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[TGS 2020]基調講演「未来は、まずゲームにやって来る」レポート。国内4社の代表者が新しい時代との向き合い方を語った
■出演者:
内山大輔氏
バンダイナムコスタジオ
代表取締役社長
竹内 潤氏
カプコン
常務執行役員 CS第一開発統括 兼 第一開発部長
谷渕 弘氏
コナミデジタルエンタテインメント
「パワフルプロ野球」「プロ野球スピリッツ」シリーズ
エグゼクティブディレクター
浜口直樹氏
スクウェア・エニックス
第一開発事業本部 ディビジョン1 マネージャー
「FINAL FANTASY VII REMAKE」共同ディレクター
林 克彦氏(モデレーター)
KADOKAWA Game Linkage
ファミ通グループ代表
※掲載している画像は配信映像をキャプチャしたものです。
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新しい時代を迎え,それぞれの向き合い方
最初のトークテーマは「次世代機の未来」だ。11月に発売を控えるPlayStation 5やXbox Series Xについて,対応タイトルを発表しているバンダイナムコスタジオの内山氏は,次世代機が持っているハードウェアのパフォーマンスやパワーに手応えを感じていて,驚かされていると語る。そして,これをプレイヤーの体験にどうつなげていくのか,また遊びにつなげていくのかを問われている側面も感じているという。
同じく次世代機向けタイトルを発表しているカプコンの竹内氏は,触っている感覚として,現行機の性能と比べて「遥か遠くに出口があるみたいなハード」と表現。また,処理も読み込みも速く,この速さをどのようにゲームに落とし込むかを考えていると語った。
さらに,従来の考え方からシフトしないとうまく使いこなせないのではないかと指摘し,その一つの例として「ローディング」を挙げた。現行機のゲームではロード中の画面にTIPSを表示させるものが多いが,次世代機ではロード時間の短縮により,その使い方ができなくなるというわけだ。次世代機の開発では,いろいろなところにこうしたケースがあるだろうと述べていた。
一方,スクウェア・エニックスの浜口氏は次世代機に触ったときに,さまざまなゲームのプラットフォームがあるなかで,うまく棲み分けができてきたと感じたそうだ。
たとえばスマートフォン用ゲームは生活に溶け込んでいく形で進化を遂げている。それに対して,次世代機は特別な体験や没入感を求めたいという目的で進化していて,プレイヤーのモチベーションがはっきりしたと語る。それにより,ものづくりのビジョンが明確になって,コンテンツが届けやすくなると感じたという。
KONAMIのスポーツゲームを担当している谷渕氏は,三社のタイトルとはターゲット層が少し異なることに触れ,いかにして次世代機のプレイヤーに届けていくのかが課題だと語る。また,実際のスポーツが取り入れている最新ITテクノロジーにも言及し,こうしたものをゲームの遊びとして落とし込み,新たな遊びを作り出したいという。
竹内氏は次世代機を触っていくなかで,SNS上の人たちとゲームをプレイしている自分が,これまでとは違う形でつながっていきそうな予感があるという。その点では高速ローディングも無関係というわけではなく,シームレスになれば実況プレイの配信も変わるかもしれないと語った。
また,逆の考え方として,作り手側からのアプローチが必要になっていて,これはチャンスではないかと感じているという。
続いて,SNSを活用した「ユーザーコミュニケーション」の取り組みや捉え方についてトークが交わされた。
浜口氏が共同ディレクターを務めた「FINAL FANTASY VII REMAKE」は,緊急事態宣言による外出自粛の影響もあり,リリース後はSNS上の盛り上がりが顕著だったという。開発時にSNSの存在を特別に意識したわけではないものの,プレイヤーの話題に上がりそうな仕掛けや演出を仕込んでいたそうで,リリース直後にはそのキーワードで検索していたと明かした。
また,開発チームのスタッフにも「自分が関わったところを検索しましょう」と伝えて,プレイヤーの声を意識することを呼びかけたとのことだ。
この話を受けて,内山氏は「ゲームというものの定義をどこまでと捉えたらいいのか」について,見つめ直そうとしていると述べた。つまり,ゲームを中核として,関連するライブイベントや大会,実況プレイやSNS上の交流といったものも含めて,広く捉えるとゲーム体験と言えるのではないかというわけだ。
そして,ゲーム体験の広がりに対して,どのような機能や仕様,アイデアを提供すればいいのか。開発スタジオとしては,プレイヤーの動き方やつながり方まで含めてゲーム体験であると捉えたうえで,アウトプットをしていく重要性を強調した。
一方,谷渕氏は新型コロナウイルスの影響により,ユーザー参加型イベントに対する考え方を変えざるを得なかったと語る。KONAMIの野球ゲームでは,会場に多数のプレイヤーを集めてイベントを行っていたが,春以降はオンライン開催へとシフトしている。オンラインで何ができるかを考えるには,頭を180度切り替える必要があったが,それによって見えてきたものも多かったという。
最後のテーマは「ウィズコロナ時代のゲームづくりと未来」。現在はコロナ禍の真っ只中にいるわけだが,どのような変化があり,これからのゲーム業界がどうなるのかについて語られた。
今年4月の緊急事態宣言を受けて,4社はいずれもリモートワーク(在宅勤務)体制に移行したが,内山氏は「実際,やってみると案外できることがある」ことに気付かされたという。とくにプロダクション作業に入ったとき,集中してアセット作成しているときの生産性は悪くないと語る。
その反面,新しいチームを作り,雑談から生まれるアイデアをまとめあげる段階や,コミュニケーションによってチームをビルドする段階,また終盤の工程であるレベルデザインやチューニングは,リモートワークでは難しいことが分かったとのこと。こうした知見により,現在は開発作業に応じてリモートワークと通常勤務を使い分けているそうだ。
また,リモートワークがゲーム開発に与える影響を問われた浜口氏は,開発のスピードには心配していないとしつつ,自分たちの力だけでは動かせない部分への懸念を挙げた。現代のゲームの開発にはデベロッパのスタッフだけが関わっているわけではなく,声優やモーションアクターなどの存在が欠かせないが,そうした外的要因のリスクもあると指摘する。
さらに内山氏と同じく,雑談の中からアイデアをまとめることの重要性に触れつつ,その失われた部分をいかにカバーしていくのかが試されていると述べ,リモートワークによってより効率を上げる方向にしていきたいと語った。
その一方で内山氏は,コロナ禍を受けて世界が新しいスタイルを身につけたと指摘する。変わってしまった世界に適応するために,自分たちのクリエイティブの最適な解決策を模索していくことになるとの見解を示した。
竹内氏も「これからのゲーム開発が変わっていくのは間違いない」と同意する。その一例として,海外の会社と築いてきた協力体制がコロナ禍を受けて「ズタズタになった」ことを挙げ,こうしたサプライチェーンからサプライネットへと考え方の変化が必要になっていること,そして「業界全体の変化の時期が来た」と感じていると述べた。
最後はモデレーターと務めた林氏が,ゲームファンの一人として「新しいゲーム機やサービスで面白いゲームを遊びたい。それが実現しそうだと思えたことが嬉しかった」とまとめて,セッションを締めくくった。
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