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[プレイレポ]深夜だけ営業する屋台は,客の悩みとラーメンが交差する。「深夜のラーメン」はゆったりとした時間が流れるアドベンチャーゲームだ
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印刷2024/07/13 14:00

プレイレポート

[プレイレポ]深夜だけ営業する屋台は,客の悩みとラーメンが交差する。「深夜のラーメン」はゆったりとした時間が流れるアドベンチャーゲームだ

 Cointinue Gamesは2024年7月24日,新作アドベンチャーゲーム「深夜のラーメン」をSteamでリリースする予定だ。「VA-11 Hall-A」や「コーヒートーク」といった傑作ADVに着想を得たという本作だが,事前にプレイする機会を得たのでレポートをお届けしたい。

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深夜に開店する特殊な屋台。訪れるお客さんの注文に応えていこう


 プレイヤーは深夜のみ営業する屋台の見習いとなり,訪れる客にラーメンを出しつつ,各自が抱える悩みを聞いていく。「深夜の屋台でラーメン」という下町の裏通り感がありながらも,やることはバーテンダーっぽくもある。

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誰もが疲れ切っている現代社会。そんなコンクリートジャングルの一角にオアシスが……ああ,早くも腹が減ってきた
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屋台のカウンター越しの視点。これが本作の基本画面だ
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 ラーメン作りは,まったく難しくない。常に画面左上には「どういうものを注文されているか」が表示され,レシピの確認もできる。急いで作る必要もないので,自分のペースでゆっくりと作ればいい。

これが調理場。マウス&キーボードでも操作できるが,ゲームパッドの操作もスムーズになるように設定されている。好感触だ
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レシピはいつでも確認可能。調理中に分からなくなっても,すぐに確認できる
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 そもそもなぜ,この屋台は深夜のみ営業しているのか。屋台の店主とその見習いである“ほむら”ちゃんとの関係性は? 常連客らしきお爺さんと店主はいつ頃から,この屋台で「店主と常連客」の間柄なのか。
 プレイヤー目線からはいくつもの謎が浮かび上がるが,あくまで会話のみによって,それらは少しずつ明かされていく。ゲームではあるが,小説を少しずつ読み進めていく感覚に近い。

屋台の見習い,ほむらちゃん。一見,少年のようにも見えるが,女の子のようだ。主人公的な立ち位置ではあるのだが,不在時に店主が応対する場面もあり,明確に誰が主人公と言い切れない群像劇のようでもある
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常連客のお爺さんをはじめ,ブラック企業に務めるシステムエンジニアや弁護士など,客層はなかなか幅広い
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 本作のテーマは,性別や住んでいる国にかかわらず,人がいつか必ず向き合わなければならない宿命とも言えるものだ。それゆえに,誰がプレイしたとしても心に刺さるものがあるだろう。フワフワした書き方になっているのは申しわけないが,この屋台に関する“ある秘密”が比較的序盤にアッサリと明かされることもあり,ネタバレに配慮すると書けないことは多い。

訪れる客は必ず何らかの悩みを抱えている。愚痴の聞き手になることもあるが,話を聞いていくうちに身につまされるような思いに……
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 本作は「会話を読み進める」という部分にかなりの比重が置かれているため,正直に言うとゲーム性は決して高くない。屋台を開店し,お客さんが来て,ラーメンを作り,会話する。このセットで一夜が終わる。
 一夜ごとにオートセーブが行われるので,中断するなら一夜が終わったタイミングがいいだろう。

何度か席を共にした客同士の会話が行われることも。店主の目線から,人と人のつながりの温かさを感じられる瞬間だ
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 本作は約2週間の物語を描き,3〜4時間もあればエンディングにたどり着く。こう書くと短いようだが,筆者は倍近くのプレイ時間に感じ,1冊の本を読み終わったような読後感も得られる。
 第一夜はたった数時間前の出来事のはずだが,最終日に至るとなぜか遠い昔の出来事だったかのようだ。本作に漂う雰囲気やキャラクター,物語が作品の世界に没頭させてくれたからだろう。ゲーム性で楽しませるというよりは,物語に引き込むタイプの作品だ。

訪れる客だけでなく,店主と見習いのほむらも物語の一角を担う。店主はほむらに屋台を継がせることにそこまで固執しておらず,ほむらの意思を尊重したいようだが……
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 唯一,ゲーム性のある要素と言えるのがラーメン作りだ。しかし,注文とは微妙に違うものを出してみると,「あれ? 頼んだものとちょっと違うね」とさりげなく指摘され,結局注文どおりに作り直すことになるため,プレイヤーの遊び心を受け止める懐の広さはない。
 ただ,一度クリアすると「第●夜で何かをすると……」といったヒントが表示され,分岐条件を満たすと別ルートが出現する。最初のエンディングを見て,「これ,真エンドがあるのでは……」と感じた人はヒントを元にラーメン作りを工夫してみよう。

クリア後に示唆される分岐条件。あくまでヒントしかないので,すぐに分かるとは限らない。筆者はかなりの試行錯誤を要した
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チャーシューはそのままでも出せるが,焼くとより美味しくなる。お爺さんに言われるまでもなく,焼いてからお出しするとさりげなく褒めてくれる
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 物語が大きく変化する分岐が多ければゲーム性は高くなっただろうが,残念ながらその数は多くはない。
 なお,Steam実績には「注文を20秒で完了する」「硬さの異なる3種の麺を同じ日に同じお客様に提供」といったユニークな内容もあるので,プレイヤーの遊び心は実績のコンプリートを目指すことで満たされる……かもしれない。

Steam実績。コンプリートを目指してみると,本作を味わい尽くせるだろう。ネタバレになりそうな実績と筆者の取得日時にモザイク処理をしている
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やや物足りなさを感じるが,引き込まれる物語と雰囲気は上々


 本作にあるのは,客との会話とラーメン作りのみ。前述のとおり,ラーメン作りは比較的シンプルで時間制限もなく,ゲーム性は高いとは言えない。基本的にはひたすら会話のテキストを追うことになるので,ゲームをしているというよりも小説を読んでいる感覚に近い。
 いわゆるゲーム性,ゲームらしさを求めている人は満足感を得られない可能性が高く,人を選ぶゲームと言えるだろう。

会話の内容も基本的には「悩みごと」なので,やや暗い話になりがちだ。そこを店主の器量で「お客さん,良かったら──話してみませんか?」てな感じで耳を傾ける姿勢になれるかが,本作を楽しめるかどうかのカギになる
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ラーメン作りには多少の作業感もあるが,「麺茹での待ち時間に餃子が焼けるな」「2玉同時に茹でてみるか」といった気づきが手際の良さにつながる。プレイヤーの成長がそのまま,ほむらちゃんの成長を実感できる要素になっている
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 ただ,キャラクターには好感が持てるし,屋台を訪れる客それぞれにストーリーがあるため,「今日はあの人,来なかったな。どうしてだろう?」と思いを馳せたり,いくつもの「あの人の話の続き,ちょっと気になる……」が常に頭の片隅を占領し続けたりする。「へー,ラーメン屋台のゲームか。面白そうだな」という興味本位でプレイし始めた頃の自分はいなくなり,この世界のエキスにどっぷりと浸された感じだ。
 紙に少しずつ水が染み込んでいくように,しんみりとした雰囲気が全身に染み渡る感覚は心地よいものだった。登場人物は少ないわりに,設定上ではまだ語られていない部分もあったので,続編の構想があるのかもしれない。

キャラクターは皆,好感の持てる人物ばかりだ。世の中の人間,全員がこの屋台に来る客のような人ばかりだったら,きっと平和になるだろうな……
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 開発を手がけたContinue Gamesは台湾の会社だが,ローカライズは見事と言えるクオリティだ。何も知らなければ,日本の会社が作ったゲームと思うだろう。日本語として不自然に感じる箇所は,1つもなかった。
 誤字脱字はちょくちょく見られたが,本稿を執筆しているあいだにもアップデートされていたので,随時修正も行っているのだろうか。

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いい場面なのにセリフを噛んだみたいな誤字脱字にはズッコケそうになったが,正式リリース時には修正されているかも。文字色指定のミスにより,コードが表示されていた箇所もあった
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 現在は体験版が配信されているので,気になった人はぜひ一度,試してみてほしい。
 ただし,どうにも“ラーメン食べたい欲”を刺激されるゲームなので,カロリーが気になっている人は“深夜のラーメン”にお気をつけられますよう……。

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