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最高の冒険,再び。超重量級ボドゲ「フロストヘイヴン」が楽しすぎる。しかもまだ買える!
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印刷2025/12/28 11:00

レビュー

最高の冒険,再び。超重量級ボドゲ「フロストヘイヴン」が楽しすぎる。しかもまだ買える!

 2025年,お疲れ様でした。
 今年もさまざまなゲームが発売され,印象に残っているタイトルが人それぞれあるだろう。

「今年出たゲームで,どれが一番面白かった?」

 この質問をされたら,筆者は悩む必要もなく即答できる。もうまったく伝わらないと思うが「フロストヘイヴン」である。

 ジャンルとしては,協力型のシミュレーションRPGといったところか。2020年に発売されて,最高の冒険を届けてくれた超重量級ボードゲーム「グルームヘイヴン」に続く新作だ。
 待望の日本語版がCMON Japanから2025年4月に発売……いや,先行予約していると2024年末に届いていたりするのだが,とにかく今年はフロストヘイヴンが存分に遊べるようになった年。期待以上の面白さで,最高の冒険が帰ってきた! と声を大にして言いたい。

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 2020年最高の冒険はボードゲームにあった。筆者はそう思い込んでいる。超重量級のファンタジーボードゲーム「グルームヘイヴン」が,あまりに面白かったからだ。お値段3万円,重量9キロというこの狂ったゲームの魅力を語りつつ,拡張や新作も紹介していこう。

[2020/12/29 00:40]

 正確に言えば,あまりの超ボリュームすぎて筆者たちの冒険はまだ終わっておらず,道半ば。ここ1年,毎月1回は欠かさず集まって,1日使ってプレイしているのに,まったく終わりが見えない。
 それでも,この面白さはお伝えせねばなるまい。本稿を書いている間も,はやく遊びたくてしょうがないからね,ホント!

物語は独立しているため,グルームヘイヴンをやっていなくても大丈夫。前作を持っていると,購入できるアイテムがちょっとだけ増えるなどの特典はあるが,本作から始めてまったく問題はない
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ボリュームアップしすぎ


 まずはコンポーネントから紹介していこう。
 箱のサイズの時点で,約41(W)×30(D)×24.5(H)cmもあって相当おかしい。総重量は約13kg。前作が約9kgだったので,大幅なボリュームアップだ。なんでそんなに増えてんの……?

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 中身は17クラスぶんのキャラクター用のデッキやフィギュア,分厚い冊子が3冊,モンスターたちのコマが数100個,そしてアイテムやイベントなども含むさまざまな種類のカード類が2500枚以上と,数値を並べるだけで意味が分からない。
 ほかにも,なんだか分からない謎の封筒類や,ワールドマップやダンジョンを形作るたくさんのボード,ステッカーなど,とにかく山盛りで入っている。

遊ぶ前に,コンポーネントの整理を指示されるぐらい,いっぱい入っている。これだけで1,2時間かかる
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冊子は3冊。ルール説明書(83ページ),シナリオ冊子(167ページ),そしてシナリオ中やイベントなどで「この番号を読め」と指示があったときに,該当部分を読んで進行するための副読本(197ページ)だ
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 本作に収録されているシナリオは138本。これはすべて通過するわけではなく,シナリオチャートが用意されていて,ルートによって行けなくなるシナリオや,チャートが分離されている単独のサブシナリオなども豊富に存在する。
 クエストをクリアすると「次はAとBのどっちのクエストに進む?」と選択を迫られることもあるし,クエスト内での行動によって次のシナリオが決まることもある。船を所持しているなど,特定の条件を満たしていないといけないクエストなんていうのもある。
 パーティによって,まったく異なる順番や内容で冒険していくことになるのだ。

本作で新たに追加されたシナリオチャート。これを見るだけで「いくらなんでも多すぎない?」ということが分かる
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 ちなみにこのシナリオチャート,新たにシナリオが開放されると,このボード上から該当のクエスト部分を物理的に剥がす仕組みだ。すると,どんなクエストなのかざっくりとした情報(このクエストには船が必要ですよ,とか)をボード上で確認でき,さらに剥がした部分は,ワールドマップに貼り付けるためのシールにもなっている。
 このシールによって,「このクエストは開放済み」ということが分かるし,ワールドマップ上に冒険の足跡が残っていくのだ。

筆者たちが冒険中のワールドマップ。直接シールを貼っていく
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 これは前作からそうなのだが,本作の進行度はこうしたシールの貼り付けや,コンポーネントの破壊などによって管理される。つまり,物理的に一度しか遊べない長大な冒険なのである。いわゆる“レガシー系”のボードゲームというやつだ。
 先述したなんだか分からない謎の封筒類も,条件を満たして「開けていいよ」という指示が出るまでは,中身がまったく分からない。キャラクターにしても,それぞれシールで封をされた箱に入っているので,アンロックするまでは本当に謎のままだ。どんな戦い方をするのか,どんな見た目なのかすら分からない。
 だからこそ,これらを「開けていいよ」と言われたときのワクワク感は尋常ではない。

本当になんだか分からない封筒。中身が分からないからこそ,開けるときが楽しい
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キャラクター関連の箱には,アイコンが書かれているのみ。なにこれ,ドリル?
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 こういったコンポーネントを活用した,自分たちだけの冒険の特別感というのは,本作の大きな魅力だ。
 アナログゲームならでは1度しか使えない物理的な仕掛け。皆で長い時間を共有する,1度しかできない冒険。これを,仲の良い友人たちと顔を突き合わせて体験するのだから,面白くならないわけがない。

面白いのが,ルール説明書にもシールを貼る場所が用意されていること。つまり,ルールそのものの追加,書き換えまで発生するのだ
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新たな舞台は極寒の地,ズタボロの街に冬が来る


 物語の舞台となるのは「氷霜港」こと,タイトルにもなっている「フロストヘイヴン」だ。これは前作の「グルームヘイヴン」と同様,街の名前である。グルームヘイヴンよりかなり北方にある場所のようで,名前から想像ができるとおり,寒さの厳しい街だ。

 いや,寒さ以外も厳しい。なにせ,プレイヤーが到着した時点でズタボロである。
 ただでさえ寒いのに,僻地すぎて物資は届かない。なんなら,普通のRPGなら街でできるはずの買い物すらできない。店がないのだ。
 施設も防壁もなにもない。兵士もロクにいない。そのくせ,敵対勢力はわんさかいて,好戦的だ。

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 プレイヤーたちは,そんなどうしようもなさすぎるフロストヘイヴンを救うべく,さまざまな冒険を繰り広げることになる。
 もっとも,それはメインシナリオを進めていく場合のお話で,横道にそれまくっても構わない。やりたい放題やりすぎると,「いつまで経っても店がない」「金はあるのに使う場所がない」「何の準備もしてないのに冬が来た」など,いろいろと大変なことになるが,それはそれでトラブルを楽しもう。
 本作にはシナリオチャートがあるので,「横道それすぎだろ」という冒険の記録も一目瞭然だ。

 冬の話をしたので,本作からの新要素である時間経過についても説明しておこう。
 本作では,シナリオに挑戦するごとに時間が経過する。暦を示す表に,1つずつチェックマークを入れていくのだ。表のなかには,イベント番号が書かれている場合もあり,そこに到達すると,副読本から該当のイベントを読み上げて処理する。
 シナリオクリアなどによって,表にイベント番号を書き込むこともあり,「あと2回シナリオに挑戦したら何かが起きる」といった状態になるため,常にワクワクする。

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 また,一定回数のチェックマークを入れると,季節が切り替わる。フロストヘイヴンには夏と冬があり,プレイヤーたちが到着した時点では夏だ。
 シナリオの開始前と挑戦後には,ランダムイベントが発生するのだが,これに用いるカードは夏と冬で分かれている。寒さの厳しい地域が冬になったら,どんなイベントが起きるのかを想像すれば,準備をしておきたくなるというものだろう。


戦闘システムは前作と同じ,基本的にツラい


 本作の戦闘システムは前作から変わっておらず,ターン制のシミュレーションRPGだ。シナリオが始まると,各プレイヤーは自分のキャラクターのコマを配置し,毎ターン行動を決めて動かしていく。

最初に選べるクラスは6種類。この悪役にしか見えない連中だ。クラス名は「バナー・スピア」「ドリフター」「ボーンシェイパー」「デスウォーカー」「ブリンクブレード」「ジェネイト」……って,何ができるのかさっぱりイメージが湧かない
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 各ターンの行動は,手札から2枚のカードを出して決める。カードは上下のボックスに分かれていて,1枚のカードで選べるのはどちらかだけ。1枚の上ボックスと,1枚の下ボックスを組み合わせた内容が,そのターンで行える行動となる。
 イメージとしては,上ボックスは上半身(攻撃系が多い),下ボックスは下半身(移動系が多い)という感じ。使ったカードは捨て札になるが,なかには1度使うとそのシナリオ中はゲームから除外されてしまう,必殺技的な強力なカードもある。

上下のボックスをどう組み合わせるかが重要。カードの真ん中に書いてあるのは,そのターンの行動順を決める数値だ。誰から動くか,敵の行動順を予想して,どのぐらいの早さを選ぶかは,生死に直結する
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 各プレイヤーは,プレイする2枚のカードを決めたら,裏向きで出す。このとき,どのカードを使うか,行動順はいくつかなど,具体的な名称や数値を話すのは,ルール上で明確に禁止されている。
 「速攻で前にいって近くの敵をぶっ飛ばす」「敵より後に回復したいから,めちゃめちゃ遅くする」といったアバウトな相談で,そのターンの方針を決めるのだ。全員が出すカードを決めたら,「せーの」で公開して,実際に盤面で行動していく。
 このルールの面白いところは,仲間同士の相談が「最適解を求める」ばかりにならないということだ。連係がうまくいくとは限らないので,「仲間に指示を出して最適な行動以外を認めない」といった楽しくないプレイは不可能になるし,うまく行動が噛み合ったときは気持ちがいい。仮にミスが発生しても,友達同士で遊んでいるのだから,笑えるのがいいところだ。

本作のメインイラストにも出ていて,いかにも主人公っぽい雰囲気のバナー・スピア。複雑さも「低」で,書いてあることがシンプルに強く,ぜひパーティにいてほしい存在だ。……筆者たちは誰も選ばずに苦労したけど
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 手札をすべて使うと,休憩を取って捨て札を回収できる。ただし,このとき捨て札から1枚は必ずゲームから除外されてしまうため,だんだん使える手札が減っていく。ダンジョンの奥深くに進んで疲労するにつれ,取れる選択肢が少なくなっていくというわけだ。
 ゲームから除外されたカードが増え,出せる手札(2枚の組み合わせ)が作れなくなった場合は,HPがなくなったときと同様,そのキャラクターは倒された扱いとなって,シナリオ中は離脱してしまう。

 つまり本作のシナリオには,手札枚数という名の時間制限(ターン制限)がある。移動するだけでも手札を消費するので,無駄な行動は容易にピンチを招くだろう。いつ,どこで,どのようにカードを出すか。そしてプレイヤー同士でどう協力するかが非常に重要だ。

手札の枚数はキャラクターによって異なる。手札が多いほど盤面に残りやすいということになり,それもクラスの個性だ
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 といっても,本当に皆がきっちり協力してくれるとは限らない。シナリオごとにランダムで配られる戦闘任務があるからだ。「敵を倒して,同じターンにすぐにそいつのドロップ品を拾う」「あえて不利な攻撃で敵を倒す」「開始から3ターン攻撃を行わない」など,シナリオ中の縛りプレイになる要素が書いてあって,これを達成していくことでキャラクターを強化できる。
 そんなの,達成したいに決まっているので,仲間が予想外なことをしでかすのだ。

アタッカーが初動3ターンをサボりだしたら,まずパーティは壊滅するので,素直に任務を諦めるべきときもある
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 本作の敵は基本的に強い。パーティの人数に対して,目を疑うぐらいわんさか出現するし,シナリオによってはやっかいな地形に配置されていたり,特殊な条件で強化されていたりもする。
 敵の行動パターンも,それぞれのモンスターごとにデッキがあって,毎ターンランダムで変わるというこだわりようだ。皆で協力して,猛攻を凌いでダンジョンを踏破していくのが本当にアツい。

一番最初のクエストの,一番最初の部屋。いきなり4体の狼が襲ってくる。数の暴力でひどい目にあうのは,本作の基本だ
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敵の行動パターンはランダムなので,何をしてくるのか読めない
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 なお,本作を普通に遊ぶと難度は高めだが,難度調整自体は簡単にできるようになっている。具体的には,推奨されるシナリオのレベルが,「パーティメンバーの平均レベルの半分」と規定されているので,それで辛ければシナリオレベルを下げればいいし,歯応えがほしければ上げればいい。
 シナリオレベルが1変わるだけで,敵のHPや攻撃力がだいぶ変化する。戦闘システム的に,敵のHPが上がると手札(=制限時間)の消費量に直結するので,それだけでかなりキツい。

シナリオレベルに合わせて,敵もレベルアップ。目を疑うようなHPや攻撃力になる
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 筆者たちは,しばらく「パーティメンバーの平均レベル」が適正だとルールを勘違いしていて,「このゲーム超絶マゾいな!?」と思っていたが,我々が愚かなだけであった。それでも,ギリッギリでクリアは可能であり,経験値やお金は大量にもらえたので,手練れの冒険者には相応の環境を用意してくれる,秀逸な難度設定だと思う。今でも,どうしてもクリアできないクエスト以外は,この設定で続けている。


シナリオクリア後にやることが盛りだくさん


 無事シナリオをクリアすると,フロストヘイヴンに帰還することになるが,本作は帰還後の処理が前作よりもかなり多い。

 まず,前作と変わらない部分でいくと,キャラクターの引退や作成の処理は本作でも行う。
 本作では,キャラクター作成時に必ず個人クエストのカードが配られ,そのキャラクターが冒険する動機が決定される。カードには,特定のシナリオのクリア,規定回数の条件達成など,さまざまな内容が記載されていて,これを満たすとそのキャラクターは引退。新たなキャラクターを作成して再スタートとなる。

 引退させると,動機ごとに設定されたご褒美がもらえる。先述の「なんだか分からない謎の封筒」が開けられるのだ。ネタバレにならないよう詳細は伏せるが,前作のように,引退時に新クラスが開放されるわけではない。本作では予想外な封筒の中身に興奮できることだろう。

 本作からの新要素で重要なのが,街の発展だ。プレイヤーたちご一行が到着した時点でのフロストヘイヴンはズタボロで,とても冬を越せる状態にはない。そこでプレイヤー達は,シナリオ中に獲得した素材を使って,防壁や施設を建築したり,アップグレードしたりして,豊かな街を作り上げていくのだ。
 施設の種類は兵舎,飯場,狩猟小屋などさまざまで,帰還するたびにゴールドを払って素材が得られるなど,役立つ効果を発揮してくれる。

さまざまな施設のほか,特定のシナリオの出撃条件となるソリや船なども作れる。シールで街の見た目も発展していく
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 各素材の入手方法は,主にシナリオ中の敵からのドロップだ。本作の敵は,お金や木材,金属,革,薬草といったさまざまな物品を,ランダムで落とす。これをパーティでかき集めれば,街の発展に当てられるほか,装備品やポーションなども作成できる。
 前作では,ドロップがお金のみだったので,拾いやすいキャラクターが暴れるとパーティメンバーから怒られたものだ。本作ではできるだけ回収してもらいたいので,「誰かがやるべき仕事」に地位が向上しているのが面白い。

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薬草を2つ組み合わせると,ポーションが作れる。一度作ってみないと,何ができるかは分からないので,表を開けていくのが楽しい。画像は,ネタバレ防止にボカしてある
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 しかし,忘れてはならないのは,ここはただ生きるだけでも難しい極寒の地,フロストヘイヴンということだ。帰還後のランダムイベントでは,せっかく発展させた街に,敵対勢力が襲撃してくるのである。
 襲撃が起きると,施設を攻撃してぶっ壊してくるので,防壁などをきっちり用意して街の防衛力を高めていかなければならない。

 襲撃,施設の運用,建設など,シナリオが終わった後にやるべきことが多く,そうした後処理を含めると,1シナリオにかかる時間は前作よりも長い。4人プレイの場合,1シナリオで3〜4時間といったところだろうか。


最大の問題はボリュームと友達


 歯応えのある戦闘に,皆で協力して挑み,クリアできたときの達成感。それを支える,一度限りしか使えないコンポーネントによるリッチな体験。
 最高に楽しい本作だが,致命的な欠点もある。

 まずはその超ボリュームだ。たくさん遊べるのはもちろん嬉しいし,コンポーネントが豪華なのもプラスなのだが,ここまでボリュームアップしてしまうと,継続的にプレイするのが大変難しい。なにせ,このコンポーネントを毎回出して,セッティングして,遊び終わったら片づけて……とやっているだけで,相当な手間がかかる。これを広げられるだけの場所,じっくり遊ぶだけの時間の確保は,大きな問題として立ちはだかる。

 筆者のプレイ環境は,自宅にバカデカいボードゲーム専用テーブルがある。サイズは6人用のダイニングテーブルぐらいで,テーブルの天板を外すと下側にプレイエリアが用意されているのだが,これをフルで活用しなければならないぐらい,スペースはカツカツだ。

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 続きを遊ぼうと思ったら,天板を外すだけで盤面はそのままなので,準備いらずという,最高に恵まれた環境でプレイしていても,午前中に集まって1日2,3クエスト進めるのが限界。長いクエストや高難度のクエストにぶちあたれば,さらに減る。筆者たちは月1ペースで遊んでいるため,単純計算で,完走するのに2,3年かかりそうだ。

 これを,筆者のようなボードゲーム狂いではなく,一般的な環境で遊ぼうと思ったら,もっとかかるだろう。それだけの長期間,一緒にこのゲームをひたすら遊んでくれる友達を集められるか。これが本作を遊ぶうえで,最大の壁になるはずだ。
 こうした問題は,グルームヘイヴンよりも確実に悪化しているので,楽しいけど続けるのが大変なゲームなのは間違いない。

 しかし,これらを乗り越えられる,根っからの冒険者諸君! おめでとう,君たちはキャラクターの成長に大喜びし,クソマゾい戦闘に叩きのめされ,クエストクリアの喜びを仲間たちと共有し,毎回大盛り上がりで笑顔の絶えない最高の冒険を楽しめる。もちろん,勝利の後の宴(飲み会)もセットだ。
 ぜひとも,どうにか場所や時間や人数の都合をつけて,フロストヘイヴンを始めてほしい。

 幸い,日本語版がすぐに完売となってしまったグルームヘイヴンと違って,本作は今も購入できる。4万9500円の価格は躊躇するかもしれないが,これ1個でどれだけの期間遊ぶのかを考えれば,ポチっといってしまう価値はある。

  • 関連タイトル:

    フロストヘイヴン

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