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[インタビュー]デイリークエストも競争もいらない――「TOMAK」を作ったキム・ケン氏が,4月15日リリースの最新作「モンギル:STAR DIVE」で目指す,“いつでも戻れる”ゲーム設計
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印刷2026/03/17 07:45

インタビュー

[インタビュー]デイリークエストも競争もいらない――「TOMAK」を作ったキム・ケン氏が,4月15日リリースの最新作「モンギル:STAR DIVE」で目指す,“いつでも戻れる”ゲーム設計

 「最高のゲームとは何か?」

 この問いに対して,Netmarble MonsterのCEOキム・ケン氏はこう答えてくれた。「よく売れるゲームは多いけれど,私が思う最高のゲームは,プレイした人に「僕もゲーム開発者になりたい」と思わせるような,この世界に引きずり込むほどのインスピレーションを与えられるゲームです」と。

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 2000年,まだ23歳だったキム・ケン氏は,初めて訪れた東京ゲームショウで見た光景に心を奪われた。

 ゲームの開発者たちがポップスターのように輝いていたあの熱狂の中で,「観光客としてではなく,出展者としてここに戻ってきたい」と決意し,帰国後すぐにゲーム会社Seed9を設立。「TOMAK〜Save the Earth〜」で鮮烈なデビューを飾った。
 そしてそこから25年,4人のインディーチームから始まった会社は,いまや350人規模のNetmarble Monsterへと成長し,「レイヴン(RAVEN)」iOS / Android),「マーベル・フューチャーファイト」iOS / Android)など数々のヒット作を世に送り出してきた。

 しかし,氏の原点は意外にもシンプルなものだ。
 中学生の頃からゲーム開発を始め,「ウルティマ」シリーズに心を奪われ,一人で黙々とゲームの世界に没入する少年だった。「私は本当は,家で一人でやるゲームが好きなんです。人と会うのがかなり苦手でして」と照れ笑いする氏の言葉には,25年間ゲーム業界の第一線を走り続けてきた開発者が,ぽろりと漏らす本音がにじむ。

※記事内「モンギル」のスクリーンショットはすべて開発中のバージョンで,リリース時には変更される可能性があります
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 そんなキム・ケン氏がいま最も力を割いているのが,新作「モンギル:STAR DIVE」PC / iOS / Android)だ。競争に追われ,デイリークエストに縛られ,休めば置いていかれる―――そんないまどきのオンラインゲームのあり方に,氏は静かに疑問を投げかける。
 「週末に徹夜したい人はそうすればいいし,忙しくなったら休んで,時間ができたら戻れる。そういうゲームを作りたい」。キャラクターは単なる数字の羅列ではなく,一人ひとりが感情を持って生きている存在として描く。

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 勝つために必須のキャラクターも,プレイヤーを縛り付ける仕組みもない。それでいて,どのゲームよりも没入感のある楽しさを提供する……その実験的な挑戦が,「モンギル」に込められているのだ。

 それこそが,Apple IIでウルティマに夢中になった少年が,四半世紀を経て辿り着いた一つの答えだということだろう。
 本インタビューでは,「TOMAK」の秘話から「モンギル」の設計思想まで,キム・ケン氏の哲学を余すところなく語っていただいた。

Netmarble Monster,CEO キム・ケン(Ken Kim)氏
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4Gamer:
 お時間取っていただいてありがとうございます。
 いきなりなんですが,あなたがSeed9を設立したのは2000年8月ですよね。

キム氏:
 はい,そうです。

4Gamer:
 僕が4Gamerを設立したのも,2000年8月なんです。

キム氏:
 おお! 同じ時期なんですね。

4Gamer:
 なので勝手に親近感を持ってます(笑)。
 しかし2000年に会社を設立したにしては,割と若く見える気が……今おいくつですか?

キム氏:
 (日本語で)その時はすごく若くて,何も知らずに会社を始めました(笑)。1977年生まれなので,今年で……

4Gamer:
 48?

キム氏:
 48ですね。

4Gamer:
 わ,ホントに若いときに会社を興したんですね。そんな若いときに会社を設立するのって,どんなビジョンを持ってたんですか?

キム・ケン社長が中心となって制作した最初の作品がPCゲーム「Parallel World: ベリアルの物語」(原題:패러렐 월드 : 벨리알 이야기),1998年からゲーム開発を開始し,2000年6月に発売した。(HardCoreGamingから拝借
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キム氏:
 実はSeed9というのは,その前にも開発チームとして活動していたんです。それで2000年8月に法人化して会社にしたというわけです。
 開発チームをやっていた当時,韓国では……いや,これ話していいのかな。まぁいいか。とにかく,開発チームで活動しながら,ゲームを作り続けるべきか悩んでいました。

※キム・ケン氏は中学生の頃からゲームを作り始め,ハイテル(Hitel)で名を馳せた。「Seed9」という名前を使い始めたのは,1998年のCORE社傘下のゲーム開発チーム時代からだ。

 その時は本当にインディーみたいなチームでしたし,大学も休学中だったので,学校に戻るべきか迷っていたんです。そんな時,2000年の初めに春の東京ゲームショウに行って,初めて海外旅行をしました。

4Gamer:
 おお,まだ年に2回開催されてた頃ですね。初めての海外旅行ということは,TGSもその時初めて?

キム氏:
 もちろん初めて。飛行機も初めて。
 当時,その会社で兵役特例の開発チームにいたんですが,最後の出張兼休暇ということで日本に行かせてもらったんです。ちょうどPlayStation 2が発売された頃で,それを買うついでに東京ゲームショウにも行きました。

※兵役特例(병역특례)は,韓国の制度で,正式には「産業技能要員」または「専門研究要員」と呼ばれている。特定の技術分野や産業で働くことで,軍隊に入隊する代わりに,指定された企業で一定期間(当時は3年,現在は異なる)勤務することで兵役義務を果たせる制度だ

4Gamer:
 兵役特例って2年勤務するやつでしたっけ。

2001年のTGSにはバッチリ出展。男性は,若かりしころのキム氏。女性は当時の広報さんなのでモザイクで。左の顔はもちろんTOMAKだが,後ろのピンクのはこれバーバパパですよね(子供のころ観てて大好きだった)。なんで一緒に? と思ったら,2001年にサン電子がプレステ用にバーバパパのソフトを出していた。TOMAKとバーバパパとはまた,ずいぶんと攻めたラインナップだ
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キム氏:
 その時は3年でしたね。

 それで……実際に自分の目で見た東京ゲームショウは,想像以上にカッコ良かったんです。開発者たちがポップスターのように輝いていて。あの時代は特にそうだったと思うんですが。
 それで「ここにまた来たい。観光客としてじゃなくて,出展者としてブースを出して来たい」と思って。
 帰国してすぐに会社を作ろうと決めて,勢いでそのまま始めることになりました。

4Gamer:
 なんていうか,すごく若者ぽくていいですね。
 そんな熱い想いで作った1作目が,これまたセンセーショナルでした。

キム氏:
 あー,そうそう。そうでした(笑)。

4Gamer:
 あれはどんな思想で作ったものですか。トマック。

キム氏:
 当時のチームはすごく小さくて,私以外のほとんどがゲーム開発を初めてやる人たちで構成されていたんです。だから必然的に,作れるジャンル自体も限られていました。
 本当は素敵なRPGやカッコいいアクションゲームを作りたかったんですが,当時の状況を考えて,育成シミュレーションと恋愛シミュレーションを組み合わせたゲームを考えました。最初は頭の中にストーリーや物語の構想があったんですが,問題は時間でした。

4Gamer:
 時間?

キム氏:
 8月に会社を作ったんですが,11月か12月に韓国でKAMEX(Korea Amuse World Game Expo)というゲームショーがあったんです。

※G-STARの前身。毎年冬にソウルで開催されていた,韓国のゲームショウ

4Gamer:
 確か12月でしたね。

キム氏:
 ええ。つまり,開発期間は3,4か月しかないわけです。でも「この3か月でゲームを作って,KAMEXにデビューしよう」と決めました。
 最初は「プリンセスメーカー」みたいなものを考えたんですが,そんな短い期間に「プリンセスメーカー」よりいいものを作る自信がなかったんです。特別に見えるものは作れそうにない。

4Gamer:
 勢いはあったけど冷静だったんですね。

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キム氏:
 そう。そこで僕らは考えました。顔だけに特化すれば,顔のクオリティだけなら,「プリンセスメーカー」より良いものが作れるんじゃないか? しかもそれって見た目的にすごく特別に見えて,人々を驚かせられるんじゃないか? と。
 そうやって,勢いと内容が嘘みたいな会議をしながら「こういう絵で,こういう内容で」と決めて,開発も企画も音楽も全部同時進行で,3か月で完成させてイベント出展をしました。

4Gamer:
 すご……。

キム氏:
 結果は大成功でした。私たちは1マスの小さなブースだったんですが,列が会場全体を囲むほど並んで。「よし,これは完全に成功した!」と思いましたね。
 ……今頃になって,そんな時の思い出を語れるだなんて思わなかった(笑)。

4Gamer:
 若いということを考慮しても,めちゃくちゃ勢いがいいですね(笑)。4か月である程度完成させて出展しようなんて,よくもまぁ……。

キム氏:
 その時は無料ゲームとして作ったんです。デモバージョンのような短いプレイ版で,本来は後で恋愛シミュレーション部分も追加する予定だったんですが,KAMEXでは育成シミュレーション部分だけを完成させて,徹夜で箱を折ってCD-ROMをパッケージングして,朝にはイベント来場者に配りました。

4Gamer:
 あー,当時だからCD-ROMだったんですね。今となっては懐かしい響き。

キム氏:
 はいはい,そうです。ひいひい言いながら配ってたら,当時韓国最大手のパブリッシャーだったWizard Softが私たちを見ていて,ゲームショウの後に「これをうちでパブリッシングしたい」と声をかけてきてくれたんです。

アークトゥルスのパブリッシャ。1999年にSKCから分社化し,韓国産ゲーム専門のパブリッシャー。

4Gamer:
 お,サクセスストーリーの香りがしてきました。

キム氏:
 12月から約4か月をかけて追加開発して,翌年5月に正式版を発売しました。さっき「成功した」と言ったじゃないですか。だからすごく期待していたんです。
 でもいざ発売してみると,反応はいまいちでした。初版を売り切って2版を刷りましたが,思ったほど売れませんでした。
 無料にすればよかったのかな……さあ,どうしようと悩んでいたら,それが日本に紹介されたんです。すると突然日本での売上が伸び始めて。実際に日本に行ってみたら,秋葉原の店で「韓国の変わったゲーム」として紹介されて売られていました。アハハハハ!

※4Gamerにある最古の記録は2001年だった。「韓国製ゲームが大量入荷,特に注目したいのが「Tomak」で,鉢植えで生首を育てるというかなり危ないシミュレーションゲームで,一部で話題となったゲームです。」だそうだ

4Gamer:
 そうでしたねえ(笑)。

キム氏:
 そんなタイミングでみんなにまた知ってもらって,僕らも「わあ,これはすごい!」ってなって。そして私の夢だった東京ゲームショウに,また1マスの小さいブースでしたが,翌年2001年に出展できることになりました。
 その時にサン電子という会社と出会って,日本版を新たに制作することになったんです。

それが,「Tomak: Save the Earth 完全日本語版」。元がPCゲーム専門メディアだった4Gamerには,昔のコンソールゲームの画面がほとんどないので,権利元の許諾を得たうえでGAME Watchの記事から拝借(GAME Watchの紹介記事)。編集長,ありがとうございます。しかし改めて記事を見ると,デモ版の圧縮形式がLHAだったりして時代を感じる
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4Gamer:
 うん,PS2で。

キム氏:
 ええ,PS2で。
 そしてもう一つ,今の私たちのグループの会長であるNetmarbleのバン・ジュンヒョクさん(当時は代表)から「韓国で変わったゲームを作っていてそれが日本でも売れているらしいと聞いたので,ぜひ会ってくれないか」と連絡がきました。そのご縁が後に我々がNetmarbleグループに合流するきっかけになりました。

4Gamer:
 さっきおっしゃってた,ゲームを作ったことない人が集まってたゲーム開発チームが,とんとん拍子じゃないですか。やっぱりサクセスストーリーだった。
 ところでSeed9の「9」って9人の「9」ですか。

キム氏:
 (日本語で)9人くらいにはなりたい……とか。

(一同笑)

4Gamer:
 その時は何人だったんですか。
 
キム氏:
 最初は4人でした。フルタイムが3人のパートタイム1人で。
 この9の意味は……(笑)。言っていいのかな……もう大丈夫かな。本当にこれは初めて公に打ち明ける話なんですが。

4Gamer:
 おお,そういうの嬉しいです。

キム氏:
 9という数字は一桁の中で一番大きい数字で,二桁にはいかない数字ですよね。なので,私たちのできる範囲では目いっぱいやって,出来ない領域には手を出さない。そして「種を植える」という思いを込めたんです。

4Gamer:
 ……それ本当ですか?

※「3×3EYES」の高田裕三が原作の人気アニメ,VHS「BLUE SEED 9」
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キム氏:
 ……と,当時はそんな感じで説明してました(笑)。
 でも実はそうじゃなくて,ゲームを作り始めたあのころ,「BLUE SEED」という作品のVHSカセットがあったんです。ご存知ですか? それの9巻が「BLUE SEED 9」で。

4Gamer:
 (その場で検索して)うん,そうですね。ありましたありました。

キム氏:
 私の頭の中は,ずっとそれのイメージがあったんです。「BLUE SEED 9」。
 なぜだか分からないけど,当時僕の頭にはずっとそのイメージが消えなかったんです。だからもういっそ社名にしました(笑)。

4Gamer:
 その昔ゲーム業界で,いろんなことをやっていた人達は,万事そんな感じですよ。適当につけちゃった名前がそのまま残ってて,一生懸命あとから理由を考えたり(笑)。

キム氏:
 そうそう! ふふふ,懐かしいですね(笑)。

4Gamer:
 「モンギル:STAR DIVE」の会社は,昔これ作ってたんだよって言ったら,若い子達はきっとみんな目の玉飛び出ますよ。

キム氏:
 話してて思い出したんですが,実は今年で「TOMAK」は25周年なんです。それで去年,時間があった時にもう一度プレイしたくなったんですが,昔のWindows用なので動かなかったんですよ。だから最低限動くように調整して,どこかで公開してもよい状態にしました。

4Gamer:
 なんと……!

キム氏:
 これをどうやって出すかを,まだ考えています。販売するか,それとも無料ゲームとして公開するか。どうであれ,25周年を記念したいですね。誰も祝ってくれないから,せめて我々で祝ってあげたい気持ちもありますし。

※本記事掲載前に改めて聞いてみたところ,「無料ゲーム」として配信することは決定した模様。「モンギル:STAR DIVE」のリリース前には出せそうとのことで,期待して待とう

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4Gamer:
 いやいや話題に出したくらいだし,4Gamerはお祝いしますよ!

キム氏:
 今度「モンギル」が出るときに,「こんなゲームを作っていた会社があったけど,今は何をしているんだろう」と見てもらえたら嬉しいなと。
 無料ゲームなら,クリックすると「モンギル」のサイトが出るようにするとか,そういうことを最近考えています。

4Gamer:
 確かに25年ですからねえ。僕はリアルタイムで見ていたので重々分かっていますが,今の若い子は知らないですよね。知らないどころか生まれてもいない。

キム氏:
 全然知らないでしょうねえ。

4Gamer:
 そんな4人から始まったチームが,今や何人ですか。

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キム氏:
 いまは,Monsterスタジオだけで350人ぐらいです。

4Gamer:
 350人!

キム氏:
 これでもかなり小さくなったんです。前はもっと人数がいましたけど,コロナ禍を経て規模が縮小して。
 でもこのくらいの規模を維持するのが限界じゃないかと思っています。これ以上多いと,私が管理するには手に負えなくなると思うので,今後もこれぐらいの規模を維持してやっていこうと思ってます。

4Gamer:
 350人だと何ラインくらいあるんですか。

キム氏:
 状況によって変わったりはしますが,今は運営中のゲームが2本,新作が2本で,合計4ラインが動いています。

4Gamer:
 じゃあ1個1個のチームは割とコンパクトなんですね。

キム氏:
 そうですね。最大の時は,1つのチームで100人弱くらいでして,もちろんプロジェクト立ち上げの時はもっと少ない人数で始めます。
 これができるのは,昔のゲームはほかの会社さんに運営とかを任せているからです。例えば「R2BEAT」はいまNetmarbleじゃなくて,開発もサービスも完全に外部の会社に委託してやってもらっています。
 こうやって業務の整理をして,私たちは得意なことに集中していこうという方向性で今動いてます。

4Gamer:
 そういうスタイルを確立するまで,この25年でいろんなことがあったと思うんですが,本人的にこの25年で一番辛かった時期ってどんな時期ですか?

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キム氏:
 あー……まず今も少しつらいですね。最近も変化がある時期ですが,毎回そういう変化のある時期になると,ちょっと考えちゃいます。今は特に,これからどんなゲームを作るべきかについて,すごく悩んでいる時期です。
 「TOMAK」のブームが去った時もつらかったですし,Netmarbleに合流する前後には魔界村オンラインを作っていたんですが,本当に長く作っていたのに,あまりうまくいかなかったんです。
 うまくいかないと分かっていながらも進めるしかなく,何とかローンチまで作り上げて。その時はPCオンラインゲームがほぼ底を打った時期でした。思い返すと,あの時期が一番つらかったですね。

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[2010/11/21 01:02]

4Gamer:
 独立スタジオから大手Netmarbleの子会社になるとき,何かこう,葛藤とか期待とかなかったんですか。

キム氏:
 んー……。

4Gamer:
 一番気になっているのは,作品の作り方に何か影響があったのかどうかです。

キム氏:
 そこは大きく変わりましたね。もちろん,ポジティブな面もデメリットもどっちもありました。
 まず,Netmarbleというブランドを見て入ってくるユーザー層に合ったゲームを作る必要が出てきたんですが,それは裏を返せばターゲットが明確になったとも言えます。
 もちろんいいところもあります。韓国で最大級の安定したゲーム会社の一つなので,人材採用では有利です。優秀な人材を獲得しやすくなりました。
 ただ,以前のように身軽で素早く動けた頃に比べると,少し重たさが出るのは否定できません。最初は正直,思い描いていたものと違って挫折したり大変な時期もありました。
 でも今は完全に適応しましたね。私がNetmarbleで,Netmarbleが私,という感じです(笑)。

(一同笑)

4Gamer:
 記事のキャッチコピーに使いたい名セリフ(笑)。

2010年2月にNetmarbleに買収され,Seed9歴の10年に比べて,Netmarbleにはすでに16年が経っている
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キム氏:
 いや,本当に。いま計算してみましたが,僕にとって,Seed9でやっていた時よりもNetmarbleにいる時期が長いんです。社歴で言うなら,いまのNetmarbleで僕よりも長い人間は,数人しかないでしょう。

4Gamer:
 作り手の直感と経営の合理性って,割といろんなところでぶつかるじゃないですか。それはどうやって優先させて,どうやって選んでます?

キム氏:
 慣れてきました(笑)。
 それはさておき,開発者としてTOMAKというゲームを作った理由は,私たちのチームにそれがあったからです。私たちが作れるゲーム,私たちが見せたいゲームが,市場という概念的には遠いものがあります。最初は無料ゲームのつもりで作ってたし,よく売れるのかどうか,そういうのもあまり考えませんでした。
 でも会社は,特に今のような規模になってくると,すごく大変なことがいろいろありました。給料を払うのも厳しいときもありましたし,なにより会社を維持しなければならないから,常にある程度市場を見て,商業的な方向も考えなければならないじゃないですか。

4Gamer:
 ええ,そうですね。

キム氏:
 誰がプレイするかを考えて,今はどんな人たちが何を求めているのかを考えなければなりません。昔だったら何を作りたいかとか,何をうまく作れるかとか,そういった内面的なものを考えればよかったけど,今は会社の代表として,今の市場に出す意味があるもの,市場が必要としているもの,どのプラットフォームに出せば最適なのかとか,外側のことも考えて開発を始めている気がします。
 ここにこう,少し……いや実際問題,これは仕事ですから。私がゲームを作るのは,家で趣味でやっているわけではなく,仕事としてやっているので,ちゃんと自分の立ち位置を理解してやっていると思います。

4Gamer:
 たぶん,その「仕事ですから」という返答には,社長であるご自分のポジショントーク的な意味合いもありそうですが……。
 あと仕事でやっているとはおっしゃいますが,韓国のゲーム企業で,マーベルとの間で10年間契約をし続けて運営するって結構すごいことだと思うんです。
 マーベルとの関係性についてはあまり語れないでしょうからそこは聞かないとして,10年運営して学んだ「続けるコツ」って何かあるんですか。もしくは逆に,これをやったらダメなのだなぁ,と気づいた点でもいいです。

2013年韓国でリリースしたモンスター収集オンラインアクションRPG「モンスターを飼いならす」(関連記事
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キム氏:
 「マーベル・フューチャーファイト」もそうですし,モンギルの前作「モンスターを飼いならす」(邦題:「LINE タッチモンスター」)も10年運営していたんです。
 長い運営の中で気付いたのは,我々がこのゲームはこうなる,プレイヤーはきっとそうやって楽しむという予想に反して,私たちの理解や予想とは違う方向にいったりします。でも運営チームにとっては,それこそが正常かなとも思います。

4Gamer:
 なるほど,おっしゃることは分かります。

キム氏:
 ただ,プレイヤーの意図と違いすぎる軌道修正をかけると,逆にプレイヤーは「え,なに?」と離れてしまいます。なので一度ライブサービスを始めると,それはもう開発の手からは離れ,思い通りにならなくなるものなのです。人々が望む方向,人々が考えるゲームの発展に従わなければなりません。
 そこを正しくキャッチして,そんな方向にゲームを向けさせます。そこからは僕たちのゲームを好きになってくれたユーザーたちとの共同開発なんです。

4Gamer:
 確かにライブサービスのみなさんはよく「共同開発です」と言いますが,なるほどそういう意味だったんですね。

キム氏:
 特にマーベルの場合は,欧米圏のカルチャーじゃないですか。韓国のIPでしたら,よく知ってるからこうすればいいと,ある程度先頭を切って導けるかもしれませんが,マーベルの場合,このゲームをプレイする人たちは,私たちよりもマーベルの文脈を理解しているだろうという考えが根底にありました。
 なのでほかのゲーム以上にユーザーの声に耳を傾け,キャラのアップデート方向も,どうすれば人々が喜ぶかを探りにいって,それに応えようと努力していました。
 アメリカの支社も,そこについてすごくサポートしてくれています。こういうお互いの努力が,今までサービスを続けてこられた理由です。

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4Gamer:
 うまく続けていく「コツ」なんていうものはないんですね。

キム氏:
 というかそれは,私たちとマーベルとの関係で作られるものじゃないんですよね。ユーザーがゲームから離れたら,私たちもマーベルも,このゲームを続ける動機を失います。
 多くのユーザーがずっとプレイし続けてくれていることこそ,このパートナーシップが長く続いてこられた本当の理由だと思います。

4Gamer:
 でもユーザーは,常に正しいことを言うわけではないですよね。というかもっと言うと,多くの場合は正しくないことを言うと思います。少しでも自分に都合よくなってほしいですし。
 それはそれで仕方ないし問題ないですが,そういうことを理解したうえで,「やっていいこと」「ダメなこと」のボーダーラインはどこで引くんですか?

キム氏:
 あー……難しい質問ですね。……うーん……その……なんていうか,本当に難しい。
 ちょっと時間ください。ちゃんと考えます。

(熟考)

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キム氏:
 私たちもユーザーの皆さんに振り回されないよう努力しているんですが,その基準でいうと,決めるのがすごく難しいんです。
 最近の「モンギル」でも感じるんですが,すべてのユーザーの意見を公平に受け取れるわけではないですよね。だからといって,声の大きいユーザーがたくさん発言するとそれが目立つけれど,必ずしもそれが多数意見とは限らない。そういうところで毎回すごく悩みます。

4Gamer:
 はい。すごく理解できます。

キム氏:
 ただ,いまちゃんと考えてみても,こうすればいい,という特定のケースが思い浮かばないんです。結局,大きな意思決定が必要な時は,ケースバイケースでちゃんと考えるしかありません。「ユーザーたちがこれを望んでいる」という意見が多くても,「本当にそうなのか」と考えるようにしています。

4Gamer:
 何か数値などのエビデンスのようなものは?

キム氏:
 ありますよ。サービス型ゲームは,データで管理できるのが強みですから。
 ユーザーそれぞれのデータを追跡すれば,実際のゲーム内の経済状況やバランス状況が分かります。ユーザーの声と実際の状況データを合わせて議論して,アップデートや方向性を決める。そうするとユーザーからクレームが来ても「サーバーデータを見ると,ゲームの流れはそのようにはなっていない」とキチンと説明できます。
 例えば「このキャラクターは弱すぎるからいつも負ける」と言われても,「データを見ると勝率は50%を超えている。いつも負けているわけじゃなくて,むしろ高い」というように,データで説得していくことができます。

4Gamer:
 私もですが,「自分が見ている範囲での正義」しか分からないので,客観データで説得するのは良い手段だと思います。

キム氏:
 やはり,全てにおいて客観的でなければならないと思うんです。こういう部分は以前はうまくできていなかったんですが,今はデータを基にして客観的に説明して説得しようと努力しています。
 ただ,全部のケースに当てはまる明確な統一基準というのは,なかなか思い浮かばないですね。

4Gamer:
 真摯に答えてくださってありがとうございます。
 ライブサービスのゲームの難しいところは,開発者たちが考える「いいゲーム」が,ユーザーたちが思う「いいゲーム」じゃないことが多い……というところですよね。

キム氏:
 はい,ほとんどそうですね。

4Gamer:
 ちなみにあなたが考える「いいゲーム」ってどんなゲームですか?

キム氏:
 開発者としてですか。

4Gamer:
 ええ,開発者として。社長の立場は離れてください。

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キム氏:
 もちろん,人々が好きで面白く遊べて良くできているゲームがいいですよね。私の場合,子供の頃の夢はゲーム開発者になることで,それしかなかったんです。だから早くこちらの世界に入ってきました。
 あるゲームをプレイして,それがすごく良くて,ただプレイしているだけじゃなくて「僕もこういうのを作りたい」「僕もゲーム開発者になりたい」と,こういったインスピレーションを与えられるゲームはそんなにないと思います。

4Gamer:
 なるほど,そういう視点はあまり聞いたことがないです。

キム氏:
 よく売れるゲームは多いですが,私が思う「最高のゲーム」というのは,ほかの人をこの職業に……この世界に引きずり込むほどの発想を与えられるゲームが,私が思う一番いいゲームだと思います。
 (照れ笑いしながら)少し理想的すぎる答えですが,そう思っています。

4Gamer:
 素晴らしい意見ですね。この質問は割と僕いろんな人にするんですけど,あんまり聞かない視点で興味深かったです。
 それにしても,そんな小さい頃からゲーム開発者になろうと思ってたんですね。

キム氏:
 はい,ずっと。まぁ「職業として」は言い過ぎかもしれません。なにしろ,当時そんな職業はなかったですから。でも,中学生の頃から本格的に準備していたと思います。
 僕が中学生のころに知っていた大学生くらいの人たちが,同人ゲームみたいなのを作ってネットに発表するじゃないですか。当時中学生の僕が連絡して話してもらっていた方々が,今はみんな業界の先輩になっていて,私を導いて引っ張ってくれる方がたくさんいるんです。

4Gamer:
 僕でも知ってそうな人います?

キム氏:
 キム・ハッキュ氏ですね。

4Gamer:
 おお,ラグナロクの。

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キム氏:
 昔どこかでも言ったかもしれませんが,日本で最初に広く知られた韓国製ゲーム「ラグナロクオンライン」を作ったキム・ハッキュ代表がGRAVITYにいた時,私はまだ学生でした。
 高校生の時なんかは家にまで行きましたが,日本で言えば宮本茂さんの家に行くみたいな,そういう……(笑)。一緒にカフェみたいなところで会って,学校でゲーム開発を勉強して。そういう楽しい時代でした。
 要するに私は,この業界に入りたいという夢を持って生きてきたんです。人生で勤めた会社がここしかないんです。最初の会社にずっと勤めているという。

4Gamer:
 いいですねえ……ロマンですよ。

キム氏:
 はい(笑)。夢を叶えられました。

4Gamer:
 ちなみにさっき,人に影響を与えるゲームはそんなに多くないって言ってましたけど,ご本人は何か影響を受けた作品はあるんですか。

キム氏:
 本当にすごく昔のゲームなんですが,でも僕に「こういうゲームを作りたい」と思わせたのは,Ultima(ウルティマ)シリーズでした。

4Gamer:
 ここでもウルティマが!

MSXコレクションから掘り起こした「ウルティマ4 聖者への道」。見るとなんとなくまたやりたくなってしまう……
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キム氏:
 ウルティマシリーズは,AppleのコンピューターでIVとV,IBM PCでVIまでやってました。さっき話したような頃,私が真剣に業界に入る準備をしていたというのは,ひたすらそれを真似してたんです。
 ウルティマを真似して,似たようなものを作ってポートフォリオに入れて,高校卒業したらそれを履歴書に入れて出そうと思ってました。ウルティマに似たものだけで,数十本作ったと思います。

4Gamer:
 年代的にウルティマはすごく理解できます。日本のゲームとかは何かありますか?

キム氏:
 そういう意味なら,雑誌で見ることができた日本のゲームなんかもそうですね。
 私が小さいころは,ゲーム機を持っていなかったんです。だから日本のゲームを直接プレイしたのは,もう少し年齢がいってからでした。雑誌で「イース」とか見て,こういうのがいいなぁと,思ったり。アメリカのゲームより,グラフィックスが心に響きます。
 「ドラゴンクエスト」シリーズなんかもそうですね。こういうのを作らなきゃ! と夢を見てきました。ただ,そういう類のゲームを今まで一度も作れていないのは,ちょっと悲しいです。

4Gamer:
 いやぁ……ここでもAppleですか。

キム氏:
 はい。Appleです。「ここでも」というのは?

4Gamer:
 僕も最初はApple IIです。

キム氏:
 (日本語で)今でもあります。

4Gamer:
 僕もありますよ。でも僕はWizardryなんです。
 ちなみに昨日,devCATのキム・ドンゴン氏と話したら,彼もApple IIでウルティマが最高だと。

キム氏:
 個人的に仲が良いわけではないんですが,私が入っていて今も活動しているAppleのクラブに,ドンゴンさんも入ってますよ。「今もAppleでゲームを作っています」と。

4Gamer:
 そうなんです。見せてもらいました。

キム氏:
 わー本当に作ってたんだ!(笑)

4Gamer:
 マビノギ世界観のウルティマでしたよ。

キム氏:
 「マビノギモバイル」をローンチする前の1年は,そのゲームの開発の情報は途絶えて,もう開発してないかなと思ってたんですが,無事ローンチしてうまく動いてるから,落ち着いてまた開発できるようになったんですねきっと(笑)。

4Gamer:
 ちなみになんですが,好きなのはきっとIVですよね。

キム氏:
 IVは……うん,そうですね。僕の中でIVとVIが最高です。

4Gamer:
 完全なアバターとなることを目指すIV。

キム氏:
 はい。IVでアバターになって,その後ずっとアバターのまま。……しかし,よく覚えてますね(笑)。
 あとVIIも,本当にみんな好きだと思いますよ。あれこそがウルティマの精神だから。本当に,何回も何回も最後まで繰り返してプレイしました。

4Gamer:
 しかし本当に韓国の一流の開発者は,みんなウルティマ好きですよね。

キム氏:
 その昔,コンピュータとかそういうのをやる人たちは,韓国ではまだすごく少数だったんです。みんなすごくコアなものが好きな人たちばかり。みんな「ウルティマ」が好きで,ほとんど全員が「ウルティマ」のためにコンピュータをアップグレードし続けていたと思います。
 たぶんApple派とMSX派で分かれるんですが(笑),僕はMSXを持ってませんでした。すごく欲しかったけど,親が「それはゲーム機だ」といって,買ってくれなかったんです。

4Gamer:
 キーボードついているのに!

キム氏:
 キーボードが付いてるゲーム機だと言われました(笑)。ゲームカートリッジを挿せるのがたぶん問題でしたね。

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4Gamer:
 ご両親,ちゃんと見てたんですね(笑)。
 しかしそんな小さい頃からゲーム業界を夢見て,Apple IIでゲームをプレイして……というあなたの経験の集大成は「モンギル」であるとどこかで読んだんですが,それはどういう意味での集大成なんですか?

キム氏:
 私はこれまでオンラインゲームばかり開発してきたんですけど,一昨年にローンチした「RAVEN2」は,ある意味で本当のオンラインゲームでした。
 オンラインゲームというのは,ゲーム内での人間関係がすごく重要で,それがゲーム外にまで広がっていくんです。勝つためにゲーム内で知り合った人たちと直接会って「今週末どこかで会おう」と顔を合わせて一緒にプレイする。そういうゲームでした。

4Gamer:
 はい,そうですよね。

キム氏:
 でも……私は本当は,家で一人でやるゲームが好きなんです。人と会うのがかなり苦手でして。
 だから「モンギル」は普通のオンラインゲームとは少し違ってて,マイペースでソロでも楽しめるものにしています。ほかの人より速く先に行こうと必死になったり,もっと強くなろうと頑張ったり,そうやってキャラクターの強さを比較するのは,結局他人との競争になってしまいますよね。
 いまこそ一人でできる,私が昔好きだったゲームの形に近いものが,必要じゃないかと思ったんです。

4Gamer:
 まぁ煽ることで収益をあげている側面もあるわけですから,なかなか簡単にはなくせないかもしれません。

キム氏:
 そうかもしれませんが,ゲームで人間関係が強くなりすぎると,強く没入できる反面,抜け出すのも難しくなります。ゲームに縛られすぎてしまう。ゲームのほかにもほかのことが色々できて,自分がやりたい時にやるようにしたいです。
 週末に徹夜して何十時間もやりたい人はそうすればいいし,忙しくなってきたら休んで,時間ができたら戻れるようなものを作ればいいのだ,と。

4Gamer:
 そう言ってくれるタイトルは多いんですが,実際に出来ているのは少ないんですよ……。

キム氏:
 確かに難しいですからね。色々考えたんですが,そういうプレイスタイルを実現するには,ゲーム内での成長システムよりも,操作してプレイすること自体の楽しさにもっと集中すべきだと思いました。そういう意味での「集大成」だったのかもしれません。
 まぁ正直に言うと,“集大成”と言えるほど大げさなものではありませんし,そもそも僕はまだそんなに積み重ねたものもないです。少しそういう要素があるだけ,という程度かなと思ってます。

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 2025年下半期にリリース予定の「モンギル:STAR DIVE」で,クローズドβテスター募集が実施中だ。本作は,個性豊かなキャラクター,世界各地の探索,アクション性の高い戦闘という3D RPGの王道要素に,独自のモンスター収集を組み合わせた意欲作となっている。

[2025/06/07 12:00]

4Gamer:
 いやいや……これG-STARで見ましたけど,この手のイラストのゲームはもちろん他社もたくさん出してますけど,正直に言って頭一つ抜け出てるなと思いました。

キム氏:
 ありがとうございます。アハハ。

4Gamer:
 でも裏を返すと,初見では女の子がかわいいスマホのソシャゲ,に見えちゃうんです。でも今までの話を聞いている限り,たぶん普通のソシャゲじゃないですよね,きっと。
 今しがた言ってた「一人でも楽しめる」というのもまさにそれだと思うんですが,ちょっと質問を変えて,「モンギル:STAR DIVE」で最も重要視していることはなんですか?

キム氏:
 ジャンル的にはキャラクター中心のゲームなので,キャラクターが重要です……と答えるべきなんでしょうが,実は最近こういうジャンルのゲームはたくさん出ていて,みんなキャラクターが重要だと言いますよね。
 だから私たちのゲームの特徴は何だろうかと考えると,すごく気を遣ったのが,さっき話した「長く休んでいても再開できる」という部分なんです。逆に言うと,ゲーム内でプレイヤーを長く留まらせるような仕掛けがないんです。

4Gamer:
 割と思い切った処理ですね。

キム氏:
 時間を引き延ばさず,ゲームがぎっしり構成されているので,途中で止めてもすぐに再開できますし,つまりいつでも戻れるようになってます。でも,どのゲームよりも没入感のある楽しさを与えると思いますよ。休んだように感じさせず,進んでいく感じです。

4Gamer:
 似た感じのゲームってどのへんですか?

キム氏:
 最近で言えばオープンワールドみたいな……いやちょっと違うか。どう説明すればいいかな。
 ずっと続けられる,テンポが早い,休みのない,ゲームの面白さを圧縮して,退屈だと思わせないゲームプレイができる……そんな感じで作っています。
 今の若者って,例えば動画を1.5倍速で観たり,それすらも嫌でまとめ動画を観たり,挙げ句スキップしながら観たりしますよね。なので私も,ゲームも退屈な部分があってはならないという,強い気持ちを持って作りました。

4Gamer:
 なるほど,方向性はちょっと分かってきました。

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キム氏:
 ストーリーのテンポも早いですし,エピソードとエピソードの間の動線も短いです。
 こういう部分が,人を引き留めようとする今の主流のオンラインゲームのようではなく,昔のように,純粋に一人で黙々と楽しんでいたころのゲームを思い起こさせるようにしています。
 なんていうか,少し昔の世代の懐かしいころのゲームぽくしたくて,そういう部分については個人的にかなり気を遣いました。

4Gamer:
 退屈で面倒の“筆頭”であるデイリークエストとかは?

キム氏:
 それをちょうど今チームで話しています。今も,ほとんどないレベルなんですが,私は全部ない方がいいと思っています。そういう強迫要素は全部なくせばいいと思うけど,まぁそういうシンプルなものでもないでしょうし,妥協ポイントを探しているところです。
 今はほぼ妥協できるラインといえるくらい簡素化されているんですが,まだちょっと悩んでいます。ローンチまでまだ時間があるので,最後まで悩むかもしれません(笑)。

4Gamer:
 強制する束縛力が弱くて,いつでも戻ってこれる……みたいなことをおっしゃってくれて,すごく素晴らしいなと思います。確かにソシャゲって,ちょっと離れたらも事実上戻れないですし。
 でもその「いつでも戻れる」というものは,裏を返すとゲーム内が大きく変わらないということですよね,たぶん。そこはユーザーの飽きに直結したりしないんですか? なんていうか,ゲーム内が大きく変わらないから戻ってこれるかなと。

キム氏:
 どんなタイミングで戻ってきても,プレイできるようにするつもりです。
 もちろんアップデートは追加されますが,おっしゃる通りゲーム内はあまり変わらない感じです。「久しぶりに戻ってきたらゲームが変わっていた!」ということはないようにしています。あまり面倒な仕掛けをしないようにしてますよ。

4Gamer:
 久々にログインすると,大体ストーリーを覚えてなくて「なんだっけこれ」とか,どういうのが強いパーティかも忘れていて「これなんで勝てないだっけ」みたいなことになりますよね。そういうのも全然ない?

キム氏:
 久しぶりにゲームに戻って「前何やってたっけ」「この後何するんだっけ」とならないように,逆にぎっしりとストーリーをリンクさせていてログとして残っているので,戻ってきても,前のストーリーなんだったっけ? とならないようにしています。

4Gamer:
 キャラクター増えすぎ問題はどうですか? ゲーム内のパワーバランスがすっかり変わっていて,かつてのメタパーティがゴミなってることは,割とありがちです。

キム氏:
 まず前提として,PVPみたいに,ほかのユーザーと一緒にプレイしなければならない要素がないので,バランスはそこまで重要じゃないと思っています。

4Gamer:
 おおなるほど。であれば確かにそこでキリキリすることはなくなりそうですね。

キム氏:
 だからたぶんだいぶ後でも,よほど特殊な状況じゃなければ,バランス調整はほとんど要らないかなと思っています。
 もちろん先ほど言ったように,サービスしてからユーザーの皆さんがどう反応するか,どうプレイするのか分からないので,そこは慎重に見なければなりません。
 しかしほぼ完璧に一人でプレイするゲームなので,パワーバランスに関する部分については,私たちが以前サービスしていたゲームに比べて問題になる要素は少ないと思っています。

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4Gamer:
 キャラクターって,ガチャですか?

キム氏:
 はい,そうです。

4Gamer:
 最初何体ぐらいあるんですか。

キム氏:
 まだ完全には決め切れていません。Netmarbleと一緒に決めたら,またお知らせすることになると思います。

4Gamer:
 ……話を聞いてる感じ,ガチャというビジネスモデルがあんまりしっくり来ないんですが,そこは大丈夫そうなんですか?

キム氏:
 実は,ガチャを完全に除外するかについても,すごく悩みました。でも最初からガチャでキャラを入手してもらう方向性だったし,そう進んでいます。ガチャがあるというそれだけで快く思わないユーザーも多くいるので,できるだけそういうのは避けたかったんですが。
 なのでガチャは必要最小限にして,強要しなくてもいいレベルに調整しようとしています。チームの大勢が集まって,みんなで頭を突き合わせて悩みました。
 ローンチしたときに皆さんが「この程度なら大丈夫」「すごくプレイしやすいね」と思って楽しめるゲームの形になるんじゃないかと。

4Gamer:
 まぁ僕がキャラクターの数を聞いたのはガチャの話というよりは,さっきの「頭一つレベルが違う気がする」というやつです。
 まぁ「絵が上手」とかいろいろありますが,一番違うなと思ったのは,キャラクターの表現力ですね。キャラクターの,くるくると動く顔の表情とか,それによって作られる雰囲気が,ちょっとほかのものとは違う。これだけのものを,一体何体作るつもりなんだろう? と思いまして。

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キム氏:
 ありがとうございます。それに関してはどこかのインタビューでも言った気がしますが,ただの綺麗なキャラクターではなく,キャラクターが本当に生きているように,キャラクターに感情があることを感じられるように,そういうキャラクター作りを努力しています。
 ガチャっていうのは新しいキャラクターの獲得方法ではありますけど,モンギルにおいては,キャラクターを獲得するとコンテンツがちょっと拡張されるんです。小さいDLCみたいな感じです。

4Gamer:
 おおなるほど。よくある「要らないキャラ」がなさそうでいいですね。

キム氏:
 そうです。キャラクター自体が,ただの数字の羅列だったり,自分のステータスを上げるためのものではなく,一つのすごく大切なコンテンツだと人々に思ってもらえるようにしたい,そういう考えを持っています。
 少なくとも私が勝つために,あのキャラクターを絶対獲得しなきゃ,ということを思わせないように作っています。

4Gamer:
 ならよかったです。なんか1体1体気合い入ってそうだから,使われもしない死にキャラが出たらもったいないなと思ってまして。

キム氏:
 引いて使わないキャラクターが発生する理由は,結局はパーティでの役割だと思います。普通のゲームではそれが大事だから仕方ないですよね。でも私たちは,そっちの方向性では作っていないんですね。
 つまり逆に言えば「このキャラクターがなぜ絶対必要なのか」という動機がほかのゲームより弱いですが,少なくとも「絶対持たなければならない」というプレッシャーは与えない,そういう実験的な方向性を示しています。

4Gamer:
 キャラクターがゲームに勝つための道具じゃないのは,とても良いと思います。
 ますますちょっと期待できるんですが,G-STARのときの記事も結構読まれたので,せっかくなので日本の読者に向けて最後,何かここを期待して待っててほしい,みたいなコメントをお願いできますか。

4月15日リリースが発表された(関連記事
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キム氏:
 今回の作品はPCだけでなく,すごく多様なプラットフォーム……私たちが試せるほとんど全てのプラットフォームで披露しようと準備しています。
 どのプラットフォームでも,私たちのゲームを楽しめるようにするので,皆さんも期待していただければと思います。
 話題にも出ましたが,ガチャ要素などを心配される方も多いと思います。そういう声をたくさんよく聞いて,なるべく多くの方々を満足させられるゲームを作ろうと努力しています。準備しているので,それで少しゲームのローンチが遅れることになりましたが……きっとこの記事が出る時も,まだ私たちはローンチ日を発表していない気がします。
 私たちは2025年にはローンチしようとしていましたが,年を越えてしまいました。ユーザーの皆さんのフィードバックをもらって改善しようと,もう少しだけ準備時間をいただいています。頑張りますので,愛情を持って待っていただければ嬉しいです。

4Gamer:
 今日お話を聞いてちゃんと事前予約しておこうと思って,今この瞬間にしました(笑)。

キム氏:
 ありがとうございます(笑)。

4Gamer:
 本日はありがとうございました!

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―――2026年1月22日収録
  • 関連タイトル:

    モンギル:STAR DIVE

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    モンギル:STAR DIVE

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    モンギル:STAR DIVE

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    モンギル:STAR DIVE

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