インタビュー
中国有数の動画配信プラットフォームがついに日本上陸。DouYu(ドウユウ)+三井物産で,何を起こそうとしているのか
DouYuといえば,中国動画配信サービス最大手の1つで,その規模たるや尋常ではない。
2014年に設立され,つい先日7月17日にNASDAQへの上場を果たして時価総額約3950億円に達したDouYuは,ユーザー数2.8億人,MAU1.6億人の動画配信プラットフォームだ(2019年Q1調べ)。2016年末時点で9870万人だったユーザー数は2年で急成長を遂げ,それとときを同じくした2018年度に黒字転換した形になっている。ちなみに2019年のQ1だけ見ても,ユーザー数が2730万人増えており,単純計算で1日30万人が増加しているわけで,中国という国の果てしない大きさを感じる。
特徴ともいえる「投げ銭」による売り上げは,2019年Q1の報告書によればユーザーのうち600万人が投げ銭をしており,2018年度の売り上げは36.5億元(約584億円)とのこと(前年比+93.8%)。生配信のARPPUは,2018年データで574元(約8700円)となかなか高く,そのうちゲーム部門は365元(約5555円)だ。ガチャもないのにARPPUが5500円……。
星の数ほどあった中国の動画配信プラットフォームの中で,生き残った数少ない会社の一つであるわけだが,そのDouYuがついに日本上陸をするという。しかも三井物産と手を組んで。
DouYuが日本に意識を向け始めたのは昨年あたりから。(DouYu自身から)聞いて知ってはいたが,動きは想像していたより速く,組んだ相手もやや意外だった。その意図と,どういうサービスにするのかを聞きたくてDouYuに連絡を取ってみたが,上場間もないこともありインタビューすることはかなわず,代わりといってはなんだが,ChinaJoy開催場所である上海で,三井物産サイドの担当者を捕まえることができた。
まだサービスの全貌は出来ていないとのことで,青写真もやや不透明であろうことから,根掘り葉掘り……というわけにはいかなかったが,三井物産側の取り組み方はいろいろと聞くことができた。ここにそれを掲載しよう。
三井物産 公式サイト
DouYu(斗鱼)公式サイト
4Gamer:
少しだけとはいえ,お時間を取っていただいてありがとうございます。さて今回は……。
三井物産 メディア事業部 長瀬太陽氏(以下,長瀬氏):
DouYuの話ですよね?
4Gamer:
そうです。数日前に日経に掲載された記事を見たので,DouYu(斗鱼:ドウユウ)の知人をたどってインタビューの打診をしたのですがそれはかなわず,ですがその中で三井物産の担当者が上海に来ているということを聞きつけ,急遽連絡してお時間を取ってもらった次第です。
長瀬氏:
ありがとうございます。上海で日本の方に,しかもゲームメディアにインタビューされるとは思いませんでした(笑)。でも,あれを見て結構いろいろな方が連絡を下さっているんですよ。
4Gamer:
お,そうなんですね。さすがに割とインパクトありますしね。
長瀬氏:
いやまぁ,かなり多くは社内なんですけどね(笑)。
4Gamer:
あぁ……さすが巨大企業……。
でも三井物産って実はゲーマーにとってもなかなか縁が深くて,昔からゲームとかエンターテイメント関係のことを結構やってますよね。僕らゲーマーにとって一番思い出深いのは「メディアクエスト」(現キッズステーション)※だと思いますが。
※メディアクエスト:三井物産の関係会社である,AKホールディングス傘下のキッズステーションが2002年に営業譲渡を受けた,ゲームソフト開発・販売部門
長瀬氏:
そうですね。メディア事業を考えていくと,コンテンツとしてもやはりゲームは出てくるものなので,昔からそういう話が多いのだと思います。
4Gamer:
それにしてもメディアクエストだって「片手間」という感じじゃなかったですし,社の方針か何かなんでしょうか。
三井物産有限公司 ICT事業部 部長 福田得郎氏(以下,福田氏):
社内に現ICT事業本部の前身となる部門が出来たのが,1985年ごろです。通信自由化をきっかけに,通信は第二電電系の通信事業が出来て,メディア事業も衛星放送やチャンネル事業などが出来ています。
4Gamer:
なるほど。あの時代に端を発するんですね。
福田氏:
ええ,そこからなんですよ。そこから,衛星放送プラットフォーム,チャンネル(番組供給),コンテンツ,テレビショッピング,インターネットなどに取り組んできて,綿々と今の事業や組織に繋がってきているわけです。
4Gamer:
そこから続いてるんですね。今回のDouYuの件もその中の一環で?
福田氏:
そうですね。ライブ配信事業も,まさにメディア事業ですので。
4Gamer:
しかしDouYuですか。配信って今,一番……なんというかレッドオーシャン的な。
長瀬氏:
そうですね。そちらの業界の人達は,たぶんレッドオーシャンだと考えてるだろうなとは思います。
4Gamer:
分かっていつつも,なぜそちら側に注力を?
長瀬氏:
私はメディア事業部なんですけど,もともと,eスポーツ自体を追いかけていたんですよ。個人としても,部としても。
4Gamer:
それは「業務」の中だけでなくて,個人で配信とかも観ているということですか?
長瀬氏:
観てますねえ。暇さえあれば観てます。
で,やっぱり私自身もゲームと一緒に育ってきた世代で、ファミコンからずっと色々なゲームをしてきたわけです。ゲームそのものは日本もまだまだ強いですが,でもやっぱり話がeスポーツになると,どうしても海外中心みたいなところがありますよね。
4Gamer:
確かに現時点では,強く否定はできないですね。
長瀬氏:
日本はコンピュータゲームの歴史がすごく長いのに,eスポーツに関しては全然定着していないというギャップを感じていたので,逆にそこにチャンスがあるかもしれないなと思って,いろいろな人にお会いして話をしてきたんです。
4Gamer:
その結論が今回の話に?
長瀬氏:
ええ。やっぱりプラットフォーム事業だな,と。
メディア事業部で,「プラットフォーム」という観点からいろいろと情報を掘っていたときに,海外っていまどんな感じなのかな……という中でDouYuと出会いました。
4Gamer:
海外の,しかも中国の会社と組むのはちょっと意外でした。
長瀬氏:
海外のマーケットの「進んでるもの」を日本に持ち込むというのも1つの戦略でしたから。配信事業において,世界に出られる拠点があるというのは凄まじくレバレッジがある話ですしね。
4Gamer:
それはそうですよねえ。国内でサービスを作って海外に出ていくのは,なかなか至難の業ですし。
リアルイベントも開いたりとか――配信者と視聴者の双方が大事であるように,オンラインとオフラインも大事
4Gamer:
でもたぶんですけど,いくつか候補があった中からDouYuを選んだわけじゃないですか。三井物産から見たときに,DouYuの「強み」って何なのでしょうか。
長瀬氏:
そうですね……そこは3つあると思っています。
1つは,AIなど技術的なところのテクノロジーの凄さ,でしょうか。我々もそういうことを長いことリサーチしていますが、DouYuはそこの部分が本当に凄いと思います。
4Gamer:
それは私も聞いたことがあります。技術屋集団らしい強みと言いますか。
長瀬氏:
もう1つは,DouYuが立ち上げからいままでやってきた中で,当時100社ぐらいあった中国の同業者の中から勝ち上がってきたという事実と,配信者のマネジメントであったりとかそういう部分でしょうか。やはり莫大な知見を持っていますよね。
3つめは……ちょっと忘れちゃいました(笑)。
福田氏:
いままで「おおカッコイイな」と思って聞いてたのに!
4Gamer:
いいこと言ってるなぁ,と思って頷いていたのに(笑)。
長瀬氏:
あ,思い出しました(笑)。
3つめは,業界内のコネクションです。特に,有力なゲームパブリッシャやトップ配信者とのネットワークは,今回の事業を進める上で非常に魅力的な部分だと思っています。
4Gamer:
中国って、通信環境の違いがとても広範囲で,端末もめちゃくちゃ種類があって、場所や端末によってはラグもかなりひどくなるので,彼らの技術力って意味が分からないくらい凄くなってますよね。
スマホのMMORPGが出た当時から「これどうやってんだ??」という作品がありましたし,そういう技術力がそのまま「配信」というサービスにも出てきてるんでしょうねえ。
長瀬氏:
そうですね。
あと4Gamerさんに向かって言うことではないですが,今のゲームのグラフィックスもすごく美麗になってきています。そうすると配信するプラットフォームも美麗な画面を出せないとダメなわけです。配信者のモチベーションも上がらないですし,観る側も楽しめない。
4Gamer:
確かに配信の素材であるゲームのグラフィックスクオリティが年々上がっているんだから,配信プラットフォームも追いついていかないとダメですね。
長瀬氏:
そこが両方合わさることによって,初めて「観て楽しいエンターテイメント」だと思うので,そういうものを日本に持ち込むことによって、日本の市場はもっともっと活性化できるんじゃないかと思っています。
4Gamer:
いまおっしゃった「市場」はどこを指しますか?
長瀬氏:
日本のeスポーツライブストリーミング市場……?
4Gamer:
eスポーツ……とはかなり絞ってきましたね。日経の記事見たときにも思いましたが。
長瀬氏:
あぁ。ではそこを「ゲームライブストリーミング」と言い換えさせてください。
4Gamer:
なるほど。狭義での「eスポーツ」にこだわっているではない,と。
長瀬氏:
狭義でのeスポーツなんかはもちろんですが,eスポーツに近いようなゲームや,逆にスポーツ性自体はあまりないゲームも含めて考えています。コンテンツとしては大いに価値があると思うので。
4Gamer:
つまり「ゲームのストリーミング全般」なんですね。
長瀬氏:
そうですね。呼び方をどうするかということはありますが,「割とゲームに特化したライブストリーミング」に近いかもしれないです。
4Gamer:
であれば理解できます。初出の記事を見たときに「eスポーツだけなのかぁ」と思ったので。……逆に,あえて大会を開催してみるとかは? 自らコンテンツを作る的な。
長瀬氏:
我々に出来るのか出来ないのかという現実的な話をいったん抜きにすれば,もちろんそっちもアリだと思います。本国のほうも大会イベントはやってますし,それに近いものはやっていけると思います。
4Gamer:
それは,今回作るJVが主催する感じで?
長瀬氏:
そうですね。ただ,あくまでもそれはライブプラットフォームのファンエンゲージメントを高めるためのものなので,オフラインとオンラインを思い切り分けるのではなく,両方がキチンとかみ合っていることが理想だと思います。
4Gamer:
配信者と視聴者の双方が大事であるように,オンラインとオフラインどちらも大事である,と。
長瀬氏:
はい。それこそが,ファンが一番楽しめる環境だと思うので。オンラインもオフラインも両方あると楽しいな……という感じでしょうか。
4Gamer:
例えが適切かどうかは分からないですが,聞いてる感じだと「闘会議」の存在に近い感じですかね。
長瀬氏:
確かにそうかもしれないですね。
4Gamer:
ストリーミングのコンテンツとしての大会をキチンと開催することで、オフラインとオンラインの両方のユーザーさんに楽しんでもらう……という。
長瀬氏:
そうですね。ただ「楽しむ」といっても本当に色んな「楽しむ」があるわけで,自分が参加して楽しいというのと,人のプレイを見て楽しいというのは全然違うものなわけじゃないですか。そういうところのノウハウもまだ浅いので,どういう形が一番いいのか,追々考えていこうと思います。
配信者も視聴者も双方を楽しませたい――今以上のライブ性であったり,ハプニングであったり,相互コミュニケーションであったり
4Gamer:
三井物産という会社の中で,そういう知見が高い人はどれくらいいるんですか? なんかこう,ステレオタイプで申し訳ないですが,日頃あまり縁がないので「お堅い人達」を想像しちゃうんです。
長瀬氏:
メディア事業部の話で言うなら,例えば関係会社のAKホールディングスの傘下には「キッズステーション」「ANIMAX」というアニメ専門チャンネルがありまして,特に「キッズステーション」に関しては,1996年から最近まで経営権を持って運営してきました。
4Gamer:
そういえばそうでした……。
長瀬氏:
社内社外問わず,どういうところに相談すれば何が出来るのかというのは把握してますよ。
4Gamer:
なるほど。ゲームプレイヤーからすると,三井物産と言われても「それ……誰?」という感じになってしまうわけですよ。
長瀬氏:
確かにそうですよねえ。
4Gamer:
凄く表現が悪いんですが,お金があって人もいる会社が「はやりだからなんとなくeスポーツいっとく?」みたいな見られ方をしている部分もあるんですね。でも話を聞いている感じ,そういうわけではなさそうな。社内に綿々とつながるエンタメコンテンツのラインの一つのアウトプットの形であって,前々から考えていたことである,と。
長瀬氏:
そうですね。ゲームプレイヤーの方やそれを観る人達が,いまよりもっとコミュニケーションを取りながら楽しむ姿……というのが,まだいまのゲームの先にあるかな,と考えています。そういう状況に向けて,テクノロジーを使ってスポットライトを当てることが普通に出来るようになっている時代なので,それを進めていきたいです。
4Gamer:
テクノロジーを使ったスポットライト……でぼんやりと考えてることってどんなことですか?
長瀬氏:
たとえばいまのライブストリーミングに,これまで以上のライブ性であったり、ハプニングであったり、相互コミュニケーションであったり,そういうものをもっと強く加えることによって、さらなる盛り上がりが出来るかなと思っているわけです。
4Gamer:
なるほど。
長瀬氏:
そしてそういう盛り上がりによって,配信者も視聴者も,双方を楽しませたいと思っており,それが我々の使命……というか目指しているところなんです。それがビジネスとして成り立つというのはもちろんとても重要なんですが,本質としてはそこじゃないな,とは思っています。先ほども言いましたが,三井物産という会社が持つ「エンタメライン」の一環なのです。
4Gamer:
なるほど。
ところでJVを立ち上げてプロジェクトをローンチしたときに,一番最初にすることって何ですか?
長瀬氏:
そうですね……実業という意味では,配信する人たちを増やしていきたいですね。そのための戦略をいま考えているところです。
4Gamer:
配信者を増やしてコンテンツを増やして……。
長瀬氏:
はい。
4Gamer:
意外と真っ当で地道なところからになるんですね。
長瀬氏:
やることの派手さを考えたら,本当に地味だと思います(笑)。
4Gamer:
それで,これは何年でリクープするプロジェクトなんですか?
長瀬氏:
さすがにちょっとそれは……(笑)。
4Gamer:
昔,半分冗談半分本気で,4Gamerで配信プラットフォームを立ち上げてみよう,ってシミュレーションしたことがあるんです。どれくらいかかるのかな,って。
長瀬氏:
それは興味深いですね。
4Gamer:
当時の試算では,ゼロからフルスクラッチで起こして,とても順調にうまくいってビジネスモデルもちゃんと回ったとして,最低でも5年くらいは必要だなぁ,となったわけです。
福田氏:
誘導尋問うまいですねえ(笑)。
長瀬氏:
いやあ,ホントに(笑)。
4Gamer:
あぁ……じゃあそれくらいの数字なんだろうと思っておきます(笑)。
長瀬氏:
ノーコメントです(笑)。
4Gamer:
マネタイズ関連で言うなら,DouYuといえば「投げ銭」ですが,おそらくそれも普通にやりますよね?
長瀬氏:
もちろんです。でも,もちろんその投げ銭だけでマネタイズしてひたすら配信して……ではなくて,先ほど申し上げた通り「配信者と視聴者が楽しめる形」を作りたいなと思っていて、投げ銭はそのための一つのアイテムであり手段でしかないんですよね。
4Gamer:
おっしゃることは分かります。
長瀬氏:
なので,それが日本であまりうまく動かないのであればすぐに別の方法を考えますし,そのあたりは臨機応変にいきたいですね。
4Gamer:
投げ銭って,eスポーツ絡みで言うなら「新しいスポンサーの形」になる可能性があると思っているので,ちょっと期待してるんですよね。もちろんその場限りのテンポラリーなものでしかないですが,それだって全然OKですし,そもそも気軽にできることが重要です。
長瀬氏:
そうですよね。弊社の中でも「それって要はクラウドファンディングに近いんじゃないの?」みたいな話はあります。そういう意味では,いまおっしゃったことは認識としてはかなり近いと思います。
4Gamer:
なるほど。eスポーツ界隈における「新たな何か」になってくれることに個人的に期待しています。
長瀬氏:
もうちょっと盛り上がる何かは欲しいですよね。一人のユーザーとしてもそう思います。弊社がそこにどういう形で貢献できるのかは分かりませんが,努力はしていきたいと思っています。
日本のマーケットは世界でも難しいほうなので,日本企業として知見をキチンと伝えたい
4Gamer:
話は変わりますが,DouYuというサービスをそのまま日本に作る感じですか?
長瀬氏:
そうです。
4Gamer:
JVの人員は両方から?
長瀬氏:
具体的な人数はちょっと言えませんが,両方から来ていている感じです。もちろん採用もしていくつもりですし。
4Gamer:
JVで新卒……はさすがにないか。新規採用を。
長瀬氏:
そうですね。会社が軌道に乗り出したら新卒採用も考えたいですが。
4Gamer:
ちなみに社長はどっちがやるんですか?
長瀬氏:
今のところはまだ言えないです。
4Gamer:
でもさっき「親会社」って言ってたので,社長は本国側ですねきっと。
……いやそこがどうしても知りたいというわけではなくて,ゲーム会社なんかもそうなんですけど、中国の会社が日本と組んで何かしようとするとき,中国側の本社が全部コントロールしようとしてうまくいかなくなることが多いんです。そういうことにならないといいな……と思ってる次第でして。
長瀬氏:
その話は確かによく社内でも議論になりますが,基本的にDouYuは日本市場を尊重してローカライズを徹底する姿勢で,現状,双方を互いに尊重して意思決定しています。
やっぱり日本のマーケットっていうのは,世界の中でも難しいほうだと思うんです。ゲームでもそうでしょうけど。なので,そこで何かしら日本企業として,知見をキチンと伝える役割をうまくやっていきたいなと思います。
4Gamer:
もちろん中国側の意見がまったく間違ってるとかそういうことを言うつもりはないですが,「それは日本でやっちゃダメなのに!」とか「あんまり意味ない気がする……」とか,そういうことも結構あるんですよね。
長瀬氏:
はい。ただ,DouYu本社の社長さんってものすごく日本のことが好きで、日本の文化が大好きで,本当によく日本のことを分かっているように思います。
4Gamer:
確かにDouYuは,実は別件で経営陣と会ったことがありますが,みんな驚くほど若くて,日本の文化が大好きですよね。よく存じてます。
長瀬氏:
ホントにそうですね。社長の世代になると,ちょっと私に近い感じなんですけど,日本のサブカルチャーだったりそういうものにすごく詳しくて,日本のことをかなり理解しているように思います。そんな彼が「日本に入っていくためには日本のパートナーが絶対に必要だ」と考えているようなので,感覚は近いように思っています。
4Gamer:
日本にリスペクト世代でちょっと上のほうということは……三十代前半〜中盤?
長瀬氏:
ええ,社長さんはいま今年35歳です。先ほどなぜDouYuなのかという話がありましたけど,いま申し上げたように逆に向こうから「日本進出にあたってパートナーが必要だ」という話が来て,そこがうまくかみ合って今回の案件になったのだと考えています。当たり前ですが,我々が自由気ままに選べるわけはないですから,お互いのニーズがうまくマッチした感じですね。
4Gamer:
どちらかが説得してパートナーになった……という感じじゃなさそうですね。
長瀬氏:
目指しているところが結構近かったといいますか。
サービス名も変更して,本国のノウハウをフルに使って,完全に日本に根付くサービスを作りたい
4Gamer:
8月に会社を立ち上げて,DouYuのサービスが実際に日本でローンチされるタイミングっていつごろなんですか。
長瀬氏:
秋ごろです。
4Gamer:
記事には「9月」とありましたけどさすがにそれはないですよね?
長瀬氏:
「秋」です! 冬に近い秋かもしれないですけど……。
4Gamer:
ではその秋のサービスローンチにあたり,一番の障壁になりそうなものって何だと思いますか。
長瀬氏:
障壁……はやはり日本市場へのローカライズでしょうか。DouYu本社が色んな国でやってきた経験はもちろんありますが,それでもやっぱり「分からない」と思うんですよね。まあでも,それはやってみないと分からないことだし,座って議論していても意味はないので,やるしかないんですけど。そういう意味では「障壁」ではないですね。
4Gamer:
そこは修正しながら進めていく感じで。
長瀬氏:
はい。そうですね。
4Gamer:
なるほど。それにしても,日本に新しいストリーミングプラットフォームが増えるわけですねえ。
長瀬氏:
プラットフォームの数はまだ,もうちょっと増えても大丈夫だと思うんですよね。なので競争するというよりは,一緒に盛り上げていきたいなと。
4Gamer:
ライブストリーミングプラットフォームって,例えばクルマとかPC本体なんかとは違って,同時に共存できるわけですからね。YouTube1個あったら,Twitch1個あったら,そこですべてが終わるわけじゃないですし。
長瀬氏:
そうですね。たぶん好きな配信者さんとか,好きなゲームであったりとか,自分にマッチした配信時間であったりとか,人それぞれ使い方は違うと思うんですが,その中で我々のプラットフォームを気に入ってるいただける人がたくさん出てくるといいな,と思っています。
4Gamer:
ちなみに好奇心から聞くんですが,サービス名ってどうするんですか?
長瀬氏:
決まっています。
福田氏:
発表してなかったっけ?
長瀬氏:
まだしてないですね。
4Gamer:
いつ頃の発表になるんですか?
長瀬氏:
ローンチのタイミングだと思います。
4Gamer:
「決まってます」というお返事からして,たぶん変えるわけですね。「DouYu.tv」とか「DouYu Japan」とかそういう名前ではなさそうです。
長瀬氏:
あぁ……そうですね,変えます。やはりそこも含めてローカライズだと思うので。
4Gamer:
カルチャライズ的要素が多分にありますからね名前って。ちなみに名前を変えることについて本国は?
長瀬氏:
むしろ変えたいという感じです。
4Gamer:
さすがですねえ,若い感性のDouYu。
長瀬氏:
本当に若いですよね……。最初の会社が「起業」みたいな,そんな人ばっかりで。
4Gamer:
では,名前を含めてカルチャライズするとして,その日本版DouYuが「ここが強みだ」と言えるポイントはどこですか?
長瀬氏:
ええと……一つだけですよね?(笑)
4Gamer:
ええ。なんかひと言でスパッと分かるやつで。
長瀬氏:
うーん……ひと言は難しいですしちょっと繰り返しになっちゃいますけど,DouYuっていう会社がeスポーツのコンテンツからスタートして今までずっと,中国という国で勝ち上がって勝ち残るための戦略をどんどん回してきたという事実とその知見,でしょうか。
4Gamer:
確かにすでに成功者なわけですからね。少なくとも中国では。
長瀬氏:
はい。この中国で勝ち残ったノウハウは我々も期待していますし,それが日本であっても間違いなく生かせる部分があるはずです。もちろん,ビジネスモデルやテクノロジーなど,さまざまな部分に強みがありますが,やはり一番は「ノウハウ」でしょうか。
4Gamer:
そしてそれは,日本国内で使えるものであると。
長瀬氏:
はい。根幹は,「ユーザーさんを楽しませる」ところにあって,常にそこを考えているということだと思うんです。そうじゃないと成功できませんし。
4Gamer:
確かにそうですね。
ではローンチを期待して待ってます。近づいたらまた教えてください! ありがとうございました。
――2019年8月2日収録
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