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西川善司の3DGE:ソニーの次世代VR HMD「PlayStation VR2」の姿を想像してみる
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印刷2022/02/03 12:00

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西川善司の3DGE:ソニーの次世代VR HMD「PlayStation VR2」の姿を想像してみる

 去る2022年1月5日,ソニーは,ラスベガスで開催されたデジタル技術の展示会「CES 2022」でプレスカンファレンスを行い,PlayStation 5(以下,PS5)用の新型VRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「PlayStation VR2」(以下,PSVR2)の名称といくつかの仕様を明らかにした。

画像集#002のサムネイル/西川善司の3DGE:ソニーの次世代VR HMD「PlayStation VR2」の姿を想像してみる

 これまでにもソニーは,「新型VR HMDを開発中である」というメッセージこそ打ち出していたものの,今回は,ある程度具体的なスペックに関しての言及を行ったこともあり,一層現実味が増すこととなったわけだ。
 本稿では,PSVR2について,発表されたスペックなどから,「当たるも八卦当たらぬも八卦」的な,より具体的な姿を推測してみよう。


採用有機ELパネルは1枚か2枚か

OLEDマイクロディスプレイパネルの可能性も


 ソニー本社の発表に合わせて,ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)が公開したPSVR2のスペックは,のとおりだ。

表 PSVR2の主なスペック
パネル 有機EL,サイズ未公開
パネル解像度 片眼あたり2000×2040
リフレッシュレート 90Hz,120Hz
視野角 約110度
レンズ間距離 調整可能(数値は未公開)
搭載センサー モーションセンサー(3軸ジャイロ+3軸加速度),装着センサー(赤外線近接センサー)
カメラ トラッキング用カメラ×4,赤外線カメラ×2(視線追跡用)
フィードバック 振動機能搭載
サウンド ヘッドフォン出力,内蔵マイク
インタフェース USB Type-C

 このスペックを上から見つつ,各項目について考察してみたい。
 まずPSVR2では,片眼当たりの映像解像度が2000×2040ピクセルとなった。つまり,左右合わせた解像度は4000×2040ピクセルで,4K解像度に達することになる。

 また,採用するディスプレイパネルは,リフレッシュレート90Hzまたは120Hzに対応する有機ELパネルであることも明らかとなった。
 初代PSVRも,ディスプレイパネルは有機ELパネルを採用していたが,片目あたり解像度は960×1080ピクセルだったので,解像度では約4倍も精細化したことになる。これは分かりやすい強化ポイントといえる。

 筆者が注目している点の1つは,採用する有機ELパネルが,PSVRと同じ「1枚パネル方式」なのか,それとも,最近,高品位なVR HMDで採用事例が増えている「2枚パネル方式」なのかだ。
 もし,2枚パネルだった場合,ソニーが得意とする有機ELマイクロディスプレイを採用してくる可能性もある,と筆者はみている。

ソニーセミコンダクタソリューションズが展開する有機ELマイクロディスプレイパネルのバリエーション(同社Webサイトより引用)
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 有機ELマイクロディスプレイとは,対角1インチ前後かそれ以下の小型有機ELパネルのことで,主にデジタルカメラの電子ビューファインダー(Electronic Viewfinder,EVF)などに採用される部材だ。
 最近では,こうした有機ELマイクロディスプレイをVR HMDに採用する事例が増えており,Shiftallの「MeganeX」やarparaのVR HMDが採用したほか,ソニーも,4K有機ELマイクロディスプレイを2枚採用した8K解像度のVR HMD試作機を2021年12月に公開したばかりである。さすがに,あの試作機がPSVR2のベースになっているとは思わないが,最近のVR HMDにおけるデザイントレンドとして,有機ELマイクロディスプレイを採用するのはあり得る話なのだ。

ソニーが2021年12月に公開した4000dpiクラスの4K有機ELマイクロディスプレイパネル(左)。筆者推測だが,サイズは約1.2インチで,解像度は非公開。アスペクト比とdpi値から推測するに,3840×2880ピクセルだと思われる。リフレッシュレートは,「PSVRに劣るものではない」とのことなので,少なくとも90Hz以上はありそうだ。右は,この有機ELパネルを2枚使ったVR HMD試作機を体験中の筆者
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パナソニック系のベンチャー企業であるShiftallがCES 2022で発表した「MeganeX」。片眼あたり1.3インチサイズ,2560×2560ピクセルの有機ELマイクロディスプレイパネルを採用する
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ソニーが公開した2021年12月に発表した新有機ELマイクロディスプレイパネルの断面模式図。白色有機ELにRGBカラーフィルタを組み合わせて色表現を行うLG製有機ELパネルと同じ仕組みだ
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 もし,PSVR2にソニー製有機ELマイクロディスプレイパネルが採用されることになれば,その画質は相当に高いレベルを期待できる。少なくとも,初期のVR HMDと比較して,画素の粒状感はほとんど感じられなくなるはずだ。
 ちなみに,先述の8K対応VR HMD試作機では,画素の存在をまったく視認できなかった。その理由は,ソニーの有機ELマイクロディスプレイパネルが「トップエミッション」という方式を採用しているため。同方式では,画素の開口率が70%〜80%に達するのだ。ソニーのトップエミッション方式有機EL技術は,2007年に発売された世界初の一般消費者向け有機ELテレビ「XEL-1」で採用となったもので,技術の洗練具合も相当に高い。

 一方,ソニー製も含めて,現在市場に出回っているすべての大画面有機ELテレビは,韓国LG Display製パネルを採用しているが,これは「ボトムエミッション」方式の有機ELパネルである。スマートフォン向けの有機ELパネルも,その多くはボトムエミッション方式だ。ボトムエミッション方式では,TFT回路の影が格子の筋となるため,その開口率は40%前後にまで下がってしまう。ボトムエミッション方式は,液晶パネル製造技術の延長線で製造できる部分が多く,製造コスト的に有利な面があることから,広く採用される傾向にある。
 それに対して,トップエミッション方式の有機ELパネル製造には,専用部材や製造設備の開発が必要で,製造コストが高く付くため,単純に移行しづらい事情があるのだ。

 初代PSVRでは,スマートフォンに採用されているような横長有機ELパネルの真ん中に仕切り板を設置して,左右の目にディスプレイパネルの左側と右側を見せるシンプルな1枚パネル方式を採用していた。この方式は,汎用品に近い安価なディスプレイパネルが利用できるうえ,回路構成もシンプルにできるため,部材のコストをかなり抑えることができる。

初代PSVRの有機ELパネル。5.7インチサイズでパネルとしては1枚だが,中央で分割されている
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 その意味では,もしPSVR2で,コストが高くなる有機ELマイクロディスプレイパネルを,左右それぞれで2枚使う2枚パネル方式で採用したならば,かなりすごいことだと思う。筆者の予想が当たっても外れても,実際にどうなるかは楽しみだ。


光学系は流行のパンケーキ型レンズとなるか?


 公開されたスペックによると,PSVR2の視野角は水平(左右)方向に110度になるという。初代PSVRが水平100度だったので,10%の広視野角化になる。また,左右のレンズは可動式で,レンズ間距離を物理的に調整できるようになるという。つまり,初代PSVRでは対応していなかった物理的な瞳孔間距離(IPD)調整に対応するようになるわけだ。
 スペックには書かれていないが,接眼レンズを左右だけでなく奥行き方向に動かして焦点距離も調整できれば,ある程度の視力補正もできるようになる。そうなれば,視力矯正用の眼鏡やコンタクトレンズの着用なしでVRを楽しめるようになる可能性もある。

KOPINが2021年1月に発表したxR向け光学技術「All-Plastic Pancake Optics」の発表資料に掲載されていた図
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 この接眼レンズ周りについて,妄想交じりに考察すると,最新世代のVR HMDで採用が進んでいる「パンケーキ型レンズ」をPSVR2でも採用するかもしれない。
 パンケーキ型レンズとは,カメラの世界でいうところのパンケーキレンズとは異なる。VR HMD向けのものは,拡大光学系と焦点距離を伸ばす光学系という2種類のレンズからなるダブルレンズ構成接眼レンズの呼び名である。ダブルレンズ方式のパンケーキ型レンズは,2021年に発売となったHTC製「VIVE Flow」で採用されたほか,ソニーの8KVR HMD試作機やShiftallのMeganeX,arparaのVR HMDなどでも採用されている。今後も,VR HMDへの採用事例は増えるはずだ。

VIVE Flowの光学系を解説した資料より。偏光系とハーフミラーのレンズ間で反復的な反射が起きることで,焦点距離を伸ばす。拡大系は2つのレンズの合わせ技で行う。眼球に近いレンズの表面が複雑な形状をしているのが分かると思うが,これが非球面レンズだ
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 パンケーキ型レンズは,初代PSVRだけでなく,Meta Platforms(旧称 Facebook,以下 Meta)の「Oculus Rift」シリーズや,HTCの「VIVE」シリーズなどに用いられていた「フレネルレンズ」に比べて,多くのメリットがある。
 1つは,表示映像が美しくなること。凸レンズを同心円状に切って平面に並べたフレネルレンズで起こりがちだったモアレ模様(年輪のような模様)や,レンズ外周での色収差(色ズレ),コマ収差(ピンボケ)は,パンケーキ型レンズでは起こりにくいとされる。モアレや収差が起きにくいのは,パンケーキ型レンズでは,接眼レンズ側に非球面レンズを採用しているためだ。

 2つめは,ディスプレイパネルを眼前に密着するくらい近くに配置しても,その表示映像を大きく,しかも遠くにあるように見せられることだ。先の図で,ディスプレイパネル側のレンズで幾度も光が反射しているように描かれているが,この効果によって焦点距離が伸びる。この効果により,ボコっと突き出た水中眼鏡のようなこれまでのVR HMDを,大きめな眼鏡くらいのサイズまで小型化できるようになるのだ。


PSVR2のトラッキングは外部カメラ不要のインサイドアウト方式に


 初代PSVRでは,VR HMDの位置や動きを検出するため,ユーザーの正面に「PlayStation Camera」(以下,PSカメラ)を設置する必要があった。PSカメラを設置する手間は,PSVRを楽しむにあたってのハードルになることが少なくなかった。
 しかし,新たに登場するPSVR2では,位置追跡のために外部カメラを設置する必要がなくなった。PSVR2では,初代PSVRと同様の内蔵加速度センサーおよびジャイロセンサーに加えて,VR HMDに組み込まれた4基のカメラを用いるのだ。VR HMD側に組み込んだセンサー(やカメラ)で,VR HMDの位置と動きを検出する仕組みは,「インサイドアウト方式」と呼ばれる。

インサイドアウト方式を使うVR HMDの代表的な存在である「Oculus Quest 2」
画像集#011のサムネイル/西川善司の3DGE:ソニーの次世代VR HMD「PlayStation VR2」の姿を想像してみる
 インサイドアウト方式では,VR HMDに組み込まれた白黒カメラが撮影した映像の変化から位置を推測する。たとえば,VR HMDを使う部屋に本棚があり,VR HMD内蔵のカメラが本棚を捉えていたとしよう。VR HMDを装着したユーザーが動いて映像内で本棚が大きくなったら,ユーザーが本棚に近づいたと推測できる。PSVRの頃は,内蔵カメラを使ったコンピュータビジョン系のリアルタイム処理は,精度面で十分とはいえないところもあった。しかし,現在は十分に実用レベルとなっており,外部にカメラが必要なVR HMDのほうが少数派だ。
 カメラの映像に加えて,より高精度な位置を求めるため,VR HMD側に組み込まれたジャイロセンサーや加速度センサーからの情報を併用する。こうした処理を組み合わせて行うことで,ユーザーの動きを正確に認識するわけだ。

 なお,こうしたコンピュータビジョン系の処理系をPS5側でやるのか,あるいはPSVR2側に内蔵させたカスタムプロセッサでやるのかについては,まだ明らかになっていない。いずれにせよ,初代PSVRのような,外部カメラが必要なくなるのは,プレイ前の準備が減るので嬉しい限りだ。

 ちなみに,VR HMD側の位置追跡用カメラが撮影する映像は,白黒なうえに解像度も高くはないだろう。しかし,低遅延な実写映像であるため,VR HMDを被ったまま周囲の様子を確認するのに役立つので,簡単な操作でカメラ映像をVR内で見られる機能を有するVR HMDは多い。たとえば,プレイ中にテーブルの上にある飲み物を取るときに,いちいちVR HMDを取り外さなくてよくなるので,けっこう便利なのだ。おそらくPSVR2にも,同様の機能が付くことだろう。


PSVR2は視線追跡にも対応

視線追跡技術は角膜反射法か?


 PSVR2における大きなポイントは,VR HMDを被ったユーザーの視線を認識できることだ。同様の機能は,HTCの「VIVE Pro Eye」などが採用しており,PSVR2が初めてというわけではない。ユーザーが注視している部分を高精度なグラフィックスで描画したり,あるいは仮想世界の人物と視線を通わせたり,または敵を狙う際の照準合わせにも応用できるかもしれない。

 SIEによると,視線追跡のために,PSVR2では接眼側に赤外線カメラを2基搭載しているそうだ。ここから推測すると,視線追跡には「角膜反射法」という方式を採用しているのだろう。視線追跡技術を搭載する最新のVR HMDで採用事例が増えている方式だ。

2015年のものだが,FOVEが開発した視線追跡機能搭載VR HMD試作機の接顔部。レンズの周囲にある6個の白い部分が赤外線LEDだ
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 角膜反射法では,正面を見た状態の眼球に赤外光LEDで赤外光のパルスを照射する。すると,角膜が赤外光パルスを反射するので,反射光をカメラで捉えて基準点とする。あとはユーザーの視線移動に応じて,赤外線パルスの反射光が,基準点から相対的にどう動くかを計算することで,視線の動きを推測するわけだ。
 この仕組みであれば,顔面や眼球などの複雑な画像認識は不要となる。ゆえにリアルタイム性が高く,それでいて視線追跡の精度が高い利点もある。2019年以降に登場した視線追跡機能があるxR HMDでは,この技術がよく採用されているので,PSVR2が採用する可能性は高い。


PS5との接続はUSB Type-Cケーブル1本に


 PSVR2の発表において,最も大きな謎を残したのが,PS5とPSVR2の接続方法ではないか。
 SIEは「PS5とPSVR2の接続はケーブル1本で行う」と明言しているので,USB Type-Cケーブル1本で接続する仕組みになるわけだ。

 PS5本体の仕様を改めて確認すると,PS5のUSB Type-Cは,USB 3.2 Gen 2の10Gbps対応となっている。しかし,10Gbps程度では4K/120Hzに相当するPSVR2の映像を伝送することは到底無理だ。ではどうやって実現するのか。その方法は2つほど思い浮かぶ。

 まず1つめの方法だが,筆者の希望的観測を含んだもので,PS5前面側のUSB Type-C端子が,実はDisplayPortの映像信号伝送が可能な「DisplayPort Alternate Mode」(以下,DP Alt)対応であった場合だ。PS5のファームウェアをアップデートするとDP Altモードが有効になり,DisplayPort 1.4で規定した最大32Gbpsの映像伝送が可能になる……という驚きの展開があるのではないか。いや,あるといいなと期待するものだ。この方法であれば,USBのデータ信号と無圧縮の4K/120Hz,HDR10クラスの生映像(ベースバンド映像)をPSVR2に送信できる。

 もう1つの方法は,PS5のUSB Type-C端子がDP Altに対応しない場合に取り得るものだ。それは,PS5のGPUが内蔵するMPEGエンコーダを活用して,VR映像をH.264かH.265でMPEG圧縮したうえでPSVR2に伝送する方法だ。圧縮映像を受け取ったPSVR2は,これをデコードして表示することになる。フレーム相関圧縮技術のMPEG圧縮であれば,元映像データ量の100分の1以下に小さくなるので,4K/120Hz映像でも数十Mbpsから数百Mbpsで伝送可能になり,10Gbpsの帯域幅でも余裕で送れることになる。

 気がつく人もいるだろうが,この手法は初代PSVRで,付属のコントロールボックスからテレビ出力用の映像を出力するために使われていたものだ。ただ,この手法はPS5側で映像を非可逆圧縮するため,元映像と比較すれば画質は劣化するうえ,フレーム相関型のMPEG圧縮である以上,PS5上で描画されてからPSVR2で表示されるまでに,少なくとも数フレーム単位の遅延が避けられない。実際,初代PSVRのコントロールボックスから出るテレビ映像は,数フレーム分の表示遅延があった。
 もし,この仕組みを採用したうえでフレーム単位の遅延を低減させたい場合,

  1. GPUによる描画処理をタイル状(あるいは帯状)に分割する
  2. 描画が終わったタイルから,逐次,映像の圧縮処理を行う
  3. 圧縮済みのタイルをパイプライン方式でPSVR2に伝送する

といった方法が考えられる。ちなみに,これは,VR HMD向けのワイヤレス映像伝送でしばしば用いられるテクニックであり,PSVR2でも用いる可能性はある。はたしてどんな技術が用いられるだろうか。


PSVR2専用コントローラ「PlayStation VR2 Sense」はどんなもの?


 SIEは,PSVR2本体に振動ユニットを組み込んでいることも明らかにしている。これは初代PSVRにはなかった要素で,被ったユーザーの頭部に振動を伝えられるわけだ。
 なお,SIEによると,PSVR2の振動ユニットは偏心モーター1基とのことで,PS5の純正ゲームパッド「DualSense」のようなステレオ振動には対応しない。
 振動機能の具体的な応用例として,SIEは,「ユーザーが操作しているキャラクターの心拍音表現」や「ゲーム世界のキャラクターからユーザーに対しての接触表現」などを挙げていた。ステレオ表現に対応していないのは残念だが,これまでになかったゲーム表現が可能になるはずなので,実際に体験するのが楽しみである。

 さて,2021年3月にちょい見せで公開となったPSVR2用モーションコントローラについても,SIEはさらなる情報を公開した。
 まず,正式名称は「PlayStation VR2 Senseコントローラー」(以下,PSVR2 Sense)であるという。

PSVR2 Sense
画像集#013のサムネイル/西川善司の3DGE:ソニーの次世代VR HMD「PlayStation VR2」の姿を想像してみる

 写真を見てのとおり,PSVR2 Senseは,DualSenseを左右に分割して,左右のアナログスティックとトリガーを,それぞれモーションコントローラの左右に配置したようなデザインだ。[○/×]ボタンと[OPTION]ボタンは右手側コントローラに,[△/□]ボタンと[CREATE]ボタンは左側コントローラへ割り振っており,PSボタンは左右両方にある。一方で,D-Padは省略された格好だ。

 PSVR2 Senseのトリガーは,DualSenseのトリガーと同じく押し込み時に反発力が与えられる「アダプティブトリガー」に対応するという。また,振動機能も「DualSense譲りである」というSIEの説明からすると,リニアモーター系(ボイスコイル系)の振動素子を組み込んでいると見られる。ただ,振動素子は左右のモーションコントローラそれぞれに1基ずつ内蔵とのことで,DualSenseで可能なステレオ振動表現は,PSVR2 Senseでは行えない。

 一方,DualSenseにはなく,PSVR2 Senseで実装された機能に,「フィンガータッチ」機能がある。左右のアナログスティック上端(親指に対応)と,2つのトリガー(人差し指と中指に対応)にタッチセンサーが組み込まれており,親指,人差し指,中指の接触を静電容量センサーにて検知できるそうだ。この機能は,指を使ったジェスチャー入力に応用できると,SIEは説明している。

人差し指で押すトリガーは[L2/R2]となり,[L1/R1]ボタンは「掴む」操作で押すグリップボタンに割り当てられるという
画像集#014のサムネイル/西川善司の3DGE:ソニーの次世代VR HMD「PlayStation VR2」の姿を想像してみる

 PSVR2 SenseとPS5との接続は,Bluetooth 5.1によるワイヤレス接続となるそうで,これはDualSenseと同じだ。ワイヤレス接続なので,PSVR2 Senseは,内蔵のバッテリーで動作する。

 PSVR2 Senseの位置検出は,PSVR2側の位置検出用白黒カメラを用いて,PSVR2 Sense側に組み込まれた赤外線LEDの光を捉えることで行う。PSVR2 Sense内蔵の赤外線LEDが何個になるのかはまだ明らかになっていないが,持ち手全体を囲うようなリング部分の表面に,複数個組み込まれていると思われる。もちろん,PSVR2 Sense側にも,DualSenseと同等の3軸ジャイロセンサーや3軸加速度センサーが内蔵されているので,この情報もPSVR2 Senseの位置検出に使われるはずだ。

画像集#015のサムネイル/西川善司の3DGE:ソニーの次世代VR HMD「PlayStation VR2」の姿を想像してみる

 最近のインサイドアウト方式のVR HMDでは,モーションコントローラを持った手を左右に大きく広げたり,あるいは天を仰ぐような突き上げるようなポーズを取っても,うまくトラッキングできる。おそらくPSVR2でも,このレベルの追従性を実現してくることだろう。

インサイドアウト方式を採用するHTCのVIVE Focus 3で,コントローラの追従性をチェック中の筆者。写真のように腕を広げて操作しても,コントローラを見失うことはなかった。PSVR2でも,これくらいの追従性を期待したい
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PSVR2の登場はいつ頃で,価格はどうなる?


 今回の発表では,価格や発売時期についての言及はなかった。初代PSVRの発売は,PS4発売からの3年後(※北米地域でのPS4発売日で換算)の2016年10月。SIEが製品名を発表した2015年秋からほぼ1年後であった。このタイミングをPS5に当てはめれば,PSVR2は,早くて2022年末,遅くとも2023年内には登場するということになるか。

PSVR2専用タイトルとして同時に発表となった「Horizon Call of the Mountain」。開発は2021年にSIE参加になったばかりのFirespriteが担当する
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 価格はどうなるだろう。初代PSVRは,PS Camera同梱版が4万9800円(税別)だったので,PSVR2もこれに近い価格になることだけは想像できる。PSVR2では,PS Cameraが不要になったが,4基の白黒カメラや視線追跡機能を実装するなど機能強化面も大きいので,初代PSVRから大幅に安くなることは考えにくい。ディスプレイパネルや光学系に,本稿で述べたマイクロディスプレイやパンケーキ型レンズを採用した場合,それなりにコストも上がるはずなのでなおさらだ。

 次回,PSVR2についての発表があるとすれば,外観もお披露目になるはず。楽しみに待ちたい。

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