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[SPIEL'18] ヨーロッパゲームコレクター協会の今年のテーマは「プレイされる本」。本とゲームとの多彩な関係が一望できる展示レポート
このブースでは,協会メンバーが所有する希少なゲームが数多く展示されているだけでなく,それらが毎年異なるテーマに基づいて体系的に陳列されている。このため,欧米のゲーム文化がさまざまな側面から理解できるのだ。残念ながら日本やアジアのゲームにスポットは当てられていないが,欧米のゲーム文化史を知ることは,我々にとっても少なからぬ意義があるはず。
そんなESGの今年のテーマは「プレイされる本(Gespielte Bücher)」。 今年も,協会名誉会長のRudolf Rühle氏による解説ツアーに参加してきたので,写真を中心に紹介しよう。
本からゲームへ
本とアナログゲームとの間には,どちらも紙でできているという共通点だけでなく,多彩な関わり方が存在しうる。その中でも多いのが,「本を原作としてゲームが作られる」というケースだ。
とくに,絵本,コミック,童話を元にしたアナログゲームは,原作の世界をさらに楽しめるという構造になっている。
ほかにも,冒険小説や探偵小説など,ゲームと相性がいい小説のジャンルは数多く存在する。
ゲームから本へ
一方で,SFやファンタジーのジャンルとなると,本とゲームとの関係はより複雑になる。本の原作からゲームが製作されることもあれば,その逆に元々はゲームだったものがノベライズされる,ということも頻繁に起こるからだ。
また現代では,ゼバスティアン・フィツェックに代表されるように,ゲームというジャンルを自らの作品を表現する場として肯定的に捉える作家も多くなってきている。
個人的に気になったのが「彷徨う本の修道院(Abtei der wandernden Bücher)」だ。この作品は,エーコの「薔薇の名前」にインスパイアされただけでなく,本がゲーム中で主要な役割を果たしているという点でユニークである。ちなみに,ESGのブースに展示されていたのは,1993年に200個限定ですべて手作りで制作された超限定品だ。
現在は20〜30万円で売買されているとのことで,間違いなく今回の展示品中でもっとも貴重なゲームといえるだろう。内容が気になるという人は,廉価版の「Abtei der Rätzel」がリリースされているので,そちらで確認してみるといいだろう。
本がそのままゲームになっているというケースも存在する。こう書くと,4Gamer読者であれば「ゲームブック」を思い浮かべる人がほとんどだろうが,意外なことに,ゲームブックは出展されていなかった。
ここでいう本とはスゴロクや迷路といった平面的なゲームを複数扱う雑誌を指している。頒布形態としての書籍との相性が非常によいということもあり,こうした雑誌は古くから出版されてきた。また,新作ゲームの発表機会を提供するだけでなく,オリジナル版が絶版になってしまったゲームを復刻する上でも大きな役割を果たしている。
Rühle氏は,「アナログゲームと本」というのは非常に大きなテーマのため,網羅しようとするとホールがまるまる1個必要になってくると述べていた。とはいえ,今回のESGの展示は,両者の双方向的な関係を十分把握できるものになっていたように思う。
毎年のテーマは協会メンバーの推薦・投票で決まるということで,来年の展示も今から楽しみだ。もしSPIEL'19に行く予定があるのならば,ぜひESGブースにも足を運んでみてほしい。
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