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マーダーミステリー花盛りだった「ゲームマーケット2022秋」。関連ブースの新作をまとめて紹介
オフラインからオンラインまで多様な遊び方が広まったことで,近年ますます存在感を増しつつあるマーダーミステリージャンルだが,今回も50点ほどの新作が発表され,会場を賑わせていた。前回,前々回はコロナ禍の影響もあってか,2人用などの小規模なものが多かったが,今回の新作は多人数向けのものが増え,とくにプレイヤーを確保しやすい4〜5人用が人気を集めていた印象だ。
「ゲームマーケット」公式サイト
講談社「金田一少年の事件簿 宝石盗難殺人事件」
ゲームマーケット直前の2022年10月半ばに発表され,界隈の注目を浴びたのが講談社の新作「金田一少年の事件簿 宝石盗難殺人事件」(以下,宝石盗難殺人事件)だ。
既存IPとのコラボレーションによるマーダーミステリーは,これまでにも漫画の「アイとアイザワ」や,アニメ「オッドタクシー」「てっぺん!!!!!!!!!!!!!!!」,また「ひぐらしのなく頃に」シリーズなどがあったが,「金田一少年の事件簿」はそのものズバリのミステリー作品なだけに,マーダーミステリーとの相性の良さを予感させる。
マダミスHOUSE代表のクマ氏によると,本作はいつか実現したいと考えていたコラボとのことで,講談社に提案したところスムーズに話が進み,実現に至ったとのこと。なお今回のゲームマーケットで先行販売が行われた「宝石盗難殺人事件」は2人用のパッケージ製品(税込2750円)だが,4人用のパッケージ製品「金田一少年の事件簿 夢見島殺人事件」(税込3300円),「マーダーミステリーアプリ ウズ」でプレイできる4人用のオンライン専用タイトル「金田一少年の事件簿 つらら姫殺人事件」(税込1100円/1人),そして8人用の店舗公演型タイトル「金田一少年の事件簿 天狼伝説殺人事件」(税込4500円/1人)もリリース予定とのことである。
制作にあたってのエピソードをクマ氏に聞いたところ,やはり原作との相性の良さは感じたそうで,例えば一般的なコラボ作品では,原作キャラクターを登場させるのがNGであったり,あるいは反対に,オリジナルキャラクターを登場させるのに制約がかかることが多いという。その点本作では,プレイヤーは原作の主人公とヒロインである金田一一と七瀬美雪に扮することでき,また事件でNPCが殺されても,世界観的に何ら不思議はない。
本作をプレイするときは,ぜひ主人公とヒロインになり切って「謎はすべて解けた!」の決めゼリフを叫んでほしいとのことだった。
「マーダーミステリー 金田一少年の事件簿 」公式サイト
KADOKAWAの新レーベル「MYSTERY&ADVENTURE BOX」
KADOKAWAブースでは,同社がグループSNEとタッグを組んで立ち上げた新レーベル「MYSTERY&ADVENTURE BOX」の展示が行われていた。第1弾の「焚家(ふんけ)」は12月28日に税別3500円(税別)で,第2弾の「八月のタイムマシン」は2023年1月に発売予定(価格未定)とのことである。
KADOKAWAの担当者によれば,「MYSTERY&ADVENTURE BOX」はキャッチーなビジュアルと硬派なゲーム性を融合させたシリーズとして設立されたもので,業界を牽引していくレーベルに育てたいとのことだった。どのタイトルも特徴的なギミックを搭載しているそうなので,気になる人はぜひプレイして確かめてみてほしい。
Studio OZONの新たな挑戦
ここ数年のゲームマーケットで大きな存在感を放っているStudio OZONのマーダーミステリーブースは,今回も開場直後から長蛇の列が形成される盛況ぶりを見せていた。
出展されていた各社のタイトルは全体的に単価が上がっている傾向で,中には9000円弱のタイトルなどもあったが,いずれも飛ぶように売れていた印象だ。
そうした背景や企業参加の増加もあってか,代表の久保よしや氏によれば2日間での同ブースの売り上げは1300万円超にも及んだという。
氏は,価格よりパッケージのビジュアルや事前のクチコミを重視するコアなファンが増えたこと,またコロナ禍の落ち着きをうけ,オフラインでマーダーミステリーを遊ぶ機会が増えたことで,多人数向けのタイトルが遊びやすくなったことが,今回の盛況につながったのではと語っていた。
なお,OZONによるマーダーミステリーブースは,次回ゲームマーケット2023年春へは出展を控える予定で,代わりに2023年7月に「マダミスフェスティバル」なるオフラインイベントの開催を予定しているという。今後は夏のマダミスフェスティバルと,秋のゲームマーケットとの年2回出展を考えているそうなので,続報に期待しておこう。
Studio OZON マーダーミステリーブース特設サイト
マダミス制作を助ける萬印堂「マダミス専用プラン」
マーダーミステリーのパッケージにはキャラクターの設定書や追加資料,各種カード,トークンなどが同梱されるものだが,制作にあたっていざこれらを用意しようとすると,あちこちに発注をかける必要があって,なかなかにハードルが高かった。
そこに目を付けたのが,ボードゲームやカードゲームの印刷を手がける萬印堂だ。同社が新たに提供する「マダミス専用プラン」では,設定書やカードの印刷,これらを収納する化粧箱の制作はもちろんのこと,オプションとしてトークンなどの各種グッズ類や箱詰め,シュリンク包装まで追加して一括で依頼できてしまう。
受注は100セット限定で,スタンダードプランだと18万7000円(税込)。さらにページ数などを軽減したライトプランならば14万8500円だ(それぞれオプションは別料金)。つまりライトプランであれば,1500円で売り切ることができれば原価が回収できるわけだ。
筆者によるあくまでざっくりした試算だが,マーダーミステリーのコンポーネント一式を同規模で用意するとなると,従来は27〜28万円ほどかかるのが通常だった。なので,萬印堂のこのプランを使用すると,10万円ほど安くつく計算になる。
また,プランごとに冊子の総ページ数やカード総数は決まっているが,その内訳は自由なので,制作者のアイデア次第でさまざまな使い方ができそう。
萬印堂「マダミス専用プラン」紹介ページ
グループSNE初のオンライン対応タイトル「京都異世界ツアー」
フルスペックのマーダーミステリーをGMレスで手軽に楽しめる「MYSTERY PARTY IN THE BOX」シリーズと,少人数/短時間に特化した「Murder Mystery Mini」シリーズを展開しているグループSNEのブースでは,前者の新作「罪と罰の図書館」(税込3520円)と,後者の新作「京都異世界ツアー」(税込2200円)が,それぞれ販売されていた。
「罪と罰の図書館」は,協力型ミステリーゲーム「真紅のアンティーク」なども手がけたグループSNEの河端ジュン一氏がゲームデザインを担当したタイトルだ。
一方,「京都異世界ツアー」は雑誌「GMウォーロックVol.1」に掲載されたタイトルのリメイクにあたり,こちらは「魔女の晩餐式」「丸と線」などで知られる中村 誠氏がゲームデザインを担当している。また,同作はグループSNEとしては初のオンライン対応作品とのことで,購入者はグループSNEの製品ページから各種アセットがダウンロード可能となっている。
グループSNE代表の安田 均氏に話を聞いてみたところ,「MYSTERY PARTY IN THE BOX」シリーズでは,テーブルトークRPG好きでも知られる落語家の三遊亭楽天氏の監修のもと,新鋭・鯖井 凌氏の「落語」をテーマにした新作が準備中だとか。まだ詳細は言えないそうだが,KADOKAWAの「MYSTERY&ADVENTURE BOX」シリーズ第3弾として,ファンタジーもののマーダーミステリーも控えているという。今後もミステリーものとしてのベースはしっかり押さえつつ,各シリーズを展開していきたいとのことだったので,ファンはお楽しみに。
また,安田氏としては,マーダーミステリーはまだまだ進化の途上であり,世界に広がる余地があると考えているという。ディナーパーティーの余興から始まり,中国で進化,日本で改良されたマーダーミステリーが,世界でより多くのファンを獲得する日も近いかもしれない。
「MYSTERY PARTY IN THE BOX」シリーズ公式サイト
「Murder Mystery Mini」シリーズ製品ページ
今回のゲームマーケットを含む,近年のマーダーミステリージャンルのトレンドを語るとすれば,冒頭でも紹介したように,少人数向けから多人数向けへと全体的に規模の大きいタイトルが増えたことがまず一つ。
さらにStudio OZONが提唱する「ストーリープレイング」や,専門店・Rabbitholeの謳う「トークアトラクション」のように,狭義の“マーダーミステリー”に止まらない――つまり作中で殺人事件が起こったりしない,ミステリー的な要素を含まない作品が増えてきたことが挙げられる。ちなみにこうした流れはマーダーミステリーの本場である中国も同じだそうで,必ずしもガラパゴスな進化でもないようだ。
グループSNEの安田氏が言うように,マーダーミステリーにはまだまだ多くの可能性が潜んでいそうである。
「ゲームマーケット」公式サイト
- 関連タイトル:
マーダーミステリー 金田一少年の事件簿
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