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[TGS2023]小高和剛氏と日野晃博氏が推理ゲームを語ったステージイベントをレポート。それぞれが開発している新作についての話題も
「超探偵事件簿 レインコード」(以下,レインコード)などを手がけている小高氏,シリーズ最新作「レイトン教授と蒸気の新世界」を開発中の日野氏が,推理ゲームに対する思いや,その開発手法を語ったステージの模様をレポートしよう。
日野氏はまず,小高氏のレインコードが,新規IPのアドベンチャーゲームという,売り上げ面では難しい条件のタイトルであるにもかかわらず,ランキングの1位となったことや,魅力的なキャラクター,本格的な謎解き要素などを称賛。小高氏へ矢継ぎ早に質問を浴びせた。
それに対する小高氏の回答によると,レインコードの企画を立ち上げたきっかけは,「ライフ イズ ストレンジ」や「Detroit: Become Human」のような,3Dグラフィックスのリッチなアドベンチャーゲームを作りたいという思いだったとのこと。推理ゲームをまだプレイしたことのない人を意識して,テキストは少なめにし,アトラクション的に謎を解ける「画面映え」するものを目指したそうだ。
そうして生まれたのが,事件の謎が具現化した空間「謎迷宮」。ただ,この謎迷宮の内容が固まるまでは,小説家の北山猛邦氏と協力して以前から作っていたトリックについても手探り状態になり,苦労したという。
日野氏がレインコードをプレイして衝撃を受けたのは,物語の冒頭部分で主要キャラが全員死んでしまう展開だったという。小高氏は「全員死ぬ」は一回やってみたいと思っていたが,「ダンガンロンパ」などのシリーズ作品では少々やりづらかったため,レインコードで実現させたそうだ。
小高氏はミステリーの魅力の1つを「裏切られる気持ちよさ」と捉えており,どうやったらプレイヤーを驚かせられるかを考えているとのこと。
ここで話題はシナリオ作りに。日野氏は,シナリオを基にしたキャラクターデザインがあがってくると,「シナリオを変えたい」と思うことが多く,実際に直すこともたびたびあると話した。といってもネガティブなものではなく,あまりデザインに関わっていなかったサブキャラクターの中に“光る”ものを見つけると,それがさらに生きるようにしたくなるのだという。
一方で小高氏は,開発タイトルの多くでキャラクターデザインを手がけている小松崎 類氏とは,キャラクターだけでなくシナリオでも相談することが多いため,ある段階で大きく直すようなことはあまりないと明かした。
小高氏が日野氏のタイトルで気になっているのは,大勢のキャラクターをどう作っているのか。それに対しての日野氏の答えは「ひたすら作る」で,膨大な数のキャラクター資料を突き合わせて作業しているそう。「かぶりは気にしますか」という小高氏の問いについては「気にしますけど,(避けるのではなく)利用する」という回答。あえて既存のキャラクターに近い雰囲気を出すこともあるそうだ。
小高氏と日野氏の手法は異なる部分が多いようだが,2人の意見が一致したのは,「キャラクターがあっての物語」ということ。ここで日野氏が「でも小高さんはそのキャラを殺しちゃいますけど(笑)」と会場の笑いを取ると,小高氏も「死んでも終わりじゃない。プレイヤーの心に生きる」と笑いながら返答。日野氏も「死んで生きるキャラもいますよね」と同意した。
もう少し具体的なシナリオ作りの手法について,小高氏は,その作品でやりたいことを全部リストに書き出したうえで,それを組み立てていくようなイメージだと話した。そして,ファンの心をつかむ物語の入口と,驚きをもたらす結末には時間をかけるという。日野氏も,まず入口を最優先に考え,次に結末を作り,その間をつなげていくと語った。
「驚きの結末」という点で,小高氏はレイトンシリーズの1作目「レイトン教授と不思議な町」が記憶に残っているという。「かわいい感じで,絵本のような物語で終わるのかと思っていたら……」と話すと,日野氏も「ざっくり言うと,ひどい話ですからね」と応じつつ,しっかり世界観とキャラクターを作って結末まで持っていけば「なぜかいい話に思える」という秘訣を披露した。
ゲーム全体の作り方になると,小高氏は予算が限られたゲームを作ることが多かった関係から,「こだわるべきところはこだわるが,それ以外は気にしない」というやり方が身に付いたという。
強くこだわるのはやはりシナリオで,スタッフに「ゲームプレイはシナリオ演出の一環だから」という言葉をかけることもあるという。プランナーがゲームプレイにこだわるのは当然なのだが,それがシナリオを邪魔することになったら本末転倒というわけだ。
小高氏は「例えばダンガンロンパなら,『こいつが犯人だ』と決定のボタンを押すのがゲーム」と説明した。
日野氏のこだわりポイントは,例え最後までプレイしてもらえなくても,それまでの時間を楽しんでもらえるように,世界観などの導入部分をしっかり作り込むことだという。
だが,多くのスタッフにそのゲームの世界観やコンセプトを理解してもらうことは簡単ではない。そこで現在開発中の「デカポリス」では,開発チームのメンバーをはじめとした関係者向けのPVを作ったそうだ。
そのPVによって一気にスタッフの理解度は高まったそうだが,あくまで関係者向けであり,一般公開の予定がないことを聞いた小高氏は驚いていた。
スタッフに世界観やコンセプトを理解してもらうことについては,小高氏も苦労しているとのこと。ダンガンロンパシリーズでは「サイコポップ」という造語を用いたがあまり反応はよくなかったそうで,レインコードで「ダークレイトン」という言葉を使ったところ,すぐに理解してもらえたそうだ。
そういったキーワードは日野氏も重視していて,レイトンの世界観を説明するときには「異世界ロンドン」という言葉を使って,ロンドンではありつつも,時代考証はそれほど気にする必要がないことを説明したという。なお,現在開発中のレイトン教授と蒸気の新世界は,「異世界アメリカ」だそうだ。
ここで話題は「これから作ってみたいゲーム」へ。小高氏は,トゥーキョーゲームス設立時に発表した,打越鋼太郎氏との共同シナリオ作品について,現在全力で開発を進めていることを明かした。
推理やトリックの要素は薄めで,全体的にはサスペンスの雰囲気がある作品だが,ジェットコースターのような展開が待っているとのこと。タイトル名も明らかにされなかったが,小高氏は「それほど遠くない未来に出る」と話していたので,期待しよう。
ダンガンロンパシリーズの小高和剛氏が代表を務めるToo Kyo Games(トゥーキョーゲームス)設立が発表。進行中のプロジェクトも明らかに
本日(2018年9月11日),Web配信にてToo Kyo Games(トゥーキョーゲームス)合同会社の設立が発表された。同社は小高和剛氏が代表を務める,ゲームやアニメの制作を手がける新会社とのこと。設立発表に伴い,現在進行中だという4つのプロジェクトの情報が少しだけ公開された。
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日野氏は「幸せなことに,やりたいと思っていたことを今やれている」と,現在開発中のものに力を注ぐと話したが,その一方で,海外の超大作ゲームをプレイしていると,「日本のメーカーも力を合わせて頑張らなきゃ」と思うことがあるという。
海外タイトルの話題が出たことで,小高氏は日野氏に「CERO Zタイトルは作らないんですか」と尋ねた。レベルファイブのタイトルに全年齢対象のものが多いことからの質問だが,日野氏は「『デカポリス』がそれになるかもしれない」と意外な返答。
これまで公開された情報から,前向きな雰囲気のゲームを想像している人がいるかもしれないが,かなりドロドロした部分もあるという。スタッフから「このままの表現では,この国とこの国では発売できません」といったことを告げられつつ,「コンセプトがずれたものを作りたくない」と,悩んでいるそうだ。
ここでステージの終了時刻に。最後に小高氏は「生のステージを久々に体験できた」と喜びを語りつつ,レイトンシリーズの復活に触れて,「友達に,Switchの推理ゲームに『レイなんとか』っていう面白いのがあるよって伝えてください」と呼びかけて会場の笑いを誘った。日野氏も「小高さんと話せて楽しかった」と感想を語りつつ,「みんなを驚かせるゲームを作りたいと思っているので,2人ともどもよろしく」と挨拶して,イベントは幕となった。
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