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間違えて来ちゃいました。中韓でトップを自負する“NB ERGONOMIC(NB North Bayou)”のモニターアーム[G-STAR 2024]
同社は「NB North Bayou」のブランド名も持つが,今回のブースではNB ERGONOMICの名義でゲーミングデバイスを展示していた。
詳しくは聞きそびれたが,本稿ではNB North Bayou=モニターブランド,NB ERGONOMIC=ゲーミングブランドと見て紹介する。
※各地域向けのブランド名の可能性もあり
最初に足を止めたのは,G-STARの会期初日のことだ。BtoBブースを回っていたところ,このブースの受付のお姉さんに足を止められた。なんでも未発売の“ゲーミングモニターアーム”を発表したとのことで,お姉さんは「今なら安くしときますよ!」と売り込んできた。
未発売品のセール。なるほどな。ちょっと意味が分からなくて(通訳のせいではない),苦笑いしながらその場を去った。
G-STARの会期2日目のこと。なんだか無性に気になって,また足を運んでみた。すると昨日のお姉さんの隣に立っていた,日本と韓国の市場を担当しているというセールスマネージャーに応対された。
まずNB North Bayouは,テレビやディスプレイに接続するモニターアームを専門としたメーカーだ。モニターアームとは画面の後ろ側に付けて,“好きな角度・高度で固定できる器具”のことである。
読者で使っている人はいるだろうし,名称を知らずとも,スマートフォンで似たような機具を見たことのある人はいるだろう。
そしてNBは,中国や韓国ではモニターアーム業界1位の信頼性を得ているという。業界分析まではしていないため,ここではあくまで自負としておくが。Amazonで一番売れている同社のモニターアームは,価格3980円。☆4.1。1万8129個の評価付き(2024年11月16日現在)。
少なくとも,存在感を発揮しているのは確かだろう。
メーカーとしてのこだわりは,自分たちで製品をデザインし,設計から販売まで手がけていることだという。これは同社が「なにかを他社に任せると,品質が左右される」「だから自分たちで品質管理できる体制にしよう」といった理念でやってきたからとのこと。
モニターアームとしての特徴は,人間工学に基づいた設計思想に加え,“画面の重さでヘタレないアーム”を目指していること。
この市場ではエアー式の可動部が多いらしいが,これらは時間経過で自然とへたって,気付けば角度が変わってしまうという。
そこで同社は,堅固なメカニクスとギアを追求し,37〜49インチのディスプレイはもとより,60インチでもヘタレない(モデルの)モニターアームを作ってきた。ドデカく展示されていた電動型の大型ディスプレイ昇降アームなどは,業務用としては自慢の逸品なのだろう。
同社製品は中国や韓国では認知度が高いようで,「機能よりもコスト」が強いというモニターアーム市場でも,「コストより機能」の精神で突き進んできた結果,現在では若い人ほど注目しているらしい。
一方,日本での展開はまだまだらしく,Amazonで販売している製品の売れ行きもいまいち。今年の東京ゲームショウにも出展していたらしいが,申し訳ないことに発見も接触もできていなかった。
そして同社がこうしたゲームショウに出展しているのは,すべては“NB発のゲーミングモニターアーム”を作ったからだという。
未発売の新製品となるゲーミングモニターアームは,マウント部分やアーム部分にお決まりの“七色ゲーミング発光”が搭載されている。また材料もハイエンドな仕上がりにし,地味な存在感が求められがちなモニターアームにおいても派手なデザインで主張している。
そして,ゲーミングモニターアームとしての最大の特徴を聞いてみたところ,「カッコいい」と返答された。実に単純明快だ。
実際,世にあふれるデバイス類は,(4Gamerのハードチームはよくやっているが)実際に計測や分解などをしてみないと,どこに差があるのかが分かりづらい。カタログスペックにお化粧しているケースも,値が正確だろうが当人が読み解ける情報もケースバイケースなのだ。
一方,ゲーミングデバイスは「見た目」が強力な武器になるカテゴリである。性能はもちろんであるが,「こんなが物がほしい」をデザインでかなえることで勝つ道がある……と思っている。
当然,機能面は従来のノウハウを存分に投入しているようだが。
そのうえで最大の疑問を尋ねた。
「なぜ,BtoBで製品のセールを?」
BtoB。つまり企業間取引の場では多彩な商流が集まり,新たな変化がもたらされるが,今年の出展社とはなんとなく色が混じりづらい気がした。というのも,彼らが商談を交わす相手は,モニターアームを一定数売買・提供できる先と考えると,メインはeスポーツ関連だろう。しかし,今年のG-STARはeスポーツ色が薄く,配信事業者も多くはなかった。
ゲームメーカーと縁をつなぎ,開発スタジオの機材入れ替え時の納入先になるというのも大きな話だが,そうなると商談というよりも営業の領域だ。どうにもピンとこない。ゆえに,ここまでの話題を対話してきた結果,あらためて出展の理由を聞いてみたのだが。
「間違えて来ちゃいました(笑)」
とのことだ。
そもそも彼らはゲーム業界のことはとんと無知だという。ゲーミングデバイスの制作に際して研究した知見はあるのだろうが,現場のセールスマネージャーとしてはどうしたもんか。「まあとりあえず,ゲーム系の展示会に出てみよう!」と乗り込んできたらしい。
もちろん,BtoBの肌感も分からなかった。一般会場と違い,関係者のみ入場可能なBtoBは,ゲームイベントにおける唯一の癒しの場だ(人が少なくて歩きやすいという意味で)。交流はいくつかあったようだが,やはりこれといった手応えは(2日目朝の時点では)なく,とりあえず受付のお姉さんが「お安くしときますよ!」と言っていたみたいで。
「初日は売れましたか?」
「いえ,まったく(笑)」
一般来場者向けでもないなら,そりゃそうだ。
広い空間で,少ない人数の口から,ハハハハと笑いがこぼれる。まあ確かに,イベントに出展するからといって即物的な成果を求めるのは野暮な話だ。企業としてはそうも言っていられないだろうが,「出展したことに意義がある」。大人の世界だろうとこう言い張れば一興だ。
最後に,今後も展望について尋ねてみた。
「未来のことは分かりません。このゲーミングモニターアームが売れるかも分かっていません。でも自信だけはあります」
そう答えてくれた。去り際のこと「会期が終わるまでに,なにかいいご縁があるといいですね」とひと言かけると。
「私たちはとりあえず,ゲーム業界のことをよく知らないので,まずは“こうして広めてくれる方々”と出会えるだけで十分ですよ」
どうも私は,すっかり引っかかってしまったクチらしい。
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