プレイレポート
スクエニから登場した「DUNGEON ENCOUNTERS」と「Voice of Cards ドラゴンの島」に,一点突破型の魅力を感じた話
しかも,こうしたゲームをインディーズデベロッパではなく,スクウェア・エニックスが出してくるのだから面白い。大手が最大限尖らせたゲームを作るとどうなるのかが,体験できたタイミングだったと言える。
筆者は実際にプレイしたが,どちらも良いゲームだったので,今年の締めくくりに,その魅力を広めておこうと思う。
「DUNGEON ENCOUNTERS」
「DUNGEON ENCOUNTERS」は,“バトルと探索にひたすら特化し,それ以外の部分を徹底的に削ぎ落とす”方向で尖ったゲームだ。
プレイヤーは,ダンジョンから出現する魔獣に襲われている町から,「アカデミー」に所属するキャラクターたちでパーティを組んで,事件解決のためにひたすらダンジョンの奥に潜っていく。ストーリーはあってないようなもので,とにかくダンジョンを攻略していけばいい。
本作の何より特徴的な部分が,この町やダンジョンが,マス目に白と黒の16進数が書かれたパネルで表現されていること。あまりにシンプルな,パッと見,すごろくか何かかという感じの画面が,このゲームの“世界”なのである。いくらなんでも,グラフィックスを削ぎ落しすぎだ。
しかし,パネルの意味が分かってくると,プレイヤーの想像力が刺激される世界となる。そこが安全な場所なのか,どういった地形なのか,敵に遭遇しやすい危険な場所なのかなどが判別できるようになり,ダンジョン内で見つけるものに一喜一憂できる。
そうして世界への解像度が高まってくれば,不気味な洞窟や木漏れ日の差す樹海,不安定な火山の岩場,風雪の吹きすさぶ氷河など,さまざまなシチュエーションで冒険する自分のパーティが脳裏に浮かぶのである。
モンスターとの戦いでは,正確な判断力が必要だ。敵味方のHPは,武器攻撃のみを防ぐ「防」,魔法攻撃のみを遮る「魔防」という2種類のバリアに守られている。このバリアを砕くと,ようやくその先にあるHPにダメージを与えられる。つまり,基本的に敵を倒すには二手かかる。
一方で,本作の敵は強力で,単純に攻撃力が高いだけでなく,状態異常が本当にえげつない。安全にバトルを終えるには,一手でも早く敵を倒すことが重要となる。そのため,コマンド1つ選ぶにしても「どの敵に対し,どの武器や魔法を使うと最大限の効果が得られるか」,俗っぽい表現をすれば損得勘定が求められる。
バトル中は,時間経過とともにリアルタイムで状況が変化していく。敵味方には時間で増加する「ATBゲージ」があり,これが最大になると行動可能となる。逆にいえば,行動を終えた者のATBゲージは減り,再び溜まるのを待たなければならない。つまり,行動を終えた敵はひとまずヤバさ(言い換えれば脅威度)が下がるということ。最も危険であり,最優先で攻撃すべきは行動を終えた敵ではなく,次にATBゲージが溜まりそうな敵ということになる。
また,敵に与えられるダメージは基本的に固定(武器や魔法によってランダムのものもある)なので,戦闘が始まった時点で,「この敵を倒すのに〇回攻撃が必要」というのは分かる。
これらの仕組みが組み合わさり,すべての戦闘が,頭をフルに回転させて計算を繰り返すスリルのあるものとなっているのだ。
本作のダンジョンには,えげつない罠や状態異常が山盛りにされており,不用心な者はひどい目に遭わされる。石化した仲間は,持ち運べないのでその座標に置き去りにしなければならない。仲間が喰われて姿を消すこともあれば,装備が破壊されることもある。所持金を奪うモンスターの攻撃や罠により,借金を背負わされることもある(なんで……?)。魔術を掛けられた仲間がモルモットとなってまともに攻撃できなくなったり,落とし穴で一気に下の階へ放り込まれたりすることもある。
もちろん,こうした大変な状況の後始末は,自分でやらなければならない。戦闘で全滅したら,別のキャラクターで救助隊を編成し,事故現場に赴き倒れた仲間達を回収する。石化やモルモットは,解除するための手段が限られているので,それを求めてダンジョンをさまよう。“何か”が起きてしまうと,ガックリくるなんてレベルではなく,ディスプレイの前で途方にくれることすらある。
しかし,対応するアビリティさえあれば,こうした事態は未然に防げる。アビリティはダンジョン内で獲得できるのだが,これが非常に強力だ。例えば状態異常は,対応するアビリティさえあれば完全に無効化できてしまう。石化攻撃がウリの敵に対して,石化無効で挑めば,こちらは大笑いしながら攻撃できるわけだ。充分に用心深い人なら,特定の状態異常にかかることなくゲームを終えることもあるだろう。
アビリティはダンジョン探索時にも使用でき,ゲーム後半になるにつれ,どんどんダイナミックになっていく。最初は「マス目を1つ飛ばしてワープする効果」で一生懸命敵との遭遇を避けたり,「下のフロアの同じ座標にマス目があれば1階ぶん降りられる」効果で別のフロアにいったりと,地道な探索を行うことになる。
これが後半のアビリティになると,敵を無視する手段をいくつも持てるし,フロアも盛大にすっ飛ばせるようになっていく。ここまでいくと,戦闘での全滅すら脅威にならない。
ダイナミックになるのは戦闘もだ。最初は60や40といったダメージを与えて喜んでいたものが,数千,数万,数十万と増えていく。また,先のえげつない状態異常はこちらも使えるので,敵を食べてしまって即死させたり,石にして無力化したりと,やりたい放題になっていく。まぁ,それでも全滅するときはあっさりするのだが。
バトルや探索のシビアさは,昔のコンピュータRPGっぽいが,一方でアビリティによる完全無効化やダイナミックな移動は,サクサク進められるスピード感をもたらしており,現代的だ。バトルと探索に特化した結果,懐かしくも新しく,刺激的な冒険が楽しめるタイトルとなっている。
本作は,大変な目に遭った経験が多い方が,ゲームを終えた時の思い出がたくさん蓄積されていく。個人的には記憶を消してもう一度プレイしたいと思うし,これから遊ぶ人にはできるだけ攻略情報なしで楽しんでもらいたい。
「Voice of Cards ドラゴンの島」
「Voice of Cards ドラゴンの島」は,“オタクなGM(ゲームマスター)と一緒にTRPGやボードゲームを遊んでいるような気分になれる”という方向に尖ったRPGだ。
思えば,TRPGやボードゲームというのは贅沢な娯楽である。自分とは感性が違う他人と好みが合いそうなゲームを選び,ともにルールを覚え,時間を合わせて集まり,遊ぶ。社会人になるとこうした集まりを持てる機会も減り,遊びたくても遊べず,モヤモヤしている間に時間が過ぎていくなんて人も多いのではないだろうか。
そうした中で,本作は,TRPGの世界を語りで描写する進行役,GMの存在にスポットを当て,アナログ感溢れる演出で楽しめるゲームとなっているのだ。
一般的なRPGでは,“地の文”であるメッセージが周囲の情景を描写し,キャラクターのそれぞれに声優が割り当てられる。売れ線のソーシャルゲームとなれば,何十人というキャラクターにそれぞれ声優がついて熱演することも当たり前だ。
しかし,本作ではGMである安元洋貴さんが,“地の文”からキャラクターまでのすべてを兼任する。その読み上げはフラットで,緊迫した状況でもギャグシーンでもテンションはほぼ同じ。可愛らしい美少女キャラクターの台詞でも,女性の声を作ったりはしない。
声優というよりは,素人っぽい演技なのだが,もちろんこれはわざとだ。友達のGMと遊んでいるのだから,上手な語りなど期待できないというわけである。だからこそ,GMに親近感が湧き,デジタルゲームとして新鮮であったりもする。
特に印象深いのが,GMの距離感だ。戦闘が終わると褒めてくれる。キャラクターの名前を言い間違える。メタ視点でぶっちゃけたアドバイスをしてくれる。テンションが上がったのか,フラットな司会としての役割を忘れて「そーれマッスルマッスル!」などと叫ぶ。GMと2人でカードやダイスが置かれた卓を囲んでいる雰囲気が強まり,GMではなく“オタク友達”である彼との距離が縮まったような感覚を得られるのが楽しい。
本作のクリエイティブディレクターを務めるのは,ヨコオタロウ氏だ。ダークで鬱な展開で知られる「ドラッグ オン ドラグーン」や「ニーア」シリーズを手がけた人物であり,そうした“ヨコオ節”を期待するファンも多いと思う。
しかし本作は,守銭奴の主人公を始めとした濃いキャラクターたちの物語を楽しむという側面が強い。ギャグも多いのだが,こちらはオタク友達と遊ぶTRPGっぽさを演出するためだろう。GM経験がある人なら分かると思うのだが,友達と親しければ親しいほど,シナリオにギャグやメタな笑いを入れたくなってくるものだ。
小道具にこだわった演出も見どころだ。マップは地形を表すカードの組み合わせで表現されている。未踏破地域は,カードが裏返しになっていて何が待ち受けているか分からないが,主人公一行が進むごとに表にされて世界が広がっていく。
戦闘では,キャラクターやモンスターの技がカードとして表現され,攻撃時のダメージ算出や状態異常攻撃の成否チェック時にダイスを振ったり,スキルを使うためのリソースに小箱の中の宝石を使ったりする。
これらの演出は,ちょっと時間を要するので,「テンポを阻害する」と言われるとそのとおり。しかし,カードをめくったり,コマを動かしたり,ダイスを振ったり,宝石をやりとりするといった,アナログゲームっぽい“手仕事感”がある。
本作を気に入るかどうかは,このアナログ感が好きかによると思うが,こうした雰囲気を「楽しい!」と感じられる人なら,まず“刺さる”だろう。
突き抜けたゲームは気持ちがいい
「DUNGEON ENCOUNTERS」と「Voice of Cards ドラゴンの島」は,それぞれに尖ったところを持ち,そのポイントが非常に分かりやすい。いわば一点突破型のゲームである。
多くの人に支持される“最大公約数的な作り”の娯楽が多くなっている中,RPGは親切な作りや豪華なビジュアルに進んでいきがちだ。一方で,今回紹介した2タイトルのような“刺さる人には刺さる作り”のゲームには,独特の魅力がある。
娯楽を評価するうえで,良いところがあるごとに点数をプラスする加点法と,悪い部分1つごとに点数をマイナスする減点法がある。そうした観点からすると,“刺さる人には刺さる作り”は加点法,“最大公約数的な作り”は減点法の評価をする人に合っていると思う。
今回取り上げた2タイトルは,間違いなく加点法によって評価すべき,強みがはっきりしたタイトルだ。地味ではあるが,突き抜け具合がとても気持ちいい。こうしたゲームは,広めたくなるのがゲーマーの性というものだ。シンプルゆえに,短期間で集中して遊んだほうが満足できるタイプのゲームではあるので,ぜひ年末年始の時間があるときにプレイしてもらいたい。
各タイトルは以下の日程で20%オフのセールも実施されているので,お見逃しなく。
PlayStation 4,Nintendo Switch
2022年1月7日23:59まで20%オフ
Steam
2022年1月6日3:00まで20%オフ
「DUNGEON ENCOUNTERS」公式サイト
「Voice of Cards ドラゴンの島」公式サイト
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CHARACTER DESIGN: Ryoma Ito
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