イベント
[CEDEC 2023]近年,盛り上がりを見せている福岡ゲーム業界。その裏にあるさまざまな戦略や努力とは
これは,「GFF AWARD」16回連続開催や,「CEDEC+KYUSHU」8年連続開催など,近年盛り上がりを見せる福岡ゲーム業界の,その裏にあるさまざまな戦略や努力を,CEDEC+KYUSHUの事例を交えて紹介するというものだ。
まずは,CEDEC+KYUSHU開催のきっかけに言及し,地方のゲーム開発者のインプット機会の少なさ,移動距離の長さや平日開催による本家CEDECへの参加の難しさが挙げられた。そして,なぜここまでCEDEC+KYUSHUの開催にこだわるのかというと,地方ゲームクリエイターの育成や,次世代のクリエイター創出などを実現したいからだという。
その際,実行委員会として参加したレベルファイブ,サイバーコネクトツー,ガンバリオンの3社の中でも,サイバーコネクトツーはメインの進行担当として,引っ張っていく存在であることを目指したそうだ。
続いて,これまで8回開催されてきたCEDEC+KYUSHUの振り返りへ。
2015年の初開催時に,独自の強みやコンセプトとして,九州のクリエイターの知見を得られる,学生の育成,多くの人が参加できる(土日開催),九州ゲーム業界にゆかりのある開催地などの候補が挙げられたという。
実際には,九州のクリエイターとして,レベルファイブの日野晃博氏や,漫画家の原 泰久氏を迎え,学生は500円という破格の参加料金とし,ゲーム産業振興機構のメンバーでもある九州大学で開催された。結果,参加者936名(うち学生が228名)という,地方イベントとしては大きな成功を収めるに至ったそうだ。当時を知る宮崎氏は,まだプロのための学会という認識が強かったCEDECにて,学生比率を上げようとした試みは,なかなか苦労したと語った。
翌2016年は,さらなる参加人数増加を目指し,札幌,東京,大阪など,九州地区に留まらない集客を呼びかける。それにより全体で1544名の参加となり,600人近い増加を達成した。
このように順調に開催されているように見えるCEDEC+KYUSHUだが,その裏では,経験不足やタスクの増加などからくる問題が発生し,入部氏が初めてメイン担当として挑んだ第4回の「CEDEC+KYUSHU 2018」にて,とうとう参加者の減少を見せてしまう。
しかし,その経験から多くを学んだという入部氏は,「CEDEC+KYUSHU 2019」にて反省を生かし,全国公募化や目玉講演の早めの調整,実行委員会の責任の明確化など運営方針に変化を付け,さらに事務局も2社体制により負荷を軽減させたという。その結果,参加者は全体で2220名と大幅な増加を見せ,今後もこの運営方針を続けようと考えたそうだ。
しかし,翌年の2020年3月に新型コロナウィルス感染症が大流行し,入部氏らが携わるイベントがことごとく中止になってしまったという。「CEDEC+KYUSHU 2020」もギリギリまで開催を検討していたが,本家CEDECのオンライン開催を受け,同じくオンライン開催で決行する方向に舵を切ったとのこと。
ただ,オンライン開催には費用がかかる。それでも参加者の負担が増えることには,宮崎氏は猛反対だったため,視聴無料のイベントにするべく,これまたギリギリまで準備を続け,最終的に2021年に突入してからの開催となったのだった。
開催は2021年になったが,名称に2020と付けるのは譲れなかったと入部氏は語る |
同年には,有料にはなったものの同じくオンライン開催で「CEDEC+KYUSHU 2021 ONLINE」を実施。どちらも3000人を超える参加者が集まり,成功と呼べる内容に落ち着いた。
そして昨年の「CEDEC+KYUSHU 2022」では,2年間経験したオンライン開催で感じた良かった点と悪かった点を踏まえ,オンラインとオフラインのハイブリッド開催という形を選択したそうだ。その大きな理由としては,「現地で交流したいという声が多かった」ことと,「オンライン配信が当たり前の世の中になっていた」ことを挙げていた。
これにより,参加者の幅が広がるだけでなく,県外の受講者に向けての情報発信も行えたことで,最終的に過去最高の参加人数となる3366名を記録するに至ったそうだ。
ただハイブリッド開催の問題として開催費用の高騰が挙げられており,参加者を増やすためにチケット代を抑えたい宮崎氏にはやや不評だったようだ |
そしていよいよ,今年開催となる「CEDEC+KYUSHU 2023」の話題へ。11月25日に開催される「CEDEC+KYUSHU 2023」は,昨年同様のハイブリッド開催となるが,2022年の経験を生かし,さらなる進化を遂げたハイブリッド開催を目指しているのだという。
その大きな特徴は,これまでタイムシフト配信のみだったオンライン会場にて,ライブ配信+オンラインでの質疑応答を実施し,オンライン受講者の満足度向上を目指すことがまず1つ。ほかにもリアル会場では,高校生以下の入場無料化や,インディーゲームコーナーの設置など,さまざまな施策を計画していることが語られた。
そのほか,地方盛り上げの秘策として,登壇者向けの前夜祭や交流会など,九州と他地方の交流だけでなく,他地方同士の交流を広げる場も紹介された。
こうして,「CEDEC+KYUSHU」を継続したことにより,クリエイターが地方で知見を得られる機会を獲得できたり,クリエイター同士の交流の場が増えて「福岡に行けば優秀な人材が採用できる」と思ってもらえる状態にすることができたのだ。
しかし,ここで話は終わらなかった。現実問題として,まだ福岡にはそれほど優秀な人材が集まってはいないのだという。ここでテーマは福岡ゲーム業界の今後の展望へと移った。
現在,福岡ではゲーム会社が約36社まで増え,福岡市の発表するゲーム関連企業従事者数も2300人ほどまで増加している。そのため求人自体は多いが,その枠に当てはまる人材が足りていないことが問題だという。
そこで,レベルファイブ,ガンバリオン,サイバーコネクトツーが推し進める,九州のゲーム会社11社が集まった団体「GFF」に,教育機関が加盟することで,産業と教育機関が一丸となって優秀な人材を育てる仕組みを作ろうとしているそうだ。
それだけでなく,中学生や高校生などの若い世代へ向けたゲームイベントを開催し,福岡でゲームクリエイターを目指せるという認識を広げていきたいと,宮崎氏は語った。
最後に,福岡のゲーム産業を盛り上げるため,「CEDEC+KYUSHU 2023」への参加はもちろん,興味を持った企業にはぜひ協力してほしいと呼びかけ,講演を締めくくった。
「CEDEC 2023」公式サイト
4Gamerの「CEDEC 2023」記事一覧
- この記事のURL: