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ゲームやアニメのメカデザイナー・河森正治氏が自らの作品展示を解説した,「河森正治 EXPO」のメディア内覧会をレポート
本稿では,この展示会開催に先駆けて行われたメディア内覧会の模様を,河森氏自身による展示解説を交えてレポートしていこう。
河森氏は各コンテンツで原作,企画,メカデザイン,絵コンテ,監督など,さまざまな役割を担っており,本展示会にはその過程が展示されている。その意図を,河森氏は「それぞれを見て,アイデアがどのように誕生したのか,いかにしてブラッシュアップしていったか,ラフスケッチやメモなどから感じ取っていただければ」と説明。また会場に展示された大型フィギュアなどについても,「単なる2次創作ではなく,監修でチェックし,やりとりしながら作っています。そんな世界観が伝わればと思います」と話していた。
会場内に設置された「K-10 ドームシアター」では,河森氏がこれまでに作り出してきたキャラクターやメカが結集する約4分間の会場限定映像を,直径約10メートル,高さ約5メートルの全天周シアターを介して体験できる。
河森氏は30年ほど前からこの映像表現にチャレンジしたかったとのことで,「2次元のスクリーンは表現が限定されるので,客観的に観ることになってしまう。しかし,ドームシアターならその世界の中に入り込めるので,現実世界のように,1回観ただけでは見逃す部分が生じる。その目まぐるしい体験を提供したかった。ぜひ何度も楽しんでいただきたいです」と説明していた。
「メインパビリオン」では,河森氏の手がけてきたコンテンツに登場する巨大メカの立像や変形トイ,キャラクターフィギュアなど,立体物を通じて河森氏の世界観を体感できるようになっている。また河森氏自身が撮影・編集した映像も上映されている。
クリエイティブパビリオンは,河森氏が各コンテンツを作るにあたって作成した企画書やストーリーメモ,デザイン画,絵コンテ,そして未公開資料など数百点を,5つのゾーンに分けて展示している。
河森氏によると,自身の制作過程をさまざまな角度から確認できるような展示を心がけたとのことで,例えば「超時空要塞マクロス」であれば,決定稿になる前のストーリーやコンセプトのメモ,イメージボードなど,貴重な資料を見られる。
またこのパビリオンでは,河森氏が監督を務めたコンテンツでは絵コンテが中心,メカデザインを手がけたコンテンツではデザイン画や設定が中心といったように,関わった役割ごとに見せ方を工夫したという。
ちなみにゲーム関連では,フロム・ソフトウェアの「アーマード・コア」シリーズに登場するメカの設定画やラフデザインなどが展示されている(撮影禁止のエリアだった)。
加えてここでは,コンペに落ちた(つまりボツになった)河森氏の幻のデザイン画なども確認できる。会期中に展示を増やしていく予定もあり,その中には富野由悠季氏と一緒に手がける予定だった幻のコンテンツも含まれているのだとか。
河森氏は,「どんなにボツを食らっても,めげないでやり続ける。そんな部分が伝わってもいいんじゃないでしょうか」とコメントしていた。
例えば会場には,何千本ものロケット花火を一斉に発射した光景が再現されているが,これは自身の表現にも大きな影響を与えたとのこと。また河森氏は,ロケット花火の話でアニメーター・板野一郎氏と盛り上がり,「マクロス」の制作に誘ったという逸話なども披露していた。
「フューチャーパビリオン」では,河森氏が現在進行形で手がけている最新コンテンツなどが紹介されている。
6月14日公開の劇場版「誰ガ為のアルケミスト」では,ストーリー構成と総監督を務めているが,河森氏は「40年続けてきて初めて原作付きの監督をすることになった。原作のスマートフォンゲームのスタッフとも交流を深め,かなりの自信作になっているのでご期待ください」「新しい主人公とストーリーを用意したので,原作ゲームを知らなくても楽しめます」と意気込みを見せていた。
展示解説の終盤,河森氏は今後ドームシアターや体感型のVRコンテンツ,手描きアニメや実写を問わず映画にも挑戦したいとし,ぜひいろんな業界の人達と一緒に仕事をしていきたいと発言。その原動力を,3歳の頃に富山から横浜に引っ越してきたときに受けたカルチャーショックと,それに伴う好奇心にあると語った。
そして最後に,「この40年続けて来られたのも,皆さんがコンテンツを観てくださり,応援してくださったおかげです。大勢のスタッフに代わり感謝します。これからもずっと新しいもの,新鮮なデカルチャーを提供していきますので,ぜひこの展示会にいらしてください」と述べて,展示解説を終えた。
「河森正治 EXPO」公式サイト
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