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「ガンダムメタバース」のテストオープン版をレポート。アニメの同時視聴や3Dスキャンされたガンプラ観賞など,ガンダムファンが楽しめる空間
アニメの同時視聴や3Dスキャンされたガンプラ観賞など,ガンダムファンが楽しめる空間
2022年3月に行われた「第3回ガンダムカンファレンス」で発表された「ガンダムメタバースプロジェクト」は,ゲームやガンプラ(ガンダムシリーズのプラモデル),eスポーツなど,機動戦士ガンダムシリーズに関連するコンテンツの各カテゴリを象徴するスペースコロニー(宇宙に浮かぶ居住空間)をモチーフとしたメタバースを開設していくというものだ(関連記事)。
「世界中のガンダムファンが集い,語り合い,様々なコンテンツに触れる場所」と位置づけられており,「ファンコミュニティから,次なるガンダムが生まれてくるような,バンダイナムコとファンが『共創』する未来を目指すプロジェクト」を目指して進められている。
今回のテストオープンでは「ガンプラコロニー」にて,メタバースライブやアニメの同時視聴,3Dスキャンされたガンプラ作品の観賞や,ガンプラ購入などの体験が可能だ。対象地域は日本及びアメリカで,日本では10月12日から10月24日10:00まで一般アクセスが実施され,PCでのフル体験とスマートフォンへのライブカメラ配信が行われていた。
ガンダムメタバースにログインし,最初に行うのはアバターの設定だ。さまざまなアバターが20体用意されており,カラーやパーツのカスタマイズを行える。パーツは頭,バックパック,武器の3カテゴリが存在。ガンダムシリーズのモビルスーツがモチーフとなっており,着ぐるみや仮装の感覚で自由に着脱できる。パーツのデザインが「機動戦士ガンダム」(1979年)から「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(2022年)まで幅広い年代の作品から採用されている辺りに,さまざまなガンダムファンが集う場という「ガンダムメタバース」のコンセプトが現れていると言える。
メタバースはスペースコロニーがテーマとなっており,天井部分に広がる街や「機動戦士ガンダム」に登場した母艦・ホワイトベースが見える。来場者を出迎えるのが,ガンダム立像だ。
ガンダム立像自体は日本のみならず中国・上海にも存在していて観光スポットとなっているが,こちらは周囲が「フライトゾーン」となっており,飛びながら好きなアングルで観賞できる。思い切り近づいて巨大感を堪能したり,肩に乗ってみたりといった観光スポットでは不可能な体験も可能で,来場者たちはメタバースならではのガンダム立像を楽しんでいた。
来場者同士はチャットでの会話が可能だ。歴代作品の名シーンを抜き出したスタンプを使うこともできる。AIキャラクター「メロウ」とのチャットもできた。メロウは利用者の発言を学習していくとされている(関連記事)が,どんな風に成長していくかも楽しみに感じられた。
仮想イベントスペースである「LIVE SPACE」「THEATER」では,yama,BACK-ON,LINKL PLANETといったガンダムシリーズに縁のあるアーティストによる「メタバースライブ」や最新アニメ「ガンダムビルドメタバース」の配信が行われていた。
ほかのメタバースでもこうした催しは行えるが,「ガンダムメタバース」の場合,その場に集っているのがガンダムシリーズに関心のあるファンであるため,一種の連帯感があるのが大きく,コメントなどで盛り上がれるのが楽しい。
一方,視聴体験自体には課題もあるように感じられた。視聴中はライブやアニメの配信が行われる画面のみを注視する手段が存在せず,周囲にいるアバターたちや建造物が映り込んでしまうため,画面に集中することが難しい。また,仮想空間内の立ち位置によっては,現実のイベント観賞同様画面に角度が付いてしまうこともある。
また,同時視聴の醍醐味とも言えるチャットは非表示がデフォルトで,表示すると画面左側に大きなスペースが出てくるため,皆と語り合いながら視聴するには少々主張が激しいのも気になった。
もっとも,アバターの映り込みについては,「フォトモード」にすると周囲のアバターを消すことができるため,ここでカメラを調整すれば視聴しやすくなる。これならアバターがいくら密集していても関係ないため,スクリーンの真正面に行けば角度問題もある程度解決する。
ちなみこの解決方法は,メタバースにいる視聴者たちが独自に編み出した手法だ。会場では,この方法を周知するため,定期的にやり方をチャットで発言する来場者が存在していた。メタバースの仮想社会がユーザー主導で動き始めていたように思えて,実に印象深い光景だった。
メタバース「ガンプラコロニー」を象徴するのが,「SHOP」と「GUNPLA BUILDER’s MUSEUM」といったガンプラ関係のコンテンツである。
SHOPでは「GUNDAM NEXT FUTURE限定 HG 1/144ガンダムエアリアル[リサーキュレーションカラー/ネオンブルー]」「GUNDAM NEXT FUTURE限定 MG 1/100 フリーダムガンダム Ver.2.0(リアルタイプカラー Ver.)」など6種のイベント限定ガンプラが販売されており,メタバース上から通販申し込みが可能だ。
売り場にはガンプラの3Dモデルが展示されている。3Dモデルでガンプラの細かい部分が確認できるのは嬉しいし,購入意欲を高めてくれる。メタバースの商利用にはさまざまな方面から注目が集まっているが,こうした強力なIP資産を活用するバンダイナムコグループの取り組みには可能性が感じられる。
そしてGUNPLA BUILDER’s MUSEUMでは,3Dモデルとなったガンプラ「スキャンガンプラCG」による仮想ジオラマを楽しめる。公式コミュニティ「ビルダーズノート」に参加するモデラーの作品が3Dモデル化されており,その出撃シーンを観賞できる。ガンプラが仮想空間を飛ぶ様子は,ファンならたまらないものがある。この技術が発展していけば,いつか「ガンダムメタバース」で購入したガンプラどうしを戦わせるような日が訪れるのかもしれない。
このほか,デジタル化された「カードダス」(モビルスーツやキャラクターを描いたカード)が手に入るカードダスマシン,シリーズの名場面を3Dグラフィックスで表現したデジタルジオラマなど見所も多く,ガンダムのテーマパークとして楽しめた。
また,すでにご存じの読者もいると思うが,テストオープン期間中に「ガンダムメタバース」のクライアントプログラムに含まれていたガンプラの3Dデータが外部公開されるという事態が発生した。これを受けて,バンダイナムコエンターテインメントは,クライアントプログラムの提供を停止。今後は原因の追及と対策を講じるとアナウンスしている(関連リンク)。こうした流出はあってはならないことだし,商品の発売を楽しみにしている正規のユーザーには不公平感を与えるものであることは言うまでもない。
「ガンダムメタバース」の取り組み自体が新しいものであり,それゆえに不測の事態が発生するという事情はあるが,今回のテストオープンの件を生かし,今後は安心して集える場としての「ガンダムメタバース」の構築していくことに期待したい。
カードダスは「ガンダムメタバース」版と,オリジナル版のどちらも観賞可能 |
裏面も観ることができる |
「ガンダムメタバースプロジェクト」公式サイト
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