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エンタメ社会学者・中山淳雄氏による「日本のゲームとIPはこれから世界に勝てるのか」セミナーレポート
エンタメ社会学者 中山淳雄氏 |
(左)セガの西山泰弘氏,(右)ミクシィの異儀田 諭氏 |
中山氏はまず「ゲーム業界世界戦」と題して,日本と世界のメディア・エンターテイメント企業の売上や利益,時価総額を紹介した。IPを持つ日本のゲーム会社は史上最高の株価を記録する一方で,米・中企業と比較すると,まだまだ規模が追い付けていないと分析する。
次に,1990年から現在までの国内家庭用ゲーム会社トップ7の売上シェアを紹介。それぞれの時代を「任天堂/セガのハード戦争」「家庭用大合併時代」「モバイル移行期」「ゲームIP時代」に分けて分析する。2000年から2005年の間の大合併を経て,モバイル時代に突入し,GREEなどが台頭,そしてIP時代に突入し,強力なIPを数多く持つバンダイナムコエンターテインメントが大きく伸びたと解説した。
一方で海外ゲーム会社と比較すると,2000年あたりから欧米系のゲーム会社が台頭し,欧米市場が大幅に拡大する。2008年ごろには日本はスマホアプリが,2016年ごろには中国,韓国が台頭してきた。
そして,今後の各地域のゲーム市場の成長予測だが,米国が8%,中国が2%と成長を見せる一方で,日本は0%と予測されている。であれば,日本のゲーム会社は海外に進出していくしかない,というのが中山氏の見解だ。
中山氏は,国内では絶好調である家庭用ゲーム産業だが,ガラパゴスの気配があると指摘する。PC・モバイルの世界展開で北米,欧州,中国,韓国のゲームメーカーはさらに好調の様子を見せており,日本のゲーム業界は「Nintendo Switch景気の収束とともにピークアウトするのでは?」という見解を示した。
これまでの説明に,西山氏は「その通りだと思います」と理解を示し,異儀田氏は「ゲームはクリアして満足するというものが多かった」とし,今のゲームトレンドの変化を指摘していた。
セミナーは進み,IPの話へと移る。中山氏は,キャラクターIPを用いた展開が強い企業が,売り上げを伸ばしていると分析した。バンダイナムコエンターテインメントは,2010年は3941億円の売上だったが,2019年には7239億円,2022年には9900億円へと伸ばしている。こうした状況の中で,Web3がゲーム・アニメ業界にもたらせるものは何かを考えていく必要があるとまとめた。
日本のゲーム業界が凋落した理由について,西山氏はかつて海外で日本のゲームシェアは50%ほどあったが,今は10%ほどだと伝えた。その理由はさまざまだと思うが,シェアが高かったころ,日本の家庭用ゲーム機が世界中に存在していたが,そこが崩れたとしても日本のゲーム市場だけで日本のゲームメーカーは生きていけたため,海外を重視しなかったという。そうした状況が巡り,新たなプラットフォームが出てきたとき,そのトレンドに乗ることができなかったのではないか,と述べていた。
とはいえ,市場原理としては仕方がない部分もある。西山氏は会社としては,大きなリスクを負わずに生きていける市場があれば,そちらに注力してしまうと指摘。その時代にグローバル展開の視点を持てたか,と問われれば難しかったのではないか,と語った。異儀田氏も「国内で順調だったため事業シフトが遅れた」と見解を示した。
そして両氏ともに,Web3は新たな展開のためのいいきっかけになるのでは,と見ている。しかし,日本はMod文化がそこまで活発ではないこともあり,DAO型の運営をする場合は,自分たちで何かを作るというコミュニティを育てていく必要があるとのこと。旧来からある大きなゲーム会社は,そうしたものに対応していかなければならないと語った。
ゲームは時代によって進化している。シングルプレイしかなかったころから,オンラインに対応し,マルチプレイが当たり前の時代になったように,Web3の流れも今後大きな変化をもたらしていくのかもしれない。
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