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「黒川塾 八十四(84)」聴講レポート。インディーズゲーム市場の最新動向を3社のパブリッシャが語った
黒川塾の9周年特別企画第2弾と銘打った今回のイベントのテーマは,「2021年 インディーズゲーム最前線 識者に訊く市場環境」。配信では,インディーズゲームのパブリッシングを手がけるPLAYISMの水谷俊次氏と,コーラス・ワールドワイドの大柳竜児氏および二宮文月氏,日本マイクロソフトにてデジタル配信セルフパブリッシングプログラム「ID@Xbox」を担当している村山 功氏がトークを繰り広げた。
トークの最初のテーマは,「インディーズゲームの定義」について。水谷氏は,少し前は「作りたい人と,それにOKを出す人が一致しているゲーム」をインディーズゲームだと考えていたという。しかし最近は,パブリッシャがインディーズゲームクリエイターに出資するケースも珍しくなくなったことから,「作りたい人が,思いどおりに作れるゲーム」をインディーズゲームだと考えるようになったそうだ。
また,大柳氏は「基本的には,クリエイター自身がすべてのリスクを負うゲーム」としつつ,昨今ではさまざまな座組みがあり,インディーズゲームの定義があいまいになっていることを指摘する。「コジマプロダクションの小島(秀夫)監督は自身でリスクを負っているからインディーズだが,別の観点から見たら違うとも言える」「最近は我々も,あまりインディーズを売り文句にしないほうが良いのではないかと考えるようになった」と続けた。
二宮氏はパブリッシングを始めた当初は,予算や規模でインディーズゲームかそうでないかを判断していたというが,最近では数十人規模でゲームを開発しているインディーズデベロッパもあることから,「クリエイターの作りたいものを,最後まで作り上げたゲーム」と考えを改めたという。
村山氏は,ID@Xboxでは規模などを問わず,個人や企業がセルフパブリッシングするタイトルをインディーズゲームと位置付けていると説明した。
続いてのテーマは,「コロナ禍がインディーズゲームに与えた影響」。これについて,大柳氏はゲームの開発ペースが落ちたことや,BitSummitなどのリアルイベントがオンライン開催になったことを挙げる。二宮氏は,海外のクリエイターやデベロッパと直接顔を合わせて交渉する機会がなくなり,成約率が下がったことを明かした。
水谷氏は「不謹慎だが」と前置きしつつ,コロナ禍の初期はゲームの売上が上がったことを挙げ,「インドア中心の生活になり,お金の使いどころがなくなったという印象を受けた」と続けた。
さらに,クリエイターはもともとインドア中心の人が多いため,あまり生活に変化がないように感じたとも水谷氏は語る。またコロナ禍の影響かどうかは不明だが,事業計画などを提出して出資を求めるクリエイターが増えたのだという。
また,ID@Xboxの場合は,資金面よりもマーケティングのサポートを求めるクリエイターが多いのだと村山氏は述べた。
3つめのテーマは,インディーズゲームにおける「開発予算の高騰」について。大柳氏と二宮氏は,コーラス・ワールドワイドで扱うタイトルには,それほど大きな予算のものはないとしつつ,ロイヤリティの先払い(ミニマムギャランティ,MG)という形で開発資金を提供するケースが増えたことを挙げた。
水谷氏は,クリエイターが提示する予算は年々増えているとし,「海外で大成功しているインディーズゲームを見て,出資したい人も増えている。そのためクリエイターが求める額も増えているのではないか」と指摘する。さらにクリエイターに「出資しなかったら,そのゲームは作れないのか」と質問したら,「作れない」という回答されたこともあるそうで,「インディーズゲームとは何か」ということを改めて考えさせられたという。
なお海外では,インディーズを名乗っていてもパブリッシャに出資を募るケースは珍しくなく,大手海外企業によるクリエイターの囲い込みのようなことが行われるケースもあるそうだ。これについて,コーラス・ワールドワイドはゲーム開発に投資する企業ではなく,開発やマーケティングのサポートを事業としているため,一線を引いているとの説明がなされた。
水谷氏は,ビジネスである以上お金がものを言うのは当たり前としつつ,PLAYISMの規模だと大手企業に対抗するのは難しいと話していた。
話題は「ローカライズやカルチャライズの苦労」にもおよんだ。水谷氏は「カルチャライズはなるべくせずに,作家の個性を生かす」というPLAYISMの方針を紹介した。また,2020年3月に発売した「Bright Memory」は,もともとボイスが中国語しか存在しなかったが,中国以外での展開も視野に入れ,英語と日本語のボイスを入れることに協力したエピソードを披露した。
大柳氏も基本的にカルチャライズは施さず,オリジナルの良さを生かすことを意識しているとのこと。また二宮氏は「カルチャライズをガッツリしなければならないタイトルは,そもそも日本の市場に合わない」とし,「ローカライズだけで売れそうなタイトルを選んでいる」と語った。さらにローカライズに関しては,今やGoogle翻訳でも日本語化できることを指摘し,日本の文化などになじむよう翻訳者が考えてテキストを作っていることを紹介した。
最後は,各社の今後の展開について語られた。大柳氏は,コーラス・ワールドワイドでに日本のインディーズゲームを扱っていきたいとのこと。これまでは海外タイトルの取り扱いがメインであり,日本のタイトルはほとんどなかったので,取り扱いを増やしたいそうだ。なお,コーラス・ワールドワイドは,9月に日本国内の同人・インディーズ作品にフォーカスした新レーベル「わくわくゲームズ」の始動を発表している(関連記事)。
PLAYISMの水谷氏は,引き続きインディーズゲームを応援しつつ,今までとはまったく異なるアプローチでクリエイターをサポートするサービスを模索しているという。
村山氏は,ID@Xboxがようやく軌道に乗ってきた段階であるとし,日本からの成功事例を作りたいと話していた。
「 黒川塾 八十四(84)」アーカイブ動画(YouTube)
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