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[SIGGRAPH]「League of Legends」や「Mafia III」の映像も入選。優秀なCG映像を上映する「Electronic Theater」レポート(前編)
2016年は,CAF入選作にゲーム関連の映像作品が多かったためか,特別にゲーム関連の映像だけを集めた「The Arcade」という上映プログラムが行われたというのが大きなトピックだ。
The Arcade入選作には,CAF常連であるUbisoft Entertainmentの「Assassin’s Creed Syndicate Trailer」や,圧倒的な映像美を見せた「アンチャーテッド4」を中心に,アンチャーテッドシリーズにおける映像の進化をまとめた「Evolution of Uncharted」といった作品が選ばれている。
また日本からも,「FINAL FANTASY XV」関連の映像作品である「The Universe of FINAL FANTASY XV」が入選した。近年のSIGGRAPHにおいては,日本のゲーム作品映像がCAFに選ばれることはほとんどなかっただけに喜ばしい。
CAFの入選作から,優秀なものや注目を集めそうなものを選んで上映するイベントが,SIGGRAPH参加者の楽しみとなっている「Electronic Theater」(以下,
上映に使われるプロジェクタは,4年連続でChristie Digital Systems製の4K対応3板式DLPプロジェクタ「CP4230」だった。表示解像度はデジタルシネマの規格「DCI」における4K解像度の4096×2160ピクセルである。
3D立体視の表示も可能なプロジェクタだが,今年も3D立体コンテンツの上映はなし。機材そのものは例年と同じなのだが,光源ランプだけは,2015年の3万5000ルーメンのものよりもさらに強力な,4万ルーメンのランプになっているとのこと。
ちなみに,映像を表示するスクリーンのサイズは21×9mで,アスペクト比は21:9となる。
League of Legends: Project Overdrive
Axis Animation,Ben Hibon
「League of Legends」の新スキンをテーマとしたプロモーションムービー「PROJECT: OVERDRIVE」がET入選を果たした。ゲーム関連ではあるが,インゲームのリアルタイムムービーではなく,PV用に制作されたプリレンダムービーである。
マッドサイエンティストから人体改造を受けているその最中,謎の研究所で目を覚ましたヒーロー。絶体絶命かと思えたそのとき,謎の乱入者がヒーローを救う。そして,その謎の乱入者は,ヒーローに怪しげな剣を差し出す。しかし,2人には追っ手が迫り戦闘に……,といった展開のアクション映画風ムービーだ。
映像の制作を担当したのは,イギリスのAxis Animation。監督はスイス出身のBen Hibon氏で,Ninja Theoryが制作を担当したゲームの「Heavenly Sword〜ヘブンリーソード〜」や,「DmC Devil May Cry」などのシネマティックムービーを担当した経歴の持ち主である。
Hibon氏の作風は,赤を基調とした原色主体の,手描き風のサイケデリックなアニメーションが多く,本作品も,まさに氏の作風が感じられる映像になっている。
また,Hibon氏は日本のアニメーションを強くリスペクトしているそうで,いかにも近未来的なサイバーパンク風の世界観に,忍者アクションコミックのような要素が合わさっているのも面白い。
ちなみに,本作は基本は3Dグラフィックスで制作したとのことだが,手描きのキーフレームアニメーションも多用しているそうだ。
Mafia III
Blur Studio,Dave Wilson
続いて紹介するET入選作は,Hanger 13が開発を担当する2K Gamesのクライムアクションゲーム「Mafia III」のアナウンストレイラーである。
ゲームの舞台は,1968年の米国・ニューオーリンズだ。深夜の湿地帯を通る悪路で車を走らせる主人公のリンカーン・クレイ。クレイは車を走らせながら,「『ファミリー』だと? その言葉の重さを知っているのか?」とつぶやいて,過去に思いを巡らす。その後部座席には粘着テープで猿ぐつわをされてもがく,傷だらけの男がいた。
主人公が車を停めた場所は,野生のアリゲーターが巣くう沼地。傷だらけの男を沼地に連れ出すと,そこへ数台の車が集まる。降りてきたのは,性別も年齢も違うワケアリ風情な人物たち。この沼地で,新たなる「ファミリー」の復讐劇が幕を開ける……。
この凝りに凝ったは,アメリカの大手CGスタジオであるBlur Studioが制作を担当したものだ。監督は,アクション映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」でクリエイティブスーパーバイザーを担当したDave Wilson氏である。
Wilson氏は,「Mass Effect 2」や「BioShock Infinite」といったゲームのプリレンダームービーシーンを制作した実績もあることから,本作の制作を担当することになったそうだ。
トレイラーでは,猿ぐつわをした男による無言の演技,具体的には,目の動きや顔の筋肉を動かす様子が見どころといえよう。CGとは思えないほど,言葉を使わずに人間の激情を表現しており,まさに必見である。
Behind the Magic - Warcraft
Industrial Light & Magic
「スターウォーズ」の特撮専門スタジオとして設立されて以来,最先端のビジュアルエフェクト(VFX)制作を行うスタジオとなったIndustrial Light & Magic(ILM)。スターウォーズシリーズで名高いとはいえ,実際には,他のシリーズやジョージ・ルーカス監督作品以外の映像制作も広く請け負っているスタジオである。
そんなILMが,メインスタジオとなってCG制作を担当したのが,日本でも今年公開されたばかりの映画「Warcraft: The Beginning」(邦題「ウォークラフト」)だ。MMORPG「World of Warcraft」を原作とするファンタジーアクション映画である。
この映画版Warcraftは,非常に難産だった作品で,完成までに10年を要している。映画化が発表されたのは2006年だが,ストーリー制作に難航して監督も抜擢と降板を繰り返したあげく,最終的にデビッド・ボウイの息子としても知られる映画監督のダンカン・ジョーンズ氏が担当となって,ようやく上映までこぎ着けたという経緯がある。
ETで公開されたのは,そのメイキング映像だ。
映画版はWorld of Warcraftの前日譚で,人間とオークが敵対する前の協調か対立かを模索していた時代が描かれる。そのため戦闘シーンはもちろんだが,日常的なシーンでも,人間とオークが同一画面に現れることが多い。人間は,俳優の演技を撮影した映像をそのまま素材として利用し,制作工程でCGパートと合成しているのだが,オークもまた,専用スーツを着た俳優が,人間役の俳優と同じ場で演技をし,それを撮影していたという。
というのも,オークの顔立ちは人間をベースに,ゴリラのような荒々しさを加えたような造形ではあるものの,牙が口からはみ出しているし,頬や唇周りの筋肉が動く様子も人間とはまるで異なっているからだ。
そこでILMは,独自にシミュレーションモデルを構築。俳優による表情の演技をオークの表情筋の動きに変換することで,映像を作り込んだとのことだった。
映画そのものは,スターウォーズのような大ヒットとまではいかなかったようだが,ゲーム原作映画としては最高の興行成績を記録したという「プリンス・オブ・ペルシャ -時間の砂-」を上回ったということで,ILMスタッフの苦労も報われたというところだろうか。
Computer Animation Festivalの公式Webページ(英語)
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