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[GDC 2024]クラシックゲームポストモーテム「STAR WARS: TIE Fighter」。レベルデザイナーという言葉がまだなかった時代の体験とは
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印刷2024/03/23 16:07

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[GDC 2024]クラシックゲームポストモーテム「STAR WARS: TIE Fighter」。レベルデザイナーという言葉がまだなかった時代の体験とは

 1990年代にLucasArts Gamesからリリースされた「STAR WARS: X-Wing」シリーズの開発メンバーだったデイヴィッド・ウェスマン(David Wessman)氏が,Game Developers Conference 2024の基調講演に立ち,ちょうど30年前の1994年にリリースされた「STAR WARS: TIE-Fighter」ポストモーテム(事後検証)を行った。

ファンには「X-Wing」シリーズとして知られる作品群のミッションビルダーだった,デイヴィッド・ウェスマン氏
画像集 No.002のサムネイル画像 / [GDC 2024]クラシックゲームポストモーテム「STAR WARS: TIE Fighter」。レベルデザイナーという言葉がまだなかった時代の体験とは
 映画「スター・ウォーズ」シリーズで知られる映画監督ジョージ・ルーカス氏のスタジオであるLucasfilmは,1970年代の設立当時からゲームに興味を持ち,ゲーム開発部門を立ち上げた。1985年には「Ballbrazer」をリリースしたが,初期にはなぜか自社IPを使ったゲーム制作を行わなかった。初の“スター・ウォーズゲーム”として発売されたのが,スペースコンバットシムと銘打った「STAR WARS: X-Wing」で,1993年のことだ。翌年には,「STAR WARS: TIE Fighter」がリリースされた。

 ゲーム開発部門は1988年に独立して,Lucasfilm Gamesとなったが,名作アドベンチャーゲームとして今も語り継がれる「Maniac Mansion」(1987年)や「The Secret of Monkey Island」(1990年)はゲーマーの話題を集めたものの,「Battlehawks 1942」といったコンバットフライトシムについては,それほど大きな成功を収めることができなかった。開発チームを率いたローレンス・ホーランド(Lawrence Holland)氏は,ゲームのパッケージに名前が記載されるほど,業界における有名人だったが,実際は契約社員だったという。

Steamで購入可能な「STAR WARS: TIE Fighter Special Edition」より
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 子供の頃からミリタリー系ボードゲームが大好きだったウェスマン氏は,ホーランド氏のチームにテスターとして参加していた幼なじみのデイブ・マックスウェル(David Maxell)氏に口を利いてもらう形で雇われた。テスターとして最初にゲーム開発に関わったのが,「Secret Weapons of the Luftwatte」(1991年)だ。ウェスマン氏はまったく興味なかったという「The Monkey Island 2」(1991年)や「Indiana Jones and the Fate of Atlantis」(1992年)のテスターとして経験を積み,新規プロジェクト「STAR WARS: X-Wing」でミッションビルダーに昇格した。

 今ではさっぱり聞かない,ミッションビルダーという仕事だが,ウェスマン氏と相棒のマクスウェル氏は,内制の開発ツールを使ってステージを1つひとつデザインしていった。数年後,id Softwareで使われてゲーム業界に広まった「レベルデザイナー」に近い作業をメインにしていた。7人しかいない小さなチームだったため,自分の担当したミッションのテストも自分で行ったという。

小学校からの幼なじみというデイブ・マックスウェル氏と。「STAR WARS: X-Wing」を手がけていた頃の写真
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 1993年2月にリリースされた「STAR WARS: X-Wing」には,操作可能な3種類のビークルと,57のミッションが用意されていた。上記のようにわずか7人のメンバーが12か月で作り上げたもので,当時としても非常に短い開発期間だったようだ。開発費用は50万ドルで,現在の価値に直すと100万ドルほどらしい。ウェスマン氏のセッションに「開発が難航した」といった話題はなく,効率の良いパイプラインがすでに出来あがっていたのだろう。

 一方で,「STAR WARS: X-Wing」は,ジョイスティックやキーボード操作が複雑で,難度の高いゲームでもあった。これは,ウェスマン氏とマックスウェル氏の得意ジャンルであるシミュレーションゲームだったことや,2人が若くてイキのいいゲーマーだったことに原因があるとウェスマン氏は反省する。
 同じ1993年には,「Tour of Duty: Imperial Pursuit」「Tour of Duty: B-Wing」という2つの拡張パックがリリースされた。

シミュレータであることが強く感じられる「STAR WARS: X-Wing」の操作方法
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 「STAR WARS: X-Wing」は,「スター・ウォーズ」のIPを使った初のゲームということもあって,コンバットフライトシミュレーション開発部門にとって念願のヒットを記録する。その勢いのまま,プログラマーとアーティストを1人ずつ増員し,新たに開発に着手したのが,「帝国軍側でプレイする」というコンセプトの「STAR WARS: TIE Fighter」だ。
 開発ツールやレンダラーなどをアップデートしたことで,こちらもわずか11か月の開発期間と46.5万ドルという開発資金で,1994年7月のリリースを果たした。フライトオフィサーを登場させてブリーフィングを行ったり,敵の襲来を知らせる小さなゲーム内モニターを採用したりしたことで物語が明確になり,ゲーム体験も大幅に向上。難度調整が行われたこともあり,現在でも「傑作ゲーム100選」に選ばれることも少なくない名作タイトルとして称えられている。

 もっとも,開発中には「ゲームのストーリーが暴力的過ぎる」とLucasfilmから注意を受けて修正したり,プログラムの中にゲーマーを侮辱するような言葉を書き残していたために問題になったりもしたという。結婚したばかりの妻の名前を宇宙の領域に勝手につけるなど,IPを厳格に守るイメージのある現在のスター・ウォーズ作品では考えられないような大らかさもあったようだ。

Lucasfilmに「ストーリーや設定がダーク過ぎる」と問題視され,セリフやカットシーンの修正を余儀なくされたという
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 講演では,「X-Wing」シリーズは3部作として構想されており,ミレニアム・ファルコンをメインにした完結編が用意されていたという興味深い話も聞かれた。
 マルチプレイゲーム人気の高まりに伴って,彼らは「STAR WARS: X-Wing vs. TIE Fighter」(1997年)をリリース。1999年には,ストーリーのないスター・ウォーズなんてあり得ないというファンの声に応じて,「STAR WARS: X-Wing Alliance」を発売したが,フライトシミュレータの人気は次第に低下し,Totally Gamesとして独立していた開発チームは契約を打ち切られることになった。

ダッジの乗用車「Neon」の販売プロモーションとして,「STAR WARS: TIE Fighter」のプレイアブルデモが配布されたというから驚きだ
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2人のDavidが注目された雑誌記事から。同時期にゲーム業界のスターダムに昇りつめた,id Softwareの2人のJohnCarmackRomero)を思わせる
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30代なのに,過労で病院送りになったこともあった。当時は,毎日ひたすらゲーム開発をしているだけで楽しかったとウェスマン氏は語る
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 ウェスマン氏は現在,ゲーム関連教育では世界屈指とも言われるブレダ大学で応用化学の教鞭をとる傍ら,Impeller Studiosを起業して,新作「In The Black」の開発を進めている。「スター・ウォーズ」ものの“精神的後継作”とウェスマン氏が呼ぶ「In the Black」は,核燃料による推進エンジンが進歩した200年後の未来を舞台にしたマルチプレイ対応のスペースコンバットシムであり,近日中にアーリーアクセス版をリリースする予定だという。

現在,ウェスマン氏が開発中の「In the Black」。近日中にアーリーアクセス版がリリースされる予定だという
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