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[CES 2015] 「特定の領域内でだけピンポイントに音を鳴らす技術」,製品化進行中。ゲームやビデオの音で文句を言われなくなる日は近い?
HyperSoundについては,2014 International CESのタイミングでもお伝えしているが(関連記事),簡単にいうと,一般的なスピーカー(=ダイナミック型スピーカーユニット)のように,振動板で空気を振動させるのではなく,音をいったん,人間の耳には聞こえない超音波エネルギーとして送り,送られた先でだけ空気を振動させることで,ピンポイントでのサウンド再生を可能にする技術だ。
超音波を発生させるのは,俗にマイラーフィルム(Myler Film)と呼ばれるポリエステル繊維性フィルムで,このフィルムから光線のように放たれた超音波が,1〜4.5mという直径の範囲内にある空気だけをピンポイントで振動させる。結果として,「空気が振動している領域」の中にいる限り,まるで辺り一帯から音が発せられているような感覚で音を聞くことができるのである。
北米のゲーマー向け市場における知名度の高いTurtle Beachのブランド力を活かし,HyperSoundとゲーム業界との提携も急ピッチで進んでおり,2014年第4四半期に実施された「Call of Duty: Advanced Warfare」のプロモーションキャンペーンでは,全米1000店舗近い大型量販店の情報スタンドで,全面的にHyperSoundが採用されたとのことだ。
もともと情報スタンド博物館などの音声案内,ファーストフード店のドライブスルー向け技術ということもあり,分かりやすい実例が,北米市場では展開されたことになる。
音質面に過度の期待は禁物だが
それでもHyperSoundは画期的だ
そのため,「音」としての絶対評価をするならば,端的に述べて物足りない。それゆえにTurtle Beachでは,サウンドバーやサブウーファを併用できるようにもしてあり,併用すれば音質面でも面白い効果を期待できるのだが,どことなく本末転倒感もある。
ただ,聞き取れるという意味では,そう大きな問題もないため,深夜に,ヘッドフォンやヘッドセットを装着することなく,また,誰にも迷惑をかけることなくゲーム(やビデオ)の音を聞くという用途では,家庭用としても十分使えると言っていいだろう。音を出してもいい局面であれば,別途,スピーカーやサブウーファを組み合わせればいいだけだ。
なお,そんなHyperSoundには1つ,驚くような効果がある。筆者がTurtle Beachブース内の,リビングルーム風のスペースでデモを体験していたところ,たまたま足を止めた老夫婦があった。2人はいずれも,加齢性難聴が原因で補聴器を付けていたが,デモの担当者に促されるまま補聴器を外したところ,「(普段なら補聴器を外すと聞こえなくなる)デモムービーの会話や音楽が聞こえる!」と驚いていたのだ。
デモ担当者によると,可聴エリア内において,超音波は耳の奥にまで届くため,聴覚に障害を抱える人であっても,補聴器なしに音を楽しめるようになるという。
お年寄りでなくとも,聴覚上のハンディキャップを抱える人は少なくないと思うが,そういう人が,補聴器なしにゲームの音を楽しめるようになるかもしれないというのは,画期的な話ではなかろうか。
木造建築の多い日本の家屋で,ヘッドフォンやヘッドセットに頼らないまま気兼ねなく,あるいは補聴器なしにゲームやビデオのサウンドを楽しめるという,これまでにない製品となる可能性を秘めているだけに,今後の展開には大きく期待しておきたいところだ。
HyperSound公式Webサイト(英語)
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