「龍が如く」シリーズのキャラクターで幕末の時代を描く
「龍が如く 維新!」 。育ての親を殺した汚名を着せられた男,
坂本龍馬(桐生一馬) が,仇がいるという新選組に「斎藤 一」の偽名で潜入し,動乱の京の街を駆けるという同作が,9年ぶりにリメイクされ
「龍が如く 維新! 極」 (
PS5 /
PS4 /
Xbox Series X /
Xbox One /
PC )として2023年2月22日に発売される。
東京ゲームショウ2022の会場で,そんな本作を手がける龍が如くスタジオ代表の
横山昌義氏 と,同スタジオの
阪本寛之氏 にゲームの見どころなどを聞いてきた。
横山昌義氏(右)と阪本寛之氏(左)
関連記事
2022/09/15 17:19
オリジナル版を遊んだ人やシリーズ未経験の人も楽しめる,新たな幕末の世界
4Gamer:
よろしくお願いします。「龍が如く 維新! 極」が発表され,TGS 2022には体験版が出展されていますが,反応はいかがですか?
阪本寛之氏(以下,阪本氏):
こちらの想定よりも盛り上がってくださっているようで,ありがたく思っています。
4Gamer:
会場では日本語版以外の試遊台も用意されていましたね。
横山昌義氏(以下,横山氏):
海外でも我々の想定とは桁が違うくらいの盛り上がりで,「龍が如く 維新!」がこれまで海外では発売されていなかったこともあって,フレッシュな気持ちで遊んでいただけているのではと思います。
4Gamer:
「龍が如く 維新!」が海外で発売されなかった理由はなんでしょうか。
横山氏:
「日本の歴史ものは,海外で受けないんじゃないだろうか」という判断によるものです。この判断は思い込みではなく,正しいものだったかもしれません。しかし,そこから9年が経ち,新型コロナウイルスの影響やいろいろなものの発展によって,状況も変わってきていると感じられます。
今では日本人も動画配信サブスクで日本と海外のドラマを並列で見るようになっていますし,「〇〇向け」という言葉自体が崩れてきているんじゃないでしょうか。どこの地域がテーマになっているかに関わらず,いいものなら受け入れられるということですね。
4Gamer:
そうした状況の変化もあって,海外のファンにはとくに嬉しいリメイクになりましたね。
横山氏:
日本版のタイトルには,シリーズをリメイクする際に入れる「極」という単語を使っています。過去のバージョンを遊んだ方には,いろいろな追加要素が入っているのでもう一度プレイしていただきたいという思い。そして,シリーズを遊んでいない方にも遊んでほしいという思いが込められています。
一方,海外の方にとっては完全な新作ですので,海外版のタイトルは「極」に相当する単語がない
「Like a Dragon: Ishin!」 になっているんです。
4Gamer:
ではゲーム内容について,オリジナルから変化した部分を教えてください。
阪本氏:
バトルが大きく変化していることと,シリーズとしては初めてUnreal Engine 4で制作していることが大きな違いですね。
横山氏:
バトルについては,「バトルダンジョン」限定だった隊士カードや隊士スキルを,通常のバトルでも使えるようにしています。メインストーリーの戦いもほとんどすべて設計し直し,一から作り直しているので,かなり楽しめると思いますよ。
4Gamer:
実際に体験版をプレイさせていただきましたが,派手で爽快なバトルになっていると感じました。「攻撃力を上げる隊士カードを使ってから,時間の流れを遅くする隊士カードで相手に大ダメージを与える」といった,隊士カードのコンボが面白かったです。
阪本氏:
隊士カードの数もかなり増えていて,コンプリートにも今までで一番時間がかかるんじゃないかと思います。実は「龍が如く 維新!」でRPG的な要素を導入したノウハウや経験が,RPGである
「龍が如く7 光と闇の行方」 の制作で役立っていたりもします。そうした意味で「龍が如く 維新!」は龍が如くスタジオに大きなものを与えてくれたタイトルでもあるんです。
横山氏:
「龍が如く 維新!」には「一刀」「乱舞」「短銃」「格闘」という4つのスタイルが存在するのですが,短銃がマシンガンのように連射できるようになるのに対し,ほかのスタイルでは難度が上がってしまい,どうしてもスタイルが固定されるところがありました。でも今回は隊士スキルが加わり,ボスごとに戦い方や隊士カードのセッティングを変えていくことになるので,より深く楽しめるようになったと思います。
4Gamer:
オリジナル版を遊んだ人も,新たな気持ちで楽しめそうですね。ストーリーには変化があるのでしょうか。
横山氏:
メインストーリーはそのままですがキャストが変更され,「龍が如く 維新!」以降に発売されたナンバリングタイトルの
「龍が如く0 誓いの場所」「龍が如く6 命の詩。」「龍が如く7 光と闇の行方」 の人気キャラクター達が登場します。
また,サブストーリーには近年の作品のサブキャラクター達が登場します。こちらはシリーズファンへのサービスですね。シリーズで命を落としたキャラクターも,本作のようなスピンオフなら呼び戻せますから,僕らも作っていて楽しいです。
4Gamer:
リメイクにあたって苦労した点などはありますか?
横山氏:
基礎的な研究をしていたとは言え,Unreal Engineへの対応は大変でした。オリジナルの「龍が如く 維新!」は,我々が近作で使っているドラゴンエンジンすらなかった時代の作品です。リメイクするにしても,従来どおりドラゴンエンジンを使ったほうが簡単に作れます。でも,昼間のライティングなどを比べてみると,Unreal Engineのほうがいい絵が出せるので,切り替える決断をしました。ただ,日光はとてもいい感じに表現できるのに日陰に入った途端に暗くなりすぎたりと,ライティングのクセを掴むまでは苦労しましたね。
4Gamer:
なるほど。
横山氏:
ゲームの絵作りは,視認性との戦いという側面もあります。絵的に綺麗なものは,視認性に難があることがとても多い。いかに絵が綺麗でカッコよくても,敵が見えないとゲームにはなりません。ユーザーさん側で明るさを調節するという手もありますが,そういう手間は掛けさせたくないので,TVで絵をチェックするときも,必ず工場出荷時の設定を使っています。
4Gamer:
絵的な綺麗さと視認性の良さなら,後者を選ぶのが龍が如くスタジオであると。
阪本氏:
そうですね。我々は視認性の良さを取ります。
横山氏:
バトル中のカメラも,寝かせれば寝かせるほど,被写体が大きくなるからカッコよくなる。でも,そうするとキャラクターの背中で敵が見えなくなるんですよ(笑)。そして,視認性を良くするためにカメラを俯瞰にしていき,寝かせたときのカッコよさと俯瞰の分かりやすさで,ギリギリのせめぎ合いをしていくわけです。
4Gamer:
CG映画ではなく,ゲームであるがゆえの苦労ですね。
横山氏:
ただ,苦労した甲斐はありました。とくに昼間などは「龍が如く 維新!」と大きな違いが出ていると思います。夜については,これまでもある程度いい感じの絵が出せていましたが,光の広がり方は新しいUnreal Engineのほうが綺麗ですね。
4Gamer:
より美しくなった京の街を見られるわけですね。
横山氏:
過去のバージョンをプレイした方の記憶の中で美化されているものとの戦いですね。そうしたものを越えていくだけの発展を見せなければならないので,今もすごくチューニングを頑張っています。
4Gamer:
開発とは別にUnreal Engineの研究も進めていたとのことですが,そうした基礎研究はやはり重要なのでしょうか?
横山氏:
そうですね。ビデオゲームほど技術に依存している娯楽はないと思います。
阪本氏:
基礎研究や現場での対応がうまくいかないと,前作とあまり変わらないものになってしまうんですよね。
横山氏:
ゲームとしては動かせるのですが,大した絵が出せないとか。例えるなら,フェラーリに乗って時速30kmで走るようなもの……という感じでしょうか。だからと言って軽自動車に乗り続けて時速200kmを出すわけにはいかないので,それぞれに適切な使い方が大事になるわけです。ゲーム“エンジン”とは,よく言ったものですね。
4Gamer:
では,最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
阪本氏:
「龍が如く 維新! 極」はこれまでのシリーズをプレイしていない方でも遊んでいただけますし,シリーズへのエントリーとしてももってこいです。サブストーリーやプレイスポットなど,ボリュームも満点で末永く楽しんでいただけます。
横山氏:
ゲーマーの方の楽しみには「技術的な進化を追っていく」というのもあると思います。Unreal Engineが使われた初めての「龍が如く」となる本作は,そうした楽しみ方にもってこいです。とくに刀身は顔が映っていたり,光の反射が全然違ったりと,より美しくなっていますので,細かいところまで見比べてみてください。
4Gamer:
発売を楽しみにしています。本日はありがとうございました。