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[GDC 2019]ハロー,SAM。ゲーマーに特化したAIアシスタントを紹介する「Building "SAM" the First AI Chatbot for Players」をレポート
2018年1月にカナダで,6月に世界でβ版の配信が始まった「SAM」は,ゲームプレイヤー向けに特化したAIアシスタントだ。プレイヤー自身のUbisoft Clubアカウントと連動することで自身のゲーム進行の情報確認やUポイントの管理などが行えるスマホアプリ「Ubisoft Club」で使用可能だ。
「ゲームプレイヤーにとっての親友となるようなAIアシスタント」が目標だという「SAM」は,会話やテキストでゲームの新情報を教えてくれたり,ゲームの状況やヒントを伝えてくれたりする。もちろんAIなので,多くの使用者からの質問内容やSAMに対する反応などから学習したうえでの対応だ。
ゲーム最新作の発売日やリアルイベントの情報といったニュース,ゲームのヒントやマップ,プレイムービー,そしてプレイヤーの心をくすぐるようなもの(イースターエッグ)などを届けながら,プレイヤーからゲームの評価や好きなキャラクター,トレンドといったトピックを集めて学ぶ。こうしてSAMは新たな知識や経験を得て成長するのだという。
イメージ動画で紹介された,ゲームプレイのサポートシーンは驚かされるものだった。ゲームを起動するたびにSAMはそのデータを集めて分析し,ゲームの進行状況といった情報を覚えるだけではなく,プレイヤーの思考を短い時間で学んでいく。そしてすぐにプレイヤーに“パワーアップ”し,より役立つアドバイスを送ってれるようになるという。
例えば対戦型シューターの場合だと,何月何日何曜日に何時間プレイしたか,勝率はどうだったかを覚えており,それを聞いたら教えてくれるだけではなく,次にプレイしようとしているマップでの勝率や,オススメの武器などを教えてくれるという。
大きな試みなだけにもちろん大変な面も多い。ゲームプレイヤーが理想とするのは,ゲーム中に先に進めなくなったときやイライラしてしまうようなときに,すぐにヒントを教えてくれるAIアシスタントだ。したがって,多くのプレイヤーが関心を持ち,そして懸念を抱いているのが,「アシスタントは間違えないか」という部分だ。
また「言語」についても,SiriやAlexaなどと違い“ゲームに特化したAI”なので,重視すべき言葉がほかとは異なる。ゲームタイトルの略称,ネットスラング,チャットやSNSで使われる略語など,SAMに「ゲーマーと話すことが必要」と教え,社内のスタッフはもちろんユーザーにも協力を仰いだ。人種や性別,政治,いじめといった繊細な問題にも向き合っているという。
こうして成長を続けるSAMの1年間を,「機械学習は想像よりもトリッキーなことがあり,またAIアシスタントを成長させそれを持続するには,チームとなって動くことが必要。SAMが自身の質問に答えられないのは自身が教えられてないところで,見直さなければならない部分だと知れる」と,Charles Huteau氏は振り返る。
SAMは,配信からおよそ半年で480万以上の人にインストールされた。そして,その中の60%のユーザーが会話をしたという。これは当初の目標である25%を大きく上回る結果だ。さらに,約1000万以上の回答は88%の正確さを誇ったそうだ。
SAMは世界での配信が始まってまもなく2年目に突入する。今は,チームを作ったりゲームサーバーの状態が確認できたりと,プレイヤーと開発者それぞれに向けた新機能の追加を目標にしているという。現状では英語のみに対応しているが,気になる人は実際に触れてみてほしい。
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