業界動向
ソニー,北米大手メディアViacomとインターネットを介したテレビ番組の配信サービスについて基本合意
Paramount Picturesの親会社としても知られるViacomは,音楽専門のMTVや子供向けのNickelodeon,若者向けのSpikeTV,コメディ専門のComedy Channelなどの人気局を含む170ネットワークを傘下に抱える,北米第4の“メディア・ジャイアント”だ。インターネットを介したテレビ番組配信は,エピソードを単体で配信するビデオ・オン・デマンドと呼ばれる方式が一般的だったが,ソニーとViacomの提携により,視聴者に新たなオプションが与えられることになる。
アメリカでは,1980年代以降にケーブルテレビや衛星放送が発達したことで,現在は2200を超えるテレビ局が存在している。しかし,高額な受信料や,インターネットの登場による若年層のテレビ離れによって,ここ5年ほどで300万人近いユーザーベースを失い,テレビ業界の改革が頻繁に議論されるようになった。昨今では,ケーブルテレビ局がタブレット端末でも映像を視聴できるサービスを始めたり,Xbox Liveでスポーツ局「ESPN」を見られるようになったりと,インターネット配信が徐々に増えている。
ちなみに検索サービス大手のGoogleは「Google Fiber」というインターネット番組の有料配信サービスを行っているが,これは同社の光有線通信によるインターネット接続サービスの利用者のみを対象としたものだ。しかも料金は,インターネット接続の月額利用料を含めて120ドルと,ケーブルや衛星を介した放送と同じ価格帯になっているのが実情である。
ゲームメディア「IGN」の7月6日付けの記事では,ソニーが「PlayStation TV」という商標を登録していたことが明らかになっていた。それを考えると,今回の提携によって提供されるインターネット配信番組は,PlayStation 4や同社のテレビ「ブラビア」を対象にしたものになりそうだ。
The Wall Street Journal紙はさらに,ソニーが携帯デバイスやスマートフォンなどへのサービスも視野に入れているとのことを報じている。アメリカで初めて「テレビの持ち歩き」が可能になるという方向だ。
もちろん,今回の試みが成功するか否かは,サービス内容や価格,PlayStation 4やブラビアの売れ行きによって大きく左右されることになるだろう。しかしいずれにせよ,こういったビジネスにメディアジャイアントが参入するのは初めてのことであり,アメリカの放送業界全体に大きな影響を与えるのは間違いない。
The Wall Street Journal紙によれば,ソニーはViacomとの提携に続いて,ABCネットワークを抱えるThe Walt Disney Companyや,Time Warnerなど,ほかの大手メディア企業とも何らかの合意をとりつける可能性もあるとしている。現在ソニーは,全米のインターネット番組配信において1歩リードしつつある,といったところだろうか。
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