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[インタビュー]MSXやPC-88で遊んでました! 俳優の藤木直人さんに「なつもん!」や子供時代の夏休みの話を聞く
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印刷2023/07/24 12:00

インタビュー

[インタビュー]MSXやPC-88で遊んでました! 俳優の藤木直人さんに「なつもん!」や子供時代の夏休みの話を聞く

 スパイク・チュンソフトが,2023年7月28日に発売を予定している「なつもん! 20世紀の夏休み」は,サーカス団・団長の息子である主人公が,公演のために訪れた「よもぎ町」で過ごす1か月を描いたアドベンチャーゲームだ。

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 自然豊かなよもぎ町はオープンワールドで描かれており,プレイヤーはラジオ体操をしたり,虫を捕まえたり,祭りに出かけて花火を見たりといった夏休み体験を楽しめる。

 開発は,トイボックスとミレニアムキッチンで,「ぼくのなつやすみ」シリーズで知られる綾部 和氏が,原作・脚本・ゲームデザインを手掛けている。

 またゲーム内のナレーションを,俳優の藤木直人さんが担当している。ナレーションは,「10歳の主人公が大人になって,当時を回想する」というもので,作中のさまざまな場面で流れるようだ。

 今回,藤木さんにインタビューする機会を得たので,ナレーション収録についての感想や本作の魅力などについて聞いてみた。藤木さんの子供時代やゲームとの関りについても話を聞くことができたので,その内容をお届けしよう。

「なつもん! 20世紀の夏休み」公式サイト



子供のころはMSXやPC-88でゲームを遊んだ


4Gamer:
 本日はよろしくおねがいします。

 さっそくですが,「なつもん! 20世紀の夏休み」は,家庭用ゲーム機のNintendo Switchで発売されます。同じ任天堂のゲーム機であるファミリーコンピューター(ファミコン)は,藤木さんが子供の頃にブームとなっていましたが,そのころにTVゲームで遊ぶことはありましたか。

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藤木直人さん(以下,藤木さん):
 ファミコンブームは小学生の時でしたが,うちは親の教育方針で「ゲーム機は駄目だ,これからはパソコンだ」と,MSXを買ってもらったんです。
 それで,名前を打ち込んだふたりの相性を当てるゲームを作ったり,メロディや音符の長さをプログラムして,単音のメロディを鳴らしてみたり,プログラムが載っている「マイコンBASICマガジン」という雑誌を参考にプログラミングをしていましたね。

4Gamer:
 むしろ,ゲームを作っていたんですね。

藤木さん:
 ゲームもそこそこ遊んでいました。MSXでは「ハイパーオリンピック」や野球ゲームなどを,お小遣いで買った記憶があります。
 記録媒体がカセットテープのゲームもあったので,シューティングゲームなんかは,1面をクリアすると「2面をロードしてください」という表示が出て,20分くらい待たされるんですよ。

4Gamer:
 今では想像のつかない長さですよね。

藤木さん:
 中学生になったときに,PC-88を買ってもらいました。カセットテープからフロッピーの時代になると,速く読み込めるようになって感動したものの,差し込み口に入れるときに曲がっちゃって,もう中のゲームが読み込めなくなったりして……(笑)。

4Gamer:
 PC-88以降も,パソコンでゲームをされていたのでしょうか。

藤木さん:
 しばらく離れていましたが,プレイステーションなどの家庭用ゲーム機で遊ぶようになりました。長男が生まれた頃は「プロ野球スピリッツ」にはまっていて,子供と同じ左利きのピッチャーに長男の名前を付けて育てたりもしてましたね。
 ただ,子供がゲームに興味を持ちそうな年頃になってからは,自分と同じようにゲームにはまられても困るので,押入れの中に封印しています。

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4Gamer:
 プレステ以降はどうでしょう。

藤木さん:
 小池鉄平君とドラマに出演した時に,みんながPSPで「モンスターハンター ポータブル」をやっていたので,僕も始めました。こういうコミュニケションもあるんだなって思いましたね。
 あと,スマホで「パズル&ドラゴンズ」や「ポケモン GO」なんかもプレイしていました。

4Gamer:
 今もプレイを続けているのでしょうか。

藤木さん:
 最近は,基本的にゲームをプレイしていません。自分はやると割とのめりこんでしまうので,息子がゲームばっかりやっているときに注意しようにも説得力がなくなってしまいますから(笑)。
 そういえば,昭和の人間って,ゲームすることに罪悪感がありませんでした? 遊びの中でも,何故か悪者にされますし(笑)。

4Gamer:
 藤木さんくらいの世代だと,「ゲームなんて」と,頭ごなしに禁止された経験がある人も多いでしょうね。テストや受験前に有名タイトルが発売されると,勉強そっちのけで遊ぶので,親からの印象は悪そうです。

藤木さん:
 人気ソフトとの抱き合わせ販売や,買えた人からソフトを奪い取る“ドラクエ狩り”なんかは,社会問題にもなりましたから。世間が悪い意味でゲームに注目した時代なのかなあと。

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ゲーム関連の仕事は「なつもん! 20世紀の夏休み」が初体験


4Gamer:
 現在はゲームを封印している藤木さんですが,過去にゲーム関連のお仕事を受けたことはあるのでしょうか。

藤木さん:
 ないと思います。ただ,もうだいぶ年をとったので記憶は怪しいですけど(笑)。

4Gamer:
 「なつもん! 20世紀の夏休み」は,二十世紀の田舎町を舞台にしたアドベンチャーゲームで,サーカス団・団長の一人息子が,大自然の中で夏休みを満喫しながら,色々なドラマを体験していきます。ゲーム内容についてはすでに説明を受けていることと思いますが,どんな印象を持たれましたか。

藤木さん:
 事務所のスタッフから説明を聞いた段階では,どんなゲームなのか想像が付かなかったのですが,実際に作品を見て,あらゆるものがゲームの題材になるんだと思いましたね。この作品には明確なストーリーの流れがなくて,本当に自由な夏休みを過ごせるんですよ。びっくりしました。

4Gamer:
 実際にプレイはしたのでしょうか。

藤木さん:
 開発中のものを触らせてもらいました。僕はゲームを進める際,何か取りこぼしている要素があるんじゃないか,と不安になるタイプなんです。なので,ゆっくり自由に遊んでいいとなると戸惑うことも多くて(笑)。

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4Gamer:
 初めてのゲームのお仕事はどうでしたか。

藤木さん:
 エンディングまで収録して感じたことなんですが,普段役者をしている時は,尺の関係やつながりが良くなるという理由でカットするシーンもあるんですが,無駄なものは極力撮らない。
 でも,(本作のような)これだけ自由度が高いゲームでは,ありとあらゆるものに対する,全てのパターンのナレーションを録ることになります。これは,今までにない体験でしたね。
 結末のパターンが多いというのも新鮮で。プレイする人は,ぜひそれぞれのエンディングのナレーションを聞いて欲しいです。

4Gamer:
 藤木さんが,気になったエンディングはありましたか。

藤木さん:
 詳しくは言えませんが,ちょっと切なくなったエンディングがありましたね。人生って選択の連続だと思っているんですが,「あんな人生もあったのかもなぁ……」って自分を振り返ってしまって。

綾部 和氏(以下,綾部氏):
 シナリオを書いた本人としては,一番幸せそうなエンディングかなと思っているんですが(笑)。

藤木さん:
 一つの幸せだとは思うんですよね。ただ小さい頃に,もっといろいろなことにチャレンジしていたら,今とは違った大人になれたんじゃないかな。みたいに思うこともあるんですよ。

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4Gamer:
 藤木さんが子供のころに体験した夏休みの出来事で,今でもはっきり覚えてることはありますか。

藤木さん:
 子供の頃,岡山にある父方の田舎に家族で毎年帰っていました。北のほうの山奥で,自然が豊かなところで,毎年夏休みになると長い期間そこで過ごしていた感じで。それこそ「なつもん!」と一緒でいろんな虫を捕って遊んでいましたね。
 小学校6年生の時に,母親が病気で入院することになり,僕は兄とふたりだけで岡山に帰ることになったんです。千葉から出発して,新幹線で岡山へ行って,ローカル線に乗り換えて……。でも田舎の路線は,停車駅もよくわからないんですよ。

4Gamer:
 今なら,小学生でもスマホがあればなんとかなりますけど,昔は電話での連絡すら大変でしたからねえ。

藤木さん:
 兄と駆け込んで乗ったのは,一番端の車両でした。そして,もうすぐ目当ての駅に着くというときに,車内放送で「何両目から何両目まではホームがありません」と流れて,急いで車両を移動しましたが,いざ駅についてみたら,その車両のドアが開いたところに,ホームがないんです。とっさに「飛び降りるしかない」と考えて,ふたりとも線路に飛び降りました(笑)。

4Gamer:
 ホームがなく車両もドアが開いちゃうんですね。車両の床は,地面から結構高い位置にありますよね。

藤木さん:
 当時の自分の身長よりも高いぐらいの,けっこうな高さです。そこからホームまで歩いたんですが,今考えるとかなり危ない行為だったなあと。自分の子にはとてもさせられないです(笑)。

 そんな体験をしたせいか,自分の子供には過保護になってしまって。今年,一番下の子供が小学1年生になったんですけど,ランドセルを背負って学校に初めて行く時に,玄関で「行ってらっしゃい」って送り出してからこっそり後ろをついていきました(笑)。
 「大丈夫かな,横断歩道を渡れるかな」って。本人は「絶対についてこないで!」って言ってたんですけど。

4Gamer:
 親としては心配ですよね。

藤木さん:
 自分の親は仕事が忙しかったこともあって,子供自身に任せることが多かったんです。そのおかげで,兄と2人で岡山に帰るといった大冒険を体験できたのかなと。
 ただ,双子で頼れる兄がいたから無事に帰れたんだと思ってます。本当はひとりでやったほうが,人間的な経験値になったんだろうけど。

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綾部氏:
 偶然なんですけど,作中に登場する山の上のほうに砦があって,そこのデザインなどは岡山の北のほうにある山城を元ネタにしているんです。

4Gamer:
 もしかして,桃太郎伝説に関係しているのでしょうか。

綾部氏:
 そうですね。そのあたりにある,お城の遺跡みたいな感じです。

藤木さん:
 岡山のどのあたりですか。

綾部氏:
 岡山か倉敷から電車で1時間くらいのところです。砦みたいな形で,入り口だけ再建されていて。取材に行ったのですが,交通機関が全くなくて,なんでこんなに苦労しなきゃいけないんだというくらいの場所でした(笑)。

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4Gamer:
 藤木さんが子供時代を過ごされた佐倉(千葉)も,自然豊かでカブトムシやクワガタなどがいたと思うのですが,虫捕りなどの遊びはされていましたか。

藤木さん:
 住んでいた場所は住宅街でしたが,ちょっと行くと雑木林があったので少しは。どちらかというと,子供が生まれてからのほうが,虫捕りに行くようになってます。子供のために,のはずなんですが気が付くと自分のほうが熱心にやってるんですよ(笑)。

 バナナトラップを仕掛けて,夜明け前の4時ぐらいに見に行くんですが,子供は当然寝ていて……。朝になって,ほら捕れたよって見せるんですが,「またカブト?」って言われるんです。
 カブトムシは簡単に捕れるけど,クワガタは警戒心が強いから,ちょっと近づいて音をたてると逃げてしまう。だから,ノコギリクワガタの水牛型を捕まえたりすると,かなりテンション上がります。ヒラタクワガタを捕まえた時は,子供そっちのけで喜びました。

4Gamer:
 「なつもん!」の主人公と重なる一面ですね。

藤木さん:
 子供の頃にそういう体験をさせてもらっているからこそ,大人になった今でも好きなんでしょうね。釣りにはまっているのも,それが理由だと思います。

4Gamer:
 リアルで虫捕りなどをしたことがない人も,「なつもん!」のプレイを通じて,こういった自然の中での遊びがあるんだと知ってくれるといいですね。

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綾部氏:
 自分は,過去に「ぼくなつ」を親戚の子供に勧めたことがあるのですが, プレイしたことで虫に興味を持つようになって。リアルで一緒に虫捕りに行くようになったのですが,とにかく虫の話ばかりするんですよ。少し困るくらい夢中になってしまって,「こんなことなら,ゲームをやらせるんじゃなかった!」って(笑)。

4Gamer:
 ゲームをきっかけに,リアルでの好きを追求する種が生まれるというのは素敵なことだと思います。
 ナレーションの収録を終えて,感じたことを教えてください。

藤木さん:
 収録は難しかったです。まだ開発中だったということもあり,ゲームでどう演出されるのかは想像するしかなかったので(笑)。
 あとは,先程も言いましたが,一本道のストーリーではないので,シナリオの分岐パターンをたくさん用意すればするほど厚みが出るわけじゃないですか。これは本当に大変なことなんだなと感じました。

綾部氏:
 自分が言うのも何ですが,本当に大変ですね!

全員:(笑)

藤木さん:
 いくらでも選択肢を増やすことはできるけど,物語の本筋は壊せないでしょうし。そこのバランスをどうやって取っているのだろうと,収録しながら思いました。

綾部氏:
 女の子同士が喧嘩して,いずれ仲良くなるという流れがあるとします。それに対し,ナレーションを何種類も録るんですよ。なぜかと言うと,2人が仲良くなることは決まっていても,その過程を一本道にしたくないから。話の中で仲良くなるタイミングには,たくさんのバリエーションがあるんです。

4Gamer:
 全体が見えない中での収録は,演者・制作者共にご苦労が多かったでしょうね。

綾部氏:
 ゲームの規模が大きくなり,あまりにセリフのつながりが複雑すぎて,その前後の説明を全部できない状態で収録しているんです。
 これは難しいですよね。全部の台本を渡したら,10cmくらいの厚さになってしまうと思います。本当は全部演者さんに説明したいんですけどね。

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4Gamer:
 ゲームの収録ならではの難しさですね。
 「夏休み」にかけた質問になりますが,藤木さんが1か月間,小学生みたいな夏休みをもらえるとしたらどのように過ごしたいですか。

藤木さん:
 俳優業は仕事が入っていなければ休みなので,家族の中で僕が一番暇な時もあるくらいで……。それが夏休みのようなものなんですけど(笑)。
 数年前ですが,子供の夏休みと自分の休み期間が被る時期がありました。その時は,毎日「今日何しようか?」って誘って,海に行ったり,虫を捕まえに行ったり,釣りをしたりしてました。

4Gamer:
 子供と一緒に過ごせる夏休みはいいですね,
 では最後に,このゲームを楽しみにしている人に向けて,コメントをお願いいします。

藤木さん:
 僕が子供の頃に体験してきたような,昭和の夏休みを感じられるゲームです。それを懐かしく感じる年代の人もいるでしょうし,逆に若い人たちにとってはそれがすごく新鮮でレトロなものに感じるのではないでしょうか。
 このバーチャルな体験を入口に,ぜひ実際に大自然の中での遊びも体験してほしいなと思います。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。

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「なつもん! 20世紀の夏休み」公式サイト

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