場合,マナが尽きてピンチの場面で錬金術屋が現れ,ここでマナ回復のジェムを引き当てるという幸運に恵まれたことがある。
どこまで進むのか,どこで引き返すべきなのか。その決断に漂うヒリヒリとした緊張感,そしてランダム要素による幸運(または不運)は,どちらもローグライクの醍醐味と言えるだろう。
仲間の組み合わせでシナジーを引き出す
戦闘は各ユニットが自動的に行動するターン制なので,アメリは攻撃や援護のジェムで仲間に加勢する。ユニットが戦っているときに,次のターンで使うジェムを先行入力できるため,戦闘はテンポ良く進んでいく。
本作のユニットは個性派揃いだ。むさいオッサン,ロマンスグレーの執事,獣耳の美少女,金髪ロールの幼女など,見た目はさまざま。また,防御が高く盾役に向いている者,攻撃力が高い者,魔法攻撃に長けた者といったように,それぞれの能力値も異なる。
そのうえ,ユニットが持つスキルは攻撃や回復,特殊反撃やバフ/デバフなど,さまざまな効果があり,戦闘時に個性を発揮する。スキルが発動するかどうかは確率によるが,「効果は高いが連続して発動できない」「ターンの最初に発動する」「戦闘中に一度しか発動しない」といった特性も設定されている。
同じユニットが3体集まれば,アップグレードのチャンスだ。いわゆる合成のシステムだが,アップグレードによって強化したユニットはかなり頼れる存在になってくれる。
パーティを編成するときには,シナジーを意識することが大切だ。ユニットはそれぞれ2つの「シンボル」を持ち,各シンボルに設定された数をパーティに入れると,シンボルの効果が発動する。味方の防御力や攻撃力を上げたり,自動的に反撃したり,HPを自動回復したりと,シンボルの効果は多岐にわたる。パーティの枠が増えれば,組み合わせ次第で複数のシンボルが同時に発動するようになるのだ。
また,スキルにはシンボルとのシナジーを引き出すものがある。たとえば,「ブルー」のシンボルは敵を「凍結」させる効果を持つ。これに「凍結している敵に追加ダメージを与える」効果のスキルを組み合わせれば,相乗効果が生まれるというわけだ。
前述のとおり,ユニットに命令することはできず,スキルを発動するかどうかも運に左右される。ただ,プレイヤーが間接的に介入できることもある。その良い例が「森の民モルガナ」だ。
このユニットのスキルは「敵1体に大ダメージを与え,『秘技』バフを得る」というもの。秘技があれば,これを消費して次回行動時に必ずスキルを発動できる。つまり,一度スキルを発動させたら,「秘技を消費してスキルを発動」→「スキルで秘技を得る」→「秘技を消費してスキルを発動」という繰り返しが可能になるのだ。
最初のスキルを発動できるかどうかは確率次第だが,アメリのジェム「スクロール」は後列の仲間に秘技を付与できる。モルガナを後列に置けば,スクロールでスキルを発動させて,強力な連続攻撃を促せるのだ。いうなれば「ジェムとユニットのコンボ」といったところだろう。
最初に手に入るユニットも,道中で仲間にできるユニットもランダムなので,毎回異なるパーティ編成になる。前衛に適したユニットがなかなか出てこなかったり,アップグレードに必要な3体目のユニットがなかなか揃わなかったりすることもあるだろう。
パーティに編成していなかったユニットが3体揃って,アップグレードによって頭角を現すこともあるはずだ。そうなると,これまでの編成を変えるべきか,現状維持にするか……慎重に考えることになる。まさにローグライクならではのドラマが生まれるのだ。
今回,筆者が「ビビッドナイト」をプレイしたのは約10時間だが,ローグライクの面白さを踏まえたうえで,独特のアレンジが施されている印象を受けた。
たとえばマナの要素は,探索に時間制限を設けてスリルを増す「空腹度」システムに相当するものだ。移動は1歩ずつ歩くのではなく,部屋から部屋へと進んでいくため,テンポよくフロアを探索しながらも,移動時のドキドキを味わえる。
また,ユニットの成長システムはソーシャルゲームにおける合成に近い。経験値を積み上げるのではなく,ユニットを引き当てる運がフォーカスされており,ローグライクのランダム性を引き立てる。
ランダムでアイテムが提供される,いわゆるガチャの要素を積極的に取り入れている点も注目したい。錬金術屋に出てくるジェムはランダムだ。リソースとなるマテリアルはプレイするたびにリセットされるため,思う存分に投入できる。“爆死”か,粘り勝ちか。それとも,豪運によってお宝をいきなり引き当てるか。ローグライクが持つ“運に左右される”という面を,即座に結果が出るガチャが表現しているというわけだ。
さらに,輝石によるアンロックもガチャ的だ。ランダムに提示される3つの候補から1つを選ぶのだが,毎回どんな候補が出るかが楽しみで,その選択に頭を悩ませるのも面白い。
同じユニットを合成するアップグレード。ユニットの編成によって発動するシンボルの効果。さらにスキルやジェムによるシナジー。これらの要素がうまく組み合わさったときに生まれる,劇的なパワーアップも大きな特徴だ。ソーシャルゲームの序盤から中盤にかけて満喫できる,「キャラクターを貪欲にかき集めて試行錯誤を繰り返す楽しさ」を思わせる。
こうしたソーシャルゲームでは,キャラクターが集まるにつれてパーティ編成が固定化して,試行錯誤の機会が少なくなっていくものだ(ガチャで新キャラが追加されるのは,固定化したパーティ編成を流動させる目的もある)。その点,「ビビッドナイト」ではプレイのたびにパーティ編成がリセットされるため,毎回イチから試行錯誤を楽しめるようになっている。
1回のプレイが30分〜1時間で終わるテンポの良さ,ソーシャルゲーム風のインフレ具合が味わえる戦闘,毎回リセットされる編成の面白さ,ランダムな生成と提供が生み出すドラマ。「ビビッドナイト」にはローグライクの醍醐味とソーシャルゲーム的な要素が,絶妙なバランスで両立している。ポップな絵柄と明るい音楽は親しみやすく,ローグライク好きであれば幅広いプレイヤーにチェックしてほしい1本だ。
「ビビッドナイト」公式サイト
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