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[インタビュー]Webzenが美少女ゲーム「Terbis」で挑むワケ。市場へのカウンターとして“カッコよさ”で切り込む
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印刷2023/12/06 09:00

インタビュー

[インタビュー]Webzenが美少女ゲーム「Terbis」で挑むワケ。市場へのカウンターとして“カッコよさ”で切り込む

 韓国・釜山で開催されたG-STAR 2023に,「MU 奇蹟の大地」や「C9」といった作品で往年のPCオンラインゲーム時代を駆け抜けてきた,韓国メーカー「Webzen」が大規模ブースを出展していた。

 当の目玉は,新作ゲーム「Terbis(テルビス)」iOS / Android)。本作は,同社子会社のWebzen Novaが開発する“美少女RPG”だ。

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 G-STAR 2023に,Webzenが新作RPG「Terbis」のプレイアブルを出展した。同社がG-STARに出展するのは,実に7年ぶりとのこと。本作もアニメチックな(海外で言う)サブカルチャー系のようで,方針転換を感じさせる。

[2023/11/18 21:17]

 これには「なぬ?」っときた。どちらかというとハードでソリッドな雰囲気の作品群を送り出してきた会社が,この転身だ。

 それもあって興味本位のままに現地でアポを取ったところ,開発を担当するWebzen Novaのメンバーに話を聞くことができた。
 参加してくれたのはCEOのチョン・サム氏,本作PDのユン・テホ氏,アートディレクターのイ・ギボム氏の3名だ。

左からアートディレクターのイ・ギボム氏,CEOのチョン・サム氏,本作PDのユン・テホ氏
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“カッコいい美少女”を目指して


4Gamer:
 会期中にお時間をいただき,ありがとうございます。
 目玉の「Terbis」ですが,こちらは異世界ものですよね?

チョン・サム氏(以下,チョン氏):
 はい,異世界転移ものの冒険ファンタジーです。
 補足として,ゲームの名は「Terbis(テルビス)」ですが,作中舞台の異世界の名も「テルビス」で,この星を作った女神の名も「テルビス」です。タイトル名にはいろいろなミーニングを込めています。

4Gamer:
 あの子がテルビスさん(会議室の置物を指して)?

チョン氏:
 そうです。テルちゃんです(上手な日本語で)。

こちらは会場外ブースのテルちゃん
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4Gamer:
 ゲームは実際にブースで遊ばせてもらいましたが,2Dキャラクターがヌルヌルとアニメーションするのが見栄えしていました。

チョン氏:
 遊んでくださってありがとうございます!

4Gamer:
 はじめに,サービス展開の予定はどうでしょう。

チョン氏:
 現在の計画では,2024年夏のリリースを目標としています。
 対象地域は,まず韓国と日本をメインと想定して,それ以降にアジア圏や欧米圏を見ていこうと考えています。

4Gamer:
 すでに日本語資料があるところからもやる気を感じます。
 続いて,ゲーム内容を簡単にお教えください。

ユン・テホ氏(以下,ユン氏):
 本作はモバイル向けの収集型RPGです。プレイヤーはキャラクターを集め,パーティを編成し,物語やバトルを進めていきます。
 収集型とあり,キャラクターの成長そのものを大きなコンテンツと捉えていて,レベルアップやスキル強化,装備要素など,それ自体がおもしろくなるゲームデザインを目指しています。
 そうして成長させたパーティは1人用のストーリー,協力型あるいは競争型のマルチプレイなど,各種モードで使ってもらいます。

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4Gamer:
 ゲーム面でのキャラクターの特徴はなんですか。

ユン氏:
 キャラクターにはそれぞれの能力のほか,「タンカー」「ディーラー」「ヒーラー」「サポーター」の職種が振り分けられていて,パーティ編成時は人選や陣形を加味して,戦略を練ってもらいます。
 キャラクターは必殺技のアニメーション演出を含め,2Dグラフィックスで制作しています。韓国のゲーム業界ではよく「中途半端な3Dより,作りこんだ2D」と言われるため,2Dを凝ることにしました。
 一方,背景デザインは3Dです。というのも,開発初期に背景も2Dで作ってみたところ「古くさい印象」が拭えず,冒険感が損なわれていたためです。そのため,本作は2Dと3Dを両立させました。

4Gamer:
 その手法もメジャーになってきましたしね。

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ユン氏:
 戦闘シーンについては,キャラクターごとの個性的なモーションに注力しています。それでいてひと目で「RPGのバトル」であると分かるよう,画面や要素のシンプルさを意識して設計しました。
 戦闘時の特徴としては「チェーンスキル」が挙げられ,キャラごとのスキルが“使用順で効果が変わる”仕組みになっています。

4Gamer:
 それは例えば,「100ダメージのスキル」を2番手で使うと「200ダメージのスキル」になる,といった解釈で大丈夫ですか?

ユン氏:
 そうしたダメージ増減はもちろんですが,もっと言うと“スキルの効果自体が変化する”ところが醍醐味です。
 例として,チェーンすると単一攻撃から全体攻撃に変わる。2番手で使うとマヒ効果が付与されるなど,スキルの持ち味そのものが変化するわけです。これにより,パーティシナジーとプレイングでスキル効果をビルドアップさせていく,といった戦略を楽しんでもらいます。

4Gamer:
 となると,スキルごとの調整が大変そうですね。

チョン氏:
 そうですね。すごくエネルギーがいります(笑)。

4Gamer:
 ちなみに,必殺演出の「スキップ」はありますか。
 こうしたゲームだと,よく言われる課題でしょうから。

チョン氏:
 検討中です。まずは今回の出展や今後のプレイテストの結果を参考に,ユーザーの皆さんの意見・要望を聞いていきます。
 スキップや倍速機能の価値はこちらも把握していますので,本作のアイデンティティを崩さないよう,プレイヤーさんに不満を与えないよう,さまざまな側面を加味して思案するつもりです。

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4Gamer:
 物語はキュートでコミカルな印象でしたが,どんな内容でしょう。

チョン氏:
 会場のプレイアブルはG-STAR専用ビルドのため,オリジナルストーリーとなっていました。正式な本編に関しては,主人公が異世界にポンッと召喚されるところから始まり,いろいろな仲間と出会い,さまざまな冒険を繰り広げて,主人公が成長していく物語を描きます。

4Gamer:
 主人公像は,プレイヤーが自己投影するタイプでしょうか。

チョン氏:
 いえ。

4Gamer:
 ということは,ちゃんとした人格があるタイプの?

チョン氏:
 そうですね。一般的なJRPGに登場する,人格のある主人公のように,キャラクター自身が物語性や背景を背負っています。
 それこそ,JRPGのような感覚と思っていただけると。

4Gamer:
 ターゲット層の想定は。

チョン氏:
 メインの想定は,20代〜30代の男性層です。
 そのうえで,登場人物たちは「カワイイよりもカッコいい」を目指そうと最初に考えました。もちろん,女性や男性もです。

4Gamer:
 ならばアートディレクターも同席されていますし,そのコンセプトについて詳しく教えてください。

イ・ギボム氏(以下,イ氏):
 まずは作品の狙いとして,「キャラをカッコいいと思ってもらえるように作ろう」と考えたのが第一です。2Dアニメーションを用いたバトルで,動きのスタイリッシュさを強調させたかったので。
 キャラクターユニットの動作は,ただ揺らすだけの(Live 2D的な)感覚的な表現ではなく,リミテッドアニメーション(※)を採用しました。その研究のために制作期間が伸びてしまいましたが,ただの揺らしじゃない,ちゃんとした躍動感を見せるために時間をかけています。

※アニメーションの表現手法。“日本的な”と言ってもいい

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4Gamer:
 韓国市場的に「カワイイよりカッコいい」がトレンドだとかは?

イ氏:
 市場での優位性というより,「他社作品はカワイイ路線が一般的」で,私たちは今からこの市場に初挑戦する身なので,ほかとの差別化の意で「カッコいいに振ろう」と考えたのが大きな理由です。
 当然,作中にはカワイイ美少女もいますが,そうした子も“バトルアニメーションだとカッコよくと見える”ように仕上げています。

4Gamer:
 かっこよさを表現するにあたり,アニメーション以外のデザインやシルエットにも気を配っていたりはしますか。

イ氏:
 設定面も大切ですが,重要視したのは第一印象でした。
 これは言葉では表しきれない感覚ですが,デザイナー陣は「ひと目でカッコいいと思わせる姿の追求」を念頭に置いています。
 具体的には体型が挙げられますが,各キャラクターは足の長さや細さ,胸のサイズ,腰や背のラインなどにちょっとずつ差をつけていて,それがアニメーション時の独特なシルエットを生んでいます。

4Gamer:
 見た感じ,異世界ハーレム系な雰囲気もありますが,主人公以外に男性キャラクターはいるのでしょうか。

イ氏:
 います。美男子もたくさんいます。少年や青年,おじいさんやマッチョなどバリエーションも豊富です。
 今回の出展は,開発状況的に女性キャラクターがたまたまうまく作れていた状況だっただけで,リリース時は男性キャラクターもたくさん用意します。ぜひ楽しみにしていてください。


しかし,なんでまた美少女路線?


4Gamer:
 さて,WebzenがG-STARに出展するのは7年ぶりとのことで。
 ちょうど7年前の当時,ブースを取材させてもらった覚えがあるのですが,あのときは巨大ロボットを展示していましたよね?

チョン氏:
 「Azera: Iron Heart」ですね。個人的に思い出深い(笑)。

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 韓国・釜山で開催中のゲームショウG-Star 2016にて,Webzenブースに出展されたスマホ向けMMORPG「Azera: Iron Heart」のプレイアブルをチェックしてきた。ファンタジー風のデザインが特徴的な巨大ロボット同士のぶつかり合い。そんなものを見せられて,男心がくすぐられないわけがない。

[2016/11/20 12:16]

4Gamer:
 過去の系譜で見ると,Webzenはいわば“異なる路線の男性向け”という印象でした。それが今回は美少女ゲーム系に乗り込むようで。
 そこになんらかの会社的な方針転換があったと見ても?

チョン氏:
 そうですね。弊社は「MU」シリーズなどの硬派なMMORPGで知られていますが,やはり「ファン層が固定化され,偏っている」という一面があります。そのため,今までとは異なるターゲット層として,新しい方々や若い方々にも愛されたかった。その挑戦が今なわけです。

ユン氏:
 弊社は近年,新たなゲームスタジオをいくつも用意して,それぞれで新しい挑戦をしてきました。我々Webzen Novaもその一角として,今までとは違うアプローチをしようとしている最中なんです。

4Gamer:
 その点,今回は「Terbis」のほか,韓国パブリッシング版の「ラグナドール 妖しき皇帝と終焉の夜叉姫」と「陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン」で,美少女色が強い出展内容でした。
 これは,今後はそちら方面に偏らせるという意志なのか。あるいは,既存のWebzen路線との両立を目指すのでしょうか。

チョン氏:
 結論から言うと,両立を目指します。
 例えば,主軸のMMORPGを開発するWebzen Redcoreは,ファンにこれまで愛されてきたIPタイトルを引き続き展開していきます。そのうえで私たちが,新たなチャレンジの姿勢も見せるのです。まあ個人的には,“諸葛孔明の出師の表”のような心境ではありますが(笑)。

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4Gamer:
 チーム作りにはどれくらい時間がかかったのでしょう。
 これまで硬派なMMORPGを手がけてきた人たちが,いきなり「美少女路線を作って」と言われていたりしたら,大変だったのではと。

チョン氏:
 経験的な面については,そのとおりですね……(笑)。
 それにチームの発足自体は問題なかったものの,スタッフを集める際,1人ひとりに話を聞き,「こうしたコンテンツが本当に好きなどうか」を精査していきました。それからキャラクターデザインを起こすのにも時間がかかり,立ち上がりまでに1年ほどかかっています。
 難しさがなかったと言えばウソですが,皆さんに本当にお見せしたいもののために試行錯誤し,乗り越えて,今も努力しています。仕事はハードでキツいですが,それでもやり続けられるのは,私たちスタッフに“オタクゲームが本気で好き”という思いがあるからですね。

4Gamer:
 なるほど。みんなオタクなんですね。

チョン氏:
 はい。しっかりとオタクばかりです。

4Gamer:
 では,アジア地域のサブカルチャー市場はどう見ていますか。

チョン氏:
 以前は美少女アニメなどをサブカルチャーと呼称していましたが,今はもうそれが適切ではないくらい,メインストリームになったと考えています。現在は世の中の流れ的にも,自分の好きなもの愛するもの,それらを自然と表現し,発信できるようになりましたしね。

4Gamer:
 韓国でもサブカルチャーって言葉がそういう扱いに(※)

※日本ではサブカルチャーが指す対象が普遍化し,言葉ごと死語と化した(「アニメはサブカルじゃない。もうメインストリームだ」などの意)。一方,海外では今でも美少女アニメなどをサブカルチャーと分類・呼称しているが,彼らはそこを通りすぎていたという注釈

チョン氏:
 ですから私たちも,自分が好きなものを自由に表現して,それを受け入れてくださるユーザーさんたちに届けたいと思いました。
 この市場自体,もっと大きくなるものと見込んでいますしね。

4Gamer:
 そうして肥大化が約束された戦場に,厳しさを感じることは?

チョン氏:
 おっしゃるとおり,簡単ではないと思っています。今は数多くの作品があって,人気タイトルもたくさん存在していますので。
 私たちもそのなかの一つになりたいと願うなら,自らの魅力を発揮できるよう,努力するほかありません。それに厳しいからこそ,大変だからこそ,本気でやる価値があります。ファンの方々に受け入れられるのも,そういった姿勢を見せられる開発者たちでしょうから。

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4Gamer:
 努力の覚悟ありと。ちなみにWebzen Novaは,Webzenのグループスタジオのなかではどんなポジションにいるのでしょう。
 今回のG-STAR出展も目玉を張りましたし。

チョン氏:
 良いスタジオがたくさんあるので,言いづらいですね(笑)。

4Gamer:
 なら,本社的なコメントでは(同席の本社スタッフに向けて)。

Webzen本社スタッフ:
 弊社には七つの公式スタジオがあります。今も会社を支えている旗艦スタジオをのぞけば,今後のビジョンを持ち,成長性にも期待ができるという点で,彼らWebzen Novaがとくに次世代の有望株です。

4Gamer:
 あらためてですが。Webzen本社としても,ゲーム制作における方向性の多角化を会社として続けていこうと考えているのですか。

Webzen本社スタッフ:
 ええ。Webzen RedcoreのMMORPG開発は継続しつつ,直近ではインディーゲーム「REMORE:INFESTED KINGDOM」を発売しますし,カジュアル方面などにも新たな一歩を踏み出そうとしていますので。

チョン氏:
 私たちがそれぞれ独立したスタジオに分離しているのも,ジャンルごとの色や専門性を特化させ,独自の強みを持つためですしね。

4Gamer:
 それでは最後に,これほど本社から期待されるWebzen Novaですから,グループスタジオのなかで頭角を現すぞという意気込みを一言。

チョン氏:
 えーっと……俺たちが一番ですよっ! 当然ですよっ(笑)!

4Gamer:
 日本語での十分な意気込みをありがとうございます(笑)。
 皆さんの新たな挑戦,引き続き応援しております。

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