インタビュー
[インタビュー]「ウォークラフト ランブル」は簡単にプレイできて奥深いストラテジー。ついにローンチを果たした新作タイトルについて開発者に話を聞いた
「ウォークラフト ランブル」公式サイト
すでに何度か紹介したように「ウォークラフト ランブル」は,“タワーオフェンス型”のストラテジーで,ソロキャンペーンやPvPモードが用意されている。プレイヤーは,ウォークラフトユニバースのキャラクターたちを3Dモデルで再現した「ミニ」(ミニチュアであり,またミニオンの意味)から6体のユニットを選んで軍隊を編成し,マップの反対側にいる敵リーダーユニットの粉砕を目指す。
2レーンまたは3レーンからなるマップはMOBAを思わせるが,すべてのミニたちは自動で進軍するため,敵ユニットの特徴などを見きわめつつ攻略しなければならないパズル要素と,高い戦略性が持ち味だ。その一方,誰でもプレイできるようにゲームシステムは比較的簡単になっている。
もともとは,BlizzCon 2023の開催に合わせて日本時間の11月4日にローンチする予定だったが,実際には1日早くリリースされている。そのため,すでにプレイしている人も多いはずだが,多くの人はまだゲーム序盤の段階だろう。今後,何を目標にプレイすべきなのか,本作の詳細について詳しく聞いてみた。
「ウォークラフト ランブル」のシニア・ゲームデザイナーのブレンダン・ファレル氏 |
同じくシニア・アニメーターのカリン・ハーニンク氏 |
「ウォークラフト ランブル」ダウンロードページ
「ウォークラフト ランブル」ダウンロードページ
――まず,「ウォークラフト ランブル」は,どういうコンセプトで開発が進められたのでしょうか。
ブレンダン・ファレル(以下,ファレル)氏:
「ウォークラフト」は30年以上も続くIPですが,これまで長くアップデートされていませんでした。ですので,より多くのゲーマーに遊んでもらえるようにモバイル向けのリリースを計画したのです。
セッションも非常に短く,例えばBlizzConのチケットラインに並んでいるときでもプレイできるでしょう。誰でもプレイしやすいことに加えて,アニメーションの細かい,チャーミングな作品に仕上げたいと考えました。
カリン・ハーニンク (以下,ハーニンク)氏:
大きな世界観のIPを手のひらサイズに収めるのは,非常に挑戦的でした。ウォークラフトらしさを失わないようにしつつ,実際に何が起こっているのかをしっかり判別できるよう,ギリギリのサイズにしなければなりません。歩くとかモノを投げるなどのアニメーション要素を,1つ1つを大げさ気味に表現しつつ調整を繰り返しました。
――レベルアップ時のキャラクターアートが細かく表現されていますが,レベルアップのたびに容姿がグレードアップするんですか。
ハーニンク氏:
いえ,PvPモードでキャラクターアートが変化すると,相手のプレイヤーが混乱してしまうと思って,ミニたちの容姿は変化しないようにしました。ただし,プレイヤーのヒーローユニットが持つ3つの「タレント」によっては,手にする武器や効果がキャラクターアートに加えられていることがあります。小さいながらも,それぞれのキャラクターの表情やムーブもしっかりと作り込んだのは,アニメーション担当としては思い入れの大きな部分です。
――ゲームに勝利すると,ミニはどのようにレベルアップするのでしょうか。
ファレル氏:
ミッションのためにピックアップした6種類のミニのうち,ゲームに勝った時点でその中から数体がランダムに選ばれ,ポイントが与えらるというシステムです。
――半日ほどプレイしましたが,ミニのレベルは6くらいです。最大レベル値はどれくらいなのでしょうか。
ファレル氏:
レベルの最大値は30です。皆さんよりはいくらか多めにプレイしている私でも,一番成長しているミニのレベルは9程度ですので,簡単に成長しきってしまうことはありません。長く遊び込んでもらえるようになっているのです。
例えばヒーローに飛行タイプのスロットがあれば,飛行タイプのミニをピックアップすることで,経験値向上のボーナスが得られます。ヒーローには3つのタレントと呼ばれる特殊スキルがあり,プレイヤーがその中から1つを自由に選びますが,自分の持っているミニとどのように連携するかも勝敗に大きく影響します。このあたりのメタゲームについても,プレイヤーの皆さんがプレイしながら見つけてもらいたいと思っています。
――ウォークラフトを知らないと,どんな特性を持つユニットなのか分かりにくいのでは。
ファレル氏:
PvPやレイド以外のソロプレイをしているときは,ゲームを停止し,ボスを含めて各ユニットのアーキタイプや特性などをチェックできます。自分のユニットについては,軍隊ページでも情報を確認できますよ。
――「ウォークラフト ランブル」には近距離,遠距離,飛行の3タイプが3すくみの形でデザインされていますが,さらに「ファミリー」が存在しますね。それはどういうものでしょうか。
ファレル氏:
ファミリーというのは,アライアンス,ホード,ビースト(獣),ブラックロック,そしてアンデッドの5つです。例えばアライアンスなら,アーマーを着ているので防御力が高いとか,ブラックロックなら飛行タイプが多いとかいった特性を持っています。ヒーローも,例えばシルヴァナス・ウィンドランナーをプレイヤーがピックしていればアンデッド系ミニの移動速度が向上するなどのシナジー効果がありますが,ファミリーそのものは,ジャンケンの要領でバランス調整しているわけではありません。
ハーニンク氏:
1つのファミリーから選ぶのではなく,集めたミニで自由に軍隊を編成して,敵リーダーやマップ上のパズルに対抗してもらえればと思います。もちろん,ファミリーのどれかがお気に入りであれば,ファレルが今話したように,リーダーユニットとのシナジーにこだわってユニットを選んでみるのも良いでしょう。
――現時点で65種類のミニがいるとのことですが,無数にキャラクターの存在するウォークラフトユニバースで,最初の65種類が選ばれた理由は何かありますか。
ファレル氏:
ヒーローを含めて,特徴的な能力や攻撃スタイル,そして見た目を意識してチョイスしました。すでに,いくつものマップタイプやゲームモードが用意されていますが,ラインナップが100を超えたときでも,日の当たらないキャラクターがいないようなミッションを用意するのが,我々デザイナーの腕の見せどころだと思っています。
――ウォークラフトの世界観を知らなくてもプレイを楽しめますか。
ファレル氏:
もちろん,「ウォークラフト ランブル」を楽しむのに,ウォークラフト作品をプレイしている必要はありません。ストラテジーに高い要求を持っている人でも楽しめるようにする一方で,ストアで本作を見つけ,カジュアルに無料ゲームを楽しみたいという人にも対応するようにしています。
――ただ,ゲームに慣れ親しむにつれて,もっと世界観を知りたいというゲーマーも少なからず出て来るはずです。ストーリー性が少ないのは残念な部分ではありませんか。
ハーニンク氏:
そうですね。本作は確かに戦略が成功したときの面白さにフォーカスしたゲームであり,そういったナラティブな部分は改善の余地がありそうです。ただ,ストラテジーゲームとして誰でも満足できるゲームに仕上がっていることは間違いないので,ぜひ遊んで,ウォークラフト世界への入り口にしてもらえればと。
――「ダンジョン」や「レイド」について,もう少し説明してもらえますか。
ファレル氏:
いいですよ。「ダンジョン」はシングルプレイ向けのモードで,1つのセッションで,3つのレベルを連続してプレイします。1つのレベルをクリアするごとに「レリック」が手に入り,例えば「被ダメージ率を2分の1に軽減する」といった,タレントに似た恩恵をすべてのミニに与えられます。そして,3つのレベルをすべて攻略できれば,良い報酬が得られるというわけです。
2024年にリリースされる「レイド」はダンジョンと似ていますが,自分のギルドのメンバーと一緒にプレイするCo-opタイプのモードだという特徴があります。ダンジョンよりも高度な戦略性を必要とし,リーダーユニットも毎回変更し,なおかつ,フレンドとのシナジーも考えながらプレイしなければなりません。
――レイドをプレイする以外に,ギルドに参加することについての利点はありますか。
ファレル氏:
ギルドに参加できるのは最大で15人ですが,全員が協力してプレイすることで,シーズンごとに「ウォーチェスト」という宝箱を入手できます。もちろん,仲間とチャットもできますし,ゲームを最大限に楽しみたいなら,ぜひ参加してほしいですね。
――あまり参加しないと,ギルドにキックアウトされたりしますか。
ハーニンク氏:
それはギルド,またはギルドリーダー次第でしょうね。例えばすでに友人関係だったり,「World of Warcraft」やほかのゲームのギルドと同じメンバーで参加することもあるでしょう。とはいえ,それほどハードルの高くないギルドもたくさんあると思いますよ。
――お2人のお気に入りのミニやメタゲームを教えてください。
ハーニンク氏:
私のお気に入りは「ティリオン・フォードリング」ですね。アライアンスなのでファミリーは異なるのですが,同じようにヒーラーであるホードの「フロストウルフ・シャーマン」と組み合わせると,お互いを回復させながらプレイできます。
ファレル氏:
私は「ウェルプ・エッグス」ですかね。マップ上のどこにでも3つの卵を設置でき,相手に攻撃されると火を噴く小さなドラゴンを孵化させます。1匹ではそれほど脅威にはなりませんが,3匹をうまく孵化できれば,敵を悩ますことができるんです。激しい戦闘が起きている場所にタイミング良く卵を投下すれば,敵がうっかり卵を攻撃して孵化させてしまうなど,使い方をマスターすれば戦場でかなり有利なツールになるんです。
――最後に,今後のロードマップについてお教えください。
ファレル氏:
6週間に1回のペースでアップデートを行い,そのつど新しいイベントやミニを加えていきます。
――本日はどうもありがとうございました。
「BlizzCon 2023」公式サイト
4Gamer「BlizzCon 2023」掲載記事一覧
- 関連タイトル:
ウォークラフト ランブル
- 関連タイトル:
ウォークラフト ランブル
- この記事のURL: