レビュー
「ソフィーのアトリエ2 〜不思議な夢の錬金術士〜」レビュー。天候を操ってフィールドを変え,シームレスなバトルと採取を楽しもう
夢の世界で,ソフィーの新たな旅が始まる
本作は2015年から展開された「不思議」シリーズの1作目である「ソフィーのアトリエ 〜不思議な本の錬金術士〜」の続編となるタイトルだ。時系列としては,同作と,シリーズ2作目「フィリスのアトリエ 〜不思議な旅の錬金術士〜」の間に起きた出来事となる。
錬金術士のソフィーと,人形の身体を持つ相棒にして師匠・プラフタは共に旅をしていたが,不思議な渦に吸い込まれ,離ればなれになってしまった。渦の先にあったのは,夢幻世界「エルデ=ヴィーゲ」。ここに招かれた者は歳を取ることがなく,自分の夢を叶えるまで留まっていてもいいという。さまざまな人間が招かれるこの世界では,ソフィーが思いもしていなかった出会いがあった。
その1人が,人間の錬金術士プラフタだ。ソフィーが探す相棒のプラフタと雰囲気はよく似ているものの,彼女の身体は人形ではないし,ソフィーのことも知らないという。混乱しつつも,ソフィーはエルデ=ヴィーゲの人々から力を借りて相棒のプラフタを探すことに。果たしてソフィーは相棒のプラフタを見つけられるのか? そして,人間のプラフタの正体と,相棒のプラフタの関係は……?
こうした話の流れになっており,前作に関係するキャラクターがいろいろと登場するため,初見で物語を最大限楽しむなら,先に前作をプレイしておくのがオススメだ。ただ,前作の振り返りムービーもあるので,本作から始めても問題はない。
本作を端的に表現するなら“ファンタジックな雰囲気の中,キャラクターが紡ぐ物語や関係性を楽しみつつ,錬金術による調合やバトルにディープなやり込みができるRPG”といったところだろうか。
とくに本作は,イラストの雰囲気を再現した3Dグラフィックスのクオリティが非常に高い。キャラクターが苦笑したり,呆れたりする際の微妙な表情が楽しめるのはもちろん,衣装や小道具の細かなディテールや質感にもこだわりが感じられ,イラストが動くかのような画面を表現するのに一役買っている。「アトリエ」シリーズの最新作として,キャラクターの表現はさらに進化したと言えるだろう。
アレットの上着,その裾にはカンテラ風の物体が浮かぶ |
プラフタの腰には2つのボールが付いていて,牙を剥いた魔物が描かれている |
個性的なキャラクターたちが織りなす人間模様にも注目したいところだ。今回のソフィーは「フィリスのアトリエ 〜不思議な旅の錬金術士〜」以降の「ソフィー先生」ではなく,まだまだ発展途上。明るく前向きな人格面はもちろん,相棒のプラフタを助けるために懸命なその姿に惹かれる人も多いだろう。
これまでのシリーズでは,人形のプラフタがソフィーに錬金術を教えていた,師弟的な側面もあった。しかし,今回はソフィーの方が新しく出会う人間のプラフタよりも錬金術の腕は上で,これまでとは逆の関係だ。人間のプラフタが錬金術士としてソフィーにライバル意識を燃やしたりする辺りも,シリーズファンには面白いところだろう。
また,錬金術士にして町のまとめ役であるラミゼルやお調子者の商人兼調達屋アレット,自信家の用心棒オリアス,元騎士のディーボルトといった,エルデ=ヴィーゲの人々とソフィーの交流も見どころだ。とある出来事でソフィーとぎくしゃくするラミゼル。お金儲けに執着するあまり,ソフィーの押しかけ弟子になって錬金術を学ぶアレット。おちゃらけた自信家に見えて,用心棒としてのプロ意識を時折のぞかせるオリアス。普段はもの静かだが,武具の話になると目の色が変わるディーボルトなど,イベントによる掘り下げもあり,ゲームを進めていくほど皆のことが好きになっていく。
プラフタは,錬金術士としてソフィーと互いに高め合う |
陽気な商人のアレットは,錬金術で作ったアイテムが売れることを知り,ソフィーの押しかけ弟子に。果たして彼女は錬金術士になれるのか? |
町のまとめ役であるラミゼルは,行動派で豪快な人物 |
用心棒のオリアスは,プロ意識に満ちた頼れる男 |
ディーボルトは誠実で腕も立つが,堅物で口下手 |
商店の主・ピリカは物体を複製する,前作に登場したとある人物を思わせる能力を持つ |
美しいフィールドは,新システム「天候操作」でさまざまな顔を見せる
本作は,錬金術で作ったアイテムを使い,さまざまな問題を解決するRPGである。フィールドにある草や岩といった採取ポイントや,魔物から素材を入手し,これを使ってアイテムを作り出し,戦力を強化したり,先へ進むために使ったりする。
フィールドには草原や森,遺跡に洞窟など多彩なロケーションがあり,あちこちに採取ポイントが散らばっている。そこから取れる素材のすべてが錬金術に役立つため,そこら中に宝箱が置かれているようなものだ。あっちの岩,こっちの水辺,そっちの樹木……と目移りしながら,素材をありったけかき集めていくのは気持ちがいい。初期状態では200個の素材を含むアイテムを持ち運べる。普通のゲームなら結構な数だが,本作ではあっという間にいっぱいになってしまう数だ。新しいフィールドに着いたときなどは,素材集めと先へ進むことのどちらを優先すべきか迷ってしまうが,この辺りは「アトリエ」シリーズならではの楽しさと言えるだろう。
虫を捕まえるには「虫取り網」,草を刈るには「草刈り鎌」というように,採取ポイントに合わせた採取道具が必要になるのは,これまでと同様だ。今回は新たに「大採取」というシステムが登場し,採取に変化が加わっている。フィールド上に存在する「大採取ポイント」に行くとミニゲームがスタートする。虫取り網を動かして動き回るアイコンを捕まえたり,上下するゲージをボタンでタイミング良く止めるなど種類はいくつかあり,うまくいくと素材がより高品質になったり,特定の属性を付与できたりする。フィールド探索時の良いアクセントになってくれるだろう。
フィールドでは別のフィールドに移動するごとに時間が流れ,朝から昼,夕方,そして夜へと景色が変化する。これに加えて面白いのが,本作の新要素である「天候操作」だ。錬金術で作ったアイテムを用いて,フィールドの天候を晴れや雨,雪,雷に変えてしまう。一瞬にして天候が変わる様は,まるで魔法のようで,ファンタジーな雰囲気を盛り上げる。
天候が変われば,出てくる魔物や採取できる素材も変化する。そして,地形に及ぼす効果も見逃せない。例えば,雨が降っていて渡れない川があっても,天候を晴れにすれば水が引き,川底を歩いて目的地へ行けるようになる。また,乾いた池に対し,まずは雨を降らせて満水にしてから,次は雪にして水面を凍らせてその上を渡るなど,複数の天候の組み合わせが必要になる場合もあり,ちょっとしたパズル気分も味わえる。
天候の変化で周囲の景色が変わるだけでなく,雨で服が濡れるなど,キャラクターの見え方も変わってくる。本作にはフォトモードが用意されているので,冒険の様子を切り取って見るのもいいだろう。
フィールドで雨が降っていると,みんなズブ濡れだ |
キラキラ光る洞窟を発見。フォトモードで綺麗な一枚を撮影 |
シームレスに始まる,快適&派手なバトル
本作のバトルは,シンボルエンカウント式を採用しているが,従来から大きく進化している。というのも,フィールド上の魔物に近づくと,画面切り替えやロード画面もなく,シームレスにバトルに突入するのだ。もちろん,バトルが終わった後もロード画面は出てこない。とくに本作は,採取を目的にフィールドを駆け回ることもあるので,バトルとの行き来がスムーズになったのは,非常に快適だ。
バトルに入るとコマンド選択式となり,敵味方が素早い者順に入り乱れて行動するため,状況に合わせた判断が重要だ。ソフィーたちは,ゲーム開始時から派手なスキルを使うことが可能で,光弾を放ったり,銃や大砲をぶっ放したり,輝く剣で一撃を加えたりなど,序盤から見応えのあるバトルを楽しめる。
本作は最大6人でパーティを組むが,直接戦闘に参加できるのは前列の3人だけ。この3人という数が絶妙で,攻めるにも守るにも手が足りない。タンクやアタッカーというように明確な役割分担をするのではなく,臨機応変に立ち回ることになる。
こうしたコンセプトを強調するのが,「ツインアクション」や「サポートガード」,「デュアルトリガー」といった,本作独特の協力システムだ。ツインアクションは,前列の1人と後列の1人が交代しつつ行動できるというもの。1回で2人が行動できるうえ,スキルで消費するMPも軽減されるため,一気に攻め込んだり,HPが減った仲間を回復させつつ後列に下げたりできる。シンプルだが,いろいろな状況で使える面白いシステムだ。
ツインアクションが“交代&攻撃”なら,“交代&防御”なのがサポートガードとなる。後列の仲間が飛び出して交代し,攻撃を受け止めてくれる。通常は攻撃すると無防備になってしまうが,サポートガードを使うと,自分は攻撃しつつ,仲間に防御してもらってダメージを抑えられるので大変に都合が良く,うまく決めた時のしてやったり感が気持ちいい。
ツインアクションとサポートガードで溜めたゲージを使っての合体技が,デュアルトリガーだ。キャラクターの組み合わせごとに異なる技が用意されており,非常に派手な演出を楽しめる。例えばプラフタとラミゼルの「フォトンルーラー」だと,“プラフタのナックルで敵を打ち上げ,ラミゼルがナックルの手のひらを足場にしてジャンプ,空中で敵に連続技を叩き込み,落ちてきた所に2人がとどめの一撃を撃ち込んで大爆発!”と,まるで特撮番組の必殺技のような一連のアクションが展開される。ほかの組み合わせも演出に工夫が凝らされており,カッコイイものからコミカルなものまで,見ていて飽きさせない。
バトルで印象的なのが,これら協力システムを駆使したボス戦のスリリングさである。
特殊アクションは便利だが,使用するにはリソースが必要だ。攻撃や防御といった一部の基礎コマンドで,ツインアクションとサポートガード用の「TP」を蓄積。TPを使ってツインアクションやサポートガードをすると,デュアルトリガー用の「DG」が溜まる。逆に言えば,TPが尽きると交代もままならない。敵が大技を繰り出してくるときに,攻撃を終えた仲間が無防備で取り残されるなんてことにならないよう,残量には気を付けておく必要がある。
ボスや強めの敵の中には,属性を持つ「オーラ」をまとう者もいる。オーラをまとっている者は,特定の攻撃を受けるとオートで反撃を繰り出してくるため,そのままにしておくと危険だ。氷のオーラなら火,魔法のオーラなら物理といったように,弱点の属性で攻撃すればオーラの耐久値を効率よく減らせる。
ここで役に立つのがツインアクションによる2人同時行動だ。2人に弱点属性を突くアイテムを装備させておけば,耐久値に大ダメージを与えられる。下準備をしておけば,ちゃんと報われるわけだが,ツインアクションはあくまで前列と後列で交代しつつの同時行動である。アイテムを持つ者2人をサポートガードなどで前列に出してしまっていたりすると,ツインアクションでの攻撃は不可能になる。とはいえ,状況によっては咄嗟にサポートガードを使う必要もあり,そうした対応に頭を使うのは楽しい。
死闘の中でDGを溜め,デュアルトリガーを出せれば気分は爽快だ。DGは戦闘が終わっても100%までは持ち越せるため,予め雑魚戦で溜めておくのも一つの手だ。文章だけだと戦闘のシビアさが強調されてしまうが,雑魚戦は攻め重視のイケイケな戦法で勝ち進めるのでご安心を。ボス戦で負けても難度を下げて突破するという手もあるし,錬金術でより強力なアイテムを作り,リベンジしてもいいだろう。
パズルのように材料を組み合わせ,アイテムを作り出す錬金術
材料となる素材を「錬金釜」に入れ,食品から武具までさまざまな品を調合する。これが「アトリエ」シリーズにおける錬金術だ。高度な品ほど高い「錬金レベル」が必要になるため,調合を繰り返して,回復や攻撃のアイテム,戦力を強化する新たな装備を生み出していく。
本作ではソフィーだけでなく,プラフタでも調合することが可能だ。錬金レベルも別々に設定されており,プラフタよりもソフィーの方が高い。だからといってソフィーだけに調合を任せておけばいいかというとそうではなく,プラフタにしか作れないものもある。
今回の錬金術は,前作からお馴染みのジグソーパズルっぽい形式だ。材料が持つ「錬金成分」というピースを,盤面にはめ込んでいく。
錬金成分には火・氷・雷・風・光という5属性があり,作りたいアイテムに適した属性のものを配置していくと,アイテムが持つ効果のレベルが上昇する。1つのアイテムに付与できる効果は複数あり,同じ属性で済むものや,異なる属性が必要になるものもある。盤の面積,つまりはめ込める錬金成分の数が限られている中,どの効果を優先すべきか悩まなければならないのだ。
そして,同じ材料であっても,どんな錬金成分を持つか,どんな形をしているかはランダムである。デカいピースで効果のレベルを上げようにも,形がいびつではめ込むのに苦労したり,特定の属性が欲しいのに,材料に含まれる錬金成分ではとても足りないなんてこともあったりする。基本的には盤面にはめた錬金成分が多いほど完成品の品質は高まる。
また,“特定マスに指定された属性をはめ込む”“錬金成分の光るピースに,同属性の光るピースを隣接させる”“タテかヨコの列すべてに錬金成分をはめ込む”といった条件を満たすと,品質にボーナスが加わる。本気でやるなら試行錯誤を繰り返すやりがいのある仕組みだが,気軽に遊びたい人はオートで錬金成分を配置することもできるのでご安心を。
本作では,パーティキャラクターたちと交流して「友好度」を上げれば,調合の際に助けてくれる。同属性の光るピースを縦横に隣接させて品質を上げてくれたり,錬金成分の属性を変えてくれたりするため,うまく使えばかなり有効だ。
もちろん,材料が持つ特性を完成品に引き継がせられるシステムも健在だ。有望な特性を持つ材料をうまく使えば,装備品やアイテムをより一層強化できる。本来はHPを回復するアイテムなのに状態異常も回復するような品ができたり,使用回数が少ない代わりに高火力の品ができたりと,工夫のしがいがある。
また,ゲームを進めれば,盤面のサイズを大きくする「触媒」や,盤面の一部に錬金成分が配置できなくて難度が上がるものの,効果レベルの上限値が高まってより効果の高いアイテムを作れる「リバースパネル」といった要素が解禁され,やり込みがいがアップする。
快適にやり込めるゲームに進化した「アトリエ」シリーズの最新作
プレイしていて印象的だったのが,目標による導線の巧みさと,これを意識することでプレイがどんどん有利になっていく楽しさである。
“指定の魔物を倒す”“特定のアイテムを調合する”といった目標をクリアすることで,新たなアイテムのレシピを発想できるのは前作と同様だ。今回はこれに加え,キャラクターごとに“特定のスキルを使う”“フィールドでランドマークを見つける”などの目標が用意されており,クリアすると「アビリティ」を習得するためのポイント(AP)をもらえる。
アビリティは,APを消費することで戦闘パラメータ上昇や採取数アップなど,さまざまな恩恵が得られるシステムだ。レシピ発想とアビリティ,2系列の目標で指定されるいろいろな行動を取ると,新たなアイテムを調合できるようになったり,素材の採取数や品質を上げたりできるのだ。そうすると,より強力な品を作れるので,戦闘や調合で有利になり,目標も達成しやすくなる。つまり,目標によってうまくプレイが誘導されるので,非常に遊びやすい。
本作はシームレスなバトルや,自分でアイテムを作れる錬金術のシステムによって,快適にやり込めるゲームになったと言える。ツインアクションを始めとした協力系システムや,キャラクターのさまざまな側面を見られるイベントによって,キャラクター同士の関係性を眺めるのが好きな人にも刺さるのではないだろうか。また,錬金術士がアイテムで天候と地形を変える様は,ゲーム的な面白さとファンタジックな雰囲気を効果的に盛りあげているのも印象深い。
単純に続編と言うだけでなく,「アトリエ」シリーズの最新作として完成度は高まっており,シリーズの今後が楽しみに感じられた。
「ソフィーのアトリエ2 〜不思議な夢の錬金術士〜」公式サイト
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ソフィーのアトリエ2 〜不思議な夢の錬金術士〜
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